
※本報告の内容はどなたでもご覧いただけます。
サポーターの皆さま、そして初めてご覧いただいた皆さまへ
いつも温かいご支援、本当にありがとうございます。
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2024年9月にacademistでこのプロジェクトを始めてから、約2年が経ちました。
この活動も、いよいよ一区切りとなります。
この2年間、本当にありがとうございました。
最初にacademistを始めたとき、私は博士課程の研究を続けながら、
「研究成果を論文で終わらせず、社会に還元したい」
と考えていました。
研究をして、論文を書いて、それで終わるのではなく、研究から生まれた知見を実際の介護現場で使えるものにする。
そして、研究者である私自身が現場に入り続けなくても、誰かが使い、対話し、実践につなげられる「道具」にしていく。
そのために、このacademistで皆さまに支援をお願いしました。
振り返ってみると、この2年間は、自分が最初に想像していた以上に大きく状況が変わった期間でした。
・博士号を取得
・会社の設立、研究部門の作成
・海外の事業所との研究スタート
最初に描いていた計画通りに進んだこともあります。
一方で、できなかったこともあります。
そして、当初とはまったく違う形に変化したものもあります。
今回は最後の公開レポートとして、この2年間で何ができたのか、何ができなかったのか、そして、これからどこへ向かおうとしているのかをまとめたいと思います。
■ 2024年9月、academistを始めたときに考えていたこと
academistを始めたとき、研究を通じて実現したいこととして、私は「ともに生きる」という双方向の関係性を社会に広げることを掲げていました。
特に介護現場では、
「ケアする人・ケアされる人」
という一方向の関係だけではなく、
同じ場を生きる一人の人として、ともにその場をつくっていく関係
をどうすれば実現できるのかを研究してきました。
そのために、私はパターン・ランゲージという方法を用いて、介護現場に蓄積されている実践知を言語化してきました。
研究の着想は2013年。2018年から本格的にプロジェクトを進め、全国の介護現場の実践を調査し、その成果を2021年に『ともに生きることば』として出版しました。
academistを始めた時点では、その次の段階として、大きく3つのことを考えていました。
・「ともに生きるケア」の実践を支える「思考の補助具」をつくる
・実際の介護現場に導入し、活用方法や効果、課題を検討する
・研究成果を誰でも使える形にし、社会実装する
特に強く意識していたのは、
「金子がいないとできない研究」にしないこと
でした。
金子が研修に行かなければ使えない。
金子が説明しなければ理解できない。
それでは、本当の意味で研究成果を社会に還元したことにはならないと思っていました。
だから当時は、さまざまな活用方法を「レシピ」として整理し、誰でも使えるように公開することを考えていました。
■ この2年間で、できたこと
まず、この2年間で確実に前に進んだことがあります。
一つ目は、研究成果を実際に使ってもらう機会が増えたことです。
『ともに生きることば』を使った研修やワークショップを、介護施設や福祉現場、教育の場などで継続してきました。
現在までの累計では、
・全国250施設以上
・延べ4,500名以上
の方々に、研修やワークショップなどを通じて参加していただいています。
もちろん、この数字のすべてがacademist期間中のものではありません。
研究を始めてからこれまでの累計です。
ただ、この2年間を通じて、「研究成果を実際に使ってもらう」という動きが、以前より明らかに広がりました。
・介護職員の振り返り。
・チーム内での価値観の共有。
・新人職員の教育。
・学生の実習経験の振り返り。
・大学や介護福祉士養成教育。
さまざまな場所で活用方法が生まれています。
自分が研究としてつくった言葉が、現場で誰かの経験を引き出したり、普段話さなかったことを話すきっかけになったりする。
これは、研究を始めたときから目指していたことの一つでした。
■ 「ともに生きることば」が、研究成果から「使われる道具」へ
この2年間で特に嬉しかったのは、『ともに生きることば』が、少しずつ私の手を離れて使われ始めたことです。
最近、第32回日本介護福祉教育学会で基調講演をさせていただきました。
その後、参加された先生方から、
「学生の実習でのエピソードを共有する授業で使いたい」、「学生はたくさんの経験をしているのに、話すきっかけがなければ話せない。30の言葉が、そのエピソードを引き出すトリガーになるのではないか」、「学生が実践と理論を往還しながら学ぶために活用したい」、「今後、講義の教材として使いたい」
といった言葉をいただきました。
研究成果を「説明する」のではなく、誰かが自分の現場に持ち帰り、自分なりの使い方を考えてくれる。
研究成果が、自分の手を離れて使われ始める。
この状態を、academistを始めた当時から目指していたのだと思います。
■ 博士号を取得しました
academistを始めた当時、私はまだ博士課程の大学院生でした。
博士論文を書きながら、研究の仕事をし、活動を続けていました。
その後、博士論文を完成させ、博士(政策・メディア)を取得することができました。
大学に入学してから、約10年。
長い時間をかけて続けてきた研究に、一つの区切りをつけることができました。
ただ、博士号を取得して感じたのは、
博士号を取ることが研究のゴールではないということでした。
むしろ、「ここから、この研究をどう社会につなげていくのか」という次の問いが、より大きくなりました。
■ 研究成果を社会に届け続けるために、会社をつくりました
この2年間で最も大きな変化の一つが、非営利型株式会社KOTOBUKIを立ち上げたことです。
academistを始めた時点では、会社をつくることがこのプロジェクトの中心になるとは思っていませんでした。
しかし、研究成果を社会に届けようとすればするほど、
研究だけではできないことが見えてきました。
・研修を継続する。
・教材をつくる。
・海外に届ける。
・視察を受け入れる。
・他の組織と連携する。
・スタッフと一緒に活動する。
・資金を循環させる。
研究成果を社会に届け続けるためには、研究を継続的に社会実装するための組織が必要だと考えるようになりました。
その結果として生まれたのが、KOTOBUKIです。
今振り返ると、この2年間の一番大きな変化は、
「研究成果を社会実装したい」と考えていたところから、「社会実装を続けるための組織そのものをつくる」ところまで進んだこと
だったと思います。
■ 日本の介護実践知を、世界へ
もう一つ、academistを開始した時点ではここまで想像していなかったのが、海外への展開です。
この2年間で、
・シンガポール
・タイ
・中国
・ベトナム
など、海外との活動が大きく増えました。
World Ageing Festivalへの参加。
タイでのPMAC2026 Side Meetingへの登壇。
シンガポールの大学との共同ワークショップ。
中国・北京での医療・介護視察。
海外の介護関係者との交流。
そして、日本の介護現場を海外の方々に紹介する視察や研修。
こうした活動を続ける中で、以前より強く感じるようになったことがあります。
日本の介護現場には、世界と共有できる実践知がある。
ということです。
日本は、高齢化の「課題先進国」と言われ続けてきました。
しかし、高齢化の中で何十年も試行錯誤してきたからこそ、日本の介護現場には蓄積されている知恵があります。
それを日本国内だけに留めるのではなく、世界の実践者と共有する。
そして、日本から一方的に教えるのではなく、世界の実践から日本も学ぶ。
その循環をつくることが、現在のKOTOBUKI CAREの大きな役割になっています。
■ 「ともに生きるケア」から、「長寿を祝える社会」へ
研究テーマも、この2年間で少しずつ広がりました。
もともとの問いは、「ともに生きるケアを、どうすれば介護現場で実践できるのか」というものでした。
この問いは、今も変わっていません。
一方、介護現場や海外の方々と対話を続ける中で、もう少し大きな問いを考えるようになりました。
それが、「長寿を心から祝える社会とは何か?」です。
現代社会では、高齢化は、「社会保障費の増加」「人手不足」「負担」「解決すべき社会課題」
という言葉と一緒に語られることが多くあります。
もちろん、それらは現実として向き合う必要があります。
ただ、本来、人が長く生きること自体は、喜ばしいことだったはずです。
それなのに、長生きすることが「社会に迷惑をかけること」のように語られてしまう。
この社会の価値観そのものについて、もう一度考えたいと思うようになりました。
■ KOTOBUKI Research Labをつくりました
その問いを研究するために、2026年、KOTOBUKIの中にKOTOBUKI Research Labを立ち上げました。
大学に所属しなければ研究はできないのか。企業の中でも研究を続けられるのではないか。実践と研究をもっと近いところで往復できないか。そう考えながら、新しい研究の形を模索しています。
現在、KOTOBUKI Research Labでは、
「長寿を祝える社会とは何か?」
をテーマにした参加型の社会調査をスタートしています。
一度きりのアンケートではなく、多様な立場の方々の声を継続的に集めながら、社会の価値観の変化を記録していきます。
集まった声は、今後「KOTOBUKI白書」として整理し、研究・実践・社会発信へ還元していく予定です。
academistを始めたときには、
「介護現場での研究成果を社会実装したい」
と考えていました。
そこから2年が経ち、
「社会実装の中から、次の研究テーマが生まれる」
という循環が生まれ始めています。
■ 研究以外のところにも、活動が広がりました
この2年間には、自分でも想像していなかった活動がいくつもありました。
研究成果を伝えるだけではなく、社会のさまざまな場所に関わるようになりました。
たとえば、
・介護福祉教育に関する学会での基調講演
・公益社団法人 高齢者福祉事業支援協会の理事への就任
・国内外の介護施設や研究者との連携
・海外アワードに挑戦する介護事業者の支援
・熊本での災害支援におけるバックオフィス活動
・教育領域でのパターン・ランゲージづくり
・起業家としてのピッチやコンテストへの挑戦
などです。
研究だけをしていたら出会わなかった方々と、多くの接点が生まれました。
最近では、人と人、施設と施設、日本と海外を「つなぐ」こと自体も、KOTOBUKIの一つの役割になり始めています。
■ 受賞や評価をいただく機会も増えました
この期間には、活動を外部から評価していただく機会もありました。
・Healthy Aging Prize for Asian Innovation 2024 国内優秀事例
・GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD 2024 Award
・次世代女性起業家ピッチコンテスト「NEXT FOUNDERS」優秀賞
・TOKYO MOONSHOT 最優秀賞
・Asia Pacific Eldercare Innovation Awards 2025 ファイナリスト
・GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD 2025 Award
・ビジネス創造コンテスト2025 受賞
などです。
賞を取ること自体が目的ではありません。
ただ、研究から始まった活動を、福祉、デザイン、ビジネス、国際的な介護など、異なる領域の方々に知っていただけたことは大きかったと思っています。
■ 一方で、できなかったこともあります
ここまで書くと、すべて順調に進んできたように見えるかもしれません。
実際には、できなかったこともたくさんあります。
academistを始めた当初、支援者の皆さまには、
・週1回のweeklyレポート
・月1回の活動報告会
・『ともに生きることば』活用セミナー
・ゲストを招いた対談や鼎談
・映像記録を残し、後からアクセスできるようにすること
などをお約束していました。
weeklyレポートは、途中から継続することが難しくなりました。
活動報告会についても、当初想定していた頻度で続けることはできませんでした。
すべてのイベントを映像として記録し、体系的にアーカイブすることもできませんでした。
また、研究成果を誰でも使えるようにするためにつくろうとしていた「レシピ」についても、当初思い描いていた形まで完成させることはできませんでした。
この点については、支援してくださった皆さまに対して、正直にお伝えしておきたいと思います。
■ ただ、別の形で前に進んだこともありました
一方で、当初の計画通りではなかったからこそ、生まれたものもありました。
weeklyレポートを毎週続けることはできませんでしたが、academistではこの2年間、70本を超える活動報告を公開してきました。
研究成果だけではなく、博士論文を書いている途中のこと。会社をつくったこと。海外に出たこと。受賞したこと。うまくいかなかったこと。経営について悩んでいること。新しい研究を始めたこと。災害支援に関わったこと。さまざまな途中経過を、その都度書いてきました。
振り返ると、academistは「完成した研究成果を発表する場所」ではなく、
研究と実践の途中を記録する場所
になっていたのだと思います。
■ 「レシピ」は完成しなかった。でも、社会実装は別の形に広がりました
当初、私は「レシピ」という形で研究成果を公開することで、「金子がいなくても使える」状態をつくろうとしていました。
これは、まだ十分に実現できていません。
一方で、当初考えていた「レシピ」とは違う形で社会実装が進みました。
計画していた方法そのものを達成できなかったことは事実です。
ただ、「研究成果を社会の中で使えるものにする」
という目標自体は、想像していた以上にいろいろな方向へ広がりました。
研究や社会実装は、最初に描いた計画通りに進むものではない。
この2年間で、それも強く感じました。
■ academistは、研究費を集めるだけの場所ではありませんでした
academistを始めたときは、研究を続けるための資金が必要でした。
研究活動、学会への参加、研究協力者への謝金、社会実装に必要な費用、そして研究を続けるための生活。
皆さまからいただいた支援は、そのための大切な支えになりました。
ただ、2年間を振り返ってみると、資金だけではありませんでした。
academist Prizeの仲間との出会い。
イベントでの対話。活動報告への反応。支援者の皆さまからいただいたメッセージ。
それらも大きな支えになりました。
academistの中で、「クラウドファンディングは仲間集め」という言葉を聞いたことがあります。
今は、その意味が少し分かるような気がします。
■ 支援を始めてくださったときの言葉を読み返しました
今回、最終レポートを書くにあたって、皆さまから最初にいただいたメッセージを改めて読み返しました。
「ともに生きる社会を目指して一緒に活動したい」
「研究成果を、自分の場合に置き換えて考えてみたい」
「ともに生きることばを通して地域のみなさんと本音でつながりたい」
「有機肥料のような『思考の補助具』」
「同じ業界にいる者として純粋に応援したい」
「研究と活動を進める姿を応援している」
いろいろな言葉をいただいていました。
支援をいただいた当時、私はまだ博士論文を書いている途中でした。
会社もありませんでした。
KOTOBUKI CAREもありませんでした。
KOTOBUKI Research Labもありませんでした。
ここまで海外との活動が増えるとも思っていませんでした。
その時点では、まだ形になっていなかった活動を支援していただいたことになります。
改めて考えると、本当にありがたいことです。
■ ご支援いただいた皆さま
この2年間、academistを通じて支援してくださった皆さまのお名前を、最後に掲載させていただきます。
academist上で表示されているお名前を、そのまま記載しています。
・工藤ゆみさん
・三浦 ひとみさん
・カーミットさん
・Yoshino Hiroshiさん
・前田 亮一さん
・gaoryuさん
・Takakoさん
・RShibatoさん
・Kenichi Shibataさん
・韓 すんあさん
・篠原敏子さん
・間瀬樹省さん
・土田 亮さん
・匿名ユーザーさん
・漆畑宗介さん
・Tsutomu Yamashitaさん
・Yuki Miyamotoさん
・渡部綾一さん
・土肥梨恵子さん
・げんさん
・ばんのゆうかさん
・山本美香さん
・田村昌弘さん
・Jackieさん
・川西俊之さん
・馬場基彰さん
・hayatakaさん
・田口愛実さん
・寺戸礼二郎さん
・武本雄貴さん
・YUKI TAKATAさん
・川口利恵さん
本当にありがとうございました。
■ 研究の問いは、次の問いへ
academistを始めたころ、
「ともに生きるケアをどう実現するか」
という問いを考えていました。
現在は、その問いを持ちながら、
「長寿を心から祝える社会とは何か?」
という次の問いにも向き合っています。
すぐに答えが出る問いではありません。
おそらく、数年で解決できる問題でもありません。
だからこそ、これからも長く考え続けたいと思っています。
社会の価値観が変わるには時間がかかります。
介護のあり方が変わるにも時間がかかります。
人と人との関係が変わるにも時間がかかります。
短距離走では解決できない課題だからこそ、長距離を走り続けるための方法を考えていきたいと思っています。
■ 最後に
2年間、本当にありがとうございました。
振り返ってみれば、計画通りにできなかったこともたくさんありました。
迷ったこともありました。
方向を変えたこともありました。
それでも研究を続け、実践を続け、ここまで来ることができました。
この2年間、研究を「支援していただいた」というだけではなく、
研究と実践がどこへ向かっていくのかを、一緒に見守っていただいた
という感覚があります。
まだまだ途中です。
「ともに生きる」というテーマについても、「長寿を祝える社会」についても、答えは出ていません。
これからも、研究と実践を往復しながら、一つずつ考え、試し、言葉にしていきたいと思います。
そして、研究で得たものを社会に返していきます。
改めまして、この2年間のご支援、本当にありがとうございました。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
金子 智紀
非営利型株式会社KOTOBUKI

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