皆さま、こんにちは!メンバーの山本です。
私たちのプロジェクト「乳幼児の内なる世界を読み解く」に関心を持っていただき、誠にありがとうございます。
今回は、活動報告第二弾として、先日メンバーが発表・受賞した、日本心理学会第89回大会についてご報告いたします。
本大会は、「心理学」に関する日本で一番大きな学会である日本心理学会が主催する学術大会のことです。今年の大会は、9/5-9/7の期間に仙台で開催され、本プロジェクトの土台となる知見について、メンバーの大谷・渡部がそれぞれ発表を行いました。
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大谷の発表題目
「子どもの内なる言葉、どう測るか メンタルカウンティング課題を通じた内言の客観的測定とその発達過程の検討」(ポスター発表)
本発表では、音声を伴わずに自分自身に向けて発話される「内言」を幼児でも測定できるよう、新規のメンタルカウンティング課題を開発し、その妥当性を検証した結果を発表しました。メンタルカウンティング課題とは、1から5までの数字を声に出して(外言条件)と声に出さずに心の中で(内言条件)それぞれ5試行唱える課題です。試行間の所要時間のばらつき(相対標準偏差)を、外言・内言の安定性としてその発達的変化を分析した結果、幼児全体の内言条件のばらつきは、成人よりも有意に大きく、また、月齢が上がるとともにそのばらつきは減少し、5歳頃から数を数える内言があることが示唆されました。ここから、メンタルカウンティング課題が内言の発達過程を反映する行動指標として有用であることが示唆されたと考えています。今後は、この課題と、生理指標等の測定と組み合わせることで、本プロジェクトの主眼である「子どもの内なる世界」に大きく迫ることを目指します。
本発表のプレプリント: http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.5277036
渡部の発表題目
「子どもの色クオリア構造」(シンポジウム「色経験の構造」における企画と話題提供)
本発表では、子どもの色クオリア (体験) 構造に迫りました。色の質的な体験のことを色クオリアと言います。色クオリアそのものを研究することは難しいのですが、色クオリアと色クオリアの関係性を調べることで、我々の色クオリア構造を調べることが可能となりました。本研究では、成人の色クオリア構造と子どもの色クオリア構造を検討しました。その結果、2歳半から、おおまかな色クオリア構造は成人と似ているが、色ごとに微妙な違いがある可能性が示唆されました。今後は、言語発達との関係やもっと多くの色の種類での色クオリア構造を検討していきます。
本発表の論文: https://doi.org/10.1073/pnas.2415346122
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さらに、昨年度の大会での研究発表において、メンバーの桑水と山本それぞれが、選考を経て「特別優秀発表賞」を受賞しました。
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桑水の発表題目(昨年度)
「内言と外言で瞳孔応答は異なるか 若齢成人を対象としたカウンティングタスクによる検討」(ポスター発表)
本発表では、音声を伴わずに自分自身に向けて発話される「内言」が、外に向けて発話される「外言」と同様に覚醒中枢を活性化させるのかについて、瞳孔の動態を指標とし、上記の大谷の知見とベースとしたカウンティングタスクを用いて検討した結果を発表しました。その結果、当初の仮説に反して、外言は瞳孔を拡大させるのに対して、内言はむしろ縮小させました。この結果は、外言は瞳孔に連動する覚醒系活性化を促進する一方、内言は不活性化方向に作用することを示唆しており、内言と外言の違いを説明する新たな生理機構として興味深いです。しかし、今回用いたタスクを超えて共通の現象であるかはさらなる検証を要しており、現在も検証を進めています。
本発表の抄録: https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/88/0/88_1C-058-PG/_article/-char/ja/
山本の発表題目(昨年度)
「社会的排除経験がのちの敵対的認知および感情に及ぼす影響 日本の成人および幼児を対象とした検討」(ポスター発表)
本発表では、複数の他者とキャッチボールをする状況において、ボールを回してこなくなった相手を「いじわる」と思ったり、そう思うことが、無関係な他者まで「いじわる」と思うことにつながるのか、その発達や感情との関連を検討した結果を発表しました。その結果、ボールを回してこなくなった相手を「いじわる」と思うことは4-6歳にかけて発達するものの、そう思うことが、無関係な他者まで「いじわる」と思うことにつながるわけではありませんでした。また、欧米では、ボールを回されなくなると特に怒り感情を高く報告すると言われていますが、そのような傾向は、日本の幼児や成人にはみられませんでした。ここから、他者とのかかわりにおける判断は幼児期にかけて発達するものの、一部では文化的な違いも示唆されました。今後は、こうした状況における生理指標なども取得することで、他者とかかわる心の働きに多角的に迫りたいと思います。
本発表の論文: https://doi.org/10.1016/j.jecp.2025.106200
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日本心理学会第89回大会の報告は以上となります。
上記は、それぞれ異なるアプローチからの研究ですが、私たちにとっては、どれも「乳幼児の内なる世界」を多角的に理解しようとする上での大切な一歩です。今後は、これらの知見を結集して、本プロジェクトページにあるとおり「幼児の内的世界の発達過程を評価する質問紙の開発」「幼児の内言と感情との関わりを明らかにする研究」「幼児の内言を客観的に測定するための生理指標の開発」を進め、子どもの内的世界の解明に迫ってまいります(先ほど、この一部の研究に関する倫理審査が承認されました!)。
さて、本日時点で80名の方からサポートをいただき、達成率は44%となりました。サポートくださった皆さま、本当にありがとうございます。今後も、このような報告記事に加えて、知見の共有なども積極的に行なっていきます。引き続き、応援・シェアいただけましたらとても嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします!
皆さま、こんにちは!
私たちのプロジェクト「乳幼児の内なる世界を読み解く」に関心を持っていただき、誠にありがとうございます。
この度は、ご挨拶も兼ねて、私たちの自己紹介・クラウドファンディングにかける想いについてお話させていただきたいと思います。
自己紹介
私たちは、2年前、京都大学で同じ「発達科学」を研究する同志として出会い、研究を進めてきたチームです。具体的には、メンバーの大谷康太は「言語」の発達、渡部綾一は「意識」の発達、桑水隆多は「運動と認知」の発達、山本希は「社会的認知」の発達について研究を進めてきました。
研究テーマは全く異なるようにみえる4人ですが、全員が「心の内の世界に関心がある」点で深く共通しており、それらを明らかにする方法については度々議論を重ねてきました。本プロジェクトでは、それらの議論の起点に、私たちが個々に得てきた知見を掛け合わせ、「乳幼児の心の中の世界を読み解く」という壮大なビジョン実現を目指します。
クラウドファンディングにかける想い
上で述べたように、個々の研究テーマは全く異なるようにみえる4人ですが、全員が「心の内の世界に関心がある」点で深く共通しており、また、多様な研究手法を用いてきたことから、議論を進める中で「互いの知見を活かし合うことで、『子どもの内的世界の解明』に挑めるのではないか」と考えるようになっていました。
専門的な話になりますが、大谷は、子どもの心の中の言語(内言)の測定として新規のカウンティングタスクを考案し、渡部は、子どもの主観的世界(クオリア)の解明に瞬間的に写真を見せたり、類似度評価などの手法を用いて取り組み、桑水は、認知活動の背景として機能的近赤外線分光分析法や瞳の動態計測を用い、山本は、他者とのかかわりによる認知や感情の変化について実験心理学的に扱ってきました。これらの知見や実験手法を組み合わせることで、たとえば、心の中で起こった動き(内言など)と、外からは見えない生理反応(覚醒やストレス)・脳活動の関連の解明や、その詳細な主観的体験を記述・理解できるのではないかと考えています。
なぜ、クラウドファンディングか?
今回、私たちが(他の助成金等ではなく)敢えてこのクラウドファンディングに挑戦した大きな理由は、「この難しく奥深い基礎研究を、いろんな方々に知っていただきながら進めたい」と考えたからです。もともと、基礎研究は「〇〇を発明する」といったわかりやすい成果に即座に直結しづらく注目されにくいと言われてきました。しかし、長期的には、社会を変える上で重要な知見を提供する基盤となりえて、だからこそ多くの方に知っていただくことが、いずれ未来の子どもたち、そして私たちにとっての社会を変革する源泉となっていくのではないかと思っています。
今回の目標金額は100万円です。メンバー一同、初めての取り組みで不慣れなところもありますが、よろしければ、応援・シェア、そしてサポーターになっていただけましたらとても嬉しいです。
そして、すでにサポートくださった皆さま、本当にありがとうございます。今後、こちらでは順次研究に関する活動報告を行なって参ります。サポーター限定記事も公開していきますので、ぜひご注目ください。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!
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