Academic crowdfunding platform "academist"
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Ryohei Umetani

筑波大学、博士後期課程3年

Challenge period

2019-06-03 - 2024-08-30

Final progress report

Sun, 31 Mar 2024 03:05:45 +0900

Progresses

57 times

Supporters

4 people

Elapsed time

Mon, 03 Jun 2019 09:00:00 +0900

Comment from academist staff
人間が進化させてきた「協力」を紐解き、AI開発にも活かしたい

miho otsuka

人間はどのようにして「協力」を進化させたのかーー他の種と比べると突出して、人間には大規模で安定的な協力行動が観察されます。人間の協力行動は現在の社会システムの根幹を担っています。なぜこうした協力行動が持続可能なのか、そこにはどのような仕組みがあるのか。今回のプロジェクトではWebベースでの経済実験を行い、実社会における協力行動を支えるメカニズムの解明に挑みます。AI(人工知能)の開発も進む現代において、そこに組み込まれる規範の指針を示すことも見据える梅谷さんのチャレンジに応援をよろしくお願いします!

人間はどのようにして「協力」を進化させたのか

人間は、おそらく個体の生存能力は自然界においてそれほど高くありません。ゾウやシャチに勝てる人間などそうはいません。ですが人間は、地球上の至ることろで生息し、そのほとんどで生態系の頂点に君臨するほどの力を持っています。なぜでしょうか?

その鍵は「協力」だと私は思います。「協力」という行動はさまざまな生物にて観察されますが、人間は突出して大きな規模で安定的に協力することができます。

逆にいうと、他の種ではなぜ、大規模で安定的な協力行動が見られないのでしょうか? その要因としては「社会的ジレンマ」が挙げられます。たとえば、ゴミはすぐにポイ捨てしたほうが楽だけど街は汚れます。全員がポイ捨てする街より、全員が協力してポイ捨てしない街のほうがきれいで快適だけど、ポイ捨てしたほうが楽というようなループする状況を社会的ジレンマと呼びますが、理論的には社会的ジレンマ状況にある集団は非協力者が協力者から搾取でき、非協力者が支配的になります。そのため、協力行動は単体では進化することができません。他の種が大規模で安定した協力ができない理由は、このフリーライダーと呼ばれる搾取者を排斥することが困難だからです。ゴミの例でいえば、ポイ捨てをする楽さと、協力者が作るきれいな街の両方を得ることを選ぶフリーライダーを排斥できないということです。

こうした個人と集団の利益が対立する社会的ジレンマ状況において、人間はどのようにして「協力」を進化させたのか。どんな仕組みを作ったのか、どんな能力が必要だったのか。人類が地球史上最強の種たる所以を解き明かすことが私の大きな研究対象です。

人間に観察される「Pay it forward」的な行動

一見非合理的な「社会的ジレンマ状況における協力行動」は、血縁淘汰理論や互恵的利他主義などにより合理的な行動選択となりえると説明されてきました。分量の都合上、詳細については今後の研究報告等で解説させていただく予定ですが、血縁淘汰理論や互恵的利他主義は協力行動を促進するという知見は示されているものの、関係が流動的な社会においてフリーライダーの侵入を防ぎ、大規模な協力を支えることは不可能です。

そこで提唱されたのが間接互恵性という概念です。間接互恵性とは協力した相手から直接の返報がされなくとも、いずれ別の他者から協力を受け取れる仕組みで、下位概念としてDownstreamとUpstreamの2種類が存在します。

Downstream互恵性とは、評判情報を基にフリーライダーを排斥する仕組みです。自分が協力者であることで良い評判が生まれ、その評判を介して自分も協力を得られる仕組みともいえます。これの成立に必要な評判の研究は多く存在します。一方、Upstream互恵性とは、他者によって協力された人物が、別の他者に対して協力することを指します。「Pay it forward」が近い概念といえます。その行動は観察されてはいるものの、協力の連鎖が持続可能であるというメカニズムが示された例はいまだありません。

そこで私は、このUpstream的協力は相互利益が期待できるような協力メカニズム(互恵的協力)によって駆動する行動ではなく、社会生活を営むうえで互恵的協力とは別の目的で進化した個人の心理的態度が副次的にもたらす行動なのではないかという可能性を、質問紙やクラウドソーシングによるWebベースでのゲーム実験によって示してきました。

人類が構築した協調社会を壊さないためのAIに実装すべき社会規範を明らかにしたい

我々の行ってきたUpstream互恵性の研究は、実を結ぶ一歩手前です。 しかし、この研究分野「Evolution of cooperation(協力の進化)」には、まだまだ解かなければならない謎、示さなければならない知見がたくさんあります。

今後は先に示した私自身が進めてきた実験アプローチによる研究を発展させ、クラウドソーシングを用いたWebベースでの経済実験を行い、実社会における協力行動を支えるメカニズムの更なる解明に挑みます。それに加えて、シミュレーションアプローチにより安定した協力社会を維持している既存の社会システムへの適応が可能となる社会規範プログラム、また適応不可能な社会システム、人間の規範生態系を崩壊させてしまう社会規範プログラムを解明する研究を進めようと考えています。

人間に観察される大規模で安定的な協力行動は、現在の社会システムの根幹を担っているものです。生産年齢人口の減少により、生産性の向上が強く要求される我が国にとって、AI(人工知能)の開発がますます推進されることは自明であり、人間の協力行動のメカニズムを解明してそこに組み込まれる規範の指針を示すことが私の研究のもうひとつの目的であると同時に、社会科学全体にとっても極めて重要な役割であると考えています。

私が大学院に進学した理由

私は小学校・中学校・高校と研究はおろか、本は教科書以外手にしたことがないような、いつでもいつまでも友達と遊んでいる生徒でした。経済や経営に関してはなぜか少し興味があったため、小さく自分でビジネスでもやってみたいなと思い、大学へ進学しました。進学した先の大学にて所属したゼミナールで指導教員から「協力って一見、進化しないと思わない?」という一言が、私が研究に入り込んだきっかけとなりました。

学部2年次から、自分のテーマで研究を行うことができるという、とても良い環境に恵まれていました。それでも、大学院に進むという考えは生まれませんでしたが、自らが進めていた研究でおもしろい結果を示すことができ、いくつかの学会やシンポジウムで発表する機会がありました。そこで、指導教員や共同研究者以外の大勢の研究者から意見を頂いたり、ディスカッションを行ったことで、この結果を学術論文として正式に発表し、さらに研究を続けたいという思いが強くなり、大学院への進学を決めました。

Why we need your support

私がacademist Funclubに挑戦する理由は主に2つあります。ひとつは、アルバイトではなく研究のための文献調査や実験の設計・実施、分析、論文の執筆等に時間を当てたいためです。研究の遂行には関連書籍等のさまざまなところで出費がかさみます(社会科学といっても限りなく自然科学に近い分野ですので特に高つく分野だと思います......。)。ここでご支援を頂くことで、もう少し大規模でワクワクするような実験等ができると思ったのがひとつ目の理由です。

そしてもうひとつ、我々の研究している分野は、良い悪いではなく社会に対して大きな影響を与える分野であると思います。それにも関わらず研究者と一般社会とではコミュニケーションギャップが大きくあります。ここでのチャレンジをとおしてこの分野の研究に興味をもっていただく役割を担えればと思っています。

正直なところ、ひとつ目の理由だけで、ご支援を頂くのは少し寂しいような気がします。たとえ、あまりこの分野に興味がなくても構いません。学校の授業や教科書なんかでは到底知り得ない最先端の知識を手にし、共に謎に挑みましょう。そして研究をとおし、世界の先頭からの眺めを共有しましょう。世界の先頭に立った興奮を一緒に味わいましょう。

Recommender Comment

秋山 英三
筑波大学システム情報系 教授

梅谷君は博士課程入学時から積極的に新しい研究計画を立案し、研究プロジェクトを率いてきた。協力の進化メカニズムに関して、未だその問題が解決に至っていない要因の一つとして、協力行動を扱う先行研究の多くが搾取という負の行動を扱っていない点に着目した。その研究において、分配や提供といった正の行動と搾取という負の行動では異なる性質を持つことを明らかにし、その結果を国際ジャーナルに掲載した。ここに示したように彼は研究に対する探究心や想像性が高く、新規性に富んだ研究を行う力がある。私は今後も彼の持つ研究者としての資質を存分に発揮し、新たな研究にチャレンジすることを期待しています。

山本 仁志
立正大学経営学部 教授

梅谷君は、協力という一見すると損をするような行動がなぜ社会に拡がったのかという問題について研究を進めてきました。修士課程在籍中には、恩送りと呼ばれる行動の規定要因に関する研究を行い、その成果を国内主要論文誌に原著論文として掲載し、修士論文は社会情報学会の学位論文賞を受賞しました。また、多くの学会発表大会で彼の研究成果を発表してきた彼の研究遂行能力は高く評価できます。私は彼が今後も科学および社会に対して貢献を続けることを信じています。

Profile

Ryohei Umetani

梅谷凌平(ウメタニ リョウヘイ)と申します。立正大学 経営学研究科 修士課程1年です。研究を行っていますが、決して超優秀な優等生だったわけでも、意識が高いわけでもないと思います。ただただ、「協力の進化ってすっげぇなぁ」と思っただけでここまで来ました。まったく本を読んだことがなかった私ですが、それだけで本を読むようにまでになりました。数学交じりの初めは取っつき難い分野ではあると思いますが、この私を夢中にさせるほどの魅力を持った分野です。皆さんに、学ぶこと・知ること・研究することの面白さを伝えることができればと思っています。

(2021年7月追記)2021年4月より筑波大学博士後期課程に進学しました。研究テーマは変わらず協力の進化です。

Project timeline

Date Plans
2019年6月 academist Fanclub 開始
2019年6月〜7月 実験(予定)
2019年11月 日本社会心理学会発表(予定)
2020年1月 社会情報システム学シンポジウム発表(予定)
2020年3月 論文投稿(予定)
2020年4月 エージェントシミュレーション開始(予定)
2020年夏頃 論文提出(予定)
2021年1月 修士論文提出(予定)
2021年3月 academist Fanclub 終了

(2021年7月追記)2021年4月より筑波大学博士後期課程へ進学し、Fanclubも継続して行うことになりました。引き続きよろしくお願いいたします。

2021年8月 日本社会心理学会発表
2021年9月 社会情報学会発表
2021年12月 論文投稿(予定)
2022年1月 社会情報システム学シンポジウム発表(予定)
2022年3月 論文投稿(予定)
2022年4月 エージェントシミュレーション開始(予定)
2022年夏ごろ 論文投稿予定
2023年1月 社会情報システム学シンポジウム発表(予定)
2023年4月〜 AIと人間の共存を可能にする社会規範プログラムの研究
2024年3月 academist Fanclub 終了

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1,100 JPY / Mo. tax included

Featured : 活動報告閲覧権

活動報告閲覧権

Webサイト上の活動報告欄を限定公開し、研究の進捗などを毎月報告いたします!まだ誰も知らない世界を明らかにしていく道のりを一緒に歩んでいただけると嬉しいです。皆さんにワクワクしていただけることを願っています。応援よろしくお願いします!

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