3月13日をもって目標金額に達成しました。
お世話になってきた各方面の皆様、シェアする過程でこのプロジェクトを知ってくださった方々、アカデミストの皆様に感謝申し上げます。ラオスの感染症生態プロジェクトは、地球環境変化とともに病原体と宿主がダイナミックに変化するもので、面白い研究になると思っています。新しい発見につなげられるように研究に励みたいと思います。
また、博士課程に進んだものの決まった研究費がなかったので、皆さんから応援の声をたくさん頂けたことは研究費的にも気持ち的にもすごくありがたかったです。今後もこのサイトやSNS等で、研究結果をシェアしていきたいと思いますので、ご期待いただけると幸いです。
熱帯・亜熱帯地域に蔓延し、特に貧困層に深刻な健康被害をもたらす疾病群を総称して「顧みられない熱帯病(NTDs)」と呼びます。世界保健機関は現在20の疾病をNTDsに定めています。NTDsの多くは、人間と動物のあいだを行き来する人獣共通感染症です。人だけでなく、環境中の昆虫や動物も感染症を維持する要因となるため、人の治療だけでは根本的な解決とはならず、環境中の媒介動物の生態の理解が必要です。
NTDsのひとつに、主にタイ・ラオス・カンボジア・ベトナムで蔓延しているタイ肝吸虫症があります。川魚を生で食べることでタイ肝吸虫という寄生虫に感染し、治療せずに20年ほどの期間を過ごすことで最終的に胆管がんとなる病気です。タイ・ラオスで1000万人の感染者がいると推定され、東南アジアでは大きな健康被害と捉えられています。治療薬の集団投与や食に関する教育が行われていますが、魚の生食は地域文化に深く根ざしているため、蔓延地域では高い感染率が維持され続けています。
さらに対策を困難にするのが生態学的な要因です。この寄生虫は巻貝と魚類の体内で成長し、最後に人を含んだ哺乳類に感染します(この貝・魚のことを中間宿主と呼びます)。季節によって水域が大きく変わるため、中間宿主も移動していることが推定されます。
私は修士学生のときに、ラオスにおけるタイ肝吸虫の生態調査というテーマに出会い、この複雑な生態を理解したいと研究に没頭しました。
かつて日本にも似た寄生虫症が蔓延していました。そのひとつである日本住血吸虫症は、集団治療と殺貝剤を用いた徹底した巻貝の駆除により、世界で唯一住血吸虫症を撲滅した国となりました。しかし、大陸国では広大な土地と水域が広がり、日本と同様の対策は取れないと考えられています。
タイ肝吸虫においては上述のように2つの中間宿主がいます。中間宿主である巻貝はラオスにおいては特定の1種のみであるとされており、宿主となる魚は複数のコイ科魚類で20種類以上が感染することが確認されています。これらは広大な河川や水田内に住んでいるため駆除して回ることは不可能です。
タイ肝吸虫の環境中の生息地を特定し、また水域変化による生息地変動を把握することは、将来タイ肝吸虫がどこに移動し流行するか予測することにつながると考えています。予測結果は、調査・治療・予防対策などの社会政策に役立てられることが期待できます。
私はこの目標を、「環境DNA技術」を用いて達成しようと考えています。環境DNAとは水中に含まれている遺伝子情報のことで、水を調べることでその水域にどんな生き物がいたか特定することができます。この10年弱で急速に普及してきた環境DNA技術を活用し、タイ肝吸虫と中間宿主の分布を調べようと計画しています。
タイ肝吸虫症の分布に関わる調査は、人の検便などによる感染率調査や中間宿主の捕獲による感染率調査が行われてきました。人の感染率調査はその地域周辺にタイ肝吸虫がいることを示す重要な指標ですが、魚は市場で流通して大勢に行き渡るため、タイ肝吸虫の正確なマップとは言えません。中間宿主の調査は直接的な指標と言えますが、捕獲と個体ごとの感染確認が重労働なため、多点調査を継続するのが難しいと考えられます。また巻貝は感染率が低く、蔓延地域で数百匹捕獲したけれど1匹も感染していなかったといった報告例もあります。
これらの点から、環境DNA技術を用いることが突破口になるのではないかと考えています。フィールドでは環境水を採水するだけなので、人手も時間も削減して多地点調査ができます。またひとつの水サンプルを寄生虫・中間宿主どちらにも使えるため効率的です。持続可能な調査手法であることは、長期的な調査においても重要なため環境DNA技術が有効活用できると考えます。
本手法はすでにデング熱媒介蚊や日本住血吸虫とその宿主など、他のヒト感染症にも応用され、調査手法として活用することが模索されています。私たちのチームは、タイ肝吸虫の環境DNA検出にテスト的に取り組み、ラオスの環境サンプルを用いた研究論文を国際誌に投稿しています。
タイ肝吸虫の治療薬は現段階で1種類しかなく、薬剤耐性の報告はまだありませんが、今後獲得される可能性はあります。気候変動で宿主の分布が変化すると懸念している研究者もいます。タイ肝吸虫および巻貝・魚類の分布を速やかに把握することで、魚を生で食べても安全な漁場の特定、タイ肝吸虫の環境中への流入経路の推定、流行地推定や予測などにつなげられると考えています。
この調査は私の3年間の博士課程研究テーマでもあります。遺伝子資源手続き等があるので、実際のラオスでの現地調査は1年目の後半以降に行う予定です。分布の季節性変動を捉えようと思うと、最低でも季節ごとに1回の調査が必要となります。年3シーズンを2年間で調査するとなると、6回以上渡航しなければなりません。ラオスへの渡航費は最も安くて片道3万円ほどで、加えてラオス国内の移動・宿泊費や現地調査スタッフ雇用費で1回の調査に最低でも15万円はかかります。またサンプル分析費が別途かかります。現状、このタイ肝吸虫研究のための確定した研究費がありません。
クラウドファンディングでご支援いただいた資金は、調査1年目にかかる費用として使わせていただきます。現地でデータが取れ、ある程度の形になれば2年目以降の研究費獲得にもつなげられます。研究の第一段階を応援していただけると大変ありがたいです。
私は今後も、環境モニタリングを通して感染症の予防につながる研究をしたいと思っています。ご支援のほどよろしくお願いいたします。
Date | Plans |
---|---|
2020年5月 | ラオスフィールド採水調査開始 |
2020年9月 | ラオスフィールド調査2回目 |
2020年11月 | 日本熱帯医学会(グローバルヘルス合同大会)にて中間報告として発表 |
2021年1月 | ラオスフィールド調査3回目 |
2021年5月 | ラオスフィールド調査4回目 |
2021年9月 | ラオスフィールド調査5回目 |
2022年1月 | ラオスフィールド調査6回目 |
2022年3月 | 国際誌への論文投稿 |
2022年9月 | 博士論文完成 |
研究の詳細な進捗などをレポートとしてお送りします。応援よろしくお願いいたします!
研究報告レポート(PDF版)
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調査風景の写真を撮影し、お送りしたいと思います。応援よろしくお願いいたします!
調査現地ラオスの写真(電子版) / 研究報告レポート(PDF版)
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調査国ラオスの風景などのポストカードをお送りしたいと思います。応援よろしくお願いいたします!
ラオスのポストカード送付 / 調査現地ラオスの写真(電子版) / 研究報告レポート(PDF版)
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2020年11月開催の熱帯医学会での本研究に関する発表の際、謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料(電子版)を送付いたします。応援よろしくお願いいたします!※学会発表が叶わなかった場合、その後の学会発表資料の謝辞にお名前掲載いたします。
学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / ラオスのポストカード送付 / 調査現地ラオスの写真(電子版) / 研究報告レポート(PDF版)
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本研究成果を発表する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。応援よろしくお願いいたします!※研究成果をまとめられるよう努力いたしますが、論文掲載に至らない可能性もありますので、ご承知おきいただけますと幸いです。
論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / ラオスのポストカード送付 / 調査現地ラオスの写真(電子版) / 研究報告レポート(PDF版)
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長崎大学内にある施設、熱帯医学ミュージアムの案内をさせていただきます(1時間半程度)。展示を見ていただきながら、寄生虫やウイルスについて解説いたします。応援よろしくお願いいたします!※現地までの交通費・食費などは含まれませんのでご了承ください。
長崎大学熱帯医学ミュージアムのご案内 / 論文謝辞にお名前掲載 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / ラオスのポストカード送付 / 調査現地ラオスの写真(電子版) / 研究報告レポート(PDF版)
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