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酒井治子
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酒井治子

専門は食育、地域栄養教育。管理栄養士、保育士の養成や研修に関わっています。食事場面に限らず、子どもが食べものを育てたり、創意工夫してお料理を作ったりする中で、様々なこと感受したり表現したりする姿をじっと観察するのが好きです。「子どもってすごいな」「人間って面白い!」と、様々な工夫を展開する姿に魅了されています。子どもの「もっとやりたい!」という想いや「どうして?どうして?」の問い、そして、「そっか!」の気づきがゆったりと循環できるような関わりを見える化し、社会に貢献できるようしていきたいと思います。ここ数年、親の介護に直面し、食べることと生きることが直結していることを痛感し、皆が心地よい食卓を通して暮らしを豊かにし、いのちをつむぎ、響き合わせる場づくりができたらと思っています。

あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?

私が研究を通して成し遂げたいことは、「食べる」という生きる喜びに直結した根源的な行為に焦点を当て、子どもが心地よく、もっと主体的に関わり、食べることを楽しむ場を作っていくことです。そのために、子どもの食事場面での行動の発達過程や、援助の方法を明らかにしようとしています。栄養摂取という機能面のみならず、一生を通した「人間らしい食の営み」に目を向けることにつながるからです。

「食」の場は子どもが五感を研ぎ澄まし、発見・気づき・驚き・喜び・楽しさを感じ、次の行動を自ら意思決定していく、まさに「本物から学ぶ機会」を日常的に創出できるホリスティックな学びの場です。調理はもちろん、「食べる」という日常の体験からも、SDGsへの関心の根源となる「科学する心」や、豊かな感性をもって表現することも発達していくと考えています。

しかしながら、乳幼児の実際の生活をみると、親や保育者が「子どもに食べさせる」ことが中心となり、子どもはその受け手になりがちです。「受け身の食」から「子ども主体の食」へ、その転換ができるための科学的な証拠を見出していきます。同時に、本取り組みは、家庭での食の悩みを解決し、子育てに自信を持つための方法にも貢献すると考えています。

どのようなアプローチで実現しようとしていますか?

私は、子どもの食行動の発達と食育について研究を行ってきました。博士論文では、日本の食文化に根付き、子どもにとって使いにくい二本の棒「箸」に注目しました。VTR観察から、試行錯誤しながら変化する子どもの姿が分析でき、箸で「はさむ」という行為発達のプロセスと、箸を持たない手での協調行為の重要さを見出しました。同時に、対象物である料理の硬さ・粘り気や滑りやすさ等への適応性にも注目し、単一的である「飯を中心とした主食」と、多様である「主菜」「副菜」、それを組み合わせた日本食が、子どもの発達の環境としていかに重要であるかを明らかにしてきました。

さらに、実践的な「食」のガイドラインの策定に関わってきました。食育基本法の公布に先駆け、2004年に厚生労働省から通知された「楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針」の主任研究者として、乳幼児期のダイナミックに変化する食行動を支えるための食育の指針づくりを行ってきています。
こうした研究を基に、箸等の道具使用の出発点である「つかみ食べ」の時期、0~1歳児に焦点を当て、多感覚的な感受の状況を解明することに挑戦します。こうした多感覚的な感受が、面白さを見出し、幼児期の科学する心、生命尊重概念の獲得、そして、想像力を膨らませてアートする、すなわち、生きる喜びと楽しさを見出すことにつながるのではないかと考えています。

今回のプロジェクトで行う研究テーマはなんですか?

本プロジェクトでは、保育者による援助をうけながら、0~1歳児はどのように多感覚的に食べ物と関わっているか、具体的な行為を集積し、感受の状況を解明していきます。

0~1歳児には、大人とは異なる食べる行為が表出します。「一旦口に入れた食べものを出してじっと見る」といったような、大人から見ると、一見、遊んでいるかのように見える行為です。平成27年度の乳幼児栄養調査でも、こうした行為を困ったことして、1/3以上の保護者が挙げています。子どもが「つかみ食べ」によって多感覚的な感受を育むことを、保護者や保育者が困ったことではなく、頼もしいこととして捉え、支えていくように援助していく必要性を提言したいと考えています。

そこで、本プロジェクトでは、離乳中期(7~8か月)から1歳児の6人を対象に、保育園の協力を得て、食事場面を収録し、量的・質的な継続的な観察を行います。援助は子どもの担当保育士が行い、食事内容は同一の献立とし、5日間の観察期間を設けます。 さらには、同一児の6か月間の変化を分析します。

1)子どもの多感覚的な感受、「気づき」の体験を複数の分析者による可視化

2)保育者の「主体性が発揮できるよう援助する行為」の抽出

3)子どもの発達的な変化の中で、出現頻度が多くなる行為と少なくなる行為を量的に分析

以上の結果を踏まえ、「つかみ食べによって多感覚的な感受を育む食の援助プログラム」を構築し、それを保育者や保護者が保育や生活に応用できる動画教材を作成します。

Why we need your support

「食べることは生きること」「生きることは食べること」、そのいずれもが今、大きく揺らいでいます。新型コロナウイルス感染症の拡大により、人と人が向き合って食べることが禁止され、共食への不安感が大きくなるなど、今まで考えもつかなかったことです。

そんな今だからこそ、本研究では、人生の出発点でもあり、離乳過程にある子ども(0~1歳)が食べることを楽しみあい、称えあう姿、そして、変化(発達)する姿を解明することから、人間のダイナミックな食の世界を理解する糸口にしたいと考えています。この研究は、ESD(Education for Sustainable Development)を「持続可能な社会づくりのための担い手を育む教育」にもつながります。教育・保育業界のみならず、食品関連事業者等を巻きこみ、社会で「食の豊かさ」の価値を再考するために、学術系クラウドファンディングに挑戦します。

今回いただいた支援は、食事場面の観察で使用するVTRや録音機器を複数台購入するための費用として使う予定です。研究成果は論文としてまとめると共に、親世代への支援、保育者の研修、地域の関係機関の研修に還元できる動画、資料を制作し、賛同者に還元していきます。ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

<共同研究者>
宮里暁美 お茶の水女子大学 アカデミック・プロダクション 特任教授
吉永早苗 東京家政学院大学現代生活学部・教授 
末松加奈 東京家政学院大学現代生活学部・助教
會退友美 東京家政学院大学人間栄養学部・助教


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ご寄附いただいた皆様へ、確定申告により税制上の優遇措置が適用される領収書を東京家政学院大学より発行致します。

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Recommender's comment

田中 弘之
東京家政学院大学 人間栄養学部 教授

食育基本法が施行されてから、17年。この食育基本法に基づく第4次食育推進基本計画では、健全な食生活の基盤として持続可能な環境が不可欠であり、食を支える環境の持続に資する取組を推進することが重要とされています。いわゆる「SDGs(持続可能な開発目標)」の視点です。人と人との間で生きゆく「人間の栄養の礎」となる小さな子どもの時期に、大人と、さらには、社会と“食をつなぐ営み”を通して、SDGsの視野を育む本プロジェクトを応援し、研究の進展を楽しみにしています。

森 眞理
神戸親和女子大学 発達教育学部 教授

本プロジェクトは、乳児期の子どもがケアされる受動的な存在から、身の周りの環境に興味・関心を持ち、出会うヒト・モノ・コトに働きかける主体的な存在であることを、「つかみ食べ」から明らかにしようとするチャレンジ精神旺盛な研究です。 幼い子どもにとって、食は生命保持のためだけではなく、好奇心・探究心という科学や美しさという美学の心を育むことでもあります。乳児のイメージのパラダイムシフトをもたらす本プロジェクトの展開を期待し、推薦いたします。

Project timeline

Date Plans
2022年10月 調査計画を研究倫理委員会に提出
2022年11月 協力園での打ち合わせ、予備調査
2023年5月 第1回観察調査開始 データ収集
2023年8月 第2回観察調査開始 データ収集
2023年10月 第3回観察調査開始 データ収集
2023年12月 縦断調査データの解析
2023年 冬〜 研修動画制作、学会発表及び論文発表(予定)

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