今回、クラウドファンディングに挑戦致します黒塀の里山保存会調査担当の後藤勇三郎です。普段は中山町郷土研究会などで郷土史を研究しています。中山町は山形県の県庁所在地である山形市やさくらんぼで有名な寒河江市に挟まれた県内で最も小さい町です。しかし、小さい町ながら様々な文化財が受け継がれている地域です。
私達、黒塀の里山保存会は、中山町岡地区で地域文化、特に当地に残る豪農の屋敷、旧柏倉家住宅とその一族についての保存・継承・発信に取り組んでいます。
当地に残る旧柏倉家住宅は代々柏倉九左衛門を名乗り、一族と共に周辺地域の発展に貢献してきた県内屈指の名家で、その家屋は令和元年に国指定重要文化財に指定されました。また、旧柏倉家住宅や近隣の旧家では屋敷地の周囲を黒塗りの板塀で囲った黒塀の町並み(画像参照)が残されています。
古来、寝食や仕事、娯楽などといった人々の生活はその土地の風土に合わせて営まれてきました。その代表的な舞台が家という空間です。家ごと、地域ごとに様々な違いがあり、暮らし方や住まい手の記憶は彩り豊かなもので、全く同じという家はありません。
しかし、戦後以降、社会や生活は急激に変化し、かつての人々の暮らしの様子は人々の記憶から失われつつあり、どこの地域も似通った暮らし方に変わってきています。そうしたものの中にも、誰かにとって魅力的な物は多く、時には未来を生きるための手がかりや拠り所があるのではないでしょうか。こうした地域に残る人々の歴史や生活の中で紡ぎ出されてきた文化の保存に取組み、古民家や地域の魅力を後世に継承していきたいと考えております。
皆様にご支援をお願いする今回のプロジェクトでは、柏倉一族の分家の一つで当会が活動拠点としている旧柏倉清右衛門家住宅に残されている古文書などの歴史資料や家財道具といった民俗資料の整理調査、目録作成に取り組みます。作業計画としては年内に初期状態の調査と年間計画、年度内に整理番号をつけながらリスト化の作業を開始する予定です。
こうした作業によって同家の生活や柏倉一族間の関係性などについて探究し、旧柏倉家住宅や岡地区の文化的価値を多角的に追究します。こうした学術評価に基づいて柏倉家ゆかりの品々の文化的価値が検討される際、より多くの視点から、これからも絶え間なく追究できるように、その手がかりを残していきたいと思います。
また、こうした資料の適切な管理体制を整備することで、展示や研究成果の発表、体験学習など多様な活用を適切に行なうこと目指し、様々な方法で地域文化の魅力に触れる機会を設けていく予定です。このほか、紅花の栽培方法など文化的景観維持のための研究や、講演会や季節の行事など文化・文化財の情報発信に向けた活動を計画しております。
当会ではこれまでに旧柏倉家住宅と町指定重要文化財旧柏倉惣右衛門家住宅(いずれも平成29年より中山町が所有)の維持管理業務に取り組むと共に、専門家の先生方を招いての講演会を企画・実施するなど地域文化の普及啓発にも注力しています。こうした文化財や地域文化の文化的価値をより深く掘り下げるために、分家の建物の維持管理や資料整理に引き続き取り組んでいきます。
また、地域の文化的な景観として毎年紅花を栽培したり(画像参照)、小学生の栽培体験に協力したり、地域文化の次世代への継承に向けて活動してきました。この他折々の時期にはイベントなどを催しています。これからもより多くの人々がこの地域の文化に触れることができるように、適切な保存と様々な活用のバランスに注意しながら地域文化の発信に取り組んでいます。
当会員の多くは地域住民で、地域文化継承のために清掃や修理、イベントの企画運営に取組んできました。また、様々な専門家の先生方からもご指導をいただいてきました。このつながりの中に、新たに当地の歴史や文化で感動していただける愛好家(ファン)の皆様に加わっていただきたく存じます。
皆様からのご支援は主に調査・発信のための必要経費や地域の文化的景観の維持・継承(修景)、協力者への御礼、イベントの企画などの用途に使用する予定です。なお、ご支援いただいた皆様への御礼として、活動の作業報告を行ないます。中山町岡地区や山形県の地域文化、旧柏倉家住宅や日本民家の見所などに関する解説動画をご用意しております。その他、状況を見ながら季節のイベントなどについてご案内などをさせていただきます。
今回のプロジェクトをacademist様と共に取組み、地域住民・専門家(プロ)・愛好家(ファン)が三位一体となり、それぞれの力を少しずつ合わせて、長く関わることで、当地の文化を末永く受け継いでいくことを目指したいと考えています。そして、全国各地の魅力ある地域文化を残していくモデルケースの一つとなれば幸いです。
中山町岡地区には大きな可能性が二つあります。一つは柏倉一族をはじめたくさんの歴史資料が地域の魅力として多く残されていることです。
もう一つはそれらを地域住民が受け継いでいこうと積極的に取り組んでいることです。
この二つは岡地区のかけがえのない財産です。中山町岡地区をはじめ、全国の様々な地域の姿が保存継承されていくことは、多様性ある社会を目指す私達の指針となるでしょう。
柏倉一族、岡地区の歴史文化で私が特に注目しているものが漆です。日本文化の象徴的存在である漆を巧みに取り扱う職人や秀逸な漆塗りの品々は全国にありますが、この地にはその背景を伺う手がかりが残され、魅力が深化していく漆芸の技を知ることができる非常に興味深い地域です。
今私達が知ることができるのは、今までご家族によって丁寧に残されてきたからこそです。日本文化の担い手となり、漆文化とその真髄に触れる機会とともに後世に受け継いでいきましょう。
時期 | 計画 |
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2023年11月 | クラウドファンディング開始 |
2023年12月 | 資料群の初期状態の確認記録作業 |
2023年12月~2024年3月 | 資料群の整理作業(採寸、撮影、目録化)開始 |
2024年3月~6月 | 整理作業(撮影、聞き取り調査、目録化など) |
2024年7月~9月 | 整理作業、次期プロジェクト継続計画の検討、調査の成果物の検討 |
2024年10月~12月 | プロジェクト終了、計画などの告知 |
時期未定 | 本プロジェクトの普及活動、その他イベント等の実施 |