皆様のおかげで公開二週間の短期間で目標の70万円を達成できました。ご支援本当にありがとうございます。この度は、大学関係者、友人、知人だけではなく、本プロジェクトに興味を持って下さった方々、身内にがんなられた方をお持ちの方々からもご支援と激励のコメントを頂き、大変感嬉しく、また皆様の私たちの研究に寄せる期待とそれに対する責任の重さを改めて感じております。
これだけのご支援を頂きながら恐縮ですが、残りの期間ではセカンドゴールとして150万円を設定して、より積極的に研究環境の充実を図り、少しでも早く研究目標が達成できるように頑張っていきたいと考えております。今後ともご支援のほどよろしくお願いします。
大塚美穂
私たちヒトをはじめこの地球上のほとんどの生物は酸素なしでは生きられません。一方で、実は酸素は生物にとって猛毒です。酸素毒性という言葉まであります。空気が適度な濃度(20%)の酸素を含むので私たちは生きられますが、もし空気がすべて酸素でできていたなら、すぐに全身の臓器を傷害されて死んでしまいます。酸素の毒性は、酸素が化学的に極めて活性であることに起因します。
酸素は他の分子から電子を奪い取り電子対をつくろうとする性質があり、その結果、酸素よりもさらに活性な分子である活性酸素が生じます。たとえば酸素の不対電子の1個が対になるとスーパーオキシド(O2•-)となり、さらにもう1個が対になると過酸化水素(H2O2)となります。活性酸素は一般には病気や老化の原因になる悪玉だといわれていますが、対象細胞の種類や種々の条件によって、細胞の活性化や増殖促進と、細胞傷害や細胞死という真逆の反応を誘発します。
活性酸素は忍者のように次々と形を変えるので捕捉しにくい代物であるためか、研究テーマとしてメジャーではありませんでした。しかし、私の研究ポリシーはなるべく人のやらない研究をすること、そして人と違う視点や仮説を基に研究することなので、1993年から長年にわたり細胞に対する活性酸素の作用についての基礎研究を行ってきました。そして2008年、この基礎研究が「腫瘍選択的毒性」という形でがん治療に貢献する可能性が拓けてきました。
腫瘍選択的毒性とは、がん(腫瘍)細胞だけに毒性を示して、正常細胞には影響しない性質のことです。2008年にドイツ薬学会開催の国際学会で講演を行ったとき、微生物には有効で人体には無害な化学薬品を指す「魔法の弾丸」という言葉を知ったのですが、当時から、がんの化学療法は人体に有害で副作用が問題となっていました。そこで、腫瘍選択的毒性の原理を解明し、がんに対する「魔法の弾丸」の創成に道を拓きたいと考えました。
腫瘍選択的毒性のメカニズムについて研究を進めたところ、活性酸素のひとつである過酸化水素が、アポトーシスとは異なるタイプの細胞死(非アポトーシス細胞死)を誘発することを発見しました。過酸化水素は条件によっては比較的安定で、細胞外から添加できます(消毒液オキシドールは約3%の過酸化水素液です)。2013年には、消毒液より低濃度(0.0003%)の過酸化水素がメラノーマ、肺癌、神経芽腫、骨肉腫などの抗がん剤の効きにくいがん細胞を死滅させる一方で、正常な細胞には影響しないことがわかりました。つまり、腫瘍選択的毒性の原理において過酸化水素が鍵となっている可能性が示されたのです。
過酸化水素の腫瘍選択的毒性についてさらに研究を進め、2014〜2016年には、腫瘍選択的毒性にミトコンドリアの形態異常が関与することを発見しました。ミトコンドリアは好気呼吸(酸素を使ってエネルギーをつくること)を行っている細胞内小器官であり、細胞の中で活性酸素ができる主要な場です。つまりミトコンドリアでは、酸素をもとにして、エネルギーと活性酸素の両方がバランスよく生成されています。
ミトコンドリアの形態は、個々のミトコンドリアが繋がっている(融合)状態とバラバラに存在する(分裂) 状態のバランスによって維持されます。このバランスが大きく崩れるとエネルギー産生ができなくなり、非アポトーシス細胞死を起こします。がん細胞では、過酸化水素によるミトコンドリア内酸化ストレスが起こり、このバランスが崩されていました。
これらの一連の発見からひとつの仮説が導き出せます。つまり、「がん細胞は、正常細胞よりもミトコンドリアの酸化ストレスに弱いため、ミトコンドリアの形態異常や非アポトーシス細胞死を起こしやすい」という仮説です。
腫瘍選択的毒性における活性酸素の役割についての知見を蓄積しつつあるころ、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)の研究グル-プから、「低温大気圧プラズマが腫瘍選択的毒性をもっており、その活性を活性酸素が司っているらしい」という連絡をもらいました。それを見て、活性酸素の腫瘍選択的毒性を活かしたがん治療法の開発に、プラズマが使えるのではないかと考えました。低温大気圧プラズマは、低温(室温)、大気圧(私たちが普段受けている空気の圧力)の条件でつくられるプラズマを指します。
一方で、実用化に向けてはいくつかの大きな問題があります。そのひとつが、低温大気圧プラズマはほとんど人体を通らないということです。そのため開腹手術や内視鏡でも利用しない限りこれによる治療は体表にあるがん(皮膚がん)に限られます。そしてもうひとつの課題は、活性酸素の関与以外その作用の仕組みがほとんど不明なことでした。
将来的に体内のがん治療にも貢献できるように、低温大気圧プラズマを照射した液体(プラズマ照射液)を活用できないかと考えました。液体であれば、点滴や内視鏡で全身または局所に投与できるからです。点滴に使われるような輸液剤に低温大気圧プラズマを照射し、実験を進めた結果、プラズマ照射液中には過酸化水素が生成していること、またプラズマ照射液を受けたがん細胞のミトコンドリア内に活性酸素(スーパーオキシド)が蓄積し、その形態異常と非アポトーシス細胞死が起きることを確認しました。
がん細胞ではがん化により活性酸素が作られやすく、また活性酸素を消去する仕組みが抑制されていることもわかってきています。その結果、がん細胞は正常細胞よりも活性酸素が蓄積しやすくなり、それによるミトコンドリア形態異常と非アポトーシス細胞死を起こしやすいことが、プラズマ照射液の腫瘍選択的毒性につながると考えられます。
これまでの細胞レベルの実験においてプラズマ照射液の抗がん作用は劇的で、過酸化水素液では殺せなかった酸化ストレス抵抗性の高いがん(骨肉腫の一部、繊維肉腫など)も殺せました。この違いの要因については現在も研究を進めているところですが、プラズマ照射液は細胞内で、ミトコンドリアの形態変化を増悪させる一酸化窒素酸化物(NOx)の産生を誘発することがわかってきています。一方、過酸化水素液ではその濃度がかなり高くないとNOxの産生が起こらないため、NOxの有無が要因のひとつではないかと考えています。
プラズマ照射液の抗がん作用は他大学の共同研究者も確認し、さらに、動物でも腫瘍の増殖の抑制効果が著しいことや、体重減少などの副作用がないことを確認しています。臨床医のみなさまを含めた多くの方々から、この研究に対して激励とご支援を頂き、プラズマ照射液を活用したがん治療に対する強い期待を感じました。同時にこれまでの基礎研究の成果を世の中に還元できるよい機会であると強く思いました。そこで、大学退職を契機に研究所を設立してその実用化を本格的に目指すことにしました。
私たちの研究のゴールは2つあります。ひとつは基礎研究のゴールで、プラズマ照射液の腫瘍選択的毒性の基となる細胞死の仕組みや、ミトコンドリアの形態変化のメカニズムを明らかにすることです。今後は前述のNOx産生に着目し、ミトコンドリア形態調節遺伝子群の機能に対してNOxがどう影響を及ぼしているか解析を進めていきます。今回ご支援いただく研究費は、がん細胞の特徴である低酸素状態の環境下でミトコンドリアの形態変化の解析を進めるため、低酸素実験用のマルチガスCO2インキュベーターの購入に活用させていただきます。
また、もうひとつは応用面でのゴールで、副作用のないがん治療の実用化を目指しています。プラズマ照射液によるがん治療は現在動物での有効性と低毒性を確認した基礎研究の段階です。今後ヒトでの有効性や毒性の有無を調べる必要があります。また、プラズマ照射液の大量生産法の開発もクリアしなければならない課題ですが、精密機器メーカーと共同で自動プラズマ照射液作成装置の開発にも取り組んでいます。この研究プロジェクトを広く一般のみなさまに知っていただきたいと考えております。
これまで科研費や民間財団からの研究助成金を頂いて研究を行ってきましたが、それだけでは十分ではないうえに用途に制限が多く、使用しにくい点もありました。そこで今回、クラウドファンディングに挑戦することを決めました。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
鈴木良弘
時期 | 計画 |
---|---|
2019年2月 | クラウドファンディング挑戦 |
2019年5月 | 研究機材購入 |
2019年10月10〜12日 | 24th World Congress on Advances in Oncology(ギリシャ、スパルタ)で発表予定 |
2019年12月 | 論文完成(予定) |
研究の詳細な進捗、学会発表、論文の内容などをわかりやすくレポートにまとめてメールでお送りします。応援よろしくお願いいたします!
研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
6人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
私たちの研究所のHPにサポ-ターとしてお名前を掲載させていただきます。
ウェブサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
5人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
サイエンスカフェにご招待いたします。2019年に2回(5月と12月)、私たちの研究所で開催する予定です(日時は後日メールでご連絡いたします)。当日はプラズマ研究やがんについてお話させていただきます。また当研究所特製ロイヤルミルクティーを片手にみなさまとサイエンスや研究について話し合えると幸いです。ご参加をお待ちしています! ※当日ご参加いただけない場合には、後日資料をメールでお送りします。
サイエンスカフェ参加権 / ウェブサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
6人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
2019年10月10~12日にギリシャで行われる24th World Congress on Advances in Oncology(第24回世界腫瘍学進歩会議)にて本研究に関する発表をする際、謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料(電子版)を送付いたします。お力をお貸しください。応援よろしくお願いいたします!
学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / ウェブサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究成果を発表する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。
論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / ウェブサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
お名前を入れた感謝状をお送りさせて頂きます。また、私たちの研究所をご案内いたします。がん細胞やミトコンドリアの顕微鏡での観察やプラズマ発生の様子をご覧いただけます。日時はご相談の上ご都合の良い日を決定いたします。ご参加をお待ちしています!
感謝状の贈呈、研究所見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / ウェブサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
講演会 (1回)に出張いたします。がんやプラズマによるがん治療などについてご要望にお応えする形で講演させていただきます(最小催行人数5人)。交通費、宿泊費はいただきません。ご依頼をお待ちしています!
出張講演 / 感謝状の贈呈、研究所見学ツアー / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / ウェブサイトにお名前掲載 / 研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
5人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
研究報告レポート “PCBLレター” 送付(PDF版)
6
人
が支援しています。
(数量制限なし)
ウェブサイトにお名前掲載 他
5
人
が支援しています。
(数量制限なし)
サイエンスカフェ参加権 他
6
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が支援しています。
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学会発表資料の謝辞にお名前掲載 他
0
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が支援しています。
(数量制限なし)
論文謝辞にお名前掲載 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
感謝状の贈呈、研究所見学ツアー 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)
出張講演 他
5
人
が支援しています。
(数量制限なし)