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Yuzu Kobayashi

理化学研究所、Postdoctoral Researcher

Challenge period

2024-02-05 - 2024-03-31

Final progress report

Mon, 01 Jul 2024 17:45:50 +0900

Progresses

5 times

Supporters

27 people

Elapsed time

Mon, 05 Feb 2024 17:00:00 +0900

Profile

Yuzu Kobayashi

理化学研究所の小林柚子(こばやしゆず)です!
京大理学部で修士課程を修了後、一旦民間企業に就職しましたが、基礎研究の楽しさを忘れられずに退職して博士課程に進学しました。この月額型CFでのサポートをいただきながら、昨年無事に学位を取得しました!サポーターの皆さん本当にありがとうございました!!
研究者としての目標は、
・教科書に載っているような化学反応を原子分子レベルで詳細に理解すること
・科学を誰もが楽しめるコンテンツにすること

プライベートでは、小説を読むこと、美味しいお酒を飲むのが大好きです(最近はスコッチのウイスキーが好き)。よろしくお願いします!

What do you want to achieve through your research?

化学反応中の分子ひとつひとつの動きを描き出したい!

「すべてのモノは原子と分子でできている」という事実を知った高校生のとき、衝撃を受けました。空気も、人体も、宇宙も、複雑に見える化学反応も、原子と分子でシンプルに考えることができるということに感動し、世界のことが少し「わかった」気になりました。しかし、大学生になって、それらが実はまだまだ全然「わかっていない」という事実を知りました。例えば、教科書にも出てくる水が水素と酸素に分解する反応は、原子と分子を単位とした化学反応式で書いてしまえば一見簡単ですが、ではその分子ひとつひとつが反応中にどのように振る舞い、エネルギーを変換するのかという描像は実はまだ誰も明確に描くことができていません。今度は「え?わかっていないの?」という衝撃を受けました。ならば、自分の手で明らかにしたい!そう願うようになり、化学反応を単分子レベルで理解することを目指しています。

始まりは純粋な好奇心でしたが、今必要とされている水素の生成、CO2の有効利用、エネルギーの貯蓄や運搬を原子・分子レベルで最適化して究極的に効率化するという未来にもつながる社会的にも急務の研究です。

What kind of process are you trying to achieve?

「針」を使って化学反応中の分子ひとつひとつを「見る」ことで、複雑な化学反応のメカニズムを分子レベルで明らかにしようとしています。

分子ひとつひとつを「見る」ためには、それらに光を当てる必要があります。しかし、分子のサイズはnmスケール(1000万分の1cm)です。この範囲に光を当てることは通常の光学顕微鏡では不可能です。そこで先端が非常に鋭利な金属の「針」を使います。この針で金属などの表面をなぞると原子や分子を検出することができます(走査型プローブ顕微鏡)。さらにその針の先端に光を当てると、針の先端近傍にだけに光が閉じ込められ、そのnmスケールの微小な空間にだけ光が当たっている状態を作り出せます(探針増強分光)。この技術を使えば、化学反応中の分子を可視化できる...!と思いきや、実はこれを使った分子レベルの測定は、超高真空中、-200℃より低い温度で行われることが多く、様々な分子が複雑に入り乱れている実際の反応環境ではほとんど実現されていません。私の研究ではこの「反応環境の壁」を打破して、複雑な反応環境で分子ひとつひとつを可視化することで、化学反応研究に知見を与えたいと考えています。

What research topics are you currently working on?

独自技術の針を進化させるべく奮闘中です。

最近、「反応環境の壁」を打破できる新しい「針」の開発に成功しました。これまで、金属を鋭利に加工して作っていた針を、バイオ分野から発展してきた鋭利なガラスを使って作製することができました。これを使って、様々な分子が動き回る溶液中の環境で表面をなぞり、分子レベルの測定が可能になりました。もうできている!と思われるかもしれませんが、大きな課題があります。新しい探針によって測定の成功率が向上したのは確かですが、比較的均一で複雑なことが起こらない「単純な」試料に限られているのが現状です。この手法を使って、水素発生触媒、電池、CO2還元触媒など、身近かつ重要な化学反応を分子レベルで明らかにするためには、この新しい「針」による測定の感度を上げ、測定条件に左右されにくい万能なものにしていく必要があります。かなり地道な実験の積み重ねですが、今、自分だけが持っているこのガラスの針の技術を、あらゆる反応を分子レベルで「見る」技術まで高められるように、日々頑張っています。

Why are you challenging Academist?

科学を誰もが楽しめるものにしたいというモチベーションで、博士課程の3年間「単一分子を追える装置で化学反応のメカニズム解明に挑む!」というタイトルで月額型クラウドファンディングにチャレンジしていました。博士号を無事取得して、一旦はページをクローズすることになりました。早く業績をださなきゃという焦りが理由のひとつでしたが、いろんな先輩研究者の姿や意見を聞いて、研究室に閉じこもって「閉じた研究者」になるのは違うと考えるようになりました。クラファンというプラットフォームを通じて私の研究生活や考え方、私の分野に関する知識を共有しながら、一緒に楽しんでもらうことが、私の研究の大きなモチベーションになります。科学を誰もが楽しめるものにしたいという気持ちを大切に活動しながら、全力で研究者を続けていこうと今は考えています。

活動報告では、研究者生活や、考え方および私の分野の論文化されている最新の知見等についてレポートしていきます。(外部資金を用いて行った最新の研究データ等については開示できませんのでご了承ください。)また皆さまからの支援金は、研究費としてではなく個人の活動費として使用させていただき、その用途は活動報告にてご報告します。

まだまだ駆け出しの研究者ではありますが、化学反応を分子レベルで「見る」研究を一緒に楽しんでくれるとうれしいです!!

Recommender Comment

木村謙介
理化学研究所 研究員

1つ1つの分子の振る舞いを可視化して化学反応を描き切ることは化学者の夢であるものの、無数の分子がうごめきあう反応場において1つだけの分子に注目することは非常に難しく、新たな実験手法の確立が求められています。挑戦者の小林さんは、「針」をはじめとして個々の要素技術の地道な改良を積み重ねながら目標に挑む研究者です。その熱意が化学反応を「見る」技術の創出に繋がると期待し、応援しております。

澤田涼
東京大学 大学院総合文化研究科宇宙地球部会 日本学術振興会特別研究員

小林柚子さんは科学への情熱と素晴らしいコミュニケーション力を持った研究者です。分野外の研究者である私にも学問の壁を超え、研究の魅力を分かりやすく伝えてくれる力があります。小林さんのプロジェクトは、ただ支援するだけでなく、研究の楽しさに、彼女の情熱と視点から得られるワクワク感に、参加できる魅力があります。研究自体も興味深く、私もこの研究を心から応援しています。どうぞ、この面白い研究に共感し、応援の輪に一緒に加わってみてください。

竹谷 純一
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授

小林さんは、当研究室のメンバーとして3年間在籍し、大変難しい研究テーマであったにもかかわらず、十分な成果を修め、見事博士の学位を取得されました。小林さんは、一言でいうと、華のある研究者でして、明晰な頭脳による考察と、ダイレクトで的を射た発言によって、効果的なコミュニケーションができるため、人を惹きつける稀有な才能を持たれています。今後、研究でも事業でも成功されることが約束されている人だと思います。

Project timeline

Date Plans
2024年4月 針の改良
2024年9月 国内学会で発表
2024年10月 論文執筆開始
2025年4月 化学反応に関するデータ取得
2025年9月 国内学会で発表
2025年10月 論文執筆開始
2026年3月 国内学会で発表
2026年9月 国際学会で発表

Pledge Rewards

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This project is a monthly fee-based crowdfunding. Payment will be made from the month of support to the end of every month.
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