挑戦期間
2022/11/01 - 2026/03/31
最終活動報告
2024/10/19 09:02:56
活動報告
24回
サポーター
8人
経過時間
2022/11/01 10:00:00
ご覧頂きありがとうございます。
博士になってからというものの、研究室の日常は研究については何ら変わりないですが、新しいメンバーとの出会いで僕にとっての居心地は少し変わりました。研究室に体育会系の人達がたくさん入ったので、研究以外にも共通の話題が多くなって、より楽しくなりました。
そして少し研究に余裕が出たので、3月ほとんど運動できなかった代わりに筋力と走力を回復させました。基礎体力が高まる事で研究にも弾みが着くと思います。
ただ、一つ大きな心配事を抱えていた1か月でした。
それは、経済的な問題。今回は、博士のリアルな経済事情をお伝えします。
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【基本的に「無給」な日本の博士】
基本的に、日本の博士学生は、何もしなければ「無給」、収入0の学生です。
でも家賃や生活費はかかる。お金が無ければ、研究どころか生きていけません。
年齢も24歳を超えていて、同学年のほとんどは経済的に自立した社会人。
両親もほとんどは定年間近か定年越え。実家が特別裕福でなければ、両親も老後を見据えて家計に余裕を持たせる必要があり、博士の3年間の費用を完全にまかなう事は難しいです。
一方で、欧米などの大学では、だいぶ前から博士は基本的に「有給」だそうです。
博士が授業補助や授業代行を行う「Teaching Assistant(TA)」、そして指導教員に雇用された状態で研究を行う「Research Assistant(RA)」という制度が浸透していて、その収入だけでも十分に自立して生活ができるそうです。
本学、筑波大学はそれらの制度を日本の大学ではいち早く取り入れた事を誇りにしているそうですが、その収入は最高でも月5万円ほど。授業数によって月ごとに額も変動しますし、研究費が潤沢でない指導教員ならば、この額はさらに下がります。
生活費を確保するために、国から奨学金を借りる事はできますが、卒業後27歳(※最短)の段階で数百万の借金を背負う事になり、自立はできてもワーキングプアまっしぐらです。
そんな経済事情の厳しい博士のほとんどが必死に目指す、国の支援制度があります。
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【日本学術振興会特別研究員DC】
「日本学術振興会」は1932年に設立され、「学術の振興」を目的とした文部科学省所管の独立行政法人です。
その法人が採用する博士学生の特別研究員が「DC」です。
・月20万円の収入(生活費相当)
・年100万円ほどの研究費
(※今年度からテーマに応じた柔軟に対応し年10万円以上150万円以下)
が、3年間手に入ります。
区分は2つあり、博士1年から3年まで支援を受けられるDC1、博士2年・3年から支援を受けられるDC2があり、それぞれ毎年4,000人、6,000人ほど、併せて10,000人もの博士学生が応募し、そのうち採用されるのは20%ほどの狭き門です。
採用要件は、「研究課題の設定に至る着想が優れ、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究の展望を持ち、学術の将来を担う優れた研究者となる事が十分期待できる人材」。
この選考を行う審査員は毎年変わり、各研究領域ごとに「優秀な」教授が担当して応募者の研究計画書を評価して審査を行います。「優秀な」研究者が「優秀な」研究者になりそうな学生を選ぶ制度となっています(僕はてっきり文科省の官僚さんが選ぶと思ってました)。
この仕組みの是非は…メリット、デメリットあるとは思います(考えてみて下さい!(笑))。
DCは伝統ある制度ゆえに、日本国内では「研究業績」として扱われ、「優秀な」研究者として箔が着きます。DC通ったから恋人にプロポーズをした、という博士学生もいるとかいないとか…(笑)。しかし、その採用率は20%。残り80%は飢えて死のうが、恋人と別れようが関係無いという制度であり、そのような背景、そして少子化も相まって、日本の博士人材は年々減少しています。
博士は、基礎研究を先導して知的財産を生産する事で、それらを応用した製品やサービスの開発の原動力となり、国家の国際的プレゼンスを高める重要な人材です。「高度な研究人材」がいなければ、知的財産は日本のものとはならず、いくら「高度な企業人」がいても日本人がリードしてビジネスを行う事は難しくなります。結果として海外企業の台頭を招き、日本人はリーダーシップを失って「使われる人材」となって中々収入が上がらず、自国経済を他国に依存する事となります…。
そこまで考えているかは定かではないですが、さすがにマズいと思った政府は最近になってようやく、新たな博士支援制度を始めました。
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【JST次世代研究者挑戦的研究プログラム JST-SPRING】
「科学技術振興機構(JST)」は1957年に設立された、「科学技術の振興」を目的とする文部科学省所管の国立研究開発法人です。研究を文化として振興する意図で設立された日本学術振興会よりも、社会課題の解決や産業の発展などの国益・公益に関わる「科学技術」に焦点を当てた研究を振興する目的を持っています。
JSTが2021年度から施行している博士学生支援制度が
「JST次世代研究者挑戦的研究プログラムJST-SPRING」です。
・月15万円~20万円(大学による)の収入(生活費相当)
・年50万円(大学による)の研究費
が、3年間手に入ります。学振DCと比べると収入・研究費の額面は劣りますが、それでも博士一人が暮らして研究活動を行うには十分な額です。大学によっては月20万円の収入を得られる場合もあり、ほぼ学振DCです。
仕組みとしては、JSTが大学に本プログラム用の資金を配分し、その大学が学内の博士学生の応募者から選抜して採用する、というものになっており、各大学によって採用要件、採用人数、支援額も異なります。
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例
〇筑波大学の場合
採用要件:「多様なキャリアパスの開拓に意欲ある学生、SDGsに貢献できる研究の実施を通じ、主体的に独創的かつ学際的な教育研究に励む学生、企業や海外などでの活躍の機会を増やす意欲のある学生」
採用人数:132名ほど(春採用)、若干名(秋採用)
収入:月20万円(「特に優秀な学生」25%)、月18万5,000円(「優秀な学生」75%)
研究費:年50万円
〇東京大学の場合
採用要件:「地球環境をよりよく管理し、将来世代に引き継いでいくための社会の変革、グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けて活躍する事が期待される、深い専門性と高い研究力を持つ学生」
採用人数:210名ほど
支援額:月18万円
研究費:年34万円
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【私がacademistを続ける意義】
かく言う私も、先日筑波大学内でプログラムに採択され、月18万5,000円の収入と50万円の研究費を3年間支援頂く事に決まりました。
こう話すと、「支援が決まったなら生活費も研究費も十分だし、クラウドファンディングでやらなくていいよね」とおっしゃる方もいるかもしれません。
確かに、JSTのプログラムだけの収入で生活を送る事や、基本的な研究費(例:国内学会の入会費・参加費・旅費、文献・試薬・機材の購入費)を賄う事はできますが、より発展的な研究を行うための費用(例:研究室でまだ購入していない珍しい腸内細菌株の購入、国際学会の旅費)や、研究に伴う雑費(例:国際学会出張先での食費、聴講目的の学会参加に伴う旅費など)を賄う事はできません。また、私が目指す、腸内細菌の定着メカニズムの解明とその知見を応用した人類の健康寿命延伸の実現は一人では困難であり、学術界はもちろん産業界、そして一般社会も含めて理念を共有する仲間が必要です。
研究に伴う費用の補助、そして一般社会に理念を共有する仲間づくりという観点からも、このacademistのクラウドファンディングは、末永く続けたいと考えています。
ですので、支援者の皆様には引き続き温かいご支援を頂けますと幸いです。
私は博士学生として、政府(国民の皆様)や一般社会の皆様からの支援という名の「投資」に応えるため、より一層研究活動に励みたいと思います。