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Masaru SHIRASUNA

追手門学院大学、Specially-appointed Assistant Professor

Challenge period

2023-05-22 - 2024-08-30

Final progress report

Fri, 30 Aug 2024 19:29:49 +0900

Progresses

57 times

Supporters

45 people

Elapsed time

Mon, 22 May 2023 10:00:00 +0900

Profile

Masaru SHIRASUNA

Q
姉と双子の兄を持つ、いばらき県出身・いばらき市在住であり、母校の千葉大学を「第2の故郷」と自称するこの人物は誰?

Q
学術誌『認知科学』の著者情報欄に「元々ミステリが好きで人の思考に漠然と興味を持っていたが、気づいたら現在に至る」と書いたこともある、追手門学院大学心理学部の人工知能・認知科学専攻で特任助教を務める(2023年3月)人物は誰?

Q
クイズ番組「ブレインワールドカップ」での敗退時には、収録場所が日本でありながら「胸張って日本に帰ります!」と発言した、高校~大学時代はクイズプレイヤーとして活躍し、現在は人の判断に関する認知科学研究を行う人物は誰?

答えはすべて「白砂大(しらすなまさる)」です。

What do you want to achieve through your research?

ChatGPTやIBMのワトソンなど、近年のAIの応答・検索能力は急速な進歩を遂げており、単に「出された問いに答える」という点では、AIは人を凌駕しつつあります。

しかし我々は、「人」が行うクイズを観たり、「人」同士でクイズを行ったりして、楽しんでいます。特に昨今はWebメディアやアプリなどの隆盛に伴い、クイズが1つの文化として注目されるほどになりました。

いわばデータベースから知識を引き出すだけの作業が、なぜここまで親しまれるのか。
その鍵は「人の知性」にあると考えます。

人は、実世界であらゆる情報を記憶・処理することはできません。そこで、状況に適応する形で行動や判断を行います。この性質は特に早押しクイズと共通します。早押しクイズでは、他人より早く正答を導く必要があるため、時に得点状況などに応じて(たとえ情報が不十分でも)ボタンを押さなければなりません。この駆け引きが、観る人や答える人を楽しませます。

私は、早押しクイズの背後にある人の知性を認知科学的に探求したいと考えています。この研究は、知的な娯楽・競技が持つエンタメ性を紐解きつつ、人ならではの優れた思考の核心に迫れる可能性を秘めています。

What kind of process are you trying to achieve?

まずは理論面を中心に進めます。具体的には、既存データ(大会の記録など)を用いてモデルを検討しつつ、実験の立案・準備、ならびに分析の見通しを行います。

そのうえで実験に移ります。具体的には、実際に複数名(主に経験者対象)で早押しクイズを行い、その後に質問紙調査を行うことで、行動・主観の両指標を取得します。これにより、問題と回答という目に見えるデータのみならず、その間にある目に見えない処理という面からも、人の認知活動を説明することを目指します。

最終的には、理論と実験データとを統合し、早押しクイズに見られる人の知性を説明する認知モデルを提案します。

その他、学術的・社会的な波及効果も検討します。たとえばスポーツなどとの類比です。身体運動を伴う対戦型スポーツでは、選手は試合状況に応じてプレースタイルを変化させます。同様のことが、クイズという知識の有無を問う場面でも観察されれば、対戦競技における人のふるまいについての知見の拡張につながります。

また、熟達者と非熟達者との比較も検討します。これにより、「素早く的確な情報の取り入れ方・行動の起こし方」といった実用的な示唆を得られることも期待されます。

What research topics are you currently working on?

人の認知(扱える情報量、計算能力など)は、AIと比べて限界があります。にもかかわらず、人は実世界で正確な判断を多く行うことができています。私は、そのような「人の知性」の特徴やメカニズムについて、行動実験や計算機シミュレーションなどの認知科学的手法を通して探求してきました。

早押しクイズでは、問題文中のどこかで必ず正答が一意に定まります。しかし他者よりも早く答える必要があるため、時に(問題を最後まで聞けば正答が分かるかもしれなくても)情報が不十分な中で行動を起こさなければならない場面が出てきます。

早押しクイズという題材においては、この「情報の不十分さ」の程度を、「正答が確定される箇所」と「実際にボタンが押された箇所」との差をもって定量化できます。そのうえで、情報が不十分な中での行動を、行動指標(競技データの分析)と主観指標(質問紙調査)の双方から説明するモデルを考えます。

早押しクイズを扱うのは私自身も初の挑戦となります。実際には音声情報(問題文の抑揚など)やその他の要因(回答者の調子など)も関与しますが、まずは最初のステップとして、上記のようなシンプルなモデルから検討を始めています。

Why are you challenging Academist?

早押しクイズに関する先行研究の多くは、自然言語処理(応答システム)への活用や、人の思考に関する理論的な考察に限られていました。クイズが人々に一層親しまれてきた時代にありながら、そこに潜む認知活動を実験的に検証した研究は、まだありません。

早押しクイズは、競争、不確実性、確信度など多様な認知活動が絡み合うものであり、心理学・認知科学の視座から検討の余地があります。また昨今、早押しクイズ用のアプリやオンラインツールのほか、早押しクイズを掲載した書籍やデータベースも増えてきており、クイズについての学術研究を行うに足る基盤も整ってきました。

私はこれまで、認知科学の立場から「人の知性」を研究してきました。既存の理論が、実際の人のふるまいをうまく説明できるのか。認知科学のアプローチを活かせば、この点を検証できます。また私はクイズの経験も有しており、プレイヤーの視点から実験の立案や結果の解釈を行うことも可能です。

皆様からのご支援は、物品・書籍・分析ツールの購入、実験やミーティング用の旅費、実験謝金などに活用させていただきます。また本挑戦が、私の研究コミュニティの拡張にもつながれば望外の喜びです。

Recommender Comment

本田秀仁
追手門学院大学心理学部 准教授

人間の思考には、断片的な情報から有益な情報を瞬時に引き出す能力があります。早押しクイズは、このような知的行為を包括しており、人間の思考が持つ優れた側面を体現しています。この研究は、私たちが人間の思考についてより深く理解することを可能にし、将来の研究において重要な基盤となることでしょう。また、この研究から得られた知見は、教育をはじめとして、様々な分野で応用されることが期待されます。皆様のご支援を心よりお願い申し上げます。

高橋太郎
横浜市立大学 木原生物学研究所 特任助教

早押しクイズでは、競争相手の得点状況や誤答時のペナルティ等を勘案して、時に正答が不確実な時点においてもボタンを押すという行動が選択されます。白砂さんが挑戦するのは、こうした一瞬の行動選択の背景を初めて実験的に紐解くことで、人の知性を説明しようという意欲的な研究課題です。数々の実績を持つクイズプレイヤーでもある白砂さんならではの独創的なプロジェクトとして、学術的意義はもちろん、クイズの魅力を深掘りする成果の創出に期待しています。

松香敏彦
千葉大学文学部 教授

本プロジェクトの最大の強みは挑戦者のクイズに対する熱量だと思います。早押しクイズには、解答者、競合者、出題者と、それぞれ立場の異なる3者のインタラクションがあり、出題者の言葉づかいに関する認知処理、問題文から解答を時系列で予測する解答者の認知処理など、難しいが興味深い事象が含まれます。早押しクイズを愛してやまない挑戦者であれば、本研究から人の認知に関する様々な知見を見出せるでしょう。基礎研究者と「オタク」が一つとなった研究は最強です。

Project timeline

Date Plans
2023年5月 月額支援型クラウドファンディング開始
2023年6月 理論的検討: 既存データの収集
2023年7月〜 理論的検討: 既存データに基づく分析、モデルの検討
2023年9月 実験的検討: 行動実験によるデータ取得
2023年10月〜 実験的検討: 実験データの分析
2023年11月〜 学会・研究会での発表(時期を問わず、成果がまとまり次第、適宜発表していく)
2024年1月〜 論文執筆開始(認知科学に限らず、認知言語学・行動経済学など幅広い分野を検討)
2024年5月 月額支援型クラウドファンディング終了

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