ゲルは寒天などの食品から乾燥剤としてのシリカゲルなど幅広く利用されており、今後もさまざまな応用が期待されます。一方でゲルに新しい機能をもたせるためには、弾性・粘性などの性質がどのように制御されているかを明らかにすることが重要です。今回のプロジェクトではゲル研究に欠かせない「ミクロゲル」について、その性質と分子構造との関係を解明することを目指します。ミクロゲルは測定技術が確立されておらず、「誰もできていないからこそおもしろい」と感じ研究を進めているという酒井さん。測定プログラムの作成から解析までを行う酒井さんのチャレンジに応援をよろしくお願いします!
ゲルとは水分を大量に含んでいる高分子で、食品だけではなく、体内で決まったタイミングで薬を放出させたり、細胞を培養する「培地」として利用したりできるなど、さまざまな機能を提供する可能性を秘めています。ゲルの機能をコントロールしたり、ゲルに新しい機能を付与したりするためには、ゲルの性質を理解することが必要不可欠です。
ゲルそのものの研究は、「どのようにゼリー状に変化するか」「どのような分子構造をしているか」「どれぐらい硬いか(弾性)」や「どれぐらいねばねばしているか(粘性)」など多岐にわたります。私の研究では特に、弾性と粘性を、分子構造と結び付けて解明したいと考えています。
対象とするゲルはおよそ1/10 から1/100 mmの直径をもつ「ミクロゲル」です。これは髪の毛の直径(およそ1/10 mm)以下のサイズです。ミクロゲルはサイズが小さく、大きなゲルと比べて短時間で反応が完了するため、ゲルの研究には欠かせないものです。
ミクロゲルは細胞膜のような鋳型を使うことで作製することができます。一方で、サイズが小さいなどの理由で弾性や粘性を測定する手段がこれまで確立されておらず、その性質は未解明なままでした。
これまでの研究で、直径が1/100 mm程度のガラスでできた毛細管(キャピラリー)を使って、ミクロゲルの硬さ(弾性)を測定・評価することに成功しました。その結果、ゼラチンでできたミクロゲルは大きなゲルと比べて10倍程度硬くなること、また、それと同時にゼラチンゲルの分子構造も変化していることを発見しました。
このように「誰も解明していないもの」を、自らの手で装置を作り、解明していくことがおもしろいと感じて、現在も研究を進めています。
より詳細にミクロゲルの性質と分子構造の関係を解明するためには、(1)粘性を測定する技術を確立すること、(2)分子構造を定量的に評価することが必要だと考えています。
(1)については現在、粘性の評価に影響する弾性率を測定する方法を改良しています。具体的には、測定用の装置の組み上げ、測定用の装置を動かすためのプログラムの作成、解析用のプログラムの作成を進めています。完成後は、既存の手法と比較して、有用性を確認することで測定技術を確立します。それと並行して、(2)については、特定の構造に結合して光る分子を利用して、ゲルが取り得る2種の構造(αヘリックス構造とβシート構造)の割合を光の強さから評価したいと考えています。
これら2つを組み合わせて測定することで、ミクロゲルの弾性・粘性と分子構造の関係を明らかにしていきます。
私は昔から物事をじっくり考えることが好きでした。数列を見つめたり、スポーツにおいてもこんなタイミングで力を入れたらどうなるか考えて、それらから規則性を仮定して検証したりすることが好きでした。大学に入り、研究を開始してからも未知の現象を観察して、仮説を立てて検証するという研究の基本的な流れに楽しさを感じています。そうして得られた仮説や実験結果をさまざまな人と議論するために、丁寧にわかりやすく研究を紹介するための努力をすることや、英語を勉強することに難しさとやりがいを感じています。
また、さまざまな人と交流をもつために、若手の会と呼ばれる、大学院生を中心とした研究会にも所属しています。そこでの出会いや意見交換にも、研究と同様に楽しさややりがいを感じています。
私が行っている研究を研究者にも、研究者以外の人にも知っていただきたいと思い、academist Fanclubへのチャレンジを決めました。また、私自身は2020年3月に大学院を卒業することを予定しています。2019年度は実験やディスカッションをはじめ、博士論文の執筆、博士論文の公聴会、国際学会、博士課程修了後の就職先(企業や研究室など)を探すことや、学術論文の執筆などを控えています。そのため、多くの方が馴染みのない博士課程の、特に修了を控えた年度の学生の一年間を紹介できる良い機会だと思っています。
今回のacademist Fanclubでご支援を頂いた際は、大学院の学費や、卒業後の研究に必要な、興味のある研究室へ見学に行くための旅費、交流の幅を広げるための「若い研究者の会」で活動するための交通費に利用したいと考えています。ご支援のほどよろしくお願いいたします。
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チャレンジャーの大学院生に直接連絡をとることはご遠慮ください。共同研究のご依頼などは当社お問合せフォームからお願いいたします。
私立八王子高校、東京農工大学工学部物理システム工学科、同学工学府物理システム工学専攻を卒業後、現在の電子情報工学専攻に入学。気分転換に、中学生の時から続けている陸上競技(専門は十種競技)をしながら研究を続けています。ほかにも少し奮発して近所のおいしいお店でゆっくりご飯を食べたりしています。最近は実験装置を自作しているため、プログラミングを駆使して各種測定装置を制御したり、画像解析技術を学んだりしています。
時期 | 計画 |
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2019年2月 | academist Fanclub 開始 |
2019年3月 | 国際学会申し込み(予定) |
2019年6月 | 国際学会開催(予定) |
2019年10月 | 論文投稿(予定) |
2019年12月 | 博士論文提出 |
2020年1月 | 博士論文公聴会 |
注目のリターン : 活動報告閲覧権
活動報告閲覧権
博士課程の一年を報告していきます。うまくいかないことがいかに多いか、それに対してうまくいったときがいかにおもしろいかなど、研究することの魅力を定期的にお伝えしたいと思います。
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