皆さまのおかげで、目標金額の48万円を達成できました。どうもご支援をありがとうございました。プロジェクトのそもそもの目的である自身の単著の執筆に専念したいと考えております。
ところで、まだプロジェクト期間に余裕があることから、64万円を目標金額としてさらにセカンドゴールを設定したいと思っています。研究資金利用用途としては、Covid-19問題が鎮静化後の英国再渡航費用の一部への充当を考えていますが、仮に難しい場合は、学術書購入などの資料費に割り当てる形になります。これらが実現すれば、更に研究を充実させることを図ることができますので、引き続きセカンドゴール達成まで支援やお力添えをよろしくお願いします。
私の専門は法哲学と呼ばれる分野で、日本ではまだ一般的な分野ではないかもしれません。法哲学は一言でいえば「法や法学の問題に哲学的方法で考察する領域」です。
私自身は法哲学とは何かということを説明するとき、次のような説明をします。しばしば言われることですが、哲学には複数の分野にまたがる共通の問題を考察する 「全体性」という特徴と、物事の前提を批判的に検討する「根源性」という2つの特徴があるとされ、法哲学は法の問題に対して、これらの2つの側面から迫る研究領域なのではないか、と。これらを備えているのであれば、隣接分野である哲学分野の研究は参照不可欠であるはずですが、研究者のなかには「法哲学は哲学ではなく、法学だ」という人もおり、 日本ではまだまだ法学と哲学との断絶を感じます。実際に、日本の多くの法哲学研究者は、自分の所属する法学部内部に学術的交流を留めることが多く、哲学分野との交流に積極的ではないように感じます。
しかし現代英語圏の議論に触れていると、その断絶は大きいといえず、むしろ互いの研究成果を採り入れながら発展しているように感じます。また、法哲学の研究内容の範囲は非常に広く、「自由」や「平等」など法規範の中でも重要な概念の意味内容を明らかにしようとする人もいれば、法的な思考と論理学の接点を追究する人もおり、それだけ隣接分野の知見が重要なものとなります。哲学と法学の架橋に限らず、学問で分野間の架橋が必要な理由は、ひとつの分野に留まりすぎると、研究の枠組や方法論が固定されやすいということです。その場合、新しい問題に対応できなくなったり、研究のブレイクスルーが期待しにくくなりがちです。また個人的な体験ですが、複数の枠組や方法論を身につけたことによって、同じ問題に対して、さまざまなアプローチが可能になったという経験もあります。
私はこうした哲学と法哲学(法学)の溝をどう埋めるべきかをずっと考えています。ひとつの方法は私自身の研究で、法哲学の問題と哲学の問題がシームレスに接続できることを示すということです。
その関心から私はいま、デイヴィッド・ウィギンズという哲学者に注目しています。ウィギンズの仕事の全体は、形而上学から倫理学まで広大な範囲に及ぶもので、一言で説明できません。しかし全体の仕事を貫く方法論として挙げられる特徴は、「解明」(elucidation)と呼ばれる哲学的アプローチです。
たとえば、「差別とは、非合理的な区別である」と暫定的に「差別」を定義をできますが、この定義的なアプローチだと「非合理的」という言葉が明らかではないので「非合理的とは?」と次々に定義を繰り返すことになり、重要となる概念の内容を明らかにできなくなるとウィギンズはいいます。解明は、上のようなアプローチに依存せずに概念の内容を明らかにすることであり、概念A(例:差別)を(Aが含まれない)概念B(例:非合理的)を含む何らかの命題の必要十分条件として分析するのではなく、概念Aと概念B(例:差別と非合理的)がどのような関係にあるのかということを明らかにすることで、哲学的な考察を進めていくことになります。
そしてこうした方法論は、形而上学のような理論的な問題でも、道徳や政治に関わる実践的な問題でも変わらないと彼は主張します。私はこのウィギンズのスタンスに、理論的な哲学と実践的な法哲学を接続する共通項があるように感じました。特に私が注目しているのは、彼の倫理学的立場である「弱い認知主義」という立場です。これは、道徳的判断は特定の時点と場所に限定することによって、真偽が問えるという立場です。これ自体は道徳的判断について論じている話ですが、法的判断にも適用できるのではないかという着想を抱きました。
幸運なことに、私は2020年2月に英国でウィギンズ本人と直接お会いすることができました。事前に「あなたの理論的立場と法哲学の問題の接続を考えている」と伝えていたのですが、対面前に本人がわざわざ法哲学の問題と接続するための具体的アイデアを用意してくれていました。この内容の詳細は研究の中心部分に関わるので、この場ですべてを公表することができないのですが、これは次のような法的問題につながると考えています。
法制度は時代を経るごとに硬直化する傾向があり、既存の法制度では解決できない新しい特殊事例に遭遇したときに、対処が難しくなります。その場合は、裁判所の裁判官が既存の解釈を変更することで、個人救済を行うことがあります。そのような裁判官の判断はしばしば主観的で恣意的で、民主主義的なコントロールも働いていないと批判されることもあり、最近の日本の法哲学者はこのような見方を採用する人が多いです。しかし、ウィギンズの立場からは、これは必ずしも恣意的であるとはいえず、ある種の妥当性があると言えるのではないかと私は考えます。またそのような法的判断の妥当性の源泉が、ウィギンズの理論的立場とも繋がって いるのではないかと予測しています。
「ウィギンズの理論的立場と法哲学の問題を接続する」という現在の私の研究テーマは、日本の出版社の編集者に関心をもたれ、このテーマで著作を執筆するという企画が、現在社内の企画会議に通った状況です。
私の現在の目標は、前述の研究テーマを扱った自身の単著を出すことです。しかしながら、この目的においていくつかの経済的な問題が生じています。まず、著書の出版費用の負担が生じることが考えられるということです。出版助成などの制度も申請する予定ですが、申請が通る保証はありません。今回プロジェクトに成功した場合は、その資金を出版費用に充てることを考えています。
さらに、著書出版前にもう一度英国に渡航して、ウィギンズと再度面会し、その後に展開した自身の考察を聞いてもらいたいと思っています。1度目の面会は科研費から渡航費を出しましたが、今年度は競争的資金を獲得できず、渡航費用の捻出が難しい状況です。もちろん、COVID-19の問題が鎮静化してからの渡航となりますが、仮にCOVID-19の問題の鎮静化が難しい場合は、出版費用などの別の用途に使用する形になります。
また、先に述べたように競争的資金が獲得できなかったため、資料も自費で購入していますが、必要な資料の費用をすべてカバーできず、資料費に関しても支援をお願いしたいと思っています。
私の研究は、法学にも哲学にもインパクトを与える可能性があると私は自負しており、またこうした分野を超えた学際的なアプローチが、法哲学に限らず他分野にも必要であることも示せると考えています。どうかご協力とご支援をお願いいたします。
時期 | 計画 |
---|---|
2021年2月 | 著書の一部に組み込む予定のウィギンズの理論に関する論文を公刊する。 |
2021年8月 | 渡航可能な状況であればイギリスに渡航し、ウィギンズに再インタビューを行う。 |
2022年3月 | 著書を出版(予定) |
2020年の2月にウィギンズと面会を行いました。そのときの英国滞在についての寄稿文/レポートを送ります。
2020年の2月英国滞在レポート
18人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
自身の研究のこれまでの流れを、研究にインパクトを与えた10冊の文献とともに振り返る動画を作成します。この動画の視聴権をプレゼントします。
「これまでの研究を10冊で振り返る」動画の視聴権 / 2020年の2月英国滞在レポート
11人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
公刊予定の単著のサイン本と日本未進出の英国紅茶ブランドのティーバッグのセットを送ります。自身の単著が刊行されるまでに時間がかかることが予測されるため、紅茶の方を先に現地から取り寄せ、単著よりも前に直筆メッセージ付きで送ります。送った紅茶は、私の本だけでなく、是非他の本とも一緒に味わってください。
注:既に出版社との契約は締結しており執筆は進めていますが、執筆中に予期せぬトラブル(天災、事故、病気等)が発生した場合は、リターンを遂行できない可能性もあります。その場合、返金等の対応はできませんので、予めご了承いただけますと幸いです。
単著のサイン本と一緒に紅茶もどうぞセット / 「これまでの研究を10冊で振り返る」動画の視聴権 / 2020年の2月英国滞在レポート
28人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
Twitterで匿名で質問を受付する「質問箱」の回答が好評だったことから、今度はオンラインで直接質問を回答する企画を行います。私の相談可能なジャンルは一般的な人文社会系の研究方法、専門の法哲学や英語圏の哲学、また法学入門の授業を教えられる程度の法学の知識などです。また学術的な問題に限らず、抽象的な問題が入りくんだ状況をクリアに解きほぐすことも得意としています。ただ、事前に長時間の調査が必要な相談はお断りします。
注:既に出版社との契約は締結しており執筆は進めていますが、執筆中に予期せぬトラブル(天災、事故、病気等)が発生した場合は、リターンを遂行できない可能性もあります。その場合、返金等の対応はできませんので、予めご了承いただけますと幸いです。
Zoomを使って挑戦者に直接相談 / 単著のサイン本と一緒に紅茶もどうぞセット / 「これまでの研究を10冊で振り返る」動画の視聴権 / 2020年の2月英国滞在レポート
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
今後刊行予定の著書の謝辞に名前を掲載します。単著のサイン本の送付もこちらには含まれており、ご自身で名前を謝辞の中で確認できます。
注:既に出版社との契約は締結しており執筆は進めていますが、執筆中に予期せぬトラブル(天災、事故、病気等)が発生した場合は、リターンを遂行できない可能性もあります。その場合、返金等の対応はできませんので、予めご了承いただけますと幸いです。
著書中の謝辞に名前掲載 / Zoomを使って挑戦者に直接相談 / 単著のサイン本と一緒に紅茶もどうぞセット / 「これまでの研究を10冊で振り返る」動画の視聴権 / 2020年の2月英国滞在レポート
5人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
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2020年の2月英国滞在レポート
18
人
が支援しています。
(数量制限なし)
「これまでの研究を10冊で振り返る」動画の視聴権 他
11
人
が支援しています。
(数量制限なし)
単著のサイン本と一緒に紅茶もどうぞセット 他
28
人
が支援しています。
(数量制限なし)
Zoomを使って挑戦者に直接相談 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
著書中の謝辞に名前掲載 他
5
人
が支援しています。
(数量制限なし)