東京農工大学大学院連合農学研究科 博士課程3年。専門は植物生長促進微生物。2021年度植物微生物研究会若手の会代表。茨城県出身。茨城工業高等専門学校で7年間化学を学び、うち3年間を微生物が持つ酵素のモデル化合物合成研究に打ち込む。やがて酵素の魅力に惹かれ、農業における環境問題を微生物の力で解決したいと思い、農学を独学で勉強して東京農工大学大学院修士課程に進学。修士課程においては、バイオ肥料を用いた福島県営農再開プロジェクト研究に参画。2019年12月より文部科学省トビタテ!留学JAPAN奨学金でアメリカ合衆国のミズーリ大学Stacey研究室に留学するも、新型コロナウイルスの影響により一時帰国。
(2022年4月追記)2021年4月より東京農工大学のグローバルイノベーション研究院で特任助教に着任致しました。引き続き上記の研究を続けていきますので、これからも応援お願いいたします。
化学肥料や農薬を多用する現代農業は、水質汚染や資源枯渇などの地球環境問題の原因となっています。2021年に持続可能な日本農業の戦略として「みどりの食料システム戦略」が掲げられ、2050年までに日本の農業の25%を有機栽培にする達成目標が定められました。EUでも同様に、2030年までに化学肥料の20%削減と有機農業25%以上の達成目標が定められています(農場から食卓まで戦略)。
しかし、現在日本の有機栽培割合は0.2%と非常に低く(農林水産省「有機農業をめぐる事情」)、目標達成には30年間で現行の100倍以上の有機栽培への転換が必要となります。
(2022年9月追記) 前回のデータは2018年のもので、2020年のデータでは0.3%に増えていました(それに伴い下図を更新)。しかし、2年で0.1%上昇のままでは、30年間では1.5%しか増加せず、目標達成にはより一層の有機農業への転換が求められています。
有機栽培の課題は、作物の生産性が慣行栽培に比べて2〜3割弱程減少することですが、私は自身の研究を通してこの未来目標を土壌微生物の力で達成し、さらなる持続可能な農業の発展へと繋げたいと考えています。
土壌微生物の中には、植物の生長を促進する細菌(植物生長促進微生物:PGPBもしくはPGPR)が多数存在しています。その中から、優秀な菌株を単離して農業資材にしたものを「バイオ肥料」といいます。
バイオ肥料は有機栽培の生産性を向上させることが可能であり、持続可能な農業には欠かせない技術の一つです。当研究室が開発してきたバイオ肥料は、水稲の収量を10〜20%増加させ、もしくは慣行の30%減肥栽培においても同等の収量を得ることができます。
私は、このように優秀な菌株の作用メカニズムを明らかにし、より効果の高いバイオ肥料を開発し、それを用いた有機栽培技術まで確立することで、農業の生産性と持続可能な地球環境の両方を支えていきたいと考えています。
私は植物と微生物の相互作用を研究しています。
修士課程においては、イネに対するバイオ肥料の施用技術について、大学の敷地内と福島県二本松市の田んぼで研究を行っていました。当時は、NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会の方々に、大変お世話になりました。
特にC4光合成のモデル植物であるエノコログサ(通称:ネコジャラシ)を対象として、PGPBであるバチルス属細菌の芽胞体に着目し、芽胞体独自の新規作用物質の単離同定とその作用機構の解明を目指して研究を行なっています。
※芽胞体とは、バチルス属細菌が環境ストレス下で耐性を得るための休眠状態のことです。
※C4植物とは、トウモロコシやサトウキビなど、光合成能が高い植物のことです。
(2022年9月追記) 2022年3月に博士課程を修了し、4月からは東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院に勤務しております。今も続けて研究を行っており、今年は主に「イネ直播栽培へのバイオ肥料の適用技術の開発」と、圃場での実証実験を行なっています。上記の芽胞体独自のメカニズム探索も今後引き続き行なっていく予定です。
これらの言語を持たない異なる生物種間で、どのようにコミュニケーションを取り合い、植物の生長が増強されていくのか、一つずつメカニズムを解明してくことが非常に面白いと感じています。
バイオ肥料の開発と研究をしていく上で、最も高い壁は農家さんの理解を頂くことだと思っています。その理由は、慣行栽培から有機栽培へ転換することで収量は低下し、自身の生活に直接の影響が及ぼされるからです。
しかし、私は、慣行栽培による環境への影響についての理解と、バイオ肥料の有効性についての最新調査結果を、日本中の農家さんに伝えたいと日々思いながら研究をしています。そのためには、学会発表や論文執筆活動だけでは不十分で、様々の場所で研究成果をアウトプットをしていきたいと考えており、現在はNPO農業微生物利用技術協議会の会員としても活動しています。
クラウドファンディングに挑戦しようと思った理由は、バイオ肥料を広く浸透させるための手段の一つとして有効だと感じているためです。
世界の人口を養う食料生産には沢山の化学肥料を使います。特に化学窒素肥料には、空中の窒素をアンモニアへ変換する過程で膨大な化石燃料を利用し、地球環境に大きな負荷を与えています。安掛君は、食料生産を低下させずに、この化学肥料の利用を低減する方法として土壌微生物の力を使う研究を行っています。彼の研究は、作物生産に土壌微生物の力を借りて、作物の根を発達させて化学肥料の利用効率を上げ、さらに作物収量も増加させる試みです。この研究は現在世界中がめざしているSDGsの2. 貧困をゼロに、13. 気候変動に具体的な対策を、14. 陸の豊かさを守ろうに合致しています。私は、彼の研究が地球を救うと考えており応援します。
安掛君の主指導教員です。安掛君は自分の学んだ科学技術を生かして農業の発展に貢献したいという熱い思いを持っています。この気持ちは、農家さんの圃場をお借りして調査を何度も行い、農家さんと交流したりする中で、強くなってきたようです。研究面においては、高い実験技術を持って自分の研究を推進する能力だけでなく、様々な研究者や企業の方等と積極的に交流し、バイオ肥料に関するコミュニティ全体を盛り立てようと努力しています。学会の若手の会などの運営もしています。研究室では後輩たちを引っ張るたのもしい存在です。彼の熱い思いを実現できるよう、私も応援します。
時期 | 計画 |
---|---|
2021年9月 | 国内学会(植物微生物研究会)で研究発表 & 若手の会企画講演を運営 |
2021年9月 | 根圏微生物叢の解析実験 |
2021年9月 | 国際論文①投稿&国際論文②執筆中 |
2021年10月 | 共著者に国際論文②をチェック依頼 |
2021年11月 | 国際論文②の投稿予定 |
2021年12月 | 博士論文審査申請 |
2021年12月 | 国際学会(International Society for Molecular Plant-Microbe Interactions)で研究発表 |
2021年12月 | 国際学会の成果報告を学会誌に投稿 |
2022年2月 | 博士論文審査 |
2022年3月 | 東京農工大学大学院 連合農学研究科 博士課程 修了予定 |
2022年3月 | サポーターへのオンライン成果報告会(上半期)を予定 |
2022年4月 | 植物アッセイ試験①(鉄イオン欠乏に関する) |
2022年5月 | 植物アッセイ試験②(細胞外高分子物質に関する) |
2022年6月 | 新たな有用微生物(PGPB)のスクリーニング試験 |
2022年8月 | サポーターへのオンライン成果報告会(下半期)を予定 |
2022年9月 | 支援継続特典の発送 |
2022年10月 | イネ直播栽培実証実験の収穫 |
2022年12月 | 米国ミズーリ大学Gary Stacey研究室への留学(1年間) |
2023年3月 | サポーターへのオンライン成果報告会(上半期) |
2023年8月 | サポーターへのオンライン成果報告会(下半期) |
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