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渡邉文隆

京都大学、研究員

挑戦期間

2022/11/01 - 2025/03/31

最終活動報告

2024/11/11 22:34:23

活動報告

51回

サポーター

42人

経過時間

2022/11/01 10:00:00

#4 過去20年間の反省と現在の戦略:そうだ「漁船」だ!

こんばんは,academist prize第2期生として研究活動を行っている,渡邉文隆と申します.

京都大学大学院 経営管理教育部 経営科学専攻 博士後期課程に在籍しています.

博士論文の執筆のちょっとした息抜きに,この記事を書いております.

今日は,このプロジェクトを何故はじめたのか,どんな戦略を持っているのか,について書きたいと思います.

と言いましても,実はその答えのほとんどは,過去に個人的にnoteに書いていたものです.

「NPOに関わってきた20年の反省とこれから」(2021年5月19日)
https://note.com/fwatanabe/n/na36fc97c3145

私は2000年からNPOでの活動に関わってきましたが,この20年で日本の社会全体が良い方向に動いてきたのか,というと自信がありません.

局地的にはNPOが様々な成果を挙げてきたと思います.NPO活動の現場には,さまざまな希望があります.
しかし,社会全体としてはどうでしょうか.

どちらかと言えば,社会のメインシステム(教育・研究・医療・政治制度など)について,私たち大人は,見直しや改善を怠ってきたのではないか,というのが偽らざる感覚です.

自分のできることは能力的にも非常に限られておりますが,その中で,最も波及効果の大きいことは何だろう,と考えてきました.

日本社会をより良い方向に動かすにあたって,ボーリングのセンターピンにあたる部分は何なのか,と.

それを起点に,ピンがどんどん倒れていくような状況をつくるにはどうしたら良いのか,と.

人によってその答えは様々かもしれませんが,私にとっては,それは「さまざまな学術研究を充実させる」ということでした.

社会を動かす政策には,根拠が必要です.

組織においても,重要な決定をする際に,一定の根拠があった方が(全くのカンよりは)良いと思います.

その根拠として使われる「データ」は,実は解釈によって様々な結論が導かれうるものです.

データは万能ではなく,ほとんど使えないようなデータもあれば質の高いデータもあります.

適切な分析手法もあれば,問題のある分析手法もあります.

客観的に提示される結果もあれば,恣意的に選んで出される結果もあります.

政治的な意図の入った解釈もあり得ますし,学問的な誠実さを第一に考えた解釈もあり得ます.

これらを総合してどんな結論が出されるのか,については膨大なバラエティがあり得ます.

(さらに難しいことには,同じデータを使い,専門家がベストを尽くしても,ある程度バラエティのある結論が導かれることが2019年の研究で報告されています)
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/2515245917747646

そもそも,ちゃんとしたデータがない,という分野もあります.

(感染症や国際紛争など)社会情勢の変化によって急にこの分野の研究者が必要になった!ということもあり得ます.

こうした問題を,「日本の研究を充実させる」ことによって少しでも改善できれば,かなり波及効果の大きな取り組みになると考えました.

研究は,いわば社会をよくするための「迂回生産」です.

迂回生産は,ヴィルヘルム・ロッシャーという人が使った言葉です.

消費財を作る時に,まずはちょっと迂回して,それを作るための生産財をつくろう,ということです.

魚を取るときに,素手でとるよりも、資本を投じて生産財(漁船など)を作った方がより多くの魚を採れる,という話で例えたと言われています.

「素手で(カンで)社会をよくする」のではなく,研究という良い道具をつくり,それによって社会をよくしようというアイデアです.

実は,もう1つ迂回をします.

日本の研究者は,「素手で(孤立無援で)研究をする」のではなく,寄付という方法で,多くの人に仲間になってもらってから研究をしよう,というアイデアです.

さらに,もう1つの迂回をします.

「素手で(経験だけで)研究への寄付を募る」のではなく,研究への寄付募集についての研究を蓄積して,それを活用して研究への寄付を募ろう,ということです.

「研究への寄付募集のポイントは何なのだろうか?」

という問いについては,その一端を考察した論文が,先日査読を通って採択されました.

その論文から,上記のように3つくらい迂回生産を行って,この社会に暮らすできるだけ多くの人に,より良い状況を生み出したいと考えています.

皆さん,これからの時代は漁船です(笑)

素手で何かを変えるのではなく,コツコツ何かを蓄積することで漁船を作って,大きく現実を変えていきましょう.

(実は,マーケティングというのも,一種の迂回生産だと考えています.この話はまたいつか・・・)

Fumitaka Watanabe 2022/11/16 19:58:19
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