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Keisuke Nomura

筑波大学、2nd year of master course

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2022-11-01 - 2026-03-31

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Tue, 10 Jun 2025 01:46:15 +0900

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Tue, 01 Nov 2022 10:00:00 +0900

2025年5, 6月 腸内細菌の研究をする者としてどうしても伝えたいこと

こんにちは!野村佳祐です。

私はいつも、自分の研究を、いつか誰かの「病気になりにくい体づくり」に繋げたい、そんな気持ちで取り組んでいます。もちろん、周りの研究者もそういう志は多かれ少なかれ持っています。

今日は、そんな研究者たちが抱えている一つの葛藤について、皆さんと一緒に考えたくて筆を執りました。

テーマは「動物実験」です。

●●なぜ、ヒトの実験ではダメなのか?●●
僕たち腸内細菌学の研究者が目指すゴールの一つは、「腸内細菌が、人の健康にどう影響し、どうすればそれを良い方向にコントロールできるか」を明らかにすることです。

「それなら、人で実験すればいいじゃない?」
そう思いますよね。でも、それがとてつもなく難しいのです。

まず、未知の細菌が人にどんな影響を与えるかわからない以上、倫理的に「はい、どうぞ」とはいきません。なにより、協力してくれる人を探すのは不可能に近いでしょう。

そして仮に、人で実験ができたとしても、科学的に「これが原因だ」と断定するのが難しいのです。
僕たちは一人ひとり、遺伝子も違えば、腸内細菌の顔ぶれ(腸内フローラ)も違います。昨日食べたものも、日々の生活習慣もバラバラ。これだけ条件が違うと、たとえ「細菌を飲んだグループ」と「飲んでないグループ」で差が出たとしても、それが本当に細菌だけの効果なのか、偶然なのか、区別がつかないのです。

もちろん、乳酸菌のように安全性が確立された菌での研究は多くあり、「健康と関係がありそうだ」という傾向は見えてきました。しかし、乳酸菌を含め様々な菌について、体のどこで、どのような仕組み(メカニズム)で作用しているのか。その核心に迫るには、もっと精密な実験が必要不可欠です。

●●だから、私たちは「小さな宇宙」の力を借りる●●
そこで、科学の真実に迫るために、動物(特にマウス)の力を借ります。
遺伝子レベルで"双子"のようにそっくりで、食べるものや環境も完璧に管理されたマウスたち。彼らの腸内細菌をコントロールし、変化を観察することで、初めて「細菌」と「体」の間の純粋な因果関係が見えてきます。

人よりも頻繁に血液やフンを採らせてもらい、時には体の内部がどう変化したのかを、詳細に調べることもできます。マウスの体という「小さな宇宙」は、複雑な生命の謎を解くための、強力な羅針盤なのです。

そして…これが最もお伝えするのが辛いのですが、科学的な正確性を期すため、一つの実験を終えたマウスは、苦しまないよう、私たちの手で安楽死させます。一度目の実験の影響が、二度目の実験結果を歪めてしまうことを避けるための、苦渋の選択です。

●●社会の「優しさ」と、僕が感じる「違和感」●●
この点から、社会では「実験のために生まれる命の気持ちを考えるべきだ」という声が大きくなっています。
「動物を不必要に苦しめるべきではない」という倫理観は、特に食品や化粧品の分野で大きなうねりとなり、動物実験を行う企業への不買運動にまで発展しています。

その「優しさ」は、人間として、本当に尊いものだと思います。

でも、僕はどうしても立ち止まって考えてしまうのです。
「本当に、それでいいのだろうか?」と。

私たちが当たり前に恩恵を受けている医薬品やワクチン。そのほとんどが、数えきれない動物たちの犠牲の上に成り立っているという事実から、私たちは目をそむけるべきではありません。

ここに、僕にはどうしても拭えない「矛盾」があります。

病気になってからの「治療」のためなら、動物実験は許される。
病気にならないための「予防」や「健康維持」のためなら、許されない…?
この二つの間に引かれた線引きは、一体何を基準にしているのでしょうか。
病魔に蝕まれる苦しみも、健やかな日々を失う悲しみも、私たち人間にとっては同じくらい切実な問題ではないでしょうか。

僕には、大切な家族がいます。かけがえのない友人がいます。
その人たちと、一日でも長く、一緒に笑って過ごしたい。
僕自身も、できる限り健やかな体で、少しでも長く誰かの役に立てる人間でありたい。

この願いは、きっと僕だけのものではないはずです。
「大切な人と、健やかに、幸せに長く生きる」
この普遍的な価値のために、科学にできることは、まだまだ無限に残されています。

●●研究者だってむやみに動物を犠牲にしているわけじゃない●●
誤解してほしくないのは、私たち研究者が、何の感情もなく命を扱っているわけではないということです。動物実験の資格を得はるために、生命倫理に関する厳しい講習を受け、その重い責任を自覚することを求められます。そして、実験の現場では、国際的な原則である「3Rの法則」という、命に対する3つの約束を遵守しています。

Replacement(代替): 動物を使わない方法があるなら、必ずそちらを選ぶ。
Reduction(削減): どうしても必要な場合も、使用する命の数を最小限に留める。
Refinement(洗練): 実験中の動物の苦痛やストレスを、可能な限り和らげる。

私たちは、この原則を胸に、科学の進歩と命の尊厳の狭間で、日々葛藤しています。

●●「かわいそう」の、その先へ●●
もし、この長い文章をここまで読んで、少しでも心が動いた方がいたなら、最後にお願いがあります。

「動物がかわいそう」という、その尊く、優しい気持ち。
どうか、その気持ちの半分でもいい、未来の自分や、あなたの愛する人たちにも向けてみてはもらえないでしょうか。

この問題に、簡単な答えはありません。白か黒かで断じられるものでもありません。

でも、「思考停止」してしまうことだけは、避けたいのです。
感情でフタをして、この社会にとって本当に大切な議論から、目をそむけてしまうことだけは。

僕も一人の学生として、科学に携わる者として、悩み、考え続けていきます。

野村佳祐 Tue, 10 Jun 2025 01:46:15 +0900
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