令和5年7月5日(水)より、月額支援型プロジェクトとしてのクラウドファンディングを開始させていただきました。7月9日(日)の本日時点で既に9名もご支援をいただいております、本当に大感謝です。
活動報告は、当面は私自身が何者であるのかや、何を考えているのかを理解いただけるような内容を中心に展開させていただこうと思います。自らの霞が関周りを中心としたつなぎ人材としての活動やその発展、つなぎ人材の定義づけに向けた研究については、追々書かせていただこうと思います。
そして、純粋に学生や教員、研究者のみなさま参加するこのプラットフォームにおいて、一人実務家(教員でもありますが、明らかに実務家色が強いです)がいる違和感を多少なりとも持ちつつも、それすらも受け入れてくれる居心地の良さも同時に感じています。その意味で、私自身にとっての実務家と研究者の両面をつなぐキーワードでもあるつなぎ人材というテーマ設定は、自らをつなぎ人材の一類型だと感じていることにも深く関係しておりますし、まさに、それこそが、境界領域や越境といわれる部分での新たな価値共創のための源泉でもあると感じております。
さて、前置きはこれくらいにして、初回の活動報告では、何故、アカデミストにおいてクラウドファンディングを開始させていただこうと思ったかの動機、大きく二つですが、を書かせていただきます。
まず一つ目は、国家公務員としてのキャリアを積み中でのふわっとした問題意識です。
私は、既に「挑戦者の自己紹介」のところでも少し書かせていただきましたが、大学卒業後、文部科学省という役所にて、元々は科学技術庁という役所で働かせていただいております。時が経つのは早いもので、振り返りますと1996年に仕事をはじめましたので、約30年弱が経ちました。
思い返すと、いろいろなことがありましたし、いろいろな経験をさせていただきました。公共政策の推進が主な仕事ですから、世の中の多くの人に影響が大きい仕事であることは就職するタイミングでもちろん理解していたつもりでしたが、これがまさに自分ゴトで仕事をすることと、読み物や人から聞くことで理解していることのギャップをまざまざと感じることばかりでした。いや、今でも引き続きそう感じることは多くあります。
公共政策のほとんどは、ラフに言えば、大多数に人(国民)にとって、賛意があることや付加価値をもたらしうることを政策として企画・立案・(政治による意思決定を経て)実践・検証・評価・改善を図るというたゆみない政策形成サイクルをまわすことです。これは、大変複雑であり、例えば、①政策の大きさ(粒度)、政策の関係性(いろいろな政策(手だて)や経済社会の情勢が複雑に絡み合います)、②政策の種類(補助金、税制、規制、ゆるやかな指針等、普及・啓発など)などを考慮する必要がありますし、また、③これまで政策として進めてきたこととの関係性で、新たなことやこれまでの政策の見直しを行う場合は、必ず一定の検証をする必要がある、など多くのことを考慮したり検討しなければいけません。多くの人に影響が及ぶのですから、当然と言えば当然です。
頭で理解することと現実とのギャップで何であったかというと、この、政策を進めるための一連のサイクルが、机上の空論をはるかに超えて、本当に大変であることです。特に大変なのは、検証のためのエビデンス集め、エビデンスに基づく政策形成のためのプロセス(政治による意思決定も含め)あたりですね。もちろん、評価を行ったり、評価の結果を新たな政策や既存の政策の見直しにつなげていく部分も大変ですが、エビデンス集めや政策形成プロセスが特に大変だという意味は、数多くのステークホルダーとのすり合わせが必要であるためです。
このステークホルダーというのが意外に曲者で、利害が絡む者や団体が明確であればまだしも、はっきりしない場合やステークホルダーの外縁がわかりづらいことも多いです。少し考えればわかりますが、例えば、科学者によって少子高齢化の改善につながる研究プロジェクトを立ち上げ、この成果を既存の政策の見直しに活かしていこうという話を考えてみますね。当然、関係する科学者の方々との意見交換や収集するエビデンス等に基づいて、どのような研究プロジェクトが想定されるか、これはどのような公募制度などで設計するか、科学者と社会実装先(既存政策を担う部局や製品・サービスを提供しうる企業等、製品・サービス等を通じて何らかのメリットを享受する層など)との関係性をどうデザインするかなどを考えるわけですが、どこまでを初期の政策の企画・立案の中で考慮し、調整を図るかで、実は、その後の研究プロジェクトの進展が大きく異なります。このように、ステークホルダーの外縁を大きくする方が魅力が増しますが、コストは格段に必要となります。
これを語り始めると、これだけで何回かの活動報告が書けるくらいのボリュームになってしまいますので、将来的な課題(やや込み入った話と混ぜますので、限定で笑)とさせていただきますが、ステークホルダー(あるいは、かかわりがある人をより多く含むという意味ではアクターと申し上げた方がいいのかもしれません)、いやアクターとの意見交換や調整は、本当に千差万別です。
どのようなアクターにも、それぞれの言い分と立場がありますし、基本は現状に満足していれば変化を望みません、まあ、単純に言えばよけいなお節介な訳です。また、あまり関係しないと考えているアクターへのアプローチも大変で、まずは自分が関係するかもしれないということを如何に理解してもらうかというところが難しかったりします。さらに、そもそも、個々の方々と集団や組織的なつながりがない場合も多かったりします、アクターの一定の層が雲のようにつかみどころがないのですが、一定の影響がありうる場合です。まあ、とにかくいろいろと大変な訳です。
ただこちらも、自分なりの全体最適の観点から、国全体の利益になるであろうとの考え(仮説)により、公共政策としての新たな切り口を進めていこうと覚悟を決めて仕事を進めようとするわけですから、そう簡単には引き下がれません苦笑。そしてこの局面こそが、霞が関におけるつなぎ人材を自負する官僚の真骨頂であり、本領を発揮する場となるわけです。果てなき意見調整のスタートポイントです。
このような自らをつなぎ人材と称する活動を約30年弱継続してきて、霞が関以外でも同様の切り口でのチャレンジをしている方々との接点も多く持たせていただきました。そして、そのような霞が関以外での有志の様々なチャレンジに自らも奮い立たせてもらい、勇気もいただき、いつかこのつなぎ人材としての仕事のあり様を一般化したり、支援できるようなことをやりたいとなんとなく考えておりましたが、この4月に転機が訪れたわけです。現役官僚としての立場を維持しながら、京都大学経済研究所先端政策分析研究センター(CAPS)に特定准教授として着任するという機会をいただくことになったわけです。この10~20年くらいの間で、何かしたいなあと考えていたもやったしたものを具体化できる絶好の機会をいただいた訳です。
そして、二つ目が、アカデミスト株式会社さんとの接点です。私は数年前、とある文部科学省のポストの管理職として、大学や公的研究機関における寄付やファンドレージングを抜本的にテコ入れしたいと考え、とある勉強会を企画しました。入札による委託調査を活用したのですが、その際にお会いした柴藤さん@アカデミストとの出会いや意見交換の内容が、私自身には大きなインパクトがありました。いつかまた、彼との仕事をどこかでやってみたいなと。今回の京都大学への赴任が、まさにこの絶好の機会を活かすタイミングとなった訳です。
以下は、当時の勉強会の成果です。大変読みごたえがあるので、お時間がある方は是非、概要部分だけでも一読くださいませ。
https://www.mext.go.jp/content/20210611-mxt_chousei02-000007983_2.pdf
今回はここまでとさせていただきます。次回以降の数回も、クラウドファンディングをスタートさせていただいたことへ思いやそのプロセスで感じたこと(国家公務員はお金を稼いでいいのか、国家公務員は教員足りえるのかなど)を述べさせていただこうと思います。