Yannick Pagetさんとの出会いと、「量子x音楽」の共同研究の始まりについては、前回の【誕生秘話(2)】で少しお話ししましたが、その後の展開について、ここで記してみましょう。
和音と素粒子の間の対応をもとに、素粒子の反応を音楽に翻訳する作業が始まりました。「素粒子の標準模型」と呼ばれる、現在知られているすべての素粒子の間の相互作用を記述する数式は、対称性と呼ばれる原理で書かれています。対称性によると、17種類の素粒子は様々な量子の性質を持っており、それは電子なら電荷が−1である、といった数字の組み合わせに集約されます。その数字が、ちょうど足すとゼロになるような組み合わせで素粒子は反応を起こすのです。
様々な素粒子の反応を、素粒子の標準模型や超ひも理論に基づいて書き下し、それを、和音との対応ルールを用いて音楽に翻訳してみるというチャレンジが始まりました。電磁気学的な相互作用や、弱い相互作用、強い力、そして重力、それぞれが活躍するような典型的な状況を物理学で記述します。素粒子の反応を、「ファインマンダイヤグラム」と呼ばれる素粒子論特有の描画法で描くと、それがちょうど、素粒子がどのようにくっついたり離れたりするかを時間変化を追って眺められるようになります。それを音楽に翻訳すれば、和音の流れが生まれるのです。
もちろん、このままでは、人間が美しいと感じられる音楽にはなりません。私たち人類が楽しむ音楽とは、今までの音楽の歴史に基づいて、進化発展してきたものです。そこには音楽の作曲理論があり、それ自体は素粒子論や量子とは深く関係はしていません。Yannick Pagetさんは、今まで学んで実践してきたご自身の音楽理論を用いて、素粒子の反応にどう気付けられた和音列をモチーフとして、作曲に取り組まれました。
この作業には、音楽家Yannick Pagetさんをしても、大変長い時間がかかりました。2021年9月には、大阪のザ・シンフォニーホールでご自身の指揮により、交響曲の元となる楽曲「アマテラス」を初演されます。この作品には、光や重力の考えなどが取り込まれ、劇場で配布されたパンフレットには物理学の説明が長く載っており、集まった聴衆の方々が物理学の考えに触れることとなりました。
これらが元となり、最終的に、交響曲として結実したのです。このたびの量子フェスで上演される交響曲は、このように誕生しました。
当然のことながら、音楽と物理学は違います。交響曲そのものが全て量子の考えに基づいているわけではありません。しかし、人間が何を美しいと感じるか、そして作曲された交響曲が物理学の量子という考えへの入り口となるように、この交響曲は作曲されています。Yannick Pagetさんと私の共同研究は、お互いをリスペクトしながら、ひとつの芸術となりました。量子フェス会場で、この新しい芸術を、ぜひ楽しんでください!
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