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SUCCESS
柏木舞/髙坂康雅
医療法人ラック、心理士/和光大学、教授
Pledged: 636,000 JPY
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Comment from academist staff
親の離婚を経験した子どもへの適切な支援に向けて

miho otsuka

2016年の離婚件数がおよそ21万組にものぼるなか、親の離婚を経験する子どもが多くいます。子の権利・福祉の観点から面会交流の取り決めが推奨されていますが、多くの場合、その取り決めは行われていません。理由のひとつとして、子どもが同居親の思いと病的に同一化し別居親を拒絶する「片親疎外症候群」が提唱されていますが、この概念に対する実証的な研究は進んでおらず、子どもに必要な支援の提供までは至っていないのが現状です。今回のプロジェクトでは実証的な研究の第一歩として、片親疎外症候群の程度を把握するアセスメントツールの作成を目指します!

同居親の思いと病的に同一化し、別居親を拒絶してしまう子どもたち

厚生労働省『平成30年 我が国の人口動態』によると平成28年(2016年)の離婚件数は21万6798組で、離婚件数及び離婚率は平成14年(2002年)以降減少傾向にあります。このうち、12万6546組(全体の58.1%)には未成年の子がおり、親の離婚を経験した未成年の子の数は21万8454人にものぼっています。

日本では、婚姻中は共同親権ですが、離婚後は父親か母親のどちらかが親権をもつ単独親権となっています。「親権をどちらがもつか」というのは離婚に際しての協議事項としてよく聞くもののひとつではないでしょうか。これは子どもにとっても重要なものといえます。
 
親権とともに離婚後の子どもについて問題になっているのが、面会交流の取り決めです。面会交流とは離婚後に別居している親(別居親あるいは非監督親)と子どもが会うことで、子が親に会う権利として保障されるべきものであるとともに、子の福祉の観点からも行うことが推奨されています。しかし、厚生労働省『平成28年度 全国ひとり親世帯等調査』によると、面会交流の取り決め状況は、母子世帯の母親で24.1%、父子世帯の父親で27.3%であり、決して多い状況ではありません。同調査によると、面会交流の取り決めを行わない理由としては、「相手と関わり合いたくない」「相手が面会交流を希望しない」「子が会いたがらない」などがあげられています。このような理由があげられる背景には、再婚や、離婚前の不和・DV、虐待などが想像されます。

一方で、離婚後子どもと同居している親(同居親あるいは監護親)が離婚した相手に対する強い嫌悪感や恐怖感をもっていて、子どもがそのような同居親の思いを汲み取って、あるいは病的に同一化して、別居親に対して拒絶的な態度をとっていることも考えられます。「同居親の別居親に対する嫌悪感や恐怖感と病的に同一化して別居親を疎外ないし拒絶する現象」(青木聡、立正大学、2010)は「片親疎外症候群」と呼ばれています。

議論の途中にある「片親疎外症候群」という概念

片親疎外症候群は、Gardnerによって1980年代に提唱された概念です。欧米では1970年頃から親権・監護権紛争や面会交流紛争が増加しており、それに伴って片親疎外症候群に関する事例が報告されるようになっています。1992年、Gardnerはこれらの事例などをもとに片親疎外症候群の症状として8つを列挙しました。たとえば片親疎外症候群を示す子どもは、監護親に言われたことを自分の考えとして受け入れ、非監護親を非難したり中傷したりし、罪悪感などを抱くことなく、面会も拒絶するようになるとされています。また、2003年にWarshakは片親疎外症候群の中核的な要素として、(1)別居親に対する一連の誹謗中傷や拒絶、(2)不合理な理由による拒絶、(3)同居親の言動に影響された結果としての拒絶、の3つをあげています。

一方で、片親疎外症候群に対する批判的な見解もあります。2001年にKelly, Johnstonらは、片親疎外症候群に関する論文の多くが事例報告であり、実証的な研究が行われていないことを指摘しています。理論的な議論が進んでいる欧米においても、片親疎外症候群の実証的な検証やアセスメントツールの開発などは行われていません。 また、2004年のRuedaによる報告では、片親疎外症候群に関する査定者間信頼性は低いことが示されていて、専門家の間でも片親疎外症候群を査定する方法・手続きに関しては合意が得られているとはいえない状況にあります。

片親疎外症候群の客観的な把握と、支援方策の立案に向けて

片親疎外症候群という概念に対しては未だに賛否両論がありますが、親と子の関係崩壊の深刻さと専門家の介入の必要性を訴えた重要な概念であるといえます。今回のプロジェクトで私たちは、片親疎外症候群の程度を把握するアセスメントツールの作成を目指します。アセスメントツールの構成要因には、「別居親への拒否感」と「別居親に対するアンビバレントな感情」を用います。これらは2006年にGardnerにより、片親疎外症候群を形成する2つの主要因として報告されたものです。このアセスメントツールは、児童期後期(小学校高学年)以降が自ら回答する自己報告式と、幼児・児童を対象に、支援者等が観察などをもとに回答する他者報告式の2パターンを作成することを目指しています。

具体的には、自己報告式の場合は、親の離婚を経験した子ども本人を対象とした質問紙調査を実施し、心理学における尺度作成の手順(因子分析、信頼性・妥当性の検証など)をとおして、アセスメントツールを作成していきます。また、支援者等が回答する他者報告式は、自己報告式をもとに項目を作成し、支援者等を対象に実際に関わっている親の離婚を経験した子どもについての回答を収集して、同様の手順をとおして作成していきます。

現在の日本では、親の離婚やそれに伴う子どもの親からの離別は、貧困や虐待などへの問題意識とも関連して、心理臨床、児童福祉、法律や行政など多様な視点から関心が高まっています。2018年には「日本離婚・再婚家族と子ども研究学会」が設立され、親の離婚を経験した子どもに関する実証的な研究や支援の方法およびその効果測定についての機運がますます高まると考えられます。そのようななかで、片親疎外症候群の程度を客観的に把握するアセスメントツールを開発することは、実証的な知見を蓄積するという研究の観点からみても、また、親の離婚を経験した子どもの心理状態を適切に把握し、必要な支援を行う方策を立てるうえでも、急務であるといえます。

Why we need your support

本プロジェクトにおいて最大の課題は、自己報告式アセスメントツールを作成する際の対象者のデータを集めることです。アセスメントツールを作成するときには、親の離婚を経験した子ども(中学生~大学生程度)のデータを数百人程度分集める必要がありますが、これは一研究者の人脈などで行うことは極めて困難です。ある特徴を有した対象者のデータを集める方法としてはインターネット調査会社によるWeb調査があり、心理学の研究などでも広く用いられるようになっていますが、その実施にはある程度の金額が必要になり、捻出が困難な状況にあります。

そこで、親の離婚を経験した子どもの心理状態について、片親疎外症候群の観点から把握するアセスメントツール(特に自己報告式)を作成するために、クラウドファンディングに挑戦することにしました。支援していただいたお金は、Web調査の資金として活用させていただきます。

本プロジェクトを立ち上げることで、親の離婚を経験した子どもについて多くの方々に関心をもっていただきたいと思っています。そして、アセスメントツールが開発されることにより、片親疎外症候群の実証的な研究が活発になるとともに、親の離婚を経験した子どもに対して適切な支援が提供されるための有益な情報を示すことができるようになると考えています。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。

Profile

柏木舞、髙坂康雅

はじめまして。柏木 舞(かしわぎ まい)です。駒沢女子大学大学院修士課程修了し、臨床心理士資格をもっています。卒業論文では、髙坂先生の指導のもと、親の離婚を経験した子どもたちが親の離婚を受け入れていくプロセスについて研究し、修士論文ではそのプロセスで起こる親子間交流について調査しました。ずっと親の離婚を経験した子どもについて関心を持っていて、いずれは本研究で作成されるアセスメントツールをもとに、そのような子どもたちの支援を行っていきたいです。

はじめまして。髙坂 康雅(こうさか やすまさ)と申します。和光大学現代人間学部の教授で、公認心理師でもあります。専門は発達心理学で、青年期を中心とした自我発達や友人関係・恋愛関係の研究、また小・中学生の不登校支援を行っています。これまで行ってきた尺度作成の知識・経験をもとに、柏木さんのアセスメントツール作成を支援していきます。

Project timeline

Date Plans
2019年8月 クラウドファンディング挑戦
2019年11月 自己報告式ツール作成のためのWeb調査の実施
2020年2月 他者報告式ツール作成のための調査開始
2020年秋以降 学会発表、論文の執筆・投稿

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You may provide additional support in addition to the amount of your return. No sales tax will be charged on the additional support.
1,100 JPY tax included
Featured : 研究報告記事にお名前掲載

本研究の調査報告はacademistのオウンドメディアであるacademist Journal(https://academist-cf.com/journal/)に掲載する予定です。その際、感謝の気持ちを込めてみなさまのお名前を掲載させていただきます。なお掲載に至らなかった場合には、調査報告レポートをメールにてお送りします。(本プロジェクトが達成した場合、決済日は10月23日以降の予定です。消費税率が10%となる可能性があります。)

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研究報告記事にお名前掲載

15 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)

5,500 JPY tax included
Featured : 学会発表資料の謝辞にお名前掲載

2020年内に日本国内で開催される学会にて、本研究の内容を発表する予定です。学会発表の際の資料(パワーポイントや配布資料)にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料等(PDF版)を送付いたします。(本プロジェクトが達成した場合、決済日は10月23日以降の予定です。消費税率が10%となる可能性があります。)

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学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告記事にお名前掲載

18 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)

11,000 JPY tax included
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論文の謝辞にお名前(ご希望される方にはご所属もあわせて)を掲載させていただきます。(本プロジェクトが達成した場合、決済日は10月23日以降の予定です。消費税率が10%となる可能性があります。)

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論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告記事にお名前掲載

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33,000 JPY tax included
Featured : サイン入り著書

私の著書をサイン入りでお送りいたします。著書は下記からいずれか1点をお選びになれます。『恋愛心理学特論』(福村出版)、『思春期における不登校支援の理論と実践』(ナカニシヤ出版)、『レクチャー青年心理学』(風間書房)、『ノードとしての青年期』(ナカニシヤ出版)。(本プロジェクトが達成した場合、決済日は10月23日以降の予定です。消費税率が10%となる可能性があります。)

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サイン入り著書 / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告記事にお名前掲載

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55,000 JPY tax included
Featured : 1on2ディスカッション

私たち2人とスカイプなどのビデオ通話で意見交換をさせていただきます。 ※都合によっては、髙坂のみで対応させていただくこともあります。 (本プロジェクトが達成した場合、決済日は10月23日以降の予定です。消費税率が10%となる可能性があります。)

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1on2ディスカッション / サイン入り著書 / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告記事にお名前掲載

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110,000 JPY tax included
Featured : 出張講演

講演会に出張して、片親疎外症候群を含め私たちでお話しできる内容について講演いたします。内容については、事前にご相談のうえ、ご要望にお応えする形で講演させていただきます! ※旅費・宿泊費等は別途頂戴いたしますのでご留意ください。 (本プロジェクトが達成した場合、決済日は10月23日以降の予定です。消費税率が10%となる可能性があります。)

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出張講演 / 1on2ディスカッション / サイン入り著書 / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告記事にお名前掲載

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Supporters will be charged the funding amount only if the project reaches the funding goal (JPY 400,000) before 19:00 on October 23, 2019 (JST: GMT+9).
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Credit cards, bank transfer, convenience store payment, Pay-easy and PayPal are available
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Securities

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