本日、皆様方のご支援により、ついに目標金額に達成することができました。本当にありがとうございました。これまで約50日間、のべ70名もの方々に貴重な研究資金と何よりも激励のお言葉を賜り、大変貴重な経験をさせて頂きましたことを、改めて御礼申し上げます。今後とも本研究の進捗を長い目で見守って頂ければ幸いです。引き続き、よろしくお願い致します。
光を持ち運んで、好きなところで好きなときに使えるようになったら、世界はどう変わるでしょうか? 私がこの研究で目指すのは、受光から発光までの時間を人間が好きに調整できる物質を作ることです。必要になったら発光させ、いらなくなったら止める。さらにその強さも調整できるようになれば、言うことありません。光を水や電気と同じように自由に使えるようになります。しかも水や電気と違い、配管や電線がいりません。エネルギーも電気などに比べると桁違いに大きいので、電気や熱に変えて使ってもかなりのことができそうです。でも、これだけではありません。
光にはもうひとつ重要な、目に見えない形での貢献があります。それは現代社会の情報処理と通信を担っているという役割です。携帯電話、リモコン、インターネット、自動ドアなどのセンサー、ビデオカメラの心臓部分、暗くなったら自動で点灯する屋外灯など、挙げていけばきりがありません。これらの装置や技術はすべて電気を併用しています。その理由のひとつは、回路でいうとコンデンサーに相当する、光を蓄える部品が存在しないからです。
光を蓄える部品ができれば、現在電気を使っている回路内の機能を光で代用できるかもしれません。“電源”(動力源)も電池ではなく、光を蓄えておいてそれを使うようになるかもしれません。そうなれば、配線は不要になり、消費電力も下がり、高速・小型軽量化が進むかもしれません。太陽電池で動く製品のように、充電ではなく受光で動くようになるかもしれません。電子機器のイメージも使い方もまったく変わり、世の中がガラッと変わるイノベーション(技術革命)が期待できます。
現在でも「蓄光」という言葉はあります。これは蛍光や燐光を指しています。夜間、道路標識の白い文字がヘッドライトに照らされて一瞬光ったり、縁日で売っている腕輪がぼんやりと黄緑色や青白く光って見えたりする、あれです。
これらの発光現象は、物質が光を浴びた直後にすぐに光を放出しています。受光から発光までを秒単位で表すと、分母に0が9個から12個も並ぶほど短い時間です。ただしものによっては、弱い光を少しずつ出すので光り続ける時間は長くなります。それでも100分の1秒程度です。いずれにせよ、この光を止めたり、その強さを調整したりすることはできません。今、世の中にある物質では、文字通りの意味での“蓄光”はできないわけです。
また最近普及してきた太陽電池は、太陽から受けた光のエネルギーを瞬時に電気に変えています。その電気も自身の中に蓄えることはできず、その場ですぐに消費しなければなりません。その名前に反し、太陽(光)を蓄えることはできないのです。
この研究のきっかけとなったのは、ひとつの失敗例でした。もともと私は、紫外線などの光を当てると電気を流すようになる物質や磁石になるような物質を開発していました。その一連の候補として合成した新物質の中に、今回の研究対象「物質A」が入っていました。この物質Aは、光を当てても電気も流さず、磁石にもならず、典型的な失敗例に見えました。しかしその“敗因”をいろいろ調べていくうちに、「この物質が光として吸収したエネルギーはどこに行ったのだろう」という疑問が湧いてきました。
物質のさまざまな性質を決めているのは電子です。身の回りの大抵の物質中では、この電子が2個ずつ対になっています。たまに1個だけの電子が見つかることがありますが、これを不対電子と言います。不対電子は通常不安定で、化学反応などを起こし、それをきっかけにペアになる相手を探して対(電子対)を形成しようとします。
物質に光が当たっても、この不対電子が生じることがあります。しかしたいていは一瞬(10億分の1秒~100万分の1秒程度)で、元の電子対に戻ってしまいます。そうしたなか物質Aは紫外線を浴びた後、完全に元に戻るまで1週間ぐらいかかることがわかりました。エネルギーの観点から言うと、物質Aは紫外線から受け取ったエネルギーを1週間かけて少しずつ熱として周囲に放出しているということです。
物質Aは、2種類の分子からできていて、構成元素としては金(Au)や硫黄、炭素、窒素と水素を含みます。いわゆる有機物や金属錯体と呼ばれる物質に属します。こうした特徴を持つ物質はいくらでもありますが、この物質が“変わっている”のは、金を含む方の分子が2通りの形(分子構造)を持っていることです。形が違うと性格も異なります。いわば、ジギルとハイドです。物質Aはこの2種類の構造の比率を変えることで、物質全体のエネルギーを調整する能力を持っています。
たとえば周囲の温度が上がると、物質は周りから熱を受け取り、エネルギーが上がります。そうすると物質Aの場合、2種類の構造の比率を変えます。周囲から冷やされても同じです。ここで注目したのは、こうした構造変化が光を当てても起こることです。これを利用すれば、温度変化と受光を組み合わせて、光のエネルギーを分子の変形として蓄えられるのではと考えたわけです。
光を貯めるという夢の実現に向けては、重要な課題がいくつも残されています。次の一手は、物質Aを手掛かりにこの現象を示しそうな候補物質を片っ端から合成して、実際の性質を調べることです。泥臭い方法に見えるかもしれませんが、これが一番近道です。物質Aを構成している2種類の分子の特徴を系統的に少しずつ変えていき、目的に対して性能が上がったのか下がったのかを比べます。こうして光のエネルギーの貯蔵を可能にする物質の条件を見出します。
物質Aは紫外光を浴びると、そのエネルギーの一部(約数%)を約1週間蓄えることができるということがわかっています。この先克服すべき課題は、浴びた光のうち蓄えられる割合を増やし、この保存期間をもっと長くすることです。また紫外光以外も蓄えられるような物質を見つける必要があります。そうすれば、光のエネルギーを電気や熱としてさまざまな場面に利用できるようになります。
クラウドファンディングでご支援いただいた資金は、候補物質を合成するための試薬や、ろ紙などの理化学消耗品の購入に充てさせていただきます。また得られた新物質の性質を調べるための各種測定実験に使う液体窒素や石英試料管なども消耗品なので、なくなり次第適宜購入します。ガラス器具や実験装置もときどき壊れるため、その修理代が必要になります。学内にない装置が必要になった場合は、他大学などに出向いて実験に行きます。その際の交通費や滞在費にも充当します。また学内の共通機器を使う際の利用料金、論文を投稿する際に掛かる掲載料や英文校正料などもこの研究費から支出させていただきます。
私が携わっている理学という分野は基礎研究のなかでも最も基礎的な役割を担う分野で、まだ見つかっていない自然界の法則や新しい現象を日々探しています。そこから得られた研究成果は、他の研究にも役立ち、やがて世界を根本から変える力を持っています。たとえば電磁気学を知らない人でも、毎日電気のお世話にならない人はいないでしょう。もし電気がなかったら、今の高度な先端技術に支えられた社会はありえないわけです。長期的視野に立った基礎研究こそ、世の中に真の幸福や技術革新をもたらす可能性を秘めていると、私は信じています。
ここにご紹介した研究はまだ生まれたての赤ちゃんのようなテーマで、この先には前途洋々たる未来が広がっています。しかし同時に、長く険しい道のりになる可能性も覚悟しなければなりません。この研究は世界中で私しか行なっていないため、私自身が諦めてしまったらそこで終わりです。ですので、この研究はどうしても続けたい、行けるところまで行ってみたいと思っています。ぜひ応援をよろしくお願いいたします。
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本プロジェクトは、「異端」をテーマに公募を実施した「<Beyond Next Ventures × academist>マッチングファンド」第二弾に選出されたものです。クラウドファンディングが成立した場合、Beyond Next Ventures株式会社とacademistの特別マッチングファンドとして、60万円の追加支援を実施いたします。
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時期 | 計画 |
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2019年10月 | クラウドファンディング挑戦 |
2020年1月 | 研究開始 |
2020年1月 | リターンの実施開始 |
2020年9月 | 国内学会での発表(分子科学討論会) |
2020年12月 | 国際会議での発表(環太平洋化学国際会議) |
2021年3月 | 論文投稿(材料系の学術雑誌) |
研究の詳細な進捗などをレポートにまとめてお送りします。応援よろしくお願いいたします! ※画像はイメージです。
研究報告レポート(PDF版)
36人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
私たちの研究室のHPに、感謝の気持ちを込めてお名前を掲載させていただきます。応援よろしくお願いいたします!
Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
30人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
サイエンスカフェにご招待いたします。日時は応相談で、場所は愛媛大学理学部本館(愛媛県松山市文京町2-5)を予定しています。当日は本研究についてお話させていただきますので、ご参加をお待ちしています! ※ご参加頂くに当たっての交通費・宿泊費などはお支払できません。予めご了承ください。当日ご参加いただけない場合には、後日資料を共有させていただきます。
サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
11人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
2020年9月14日~17日の第14回分子科学討論会(大阪大学)にて本研究に関する発表をする際、謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料(電子版)を送付いたします。お力をお貸しください。応援よろしくお願いいたします! ※学会発表が叶わなかった場合、その後の学会発表資料の謝辞にお名前を掲載いたします。
学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
8人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究成果を発表する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。 ※研究成果をまとめられるよう努力いたしますが、論文の掲載に至らない可能性もございますこと、ご承知おきいただけますと幸いです。
論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
2人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
私たちの研究室をご案内いたします。実験をしているところの見学や実際にこの研究に使っている装置の説明をさせていただきます。日時は応相談で、場所は愛媛大学理学部本館(愛媛県松山市文京町2-5)を予定しています。ご参加をお待ちしています! ※ご参加頂くに当たっての交通費・宿泊費などはお支払できません。予めご了承ください。当日ご参加いただけない場合には、skype等のビデオ通話で意見交換をさせていただきます。
研究室見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
講演会に出張いたします。日時と場所は応相談です。本研究の内容や成果について、ご要望にお応えする形で講演させていただきます! ※旅費・宿泊費等は別途頂戴いたしますのでご留意ください。
出張講演 / 研究室見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本プロジェクトは、「異端」をテーマに公募を実施した「<Beyond Next Ventures × academist>マッチングファンド」第二弾に選出されたものです。チャレンジ期間内にクラウドファンディングが成立したため、Beyond Next Ventures株式会社とacademistの特別マッチングファンドとして、60万円の追加支援を実施いたします。
Beyond Next Ventures株式会社による特別追加支援
1人のサポーターが支援しています (限定 1 個)
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研究報告レポート(PDF版)
36
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(数量制限なし)
Webサイトにお名前掲載 他
30
人
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(数量制限なし)
サイエンスカフェ参加権 他
11
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学会発表資料の謝辞にお名前掲載 他
8
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論文謝辞にお名前掲載 他
2
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研究室見学ツアー 他
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出張講演 他
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Beyond Next Ventures株式会社による特別追加支援 他
1
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