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Kenjiro Kawaguchi
千葉大学、特任研究員/博士課程
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Comment from academist staff
要介護高齢者の継続的な調査から、よりよい介護サービスを目指して

Maiko Abe

「介護」は誰もが受ける側にもする側にもなり得ます。医師でもある河口さんが目指すのは、年齢を重ね介護が必要となっても自分らしく幸せに暮らせる社会、そして介護する人が無理なく介護を続けられる社会です。身体機能が低下しても充実した生活を送ることができるような介護サービスにつなげるため、まずは2万人の要介護高齢者を対象とした実態調査で介護環境や社会的背景が及ぼす影響を明らかにしていきます。「より多くの皆さまに関わってもらうことで、より意味のある研究が行える」という思いで挑戦する河口さんに、応援お願いします!

年齢を重ねても自分らしく過ごすことのできる社会を目指して

皆さんはどんな老後を思い描いていらっしゃるでしょうか?

私は研究者として働く傍ら、医師として診療にも従事しています。高齢の患者さんに尋ねると、「人の世話にはなりたくない」、「家族に迷惑をかけたくない」といったような返答が多く、介護を受けることに関してネガティブなイメージをもたれている方が多いように思います。

しかしながら、誰もが年齢を重ねるにつれ身体機能は低下し、介護が必要となる可能性があります。世界有数の長寿国日本において、周囲への遠慮から介護を受けたくないと考える人が少なくない現状を、非常に残念に感じています。

歳をとってもご本人らしく生き生きと幸せに過ごすことができる社会を実現したいと私は考えています。

介護環境が及ぼす影響を検証し、介護サービスの向上につなげる

老年期を幸せに暮らす上で解決すべき課題が3つあると考えます。

(1)要介護状態の悪化予防
介護が必要な状態(要介護状態)でも住み慣れた環境で長く生活するには、心身の健康をなるべく良い状態で維持することが鍵となります。近年、社会参加や社会交流など、社会的な要素が要介護状態に至るのを予防する上で重要であることが分かってきました。このような知見を応用し、要介護状態の悪化を予防する新たな手立てを見出したいと考えています。

(2)介護者の負担軽減
介護保険制度が始まり、様々な介護サービスを手軽に利用できるようになりました。それでも、介護において家族の役割はとても大切です。今後は、働きながらの介護や老老介護が増加すると予測されます。家族介護者が無理なく介護を続けられるように、介護者の負担に配慮した施策が必要です。

(3)要介護高齢者の主観的なQOL向上
今まであまり重視されていなかった課題として、生きがいや幸せといった主観的な生活の質(QOL: Quality of life)があります。身体的な制限はあったとしても、日々の生活が本人にとって充実していることが大切であり、本人が望む生活を実現できるよう支援する介護のあり方を検討したいと思います。


このような課題を解決するため、次のようなステップで長期的に研究を進めていきたいと思います。

(1)要介護高齢者を対象としたアンケート調査

(2)(1)の調査の継続的な実施(3年ごと)

(3)自治体が保有する医療・介護に関するデータの突合、データベースの構築

経時的に調査することで個人の変化を捉えることができ、介護環境や社会経済環境などの違いが個人に及ぼす影響を検証することが可能となります。このようにして得られた知見を将来の政策や介護サービスに応用し、これからの介護をより良いものにしていきたいと思います。

要介護高齢者の大規模調査で実態を明らかにする

今回の研究では、要介護高齢者を取り巻く介護状況について実態調査を行います。日本の要介護高齢者に関する大規模な調査データは乏しく、要介護高齢者の介護状況や介護環境に関する情報が不足しています。したがって、掲げた3つの課題を中心に要介護高齢者の現状を「見える化」することから始めたいと思います。

つまり、要介護高齢者の介護環境や社会環境、家族介護者の介護負担感、要介護高齢者の主観的QOLなどをアンケートにより調査します。特に社会的背景(人との関係性や交流、外出頻度、社会参加の機会など)を中心に調査し、身体的機能や主観的QOLなどとどのように関連するかを検証することで、課題解決の糸口としたいと考えています。調査は、介護サービスのあり方を目的として自治体が実施する在宅介護実態調査の一環として行います。現在のところ、約2万人規模の調査となる見込みです。

Why we need your support

クラウドファンディングは一般の方に研究に参画してもらうことができる貴重な機会です。介護というのは多くの人に関わるテーマであり、一般の方々と共に考えながらより意義の高い研究に育てたいと考えています。そのような考えからこの度クラウドファンディングに挑戦することとしました。是非皆様からは支援とともに介護に関する意見を頂戴したいと思っています。

支援金は、調査に活用いたします。調査票の印刷、郵送、集計などに関わる費用に使用させていただきます。

私が所属する千葉大学予防医学センター社会予防医学部門・日本老年学評価研究機構は、20年以上に渡り、健康長寿を目的とした科学的な基盤づくりのために日本老年学的評価研究(JAGES: Japan Gerontological Evaluation Study)を行ってきました。2019年には全国64市町村と共同して、要支援・要介護認定を受けていない高齢者40万人以上を対象に調査を行いました。調査結果をもとに国内外合わせて600編以上の論文が今までに出版され、政策立案にも数多く援用されています。

今回の研究はJAGESの要介護高齢者版ともいえる研究であり、蓄積した経験やノウハウを活用して研究を拡張し継続的に発展させ、介護に関する様々なエビデンスを創出していきたいと考えています。

介護が必要でも自分らしく暮らせる社会の実現に向けた一歩として、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

本研究の共同研究者
・近藤克則(千葉大学予防医学センター教授・日本老年学的評価研究機構代表理事)
・斎藤民(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部 部長)
・横山芽衣子(千葉大学予防医学センター 特任研究員)
・野口泰司(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部門 研究員)
・田近敦子(浜松医科大学医学部医学科 健康社会医学講座 訪問共同研究員)
・長谷田真帆(京都大学大学院 医学研究科社会疫学分野 助教)

***
ご寄附いただいた皆様へ、確定申告により税制上の優遇措置が適用される領収書を千葉大学より発行致します。

なお、領収書の日付は、お申込み受付日やカード決済口座からの振替日ではなく、アカデミスト株式会社より千葉大学に入金された日付となります。

【法人・団体様からのご寄附】
・全額損金算入が可能です。(法人税法第37条第3項第2号)

【個人様からのご寄附】
・所得税…寄附金額(総所得金額の40%を上限とする)から2,000円を差し引いた額を、当該年の課税所得から控除することができます。
・個人住民税…千葉大学を寄付金控除の対象法人として条例で指定している都道府県・市区町村にお住いの方は、個人住民税の控除を受けることができます。
***

Recommender's comment

近藤克則
千葉大学予防医学センター教授/日本老年学評価研究機構代表理事

私の研究室では、20年以上に渡り、日本の高齢者のwell-being(幸福・健康)に着目して様々な研究を行ってきました。今回のプロジェクトは介護が必要な高齢者に対象を拡大した試みとなり、新しい知見が数多く得られると思います。みなさんからの支援をもとに、高齢者の方々がいつまでも生き生きと暮らすことが可能な社会の実現に貢献したいと考えています。

斎藤民
国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部 部長

高齢者人口が増える中、どのように年を重ねていくのが幸せなのか、というウェルビーイングに注目が集まっています。
ウェルビーイングについて様々な研究がなされていますが、介護を必要とする高齢者にとって何が重要かは、まだあまり良く分かっていません。
今回の研究によって要介護高齢者のウェルビーイングに対する理解が進み、要介護になっても、あるいは認知症になっても幸せに暮らすことができる社会に近づくことを期待しています。

Profile

Kenjiro Kawaguchi

私にとってのテーマは、「入院高齢者患者さんの身体抑制をなくす」でした。学生時代の病院実習で認知症高齢者がベッドに拘束されている姿をみて衝撃を受けたのがきっかけでした。「果たして自分の両親に同じことができるだろうか?」という思いが頭を巡りました。医師として高齢者の診療に携わるようになり、ますます入院環境に疑問を抱くようになりました。残念ながら、自分が晩年に受けたい医療は病院にありませんでした。「最期はストレスなく自由に過ごしたい」、そのような思いから、「入院せずに住み慣れた場所で長く暮らすために何ができるか」ということを考えるようになりました。今回の研究を通じて少しでも思いを実現できればと願っています。

Project timeline

Date Plans
2022年11月 調査開始
2023年3月 調査結果の集計
2023年5月 データの一次分析終了
2023年10月 学会発表
2024年3月 報告書作成

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本研究に関連するテーマ(介護予防、在宅介護、健康の社会的決定要因など)について、オンラインセミナーを開催します。

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今回の調査研究で得られた結果や今までの研究成果など、現地にお伺いして報告させていただきたいと思います。

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