これまでに本プロジェクトにお力添えいただいた皆様、本当にありがとうございました!
おかげさまで、目標金額を達成することができました。
多くの皆様から暖かいメッセージを頂いたことが、チャレンジを続ける上で大きな原動力になりました。
また、当事者やそのご家族の方、精神疾患と向き合う方と共に歩まれる方からのコメントも頂き、この領域の皆様の関心の高さと医療従事者に対する期待の大きさに、身が引き締まる思いでございます。
プロジェクトページに記載した様に、ご支援頂いた費用は学会発表・論文投稿に伴う費用、解析に必要なソフトの導入などに充てさせて頂きたいと考えております。
学会発表は、本年度中に2回を予定しております。
1つ目は、「統合失調症患者さんの地域移行と医薬品適正使用は関連するかどうか?」、という内容です。薬剤師と精神科医のコラボによって実施された抗精神病薬の適正使用を実施することで、どの様な要因が地域移行達成に寄与するかを解析した結果をお示しする予定です。
もう一つ目は、今回のチャレンジの眼目である「非定型抗精神病薬は費用対効果に優れるかどうか?」という内容です。こちらでは、日本人を対象とした初めての定型抗精神病薬に対する費用対効果を行った結果を提示する予定です。本チャレンジで導入できる専用ソフトによって、専門的な解析を実施する予定です。
折に触れてSNSで情報発信して参りますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
改めて皆様からお力添え頂けたことを感謝申し上げます。
我が国の医療費は平成29年度に42兆円を超えました。そのうちの7兆円以上は2000年以降に増加した入院外医療費です。そして入院外医療費の約半分が薬剤費で占められており、「薬の費用対効果評価」を示すことが求められています。ここでいう「薬の費用」は、薬そのものの費用(薬価)ではなく、治療に要したさまざまな費用を含めたいわば「薬物治療に要した費用」を指します。一方、薬物治療の目標はというと、それは「地域移行」の達成です。地域移行とは、患者さんが単に病院から退院するだけでなく、地域で生きがいを持って過ごしていただく状態をいいます。薬物治療の費用対効果評価は、「薬の真の価値」を示すうえで重要な評価方法のひとつです。
私たちは現在、精神科領域で使用される抗精神病薬について、その費用対効果の評価を進めています。抗精神病薬には大きく分けて「定型抗精神病薬(古典的な薬)」と「非定型抗精神病薬」の2分類があり、現在は非定型抗精神病薬の使用が多くの治療指針で推奨されています。非定型抗精神病薬は古典的な薬よりも副作用リスクが少なく、入院中心の治療から地域移行の促進へという日本の医療政策の進展に寄与できる存在と考えられているためです。しかし、たとえば非定型抗精神病薬のひとつであるブロナンセリンと、古典的な薬のハロペリドールとを臨床的に同じ用量で比べると、前者は後者の20倍にも及ぶ費用がかかります(1日薬価:788円vs40円)。抗精神病薬は生涯にわたっての服用が必要なため、仮に30年以上飲み続けると仮定した場合は他の領域の薬剤よりも非常に高薬価になります(下図)。
薬価だけをみると非定型抗精神病薬は「効くけど高い薬」と評価されるでしょう。一方で医療費は入院費用よりも外来費用の方が低額なため、治療効果が高く副作用が少なく済めば、患者さんが地域移行を達成できる可能性が高くなり、結果として医療費の削減につながる可能性もあります。
本来であれば単なる薬価の高い低いだけではなく、薬の真の価値に基づき薬物治療の意思決定をすることが望まれます。その手段のひとつに費用対効果評価がある一方で、日本では「多剤大量使用」の現状もあり、適正使用下での評価を前提とする費用対効果評価は、そもそも精神科領域ではほとんど実施されていませんでした。日本の厳しい医療保険財政状況と、精神科薬物治療に関する薬剤経済学的裏付けが乏しい現状をふまえれば、ガイドラインで推奨されている有用性の高い薬剤の使用を継続することが困難になる可能性が懸念されます。最悪の場合、精神疾患患者の不利益ともなりかねず大変懸念しております。
一般的に、抗精神病薬の有効性については、臨床試験で評価されます。しかし、臨床試験では「症状の緩和」という中間指標による評価が限界です。というのも、地域移行の達成には長期間を要し、医療従事者以外の人たちの評価が不可欠ですが、それらすべてを臨床試験で評価することは難しく、中間指標により評価せざるを得ないのが現状だからです。
地域移行の達成は評価期間が長いだけでなく基準が多彩なため、症例数を数多く集めてデータの信頼性を高めるという方法を適用しづらいと考えられます。
一方、費用対効果評価は、VBM(value based medicine:価値に基づく医療)の評価方法です。すなわち、「お金」という万人に共通する評価基準により、「地域移行の達成」そして「薬物治療の適正化」という価値を精神科に馴染みが薄い人や、一般の方々にもわかりやすく示すことが可能になります。私たちは、患者さんの地域移行という薬物治療の達成目標に基づいた評価・意思決定が実施されることを目指し、抗精神病薬の費用対効果評価を示したいと考えています。
抗精神病薬の費用対効果評価を示すうえでの最大の課題は、日本における適切ではない抗精神病薬の使用実態です。統合失調症薬物治療ガイドラインでは単剤治療(1剤だけで治療を継続すること)が推奨されており、欧米では単剤化率が8~9割です。一方で、我が国の単剤化率は4割にとどまっています(精神科臨床薬学研究会調査結果)。これにより、適正使用を前提とする抗精神病薬の費用対効果評価がほとんど実施されていません。
私が所属する協和病院では抗精神病薬の単剤使用を病院の治療方針としており、2018年度は単剤化率が9割に達しました。単剤化が推奨された理由としては、抗精神病薬を複数また大量に使用しても効果は頭打ちとなるだけでなく、副作用リスクが高まるからです。副作用としては、手足の震えや日常の動作の鈍化、メタボリックシンドロームのリスク増加などが挙げられ、これらは患者の地域移行を阻害する要因となり得ます。
抗精神病薬の単剤使用に関する臨床研究結果や、これまでの当院での治療経過を用いることで費用対効果評価を実施することができると考え、これまでにデータ収集を進めてきました。得られているデータとしては、単剤治療を実施し地域移行を達成した症例の、QOL(quality of life)の評価指標や副作用発現状況などがあります。これまでの解析では、薬剤費が年間40万円増加する持効性抗精神病薬注射剤の使用が再発抑制に寄与し、結果として医療費抑制にも寄与する可能性などを費用対効果評価により明らかにすることができました。
今回の研究ではより専門性・確実性の高い解析を行い、関連学会で発表や論文投稿をするため、クラウドファンディングに挑戦することを決めました。統計的手法を駆使して、薬剤ごとに費用対効果評価を実施します。
ご支援いただいたお金は、専門性の高い解析に必要なソフトの購入や、学会発表にかかる費用、英語論文作成に当たっての校正費、論文投稿費に使用する予定です。また、得られたデータは所属学会に諮り、ガイドラインなどの指針に盛り込んでもらえるよう関係各所に協力を求める予定です。
今回のプロジェクトで抗精神病薬の費用対効果評価を実施することで、旧来の抗精神病薬よりも高額な非定型抗精神病薬は、適正に使用することで地域移行達成に貢献でき、費用対効果に優れることが示せるかもしれません。また、先に示したとおり入院費用よりも外来費用のほうが低額のため、地域移行の達成は医療費抑制につながります。これによりもたらされる医療費削減幅は、薬剤費の増額幅を吸収できる可能性もあります。
薬の費用対効果評価を示すことで、薬の真の価値に基づいた薬物治療が実施されるよう、研究を進めていきたいと思います。ご支援のほどよろしくお願いいたします。
時期 | 計画 |
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2019年2月 | クラウドファンディング挑戦 |
2019年中頃 |
論文投稿(予定)
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2019年秋 |
日本神経精神薬理学会で発表(予定)
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2020年初め〜中頃 |
論文投稿(予定)
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研究の詳細な進捗などをレポートにまとめてお送りします。応援よろしくお願いいたします!
研究報告レポート(PDF版)
26人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
2020年9月20-22日の日本医療薬学会年会にて本研究に関する発表をする際、謝辞にお名前を掲載させていただきます。また、発表資料(電子版)を送付いたします。お力をお貸しください。応援よろしくお願いいたします! ※学会発表が叶わなかった場合、その後の学会発表資料の謝辞にお名前を掲載いたします。
学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
22人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
サイエンスカフェにご招待いたします。2019年秋に、秋田と東京での全2回の開催を予定しています。費用対効果評価や精神科領域の薬物治療の現状や課題についてお話しさせていただきますので、なんでも聞いてください。 ※当日ご参加いただけない場合には、後日資料を共有させていただきます。
サイエンスカフェ参加権 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
11人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究成果を発表する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。 ※研究成果をまとめられるよう努力いたしますが、論文の掲載に至らない可能性もございますこと、ご承知おきいただけますと幸いです。
論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
7人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
ある薬剤のパラメータ(副作用発現率、薬価、地域移行達成率など)を変えた場合のシミュレーションについて、複数のシミュレーション結果をまとめた資料(PDF版)をお送りいたします。副作用が変化したり、薬代が高くなったりした場合に、薬の有効性の評価がどのように変わるかを知ることができます。わかりやすくまとめたいと思いますので、ご支援のほどよろしくお願いいたします!
複数のシミュレーションの実施結果 / 論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
講演会に出張いたします。費用対効果評価や精神科領域の薬剤経済学的評価の現状について、ご要望にお応えする形で講演させていただきます! ※旅費・宿泊費等は別途頂戴いたしますのでご留意ください。
出張講演 / 複数のシミュレーションの実施結果 / 論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 学会発表資料の謝辞にお名前掲載 / 研究報告レポート(PDF版)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
研究報告レポート(PDF版)
26
人
が支援しています。
(数量制限なし)
学会発表資料の謝辞にお名前掲載 他
22
人
が支援しています。
(数量制限なし)
サイエンスカフェ参加権 他
11
人
が支援しています。
(数量制限なし)
論文謝辞にお名前掲載 他
7
人
が支援しています。
(数量制限なし)
複数のシミュレーションの実施結果 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)
出張講演 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)