今回はサンクションに対する進化的批判を紹介します。
[サンクション(懲罰)は誰がもたらすのか]
これまで数回にわたってサンクションによって協力が促進されるという研究を見てきました。しかしサンクションシステムは高次のジレンマが発生し、一次のサンクションだけでは社会的ジレンマ状況における協力を進化させることは不可能であるとされています(Axelrod, 1986)。高次のジレンマとは、サンクショ
今回はコストのかかるサンクションは誰が行使するのかという研究を紹介します。
[サンクション(懲罰)は誰がもたらすのか]
これまで紹介したサンクションに関する研究の多くが協力に対するサンクションシステムの有効性に焦点が当てたものでありましたが、サンクションを行使する意図について着目した研究も行われています(Yamagishi, 1986)。コストのかかるサンクションシステムに投資する動機は、集
今回はサンクションの強さに焦点を当てた研究を説明します。
[サンクションによる社会的ジレンマの解決]
サンクション研究の多くが、サンクションの費用対効果が対称的な設定で行われてきましたが、実社会はヒエラルキーや格差が多く存在します。ヒエラルキーや階層構造に関する理論研究では、そうした権力の分化は集団内の協調性を促進し集団利益を高める効果があるとされていますが(Halevy et al., 2
今回はサンクション(賞・罰)による社会的ジレンマの解決について説明します。
[サンクションによる社会的ジレンマの解決]
社会的ジレンマの解決策として、サンクション(協力に対する報酬または裏切りに対する懲罰)が提案されています(Fehr & Gächter, 2002)。実際に多くの研究において、サンクションシステムが協力を促進させる効果を持つことが報告されています(Rand et al.,
今回はこれまでに説明してきた血縁淘汰理論と直接互恵性の限界を克服する条件について説明します。
[血縁淘汰理論・直接互恵性の限界]
直接互恵性は固定的かつ継続的な相互作用が必要であり、説明範囲が狭いメカニズムであるとされてきましたが、他の条件を組み合わせることで大規模な協力も直接互恵のメカニズムで説明可能であるとする研究もあります(Kurokawa & Ihara, 2017)。直接互恵性では
今回はこれまでに説明してきた血縁淘汰理論と直接互恵性の限界について説明します。
[血縁淘汰理論・直接互恵性の限界]
これまでに挙げたメカニズムは、理論的・実証的に示されている強力なメカニズムであるが説明範囲に限界があります。血縁淘汰理論は血縁関係者に対する協力しか扱えず、直接互恵性に関しても、固定的な他者との繰り返しの相互作用を必要とする点です。直接互恵性のメカニズム単体では大規模な協力を説
今回は直接互恵性に関する理論的な予測とは反する行動の例、およびその仮説から説明します。
[社会的ヒューリスティクス仮説]
これまでに述べてきた理論的研究に反し、実験研究において人間は一回限りの相互作用場面でも利他性を見せることがあります(Dawes & Thaler, 1988)。これに対する進化論的解答の一つが社会的ヒューリスティクス仮説です(Chudek & Henrich, 2011)
今回はこれまで紹介した直接互恵性の例を紹介します。
[人類において観察される直接互恵性]
囚人のジレンマ状況における繰り返し相互作用は、人間の意思決定にも影響を与え2(自分/相手)×2(協力/裏切り)のマトリクスの均衡点を移動させる効果があります(Roth & Murnighan, 1978)。10歳から11歳の人間の子供に相互作用相手が匿名である囚人のジレンマゲーム実験を行い、一回限りの状
今回は前回紹介した直接互恵的な状況において、どのような行動戦略が有効とされているかということを紹介したいと思います。
「直接互恵性」における有効な行動戦略
直接互恵状況における有効な行動戦略に関する研究は、しばしば繰り返し囚人のジレンマのフレームが用いられます(Rapoport et al., 1965)。囚人のジレンマとは二者間で行い、一般的な行動選択は協力、もしくは裏切りの2択です。ペイ
今回は前回に引き続き進化ゲーム理論という、ゲーム理論に進化の概念を取り入れた枠組みを用いて明らかにされている協力の進化メカニズムについて1つ紹介したいと思います。
互恵的メカニズム②「直接互恵性」
直接互恵性は固定的な相互作用相手に対する協力を説明するメカニズムとして提唱されました(Trivers, 1971)。協力行動は一時的に適応度を下げる行為となりますが、自らの協力を受け取った受益者か
0 supporters back
(No quantity limit)