academistスタッフからの一言
フタホシコオロギを用いた昆虫の発生研究の経験を持つ三戸准教授と渡辺助教は、この度「昆虫食」という新しい研究分野に挑戦することを決めました。果たしてフタホシコオロギは、2050年の人類を支える食料になり得るのでしょうか。未来の食生活を開拓するお二人の研究にご注目ください!
担当者:柴藤亮介
近年、世界的な人口増加による将来的な食糧不足の問題が取り上げられるようになってきました。2050年には、世界人口が90億人に達すると言われており、深刻な食糧不足が懸念されています。この問題に対して、2013年に国連食糧農業機関(FAO)から報告書「Edible insects Future prospects for food and feed security」が出されました。要約すると、昆虫を養殖して不足する食糧を補おうという提言です。
昆虫は栄養素の面から見ても、高タンパク質、低カロリーでヘルシーな食糧であると言えます。この報告書では、いくつかの種類の昆虫が取り上げられていますが、その中でも注目されているのがコオロギです。実際に、ヨーロッパやアメリカではコオロギを使った食品を販売する会社も起ち上がり、大きな注目を集めています。
一言でコオロギといっても、エンマコオロギやタンボコオロギなど、さまざまな種が存在します。現在食用として養殖されているのは「ヨーロッパイエコオロギ」ですが、私たちは熱帯原産の「フタホシコオロギ」に注目しています。以下の写真はフタホシコオロギの成虫です。翅の付け根に白い斑点が2つあることから「フタホシ」と名付けられました。
ヨーロッパイエコオロギとの違いは、体の大きさです。成虫同士を比べると、フタホシコオロギの方が一回りから二回りは巨大です。体が大きいこともあり、栄養面でもフタホシコオロギの方が優れていると考えられます。一方、飼育にはヨーロッパイエコオロギの方が水の必要量が少ないことや、長生きすることから、飼育の手間が少なくてすみます。この飼育のしやすさから、養殖にはヨーロッパイエコオロギが用いられていますが、私たちは大きさや栄養面で優れているフタホシコオロギを食用として利用可能にしたいと思っています。
私たちは、これまでにフタホシコオロギを用いた昆虫の発生研究を行ってきていたため、既に小規模での飼育をしています。基本的なセットは、コオロギの隠れ家としての卵ケース、水とエサのシャーレです。新鮮な水とエサが必要なので毎日補給しつつ、水のシャーレは3日に1回のペースで新しくしています。また、糞や脱皮の抜け殻が出るので1週間に1回は新しい飼育箱に引っ越しています。すこし面倒ではあるものの、小規模で飼育する場合は問題ありません。
しかし、食用として大規模に飼育、養殖するには現在の方法では手間もコストもかかりすぎます。そこで今回、大規模飼育を目指したフタホシコオロギの自動飼育装置を開発していきたいと考えています。
開発の第一ステップとして、「自動で水を飼育箱に供給するシステム」と「掃除が極力必要なく、コオロギの回収が容易な飼育箱」の開発を行います。
①自動で水を飼育箱に供給するシステムの開発
給水ポンプを用いて配管内に水を循環させ、そこから各飼育箱に細い管で水を引きます。コオロギは水を直接飲めないので、引いてきた水を紙、布、スポンジに染み込ませて与える予定です。
②掃除が極力必要なく,コオロギの回収が容易な飼育箱の開発
飼育箱には透明なプラスチックやアクリルを用いる予定です。また掃除の手間を減らすために,糞やゴミが一カ所に集まるような仕掛けを考えています。さらに,コオロギを効率的に回収するためには上へのぼるというコオロギの習性を利用できないかと考えています。
この2点をクリアできた後には、エサの自動供給システムやLEDを利用した光環境制御システムを開発し、効率よく大規模にフタホシコオロギを飼育できるようなシステムを構築したいと考えています。同時に、食用とする訳ですから、どのようなエサを与えればよりおいしいコオロギになるのかという検討も進めていきます。
しかし、昆虫食の研究は一般的ではなく、なかなか研究費を獲得することができません。そこで今回、皆さまに
①自動で水を飼育箱に供給するシステム
②掃除が極力必要なく,コオロギの回収が容易な飼育箱
の試作品を作製するためのご支援をお願いしたいと考えています。集まった研究費は、水循環のためのポンプや配管、飼育箱の作製に使わせていただく予定です。また、試作品を作製するには私たちには技術がありませんので、外注することになりますが、その費用も必要です。
昆虫食は食糧問題の解決策であるとともに、ヘルシーなスーパーフードとして世界中で注目されています。イナゴの佃煮などの伝統的な昆虫食もある日本から、さらに大きな流れを一緒に起こしていきませんか?私たちの目標,趣旨に賛同していただける方からのご支援お待ちしております!
三戸太郎(MITO Taro)<br>昆虫の個体発生の仕組みについて、ゲノムや遺伝子の働きに着目して研究を行っています。昆虫の進化を理解することが大きな目標ですが、その過程で昆虫研究の様々な可能性について思考をめぐらせています。<br><br>渡辺崇人(Watanabe Takahito)<br>私はこれまでフタホシコオロギを用いて昆虫の発生研究を行ってきました。最近では,コオロギを用いた応用面での研究をしたいと考えており,今回のプロジェクトを立ち上げました。実家が飲食店を営んでいるということもあり,「食べる」ということに大きな思い入れがあります。このプロジェクトを皮切りにコオロギを有効活用する研究を始めていきたいと思います。
以下のスケジュールで研究を進めていきます。
2016年04月〜05月末 | クラウドファンディングに挑戦 |
2016年07月〜08月 | 機器類の選定と購入 |
2016年08月 | 研究開始 |
2016年秋 | 東京虫食いフェスに参加 |
2017年03月 | 応用動物昆虫学会 |
注目のプロジェクト一覧
Copyright © academist, Inc. All rights Reserved.