[競争的利他主義②]
今回も前回の続きとして競争的利他主義に関する紹介です.
また今月の活動報告が論文執筆中でございまして,今月の活動報告が遅れてしまい申し訳ございません.
競争的利他主義は協力の進化だけでなく環境保護行動や集団間協力においても影響を与えることが示されています。高い地位を望む人ほどより環境志向の製品を購入したり(Griskevicius et al., 2010)、上位階層の
[競争的利他主義①]
競争的利他主義の文脈によれば、評判は相互作用相手の選択に利用されるとしています。これまでに述べてきたダウンストリーム互恵性の文脈において評判は、行動を決定するための要因であるとされてきました。それに反し、相互作用相手を選択するために評判を利用するというのが競争的利他主義の主張です(Roberts, 1998)。競争的利他主義とは、協調的に振舞うことで周囲から相互作用相手として
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究④]
これまで示した研究は良い/悪いといった社会的評判の研究に焦点を当ててきましたが,経済的能力などそれ以外の要素においても評判を形成するはずです。社会性評判と経済能力評判が協力にどう影響を与えているのかを検討した研究によれば、経済的評判は社会的評判と比較して、より多くの社会的文脈にわたって協力に影響を与えることが示唆されています(Macf
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究③]
今回はダウンストリーム互恵性を支える評判情報の伝達であるゴシップという要素に着目した研究から紹介します。
当事者以外の人物たちが当事者の情報を拡散するゴシップも行動に影響を与える要素です。ゴシップにより自分の評判が拡散する可能性のある場合、協力率が高くなることが示されており、その効果は利他主義的な人と比較して利己主義的な人の方が
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究②]
今回はフィールド実験によって実際に評判が協力行動を促進することを示した研究の紹介から始めます。
この研究は電力会社と協力し、大規模なフィールド実験を行うことで評判が協力行動に与える影響を検討したものです(Yoeli et al., 2013)。電力会社と協力して、電力消費のピーク時に遠隔で電力量を操作されるプログラムに参加するか
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究①]
9月は学会発表が重なり、研究報告ができませんでした。誠に申し訳ございません。このレポートを9月分の報告とさせていただきます。
今回は複数の規範が混在した状況を想定したより現実に近いモデルの研究紹介から始めます。
エージェントシミュレーションを用いて、二次情報までを考慮した規範として考えられる全ての規範である16種類の規範が
[ダウンストリーム互恵性の理論的研究②]
今回はダウンストリーム互恵性の理論研究パート2です。
二次情報までを考慮した進化的安定規範の全ては、良い評判の人に対する協力は良い評判を、良い人に対する非協力は評判を落とすという評価を下すことは共通しています。ここで示した規範の違いは、悪い評判の人に対する行動の評価である。STは評判の悪い人に対する協力、悪い人に対する裏切りともに良い評判を与える。S
[ダウンストリーム互恵性の理論的研究①]
今回から2回にわたり、ダウンストリーム互恵性の理論研究について紹介します。
行動戦略の優劣が行動戦略をとる個体の適応度によって決定する進化ゲーム理論の枠組みを用いて、どのような評判戦略(規範)が進化的安定戦略(Smith, 1982)であるかを示す数多くの理論的解析が行われています。進化ゲーム理論は戦略に基づいた行動の結果として得た利得に応じて、戦略
[互恵的メカニズム③「間接互恵性」(2種類の間接互恵性)]
間接互恵性は、社会的ジレンマの状況における大規模かつ柔軟な協力を説明する主要なメカニズムです(Alexander, 1971; Okada, 2020)。これまでに説明した血縁淘汰理論や直接互恵性は協力の進化を説明する強力なメカニズムではありますが、汎用性を欠いています。人間の協力は他に類を見ないほど大規模であり、協力する相手が血縁関係者
今回は神の雷(神による懲罰)について紹介します。
[神の雷(神による懲罰:Super natural punishment)]
サンクションシステムがもたらす高次のジレンマを解決する一つの仮説として神や仏といった超自然的エージェントによる懲罰があります(Johnson & Krüger, 2004)。超自然的なエージェントは道徳的な規範の提供者として見られており、その多くの信者は集団の規範に