皆様のおかげで目標金額を達成することができました。ご支援くださった皆様、情報周知にご協力下さった皆様、誠にありがとうございます。プロジェクトへの応援メッセージや「ワークショップにも行きたい!」という声もたくさんいただきました。心より感謝申し上げます。
ご支援いただいたお金は、ワークショップの開催資金として使わせていただきます。
プロジェクト対象となっている、一般向け公開ワークショップ「特殊唱法ワークショップーー現代音楽を自分の声と身体で体験する」は、2019年5月25日(土)午後に東京大学駒場キャンパスで開催されることが決定しました。
開催の詳細(開始時間、会場、参加登録等)につきましては、こちらのプロジェクトページの進捗報告でも追って報告させていただきます。
プロジェクトの残りの期間では、【セカンドゴール】を40万円に設定し、駒場ヴォイス・スタディーズ研究会(ワークショップの主催団体)の今後の活動資金を集めることを目的に、ひきつづきご支援をお願いしたく存じます。
当該研究会では、これまでにも「声と芸術」や「声と身体」をテーマにしたシンポジウムやワークショップを継続的に企画・運営してきました。しかし、活動で発生する会場利用費や資料印刷費は会員個人の持ち出しに頼っているのが現状です。
過去の活動の一例:
http://www.musicology-japan.org/east/nl/eastnl46.pdf
ご支援いただいたお金は、研究会が主催する企画に係る費用を賄うために使用させていただきます。
今後もこうした活動を継続していくために、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
荒井俊
みなさんは現代音楽と聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。「不協和音ばかりで美しくない」、「音楽の専門知識がないと理解できないような、難解な音楽」といった認識が一般的かもしれません。聴いているうちにメロディをつかむことができたり、音の重なりのなかに美しいハーモニーを見出したりできるような、私たちに馴染みのある音楽とはだいぶ異なるものです。
現代音楽は、芸術音楽(いわゆるクラシック音楽)のひとつです。「現代」というだけあって、われわれと同時代に作られた音楽は現代音楽にあたりますが、どこまで遡って現代音楽に含めるかは議論がわかれます。ドビュッシーやシェーンベルクに始まる20世紀音楽を含める場合もあれば、第二次大戦後の音楽を指す場合もあります。現代音楽といっても、その技法や様式はさまざまですが共通しているのは、その前の時代までの音楽に対して、それまでやられてこなかった新しい試みをしようと生み出された作品であるということです。
ゆえに、私たちが聴き慣れた音楽にみられる音楽的諸条件(旋律、リズム、和音)がわかりやすい形では現れていないか、あるいはまったく含まれておらず、現代音楽を聴き慣れない人にとっては複雑で難解な音楽に感じられたり、ときに「音楽」にすら感じられなかったりすることがあります。実際に、現代音楽のコンサートに足を運ぶ人のほとんどがクラシック音楽愛好家たちのなかでもとりわけ音楽に詳しい熱心なファンたちであり、クラシック音楽に親しみのない人が現代音楽のコンサートにふらっと訪れることはほとんどないといえるでしょう。
一般の人たちを現代音楽から遠ざけている「壁」はなんでしょうか。それは暗黙のうちに求められている「分析的」な聴き方かもしれません。現代音楽ファンの多くは、自らの豊富な知識や聴取経験を駆使して、目の前の音楽を「分析的」に聴くことができます。たとえば、彼らは西洋音楽の基礎理論や作曲学的知識に精通し、音楽専門雑誌に掲載された専門家による音楽批評を熱心に(ときに批判的に)読み、自らも専門用語を使って演奏について語ります。
本来、音楽をどう聴くかは個々人の自由ですから、「分析的」な聴き方ができなくても音楽を愉しむことができるはずなのですが、これまでの「分析的」な聴き方こそが音楽に対する「まじめ」な向き合い方であるかのような風潮が、音楽の専門知識や豊富な聴取経験を持たない人たちを現代音楽のコミュニティから遠ざけてきたことは否定できません。
私の研究では、「歌声」を「音楽」からいったん切り離して、歌声の聴取を「声」をめぐる身体的経験のひとつと位置付け、音楽的諸条件の認知に先立って起こる身体の即時的反応に着目してきました。
歌声の聴取では、器楽の聴取ではほとんど感じられることがない、身体的な現象が感じられることが指摘されています。たとえば、他者が喉を強く緊張させたようなキーキーした声で高音を歌うのを聴いた聴き手が、自分自身の喉に違和感を感じる現象が挙げられます。このとき、聴き手自身が声を出しているわけではないにもかかわらず、他者のキーキーした声を聴いたことをきっかけに、自分が高音を似たような声で出したときの身体的な記憶が想起され、あたかも自らの喉が強く緊張するような感覚に襲われたのです。
こうした現象は、歌声が音響的現れ(私たちが「音」と呼ぶもの)として耳で知覚されるだけではなく、聴き手自身の身体的反応として感覚されるような現象を引き起こすことを示唆しています。しかし、こうした現象は、これまでの音楽研究領域において研究対象とされてきませんでした。なぜなら、これまでは、耳で確認可能な音響的現象や楽譜に還元可能な聴取内容のみが音楽の聴取経験であると考えられ、普遍性を見出しにくい身体的現象はあくまでも「個人的」な経験として見過ごされてきたためです。それによって、これまでの音楽聴取研究では、歌声の聴取は器楽の聴取に含まれる形となり、音楽聴取は歌声であれ器楽であれ、同じ聴取プロセスをたどると認識されてきました。
私のこれまでの研究では、声の経験を扱ういくつかの学問(現象学、身体論、音声学など)からなる学際的アプローチを通じて、他者の歌声を聴くという行為において、聴き手は意図せずとも自分が発声したときの経験に依存する身体の運動的反応を引き起こす可能性があることがわかってきました。その原身体的感覚は、発声経験をもつ人であれば、どんな人にでも起こりうるものです。
今回開催するワークショップは、これまでの現代音楽をめぐる一般的な認識をとっぱらい、現代音楽を身近なアートに感じてもらうことをめざして企画されました。これまでにも私が代表を務める駒場ヴォイス・スタディーズ研究会(共同代表者:岡野宏)が主催して、研究者や声に関わる仕事をする方を対象にこうしたワークショップを行ってきましたが、今回は一般の方々を対象とした、より規模の大きなワークショップを開催する計画です。
私たちがよく知る音楽へのアプローチは「傾聴」と「分析」です。しかし、このワークショップで行うのは「(歌う身体の)観察」と「再現」です。現代音楽の演奏を得意とするソプラノ歌手の松島理紗さんをお招きし、現代音楽作品から人間の身体の限界に挑戦するような一風変わった唱法とされる特殊唱法をとりだして、それを目の前で実践してもらいます。参加者は、その唱法がどのような発声によって生まれるものなのか、歌手の口や身体の動きを間近で観察し、さらに歌手が実践してみせた特殊唱法を、自らの身体を使って実際に発声してみることで、つかみどころがなかった現代音楽に自分の身体を通じて直接的に触れるきっかけをつくります。これは誰もが持っている楽器「声」だからこそできるアプローチです。
先に挙げた歌声の研究によれば、聴き手が歌声に対してどんな身体的反応を感じるかは、聴き手の発声経験に依存します。作品を唱法レヴェルに分解して接したとき、発話も含めた自分のこれまでの発声経験につながりをもつ声を発見できるかもしれない可能性を秘めているのも、多様な声を扱う現代音楽ならでは、です。それまでは現代音楽を聴いても、訳がわからない音のかたまりが身体をすり抜けていくような感覚だった人も、特殊唱法の「声」を自分の身体で体験することを通じて、その後は現代音楽の演奏の中に自分なりの身体的な「ひっかかり」を得ることが期待できます。
チャレンジ対象となるワークショップは、学術研究を同時代の芸術の現場に直接的に還元しようとする試みです。これまでの芸術研究は、芸術を頻度高く享受する層に直接的に還元されることが多く、最新の芸術研究がどのように進み、何を明らかにしたのかが一般に知られることはあまりなかったように思います。そうした状況は、発信する立場(研究者)にとっても受ける立場(市民)にとっても、芸術研究の社会貢献への意識をうすくすることにつながっているのではないでしょうか。
ワークショップでは、最新の学術研究の成果を体験型ワークショップという形で直接的にみなさまに還元することで、芸術研究の「今」を知っていただくことができると考えています。こうした試みがあることを広く知っていただくために、既存の文化助成ではなく、アカデミストのようなクラウドファンディングを利用してみようと考えました。
支援いただいたお金は、ワークショップの運営費および登壇アーティストへの謝金として使用されます。本ワークショップが無事に開催されましたら、そこで得られた参加者の反応などを活かして、芸術研究と社会をつなぐ架け橋になるような企画を継続的に行っていけたらと思っております。その第一段階として、本ワークショップ開催にぜひご支援をよろしくお願いいたします。
堀内彩虹
時期 | 計画 |
---|---|
2019年2月 | クラウドファンディング挑戦 |
2019年2月 | ワークショップ告知開始 |
2019年5月下旬 | 一般向け公開ワークショップ(於:東京大学駒場キャンパス)開催 |
2019年6月 | ワークショップ記録まとめ |
ワークショップの内容をレポートにまとめてお送りします。応援よろしくお願いいたします!
ワークショップ報告レポート(PDF版)
21人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ワークショップで配布する資料にお名前を掲載させていただきます。
ワークショップ当日に使う資料にお名前掲載 / ワークショップ報告レポート(PDF版)
6人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
サイエンスカフェにご招待いたします。東京で7月頃に開催予定です。当日は、私の研究と音楽知覚論の現在についてお話させていただきます。ご参加をお待ちしています! ※当日ご参加いただけない場合には、後日資料を共有させていただきます。
サイエンスカフェ参加権 / ワークショップ当日に使う資料にお名前掲載 / ワークショップ報告レポート(PDF版)
5人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ワークショップに登壇するアーティストが支援者の方々だけに向けたクローズドのコンサート(約30分)を行います。演奏プログラムは、特殊唱法を含む現代音楽を中心として、歌手の超絶技巧を堪能できる作品で構成されます。ジェルジ・リゲティやルチアーノ・ベリオの作品など、なかなか聴くことのできない珍しいプログラムになると思いますので、ご期待ください。日時および場所につきましては、2019年5月下旬開催のワークショップ終了後に同じ場所(東京大学駒場キャンパス)で行うことを予定しております。※当日ご参加いただけない場合には、後日コンサートの動画を共有させていただきます。
ミニコンサート参加権 / サイエンスカフェ参加権 / ワークショップ当日に使う資料にお名前掲載 / ワークショップ報告レポート(PDF版)
8人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ワークショップに登壇するアーティストが支援者の方とマンツーマンで歌唱レッスン(60分)を行います。レッスンの内容は、できる限り支援者の方のご希望に沿えますよう、支援者の方とアーティストとの間で相談の上で決めさせていただきます。
個人レッスン受講権 / ミニコンサート参加権 / サイエンスカフェ参加権 / ワークショップ当日に使う資料にお名前掲載 / ワークショップ報告レポート(PDF版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ワークショップ「特殊唱法ワークショップー現代音楽を自分の声と身体で体験する」を出張開催いたします。日時や場所につきましては相談の上で決めさせていただきます。内容も参加者に応じて調整可能です。※東京23区以外での開催には、出張に係る交通費を別途頂戴する場合がございます。また、会場利用費が発生する場合にはその費用をご負担いただきます。
特殊唱法ワークショップの出張開催 / 個人レッスン受講権 / ミニコンサート参加権 / サイエンスカフェ参加権 / ワークショップ当日に使う資料にお名前掲載 / ワークショップ報告レポート(PDF版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
ワークショップ報告レポート(PDF版)
21
人
が支援しています。
(数量制限なし)
ワークショップ当日に使う資料にお名前掲載 他
6
人
が支援しています。
(数量制限なし)
サイエンスカフェ参加権 他
5
人
が支援しています。
(数量制限なし)
ミニコンサート参加権 他
8
人
が支援しています。
(数量制限なし)
個人レッスン受講権 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)
特殊唱法ワークショップの出張開催 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)