この度、「ソンダー」研究のクラウドファンディング期間が終了し、67人の皆様から649,901円のご支援をいただきました。ご協力に心から感謝いたします。
クラウドファンディングの期間中は、ボストン日本女性の会で「ソンダー」に関する講演したり、朝日新聞デジタル論座で「ソンダー」のクラファンに関する記事を書いたり、Academist BARで「ソンダー」について語ったり、こちらの「コメント」欄を通して返信したりなど、「ソンダー」について知って頂く機会をいくつも持たせていただき心から感謝いたします。
そうした中で、皆様から「ソンダー」に対する大きな関心をうかがったり、ご自身の関心領域に引き寄せて考えて頂いたりして、当方も大変勉強になりました。近接概念のシンパシー、エンパシー、コンパッション、ソーシャルキャピタルなどとの近さや遠さ、具体的な実践や現れなど、研究へのヒントとなることも沢山ありました。
分断や抑圧が横行するこの時代において、よりよい社会を構想し、そして実践してゆこうとする「心の在り方」としての「ソンダー」(=自分と同じように他者を尊重し、それぞれの人生の物語に思いを寄せる)を、現象の中に見出し、「ソンダー」を育む環境についても構想できるような研究を、IAFAの仲間と共に探求していきたいと思います。
進捗状況を適宜ご紹介していきますので、今後もどうぞよろしくお願いいたします!!
「ソンダー」、という言葉は耳慣れない言葉かもしれません。これは、「誰もが人生の物語を持っていることに気付くこと」と定義されるジョン・コーニグによって作成された新語で、日本語では「共感理解力」という言葉がもっとも当てはまります。2016年にTedx Berkleyで紹介されて以来広く共感を呼び、動画は現在190万回も再生されています。
私が「ソンダー」という言葉に出会ったのは、2020年の秋でした。一般社団法人Inclusive Action For All(IAFA)という国際協力やグローバル市民教育に取り組む団体を設立し、8月に、ケニアやパキスタンやバングラディシュで障がい児教育や女性のエンパワメント、障碍者の経済的自立運動、難民支援をしているIAFAフェローの活動を、高校生を中心に知ってもらうオンラインイベントを開催しました。この時参加した高校生たちは、遠い国の困難な状況にある子どもたちの問題を自分事として考え、できることはないかと話していました。こうした若者の思いや行動は、「慈善」や「ボランティア」という言葉が当てはまらないと考えていた時に、「ソンダー」という言葉が飛び込んできました。
今、世界中で人が人として大事にされないことが起こっています。「ロヒンギャ虐殺」、「ミャンマー民主化弾圧」、「シリア内戦」は日本のメディアでも報じられています。身近な問題としても、「新型コロナ感染者や回復者が差別される」という状況も起きています。こうした問題に気付き、よりよい社会を構想し、そして実践する、そのような志向の「心の在り方」としての「ソンダー」(=自分と同じように他者を尊重し、それぞれの人生の物語に思いを寄せる)が、現代社会を動かす重要な要素と仮説を立て、人はどんな時に「ソンダー」に気づくのか、どのようにしたら「ソンダー」を得ることができるのかを深く探求してみたいと思います。
これまで社会学の視点から、病気や障がいやマイノリティで生きづらさを抱える方々の困難な状況を、社会問題として提起してゆくスタイルの研究をしてきました。その際、インタビューやアンケートなどで、この通常は声をあげづらい人たちの声なき声を掬い取り、時には当事者の手記や記録を活用し、加えてすでにある資料を分析しなおすという複合的な方法(Multi MethodやTriangulation)をとってきました。今回のプロジェクトでも、Multi Methodで当事者のリアリティを明らかにし、問題の生じる社会的構造を分析しながら、問題を認識し、問題解消への行動を促す心の在り方として「ソンダー」について探求したいと思います。
本研究では「ソンダー」の概念を明らかにし、人はいかに「ソンダー」に気づくのか、またどのようにしたら「ソンダー」を得ることができるのかを調べるために、アクションリサーチという方法をとります。アクションリサーチとは、研究者とコミュニティメンバーが、問題関心を共有して、当該問題について協働的に探究し、その成果を社会改善のために活用してゆくというものです。
IAFAのメンバーには、社会学の研究者だけでなく、会社員、伝統工芸家、主婦、大学職員、弁護士、医師、大学生などが在籍しており、IAFAフェローには、ケニア、パキスタン、バングラディシュ、アメリカで市民活動をしているメンバーがいます。また、ジュニアフェローとして、2020年夏のオンラインイベント参加者を中心とした日米英在住の中高生達も在籍しています。こうした多世代の多様性を持ったコミュニティメンバー、海外の若者たちと共に研究チームを作り、対面・オンラインのイベントを開催し、参加する若者とラポール(関係性)を作り、インタビュー、フォーカスグループインタビュー、アンケートなどの調査を行って「ソンダー」へのアプローチを試みたいと思います。
アンケート調査は、小学生から大学生までの若者で、日本語母語者から100名、ロヒンギャ難民キャンプと、ケニアのインクルーシブ教育施設と、パキスタンの障がい者自立運動から合わせて100名に行います。インタビューは日本語母語者から5名、海外から5名、フォーカスグループインタビューは日本語母語者と海外を合わせて6名(使用言語は英語)で実施します。
テロや戦争、民主化を阻む独裁政治、経済優先による環境破壊など、人々の幸福や心の豊かさとは程遠い現実があります。そうした時代において、自己と異なる他者の出会いによって、他者を自己と等しく尊重する認識を得て、問題解決の行動に発展させるものとしての「ソンダー」は、私たちの社会にとって極めて重要です。しかし、この新しい概念はこれから研究が蓄積されるのを待っている状況で、先行研究に乏しく、通常の競争的研究費に応募するには形式が整わず難しい状況です。そこで学術系クラウドファンディングに挑戦し、「ソンダー」研究にご関心ある皆さまに応援していただこうと思いました。
研究支援金は、調査実施費(15万円:参加者への謝礼含む)、消耗品購入費(2万円)、通信費(2万円)、イベント実施費用(15万円)、報告書並びに返礼品作成費(6万円)に使わせていただきます。
今回のアクションリサーチは、日本と海外の若者と共に、両者の出会いから始まる「ソンダー」の醸成に関する調査研究を行います。ロヒンギャの場合は、祖国であるミャンマーを追われ、難民キャンプでの生活を余儀なくされています。特にコロナ禍では、国連や国際NGOなどは生活必需品への支援は続けても、教育援助はストップし、難民キャンプ内のLearning Centerは閉鎖されてしまいました。そのなかで、ロヒンギャの若者たちは、さらに小さな子供たちを教える活動を始め、日本では、そうしたロヒンギャ難民のために何かできることはないかと若者たちが活動しました。3月22日にキャンプ内で大規模火災が起きて甚大な被害が生じましたが、すぐに支援の輪ができました。
この調査で「ソンダー」が検証されれば、この成果は、他の分野にも応用が可能です。そして「ソンダー」を育むための条件が明らかになれば、それを教育に生かすことができます。これは共に生きる社会を作るための人材養成となることでしょう。皆さまからのご支援をお待ちしております。
本研究に一緒に取り組む共同研究者
・八代江津子(IAFA理事、ナンタケットバスケット作家、日本ボストン商業会会長。GrayMist Enterprises Inc. CEO)
・北原秀治(IAFA理事、東京女子医科大学准教授、博士(医学))
・広本ケビン(IAFAフェロー、EBISUYA Japanese Marketオーナー、ボストン日本語学校教員)
・大城七瀬(IAFAフェロー、保育士資格取得。静岡県浜松市にて音楽とアートを広める活動中)
・道井 郁子(IAFA事務局、主婦)
・馬場 沙矢香(IAFA事務局、会社員)
・高橋 美代(IAFA事務局、昭和女子大学ボストンキャンパス勤務、ボストン・エデュケーショナル・エクスチェンジ代表、英国ヨーク大学院教育学修士)
時期 | 計画 |
---|---|
2021年4月 | クラウドファンディング挑戦 |
2021年7月 | 対面・オンラインでイベントを開催し、対象者とのラポールを作る |
2021年7-9月 | インタビューを実施 |
2021年9-12月 | フォーカスグループインタビューとアンケートを実施 |
2021年12月 | 対面・オンラインでイベントを開催し、対象者との意見交換をする |
2022年3月 | 研究成果発表会(対面・オンラインサイエンスカフェ)・研究報告レポートの提出(IAFAのHP上) |
2022年10月 | 研究成果をウェブ媒体や学術誌に掲載する |
ソンダー調査研究の結果をレポートにまとめて、2022年3月ごろにPDFでお送りします。
研究報告レポート(PDF)
38人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
研究報告レポートの謝辞に皆さまのお名前を掲載いたします。
研究報告レポートに謝辞掲載 / 研究報告レポート(PDF)
7人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
関係者によるオンラインでのサイエンスカフェにご招待します。皆さまとソンダーについてディスカッションしたいと考えています。開催は2022年3月中旬の夜の時間帯を予定しています。
オンラインサイエンスカフェ / 研究報告レポートに謝辞掲載 / 研究報告レポート(PDF)
17人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ロヒンギャ難民についてのオンラインセミナーへご招待し、セミナー中に謝辞を掲載します。開催は2021年10月の夜の時間帯を予定しています。
オンライン講座受講権 / オンラインサイエンスカフェ / 研究報告レポートに謝辞掲載 / 研究報告レポート(PDF)
3人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
論文の謝辞に皆さまのお名前を掲載いたします。
論文謝辞にお名前掲載 / オンライン講座受講権 / オンラインサイエンスカフェ / 研究報告レポートに謝辞掲載 / 研究報告レポート(PDF)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ロヒンギャ難民について、IAFAメンバーと個別のディスカッションにご招待します。皆さまのご要望に応じて、ケニア、パキスタンなどについてもお話できます。実施は2022年3月ごろを予定しています。
IAFAメンバーとの個別ディスカッション権 / 論文謝辞にお名前掲載 / オンライン講座受講権 / オンラインサイエンスカフェ / 研究報告レポートに謝辞掲載 / 研究報告レポート(PDF)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
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研究報告レポート(PDF)
38
人
が支援しています。
(数量制限なし)
研究報告レポートに謝辞掲載 他
7
人
が支援しています。
(数量制限なし)
オンラインサイエンスカフェ 他
17
人
が支援しています。
(数量制限なし)
オンライン講座受講権 他
3
人
が支援しています。
(数量制限なし)
論文謝辞にお名前掲載 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
IAFAメンバーとの個別ディスカッション権 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)