皆様のご支援のおかげで、目標金額の100万円を達成しました。おかげさまで、本フィールド実験のパイロット調査とベースライン調査の予算をカバーできる目処が立ちました。
来年にインドで調査をすることがとても楽しみです(コロナが早く収束することを祈るばかりです。。)!!皆様の期待・応援に応えられるように一層準備を頑張るとともに、リターンを通して早く皆様と交流出来ることを楽しみにしております。早速オンラインセミナーの準備を進めます。
プロジェクトは成功しましたが、まだ引き続き支援は絶賛募集中です!調査の規模を大きくする他(100万円は最低限の予算)、上記の調査後に続く、介入・フォローアップ調査部分の予算が別途必要なため、継続して支援を募集します。どうぞご支援・応援をよろしくお願いいたします!(なお、私の方でも今回のCFの成功実績を元に色々と研究助成に応募中・予定です)。
最後に改めてご支援いただきました皆様、本当にありがとうございました!
インドでは屋外排泄が大きな社会問題となっています。そもそも屋外排泄はなぜ問題なのでしょうか? トイレを使用せずに屋外で排泄すると、糞便由来の病原菌に触れる機会が増えて下痢にかかりやすくなります。その下痢によって世界中で年間約28万人もの人々が亡くなり、5歳未満児の発育阻害の原因にもなっています。
屋外排泄の撲滅に向けて、インドではモディ政権の下、2014年に「スワッチ・バラート(きれいなインド)」政策が始まりました。特に農村部で、各世帯のトイレ建設に対して補助金を付けることで、トイレの建設を強力に進めました。その結果、2019年10月にはトイレ普及率が100%に達したことが宣言され、公式の見解としては全世帯にトイレが設置されたことになりました。
ただ、農村部で各世帯にトイレは設置されたものの、依然としてトイレが使用されていないという課題が残っています。使用されていないトイレは、放置されるほか、さまざまな形で転用されています。メディアの報道によると、薪の保管倉庫、ニワトリ小屋、お風呂場などに使われています。なぜトイレは使用されないのでしょうか?
トイレ使用率が低い要因として、開発経済学の先行研究では、所得や教育レベルなどの社会経済環境、トイレ使用による健康便益に関する知識の不足、トイレ(特に古いトイレ)の質の低さ、トイレで流す水の不足、ヒンドゥー教由来のトイレに対する不浄の観念などが挙げられています。
ここで私は新たに、「トイレの維持管理コストの誤解」の点に着目します。インド農村部のトイレは、いわゆるボットン便所(汲み取り式便所)が主流で、地下にはピットという穴が掘られて糞尿が溜まる仕組みになっています。ピットがいっぱいになると、そこから糞尿を引き抜く必要があります。その際に、トイレに対する不浄の観念により、各世帯は自身で引き抜くことを避け、政府の収集システムもないなか、カースト外の不可触民(ダリット)に引き抜きを頼みます。このダリットへの引き抜き依頼費用が、トイレの維持管理コストとなります。
インド農村部の人々は次の2点の理由で、トイレの維持管理コストを過大評価していることが、これまでの社会学などの定性的な先行研究から明らかになっています。第一に、ダリットの地位向上や職業の選択肢拡大により、引き抜きサービスの担い手が少なくなって引き抜き価格が高騰してきているなか、その価格が過大に見積もられています。第二に、ピットの引き抜き頻度は科学的には数年であるのに対して、人々はピット内で土が水分を吸収することを勘案しないこともあり、引き抜き頻度が数か月ごとであると勘違いしています。より頻繁に引き抜きを依頼しなければならないと考えているわけです。
このようにコストが過大評価されると、屋外排泄はできればしたくないが、維持管理費が高すぎるトイレを使用しないでおこうという世帯も出てくるのではないかと考えられます。
そこで、「トイレの維持管理コストの誤解」という仮説が正しいか、そして、その誤解を解くとトイレ利用率が高まるか、インド現地でフィールド実験をすることで定量的に検証します。
誤解を解く方策(介入)としては、維持管理コストの正しい情報として、対象地域の引き抜きサービスの価格実績の情報と、引き抜き頻度が数年であるという科学に基づいた情報を、人々に提供する予定です。それらの情報によって人々のトイレ利用率が増えるのか、定量的に調べます。
フィールド実験では、インドのハリヤナ州とビハール州の8か所の村に住んでいる約1600世帯を対象として、ランダムに選んだ半分の世帯に上記の情報を与え、残りの半分には情報を与えないままにしたうえで、一定期間後に、前者のグループで平均的にトイレ利用率が高まったのかを検証する予定です。
もうひとつの研究事項として、介入前に全世帯の社会ネットワークのデータを収集することで、トイレの利用行動がネットワークに沿ってどのように拡大していくのかを検討します。友人からトイレを使うことで健康が改善したという良い情報をもらうと、自分自身も使う確率が高まる可能性があります。特に村のリーダーといったネットワークの中心にいる人のオススメが影響力を持つのかを分析します。
本フィールド実験は、現地パートナーとして、トイレなどの公衆衛生の問題に取り組むNGO「スラブインターナショナル(Sulabh International)」と組んで実施します。今年の5月には、タフツ大学と同NGOとのあいだで本研究に関するMoUも結びました。同NGOの研究所に調査員として協力いただくほか、介入の具体的な設計や実施にも一緒に取り組みます。
本実験を通じて、上記の方策の有効性を主に検証しつつ、他のメカニズムの存在についても検討することで、インドの屋外排泄撲滅に貢献します。実際のアクションにもつながるように、現地で活動するNGO、財団や中央・地方政府に広く本実験の結果を報告し、意見交換します。
フィールド実験を行うには多額の費用がかかります。開発経済学の手法でしっかりとした結果を出すためにはサンプルサイズを1600世帯と大きくする必要があり、その規模の調査を実施するのには調査員の雇用が必要となるためです。また、私が数週間かけて、現地で調査員を監督するための渡航・滞在費もかかります。
フィールド実験は、パイロット調査、ベースライン調査、介入、フォローアップ調査に分かれます。今回のクラウドファンディングでは、介入を実施する前の段階で、パイロット調査とベースライン調査の予算をカバーする予定です。調査員を数名雇い、各々の調査を2週間ずつ実施する予定です。
今までもさまざまなファンディングに応募しましたが、博士課程の学生として、多額の資金を集めることは難しい状況でした。実績のある大学の先生であれば比較的容易に多額の資金を集めることができますが、まだ研究のスタート地点に立った博士課程の学生としてはとても厳しい状況です。また、新型コロナウィルスの影響でさらにファンディングの機会が減っている状況です。
そこで、今回のクラウドファンディングで初期段階の調査の費用をカバーし、そこで得られた成果をもとに、より大きな研究助成に応募する予定です。本プロジェクトを通して、インドの屋外排泄の問題に貢献するだけではなく、トップジャーナルへの掲載を目指して、開発経済学の学問にも貢献する覚悟です。また、皆さんとリターンを通じて交流することで、インドのトイレの状況やフィールド実験のおもしろさを共有し、本課題や開発経済学の手法について広く周知していきたいと考えています。
時期 | 計画 |
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2020年9月 | クラウドファンディング挑戦 |
2020年12月 | 研究倫理審査完了 |
2021年1月 | 現地調査の調査員の募集・指導 |
2021年2月 | インドでのフィールドワーク開始(パイロット調査) |
2021年5月 | インドでのベースライン調査 |
2021年6月 | 研究報告レポート作成・送付 |
2021年7月~10月 |
インドでの調査継続(介入、フォローアップ調査等)
|
2021年11月以降 | 博士論文執筆・学会発表 |
フィールドワークの結果を研究報告レポートにまとめて、2021年6月にお送りします。レポートに対するご質問・ご意見はメールを通じて自由に受け付けて、お答えします!
研究報告レポート(PDF版)
21人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
パイロット調査とベースライン調査の実施後に(2021年3月と6月の予定)、インドでのフィールドワークの様子を動画にまとめて共有します。インド農村部の生活やトイレのリアルな状況などを見ることができます!
研究報告レポート(PDF版) / 現地の調査動画の公開
53人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
現地調査実施中にオンラインコミュニティ(Slack)を立ち上げたうえで、毎日私から調査内容・雑感・写真などを投稿するので、ぜひ皆さんと意見交換したいです。皆さんのコメントを翌日以降の調査に取り入れたり、現地で見てみたい様子の要望があれば、その写真・動画を共有したりします!
研究報告レポート(PDF版) / 現地の調査動画の公開 / オンラインコミュニティ(Slack)参加権
37人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本プロジェクトの手法面について理解が深まるように、3本立てのオンラインセミナーをZoom上で実施します。前提知識を必要とせずに理解できる内容とします。アーカイブ動画のURLも共有しますので、あとから視聴することもできます!
日程は下記のとおりです。
第1回:2020年11月8日(日)13:30~15:00
テーマ「開発経済学におけるインパクト評価の動向」
第2回:2020年11月22日(日)13:30~15:00
テーマ「フィールド調査・実験の設計と準備」
第3回:2020年11月29日(日)13:30~15:00
テーマ「データ分析方法の紹介と過去論文に基づくデモ」
研究報告レポート(PDF版) / 現地の調査動画の公開 / オンラインコミュニティ(Slack)参加権 / オンラインセミナー参加権
6人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
現地調査前後で2回(2021年1月と3月の予定)個別ディスカッションの機会を設定します。テーマは本調査に限らず、開発経済学全般、留学経験、シンクタンク勤務経験の話も可能です。また、ご要望を伺いつつ、インド現地調査の際にお土産を購入してきます!(※2000~3000円程度の予算の予定)
研究報告レポート(PDF版) / 現地の調査動画の公開 / オンラインコミュニティ(Slack)参加権 / オンラインセミナー参加権 / 個別ディスカッション権+インドお土産
4人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
講演会、授業、イベント、企業様の打ち合わせなどに出張いたします。テーマは、インドを含めたアジア各国での水衛生の状況、水ビジネスの可能性、開発援助のあり方などについて、ご要望に応じて柔軟に対応できます。(※オンラインではなく対面の場合は、旅費・宿泊費等は別途頂戴いたしますのでご留意ください)
研究報告レポート(PDF版) / 現地の調査動画の公開 / オンラインコミュニティ(Slack)参加権 / オンラインセミナー参加権 / 出張講演
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
研究報告レポート(PDF版)
21
人
が支援しています。
(数量制限なし)
現地の調査動画の公開 他
53
人
が支援しています。
(数量制限なし)
オンラインコミュニティ(Slack)参加権 他
37
人
が支援しています。
(数量制限なし)
オンラインセミナー参加権 他
6
人
が支援しています。
(数量制限なし)
個別ディスカッション権+インドお土産 他
4
人
が支援しています。
(数量制限なし)
出張講演 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)