[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究④]
これまで示した研究は良い/悪いといった社会的評判の研究に焦点を当ててきましたが,経済的能力などそれ以外の要素においても評判を形成するはずです。社会性評判と経済能力評判が協力にどう影響を与えているのかを検討した研究によれば、経済的評判は社会的評判と比較して、より多くの社会的文脈にわたって協力に影響を与えることが示唆されています(Macf
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究③]
今回はダウンストリーム互恵性を支える評判情報の伝達であるゴシップという要素に着目した研究から紹介します。
当事者以外の人物たちが当事者の情報を拡散するゴシップも行動に影響を与える要素です。ゴシップにより自分の評判が拡散する可能性のある場合、協力率が高くなることが示されており、その効果は利他主義的な人と比較して利己主義的な人の方が
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究②]
今回はフィールド実験によって実際に評判が協力行動を促進することを示した研究の紹介から始めます。
この研究は電力会社と協力し、大規模なフィールド実験を行うことで評判が協力行動に与える影響を検討したものです(Yoeli et al., 2013)。電力会社と協力して、電力消費のピーク時に遠隔で電力量を操作されるプログラムに参加するか
[ダウンストリーム互恵性に関する理論的アプローチ以外の研究①]
9月は学会発表が重なり、研究報告ができませんでした。誠に申し訳ございません。このレポートを9月分の報告とさせていただきます。
今回は複数の規範が混在した状況を想定したより現実に近いモデルの研究紹介から始めます。
エージェントシミュレーションを用いて、二次情報までを考慮した規範として考えられる全ての規範である16種類の規範が
[ダウンストリーム互恵性の理論的研究②]
今回はダウンストリーム互恵性の理論研究パート2です。
二次情報までを考慮した進化的安定規範の全ては、良い評判の人に対する協力は良い評判を、良い人に対する非協力は評判を落とすという評価を下すことは共通しています。ここで示した規範の違いは、悪い評判の人に対する行動の評価である。STは評判の悪い人に対する協力、悪い人に対する裏切りともに良い評判を与える。S
[ダウンストリーム互恵性の理論的研究①]
今回から2回にわたり、ダウンストリーム互恵性の理論研究について紹介します。
行動戦略の優劣が行動戦略をとる個体の適応度によって決定する進化ゲーム理論の枠組みを用いて、どのような評判戦略(規範)が進化的安定戦略(Smith, 1982)であるかを示す数多くの理論的解析が行われています。進化ゲーム理論は戦略に基づいた行動の結果として得た利得に応じて、戦略
[互恵的メカニズム③「間接互恵性」(2種類の間接互恵性)]
間接互恵性は、社会的ジレンマの状況における大規模かつ柔軟な協力を説明する主要なメカニズムです(Alexander, 1971; Okada, 2020)。これまでに説明した血縁淘汰理論や直接互恵性は協力の進化を説明する強力なメカニズムではありますが、汎用性を欠いています。人間の協力は他に類を見ないほど大規模であり、協力する相手が血縁関係者
今回は神の雷(神による懲罰)について紹介します。
[神の雷(神による懲罰:Super natural punishment)]
サンクションシステムがもたらす高次のジレンマを解決する一つの仮説として神や仏といった超自然的エージェントによる懲罰があります(Johnson & Krüger, 2004)。超自然的なエージェントは道徳的な規範の提供者として見られており、その多くの信者は集団の規範に
今回は懲罰の進化論的説明について紹介します。
[懲罰の進化論的説明]
これまで示した通り、サンクションシステムが協力を促進する効果は一貫して示されてきたにもかかわらず、高次のジレンマの問題や懲罰に対する報復、過度な協力者に対し懲罰を行使する反社会的懲罰など、様々な問題が指摘されています。また人間における道徳的な罰は、第三者によって実行されることがあり、適応的な観点からは矛盾した行動のように見
今回は反社会的懲罰について紹介します。
[反社会的懲罰(Antisocial punishment)]
これまで数回にわたってサンクションによって協力が促進されるという研究を見てきました。しかし懲罰は非協力者にのみ行使されるとは限りません。企業従事者を観察した研究によれば、作業を怠った従業員は罰せられるがそれに加えて、最も生産性の高い労働者も制裁の対象となっていました(Homans, 201
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