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光を「保存」できる新物質を開発したい!

Profile
内藤俊雄
愛媛大学 / 教授
支援総額: 371,400 円
目標金額: 600,000 円
達成率
61 %
サポーター
47
残り時間
32
支援する
academist スタッフからの一言
偶然見つけた物質を手掛かりに、光のエネルギー貯蔵を可能にする条件を探る

これだけ世の中の技術が進んでも、光を蓄えて好きなときに好きなぶんだけ利用するということは、夢のまた夢です。内藤さんがこの研究で目指すのは、受光から発光までの時間を調整できる「光を保存できる物質」を作ること。光は電気や熱などに換えて利用できるため、光を保存して持ち運びできるようになることの価値は計り知れないほど大きいといえます。今回のプロジェクトでは、光を貯めるという夢の実現に向けた第一歩として、内藤さんが普段の研究のなかで偶然見つけた"変わった"物質を手がかりに候補物質を合成し、光のエネルギー貯蔵を可能にする条件を探っていきます。

Academist

academist編集部

光を蓄えられるようになると、世界はどう変わるか?

光を持ち運んで、好きなところで好きなときに使えるようになったら、世界はどう変わるでしょうか? 私がこの研究で目指すのは、受光から発光までの時間を人間が好きに調整できる物質を作ることです。必要になったら発光させ、いらなくなったら止める。さらにその強さも調整できるようになれば、言うことありません。光を水や電気と同じように自由に使えるようになります。しかも水や電気と違い、配管や電線がいりません。エネルギーも電気などに比べると桁違いに大きいので、電気や熱に変えて使ってもかなりのことができそうです。でも、これだけではありません。

光にはもうひとつ重要な、目に見えない形での貢献があります。それは現代社会の情報処理と通信を担っているという役割です。携帯電話、リモコン、インターネット、自動ドアなどのセンサー、ビデオカメラの心臓部分、暗くなったら自動で点灯する屋外灯など、挙げていけばきりがありません。これらの装置や技術はすべて電気を併用しています。その理由のひとつは、回路でいうとコンデンサーに相当する、光を蓄える部品が存在しないからです。

光を蓄える部品ができれば、現在電気を使っている回路内の機能を光で代用できるかもしれません。“電源”(動力源)も電池ではなく、光を蓄えておいてそれを使うようになるかもしれません。そうなれば、配線は不要になり、消費電力も下がり、高速・小型軽量化が進むかもしれません。太陽電池で動く製品のように、充電ではなく受光で動くようになるかもしれません。電子機器のイメージも使い方もまったく変わり、世の中がガラッと変わるイノベーション(技術革命)が期待できます。

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現在の蓄光物質や太陽電池の限界

現在でも「蓄光」という言葉はあります。これは蛍光や燐光を指しています。夜間、道路標識の白い文字がヘッドライトに照らされて一瞬光ったり、縁日で売っている腕輪がぼんやりと黄緑色や青白く光って見えたりする、あれです。

これらの発光現象は、物質が光を浴びた直後にすぐに光を放出しています。受光から発光までを秒単位で表すと、分母に0が9個から12個も並ぶほど短い時間です。ただしものによっては、弱い光を少しずつ出すので光り続ける時間は長くなります。それでも100分の1秒程度です。いずれにせよ、この光を止めたり、その強さを調整したりすることはできません。今、世の中にある物質では、文字通りの意味での“蓄光”はできないわけです。

また最近普及してきた太陽電池は、太陽から受けた光のエネルギーを瞬時に電気に変えています。その電気も自身の中に蓄えることはできず、その場ですぐに消費しなければなりません。その名前に反し、太陽(光)を蓄えることはできないのです。

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偶然見つけた、光を「長く」貯蔵する新物質

この研究のきっかけとなったのは、ひとつの失敗例でした。もともと私は、紫外線などの光を当てると電気を流すようになる物質や磁石になるような物質を開発していました。その一連の候補として合成した新物質の中に、今回の研究対象「物質A」が入っていました。この物質Aは、光を当てても電気も流さず、磁石にもならず、典型的な失敗例に見えました。しかしその“敗因”をいろいろ調べていくうちに、「この物質が光として吸収したエネルギーはどこに行ったのだろう」という疑問が湧いてきました。

物質のさまざまな性質を決めているのは電子です。身の回りの大抵の物質中では、この電子が2個ずつ対になっています。たまに1個だけの電子が見つかることがありますが、これを不対電子と言います。不対電子は通常不安定で、化学反応などを起こし、それをきっかけにペアになる相手を探して対(電子対)を形成しようとします。

物質に光が当たっても、この不対電子が生じることがあります。しかしたいていは一瞬(10億分の1秒~100万分の1秒程度)で、元の電子対に戻ってしまいます。そうしたなか物質Aは紫外線を浴びた後、完全に元に戻るまで1週間ぐらいかかることがわかりました。エネルギーの観点から言うと、物質Aは紫外線から受け取ったエネルギーを1週間かけて少しずつ熱として周囲に放出しているということです。

物質Aは、2種類の分子からできていて、構成元素としては金(Au)や硫黄、炭素、窒素と水素を含みます。いわゆる有機物や金属錯体と呼ばれる物質に属します。こうした特徴を持つ物質はいくらでもありますが、この物質が“変わっている”のは、金を含む方の分子が2通りの形(分子構造)を持っていることです。形が違うと性格も異なります。いわば、ジギルとハイドです。物質Aはこの2種類の構造の比率を変えることで、物質全体のエネルギーを調整する能力を持っています。

たとえば周囲の温度が上がると、物質は周りから熱を受け取り、エネルギーが上がります。そうすると物質Aの場合、2種類の構造の比率を変えます。周囲から冷やされても同じです。ここで注目したのは、こうした構造変化が光を当てても起こることです。これを利用すれば、温度変化と受光を組み合わせて、光のエネルギーを分子の変形として蓄えられるのではと考えたわけです。

光を貯めるという夢の実現に向けては、重要な課題がいくつも残されています。次の一手は、物質Aを手掛かりにこの現象を示しそうな候補物質を片っ端から合成して、実際の性質を調べることです。泥臭い方法に見えるかもしれませんが、これが一番近道です。物質Aを構成している2種類の分子の特徴を系統的に少しずつ変えていき、目的に対して性能が上がったのか下がったのかを比べます。こうして光のエネルギーの貯蔵を可能にする物質の条件を見出します。

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研究費サポートのお願い

物質Aは紫外光を浴びると、そのエネルギーの一部(約数%)を約1週間蓄えることができるということがわかっています。この先克服すべき課題は、浴びた光のうち蓄えられる割合を増やし、この保存期間をもっと長くすることです。また紫外光以外も蓄えられるような物質を見つける必要があります。そうすれば、光のエネルギーを電気や熱としてさまざまな場面に利用できるようになります。

クラウドファンディングでご支援いただいた資金は、候補物質を合成するための試薬や、ろ紙などの理化学消耗品の購入に充てさせていただきます。また得られた新物質の性質を調べるための各種測定実験に使う液体窒素や石英試料管なども消耗品なので、なくなり次第適宜購入します。ガラス器具や実験装置もときどき壊れるため、その修理代が必要になります。学内にない装置が必要になった場合は、他大学などに出向いて実験に行きます。その際の交通費や滞在費にも充当します。また学内の共通機器を使う際の利用料金、論文を投稿する際に掛かる掲載料や英文校正料などもこの研究費から支出させていただきます。

私が携わっている理学という分野は基礎研究のなかでも最も基礎的な役割を担う分野で、まだ見つかっていない自然界の法則や新しい現象を日々探しています。そこから得られた研究成果は、他の研究にも役立ち、やがて世界を根本から変える力を持っています。たとえば電磁気学を知らない人でも、毎日電気のお世話にならない人はいないでしょう。もし電気がなかったら、今の高度な先端技術に支えられた社会はありえないわけです。長期的視野に立った基礎研究こそ、世の中に真の幸福や技術革新をもたらす可能性を秘めていると、私は信じています。

ここにご紹介した研究はまだ生まれたての赤ちゃんのようなテーマで、この先には前途洋々たる未来が広がっています。しかし同時に、長く険しい道のりになる可能性も覚悟しなければなりません。この研究は世界中で私しか行なっていないため、私自身が諦めてしまったらそこで終わりです。ですので、この研究はどうしても続けたい、行けるところまで行ってみたいと思っています。ぜひ応援をよろしくお願いいたします。

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本プロジェクトは、「異端」をテーマに公募を実施した「<Beyond Next Ventures × academist>マッチングファンド」第二弾に選出されたものです。クラウドファンディングが成立した場合、Beyond Next Ventures株式会社とacademistの特別マッチングファンドとして、60万円の追加支援を実施いたします。
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Support
挑戦者の自己紹介

愛媛大学大学院理工学研究科教授の内藤と申します。出身は東京で、筑波大学附属駒場高校、東京大学(理科一類)、同大学理学部(化学科)、同大学院理学系研究科(化学専攻 修士課程)を出て、東邦大学理学部(化学科 助手、講師)、北海道大学大学院理学研究科(化学専攻 講師、准教授)を経て、現在に至っています。大学の卒業研究以来一貫して、有機分子を用いた伝導性物質や磁性物質の開発を行ってきました。なぜ有機分子にこだわるかと言うと、もともと伝導性や磁性には縁遠い物質ですが、物質合成のノウハウが蓄積されており、可能性が未知という意味でもやりがいがあったからです。今回の研究もその流れで思いついたテーマです。小さいころから科学者にあこがれ、身の回りの不思議なことに何でも興味を持ち、納得するまで考えて来ました。今も研究に没頭しています。当該研究の実績を示すものとしては、北海道発明協会会長賞(H27年度)、平成27年度日本化学会学術賞、第3回分子科学国際学術賞(H30年度)など、全部で10件の受賞歴があります。

Profile

内藤俊雄

研究計画

時期 計画
2019年10月 クラウドファンディング挑戦
2020年1月 研究開始
2020年1月 リターンの実施開始
2020年9月 国内学会での発表(分子科学討論会)
2020年12月 国際会議での発表(環太平洋化学国際会議)
2021年3月 論文投稿(材料系の学術雑誌)

リターンの説明

1,000 円 (税抜)
注目のリターン: 研究報告レポート(PDF版)
研究報告レポート(PDF版)
1000 rev

研究の詳細な進捗などをレポートにまとめてお送りします。応援よろしくお願いいたします! ※画像はイメージです。

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17人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

5,000 円 (税抜)
注目のリターン: Webサイトにお名前掲載
Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
5000

私たちの研究室のHPに、感謝の気持ちを込めてお名前を掲載させていただきます。応援よろしくお願いいたします!

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17人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

10,000 円 (税抜)
注目のリターン: サイエンスカフェ参加権
サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
10000

サイエンスカフェにご招待いたします。日時は応相談で、場所は愛媛大学理学部本館(愛媛県松山市文京町2-5)を予定しています。当日は本研究についてお話させていただきますので、ご参加をお待ちしています! ※ご参加頂くに当たっての交通費・宿泊費などはお支払できません。予めご了承ください。当日ご参加いただけない場合には、後日資料を共有させていただきます。

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8人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

30,000 円 (税抜)
注目のリターン: 学会発表資料の謝辞にお名前掲載
学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
30000

2020年9月14日~17日の第14回分子科学討論会(大阪大学)にて本研究に関する発表をする際、謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料(電子版)を送付いたします。お力をお貸しください。応援よろしくお願いいたします! ※学会発表が叶わなかった場合、その後の学会発表資料の謝辞にお名前を掲載いたします。

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4人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

50,000 円 (税抜)
注目のリターン: 論文謝辞にお名前掲載
論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
50000

本研究成果を発表する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。 ※研究成果をまとめられるよう努力いたしますが、論文の掲載に至らない可能性もございますこと、ご承知おきいただけますと幸いです。

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1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

100,000 円 (税抜)
注目のリターン: 研究室見学ツアー
研究室見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
100000

私たちの研究室をご案内いたします。実験をしているところの見学や実際にこの研究に使っている装置の説明をさせていただきます。日時は応相談で、場所は愛媛大学理学部本館(愛媛県松山市文京町2-5)を予定しています。ご参加をお待ちしています! ※ご参加頂くに当たっての交通費・宿泊費などはお支払できません。予めご了承ください。当日ご参加いただけない場合には、skype等のビデオ通話で意見交換をさせていただきます。

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0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

200,000 円 (税抜)
注目のリターン: 出張講演
出張講演 / 研究室見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
200000

講演会に出張いたします。日時と場所は応相談です。本研究の内容や成果について、ご要望にお応えする形で講演させていただきます! ※旅費・宿泊費等は別途頂戴いたしますのでご留意ください。

支援する

0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

このプロジェクトは、 2019年10月24日 10時00分 から 2019年12月23日 19時00分 までの間に目標金額600,000円を達成した場合のみ、決済が確定します。
お支払について
お支払にはクレジットカード(VISA, Mastercard)をご利用頂けます。
Available cards
銀行振込について

銀行振込をご希望の方は下記のフォームよりご連絡ください。 フォームへ

セキュリティについて

当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。

1,000 円(税抜)

研究報告レポート(PDF版)

1000 rev

17 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する
5,000 円(税抜)

Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)

5000

17 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する
10,000 円(税抜)

サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)

10000

8 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する
30,000 円(税抜)

学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)

30000

4 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する
50,000 円(税抜)

論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)

50000

1 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する
100,000 円(税抜)

研究室見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)

100000

0 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する
200,000 円(税抜)

出張講演 / 研究室見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / Webサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)

200000

0 人 が支援しています。
(数量制限なし)

支援する

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