現在社会において、人々は職場や学校、家庭での心労、子育てや人間関係の悩み、将来への不安などを抱え、日常的にさまざまなストレスや生きづらさに直面しています。これらの問題に対して、芸術的な表現活動が持つ「セラピューティックな力」が注目されています。絵や音楽、ダンス、演劇などの表現活動には、心を癒し、活力を与える力があり、ストレスの緩和や解消に役立つことがわかっています。
地域社会では、この力を活用して人々のケアや手助けをする「担い手」の活動が拡がっています。担い手は、絵画教室や音楽教室の先生、写真家、陶芸家、その他、多岐にわたり、必ずしも芸術や心理の専門教育を受けているとは限りませんが、参加者が安心して表現できる空間と方法を提供します。このような活動では、個人の考え方や感じ方、その人らしい表現を尊重し肯定的に受け止めること、技術的な上手下手や正確さで評価しないこと、が重視されます。
参加者は、楽しく身体を動かしたり、表現に集中したり、思いや感情を表出したりすることで、
■ 気持ちがスッキリする
■ 自分の本音や新たな一面に気づく
■ 自分に自信を持ち、自己肯定感が高まる
■ できなかったことが少しずつできるようになる(例:指が動くようになる、発語できるようになる)
といった経験をしながら、活力を取り戻したり潜在能力を開花させたりして、エンパワーされていきます。
このような表現活動は、それだけで全てを解決する魔法の杖ではありません。しかし、人々の心の健康に役立つことは多くの事例が示しています。
芸術の力を用いた活動といえば、絵画療法、音楽療法など各ジャンルの芸術療法があります。これらは臨床の領域で行われる心理療法です。一方、私たちの研究対象は、日常生活の領域で実践されている活動です。
私たちは、こうした地域社会で活動する担い手を応援し、人々と担い手をつなぎ、より多くの人が生き生きと暮らせる社会の実現をめざしています。
私たちは、担い手250名に対するアンケートと30名へのインタビューを行い、活動の実態と課題を明らかにしました。
【実態】
1.担い手は全国に分布している。
2.活動の多くは個別的・自発的であり、ケアや育成について自ら学びながら現場で実践を重ねている。
3.活動分野・目的は「教育」「福祉」「保健」「能力開発」の複数にわたる。
4.活動の対象は幼児から高齢者まで幅広い。
【課題】
1.立場を示す統一した概念がなく活動内容や意義を明確な言葉で説明しにくいため、社会的認知度・理解度が低い。
2.活動の内容や質を評価する基準がないため、独善的になるリスクがある。
3.社会的な制度や枠組がないため、活動が不安定である。
課題解決には、まず活動の可視化が必要です。そこで、多種多様な活動を整理・分類し、全体として「エンパワメント」と定義しました。下図のように、活動領域の点で心理療法としての芸術療法とは区別されますが、どちらも人の心や生活に関わるという点で連続しています。
次に取り組んだのが、評価基準の設定です。私たちは心理職や対人援助職など各分野の知見を参照しながら、調査協力者の担い手たちと協働し、現場の内実に沿って評価ポイントとなる基本的事柄(活動の構成要件)について検討と改訂を重ね、8カテゴリー26要件を抽出しました。
しかし、多様で自発的な活動に画一的な評価基準を適用することは、活動本来の良さである自由さや創造性を損ないかねません。それよりも、担い手の資質と活動の質の向上という本来の目的に立ち返り、この評価基準を用いて担い手自身が自己評価・自己分析し、活動にフィードバックするほうがはるかに実践的で即効性が高いと考えました。
現在は、引き続き担い手たちの協力を得ながら、本格的な実装化の段階へと進んでいます。自己評価ツールをハンドブックの形にまとめ、普及させる計画です。これを多くの担い手に使ってもらい、効果を検証していくことが、その次の課題です。
本プロジェクトのメインテーマは、担い手のスキル・質の向上のための自己評価ツールを完成させ、より多くの担い手に使ってもらえるよう普及させることです。
自己評価ツールは、自分の活動の目的や方法、理念などを明確にするためのチェックリストや評価基準表などからなります。「知識・スキル」「自己理解」「心理的安全性」「経営・マネジメント」「基本理念・ミッション」などの項目について、それぞれ質問文に答えていき、自分の活動の特長や強み、弱みをつかみます。そして、めざす方向を見定め、それに向かって行動計画を立てるようサポートします。どの分野にも共通して必要な内容が盛り込まれ、初心者から経験の長い人まで、共通して使うことができます。これから担い手になろうと考えている人にも参考になる内容です。
これまでに協力いただいた担い手からは、「客観的に自分を見つめられた」「改善点がわかった」「こんなツールがほしかった」などの声をいただいており、有用性が認められています。
今後は次の3段階でプロジェクトを進めていく計画です。
1.現在の自己評価ツールを改善し、試用版として完成させる。
2.担い手のためのオンラインワークショップを開催し、試用版ツールの使い勝手・有用性・改善点等をヒアリングする。また担い手同士の交流促進を図り、ネットワーク形成に繋げる。
3.ツールを最終的に完成させ、それを盛り込んだハンドブックを作成する。ハンドブックは、冊子のほかインターネットで閲覧およびダウンロードできるようにする。
表現のセラピューティックな力を実感している担い手たちは、その力を活かして困っている人を助けたいという思いをもって、模索しながら道を切り拓いています。私たちは研究者の立場で、そうした担い手たちを応援し、人々がより生きやすい社会を実現したいという思いで、課題解決に取り組んでいます。
心を癒したり元気づけたりする表現活動の力がもっと認知され、広がっていけば、楽しく創造的な方法で、日々のストレス解消をしたり、他者と繋がったり、心のエネルギーをチャージしたりすることができます。社会のセーフティーネット機能の強化にも役立ちます。
しかし、こうした活動と担い手の存在は、まだまだ知られていません。活動を支えるための社会基盤もほとんど整備されていません。担い手のやる気とボランティア精神にほぼ全面的に頼っている状況です。熱意はあっても燃え尽きてしまい、活動を続けられなくなる人もいます。私たちは、この現状を改善したいと強く願っています。
すべての人が自分らしく、生きやすい社会を実現するために、どうか本プロジェクトへのご支援をお願いいたします。
ご寄附いただいた皆様へ、確定申告により税制上の優遇措置が適用される領収書を学校法人都築学園より発行致します。
なお、領収書の日付は、お申込み受付日やカード決済口座からの振替日ではなく、アカデミスト株式会社より学校法人都築学園に入金された日付となります。
【法人・団体様からのご寄附】
・全額損金算入が可能です。(法人税法第37条第3項第2号)
【個人様からのご寄附】
・所得税…寄附金額(総所得金額の40%を上限とする)から2,000円を差し引いた額を、当該年の課税所得から控除することができます。
・個人住民税…学校法人都築学園を寄付金控除の対象法人として条例で指定している都道府県・市区町村にお住いの方は、個人住民税の控除を受けることができます。
「芸術」というと少し敷居の高い言葉ですが、実際は日常のなかに美的感性や身体感覚を取り入れて、こころの調性や活性化を目指すさまざまな場が既に存在しています。一方、芸術の各モダリティ(音楽・美術・身体表現等)には「○○セラピー」としてそれぞれの学術領域があります。それとは一線を画して、すでに存在する地域に根差した社会活動に着目したのがこの研究プロジェクトです。さまざまな芸術と個人を繋げるための社会における場の有用性を探り、推進するプロジェクトを心から応援するとともに皆様のご支援をお願いいたします。
この研究は、個人やコミュニティをエンパワーする芸術の力に着目し、それが地域に根差すことを目指しています。そのためには、地域で市民を巻き込みながら活動を主導していく人々を育てることが必要です。このクラウドファンディングで得る研究活動資金は、参加型の芸術活動を支える担い手育成のための具体的な施策を創造するために活用されます。誰もが参加できる芸術活動が地域に根差し、その力で地域を活性化させようとする試みは、成熟国家である日本で求められる社会的活動の一つではないでしょうか。ぜひ皆様のご支援をお願いいたします。
私は30年以上に亘り、A.ミンデルのプロセス指向心理学に基づいたアートセラピーとカウンセリングを提供し、絵画と音楽の教室を開いてきました。「上手く、間違わずに」から脱却し、自由にこころのままに表現することを目指しています。自分の中の意識や感覚、感情を分析しながら、自分が創造する作品にどんな感動と共感を発見できるか、その結果どんな精神的自分を見いだせるかが優先されます。
これを数値や言葉で説明するのは難しいものです。科学的根拠を求める学問領域とはかけ離れているように思われる私たちの活動を正面から取り上げ、学術的に論じつつ、活動の展開に寄与せんと挑む研究姿勢は斬新で、その勇気と挑戦意欲に共感と支援を惜しまずにはいられません。ぜひご支援をお願いいたします。
地域の居場所づくりのために活動をはじめて29年。心が疲弊しきった子どもや大人が、寄り添い型の絵画制作を通して笑顔と自信を取り戻し大きく成長していく姿を長年見てきました。
私がこの研究と出会ったのは、心のケアを必要とする子どもが増え、多種多様な支援の方法について自らも学び模索をしていた時でした。調査への協力を通じ、自身の活動への確信を強めると同時に、改善点についての多くの気づきを得ることが出来ました。この研究は、活動の立ち位置を把握することで弱点を見つけ、足りない部分をどのように補うのか、より良い運営の道しるべになります。
私たち担い手が活動しやすい環境づくりを、今回のプロジェクトにより推進していただけることを切に願っております。
この研究は、我々のような実践者がそれぞれの「目指す在り方」を模索し、取り組む姿勢やセッション内容の質を改善していくことに役立つものです。
私は「ことば音楽療法士」の育成にも携わっていますが、そこで伝えるべき基本的な事柄を、本研究から多く得られます。これは職業としての地位向上にも繋がり、結果としてクライアント、社会へ良い貢献がなされていきます。
この研究は、我々のような実践者に光を当て、その発展のために試行錯誤されており、我々にとって大きな味方となっています。これからも続けられていくべき研究であり、ぜひご支援をお願いしたいと思います。
Date | Plans |
---|---|
2024年9月~12月 | 自己評価ツール制作・監修 |
2025年1月~4月 | 自己評価ツールを使ったオンラインセミナー |
2025年4~6月 | ハンドブック編集・発行 |
メールでお礼のメッセージをお送りします。
このリターン実施は2024年秋ごろを予定しています。
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academist Journalに寄稿する研究報告レポートにお名前を掲載します。
このリターン実施は2025年春~夏ごろを予定しています。
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本プロジェクトで作成するハンドブックにお名前を掲載いたします。
このリターン実施は2025年春~夏ごろを予定しています。
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本プロジェクトで作成するハンドブックを1冊進呈いたします。
このリターン実施は2025年夏ごろを予定しています。
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本研究について、研究メンバーとディスカッションする機会を設けます。
具体的な内容や日程は、相談のうえ調整いたします。
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セラピューティックな表現活動の担い手による表現ワーク体験の機会を設けます。担い手は、金子昌太郎氏を予定しています。
具体的な内容や日程は、相談のうえ調整いたします。
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担い手とのオンラインワークセッション and others
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