カメは、ヒトと同じ四つ足動物の仲間で、世界中に300種ほど生きています。固い甲羅に隠れてふだんは見えませんが、背側の甲羅の内側に背骨や肋骨もちゃんとあるれっきとした脊椎動物です。カメの仲間は、首が甲羅の中にすっぽり収まる「潜頸類」と、首を水平方向に曲げて甲羅の縁に沿わせる「曲頸類」の大きく2つのグループに分かれます。
カメらしさといえば、全身をすっぽり覆う固い甲羅でしょう。甲羅は盛り上がった背中の部分「背甲」と、平らなお腹の部分「腹甲」からできているのですが、一体何でできているかご存知でしょうか。カメの甲羅の表面を覆っている「鱗板」は、毛髪や爪と同じ皮膚の一部です。その下にある「骨板」は手足の骨などに比べて頑丈にできています。細かく見ていくと、背甲は背骨と肋骨から、腹甲は肩の骨とお腹にかつてあった腹肋骨という骨から変化してできたのです。いずれにしても、カメの甲羅は50枚前後の丈夫な骨板が組み合わさって出来ているので、甲羅が壊れた後でも化石として残りやすいという特徴があります。
2.4億年にもなる長いカメの進化の歴史のなかで、1000種ほどのカメの化石がすでに報告されています。これは恐竜とほぼ同じくらいの種数です。実際、私が研究をはじめた1980年代は、国内で20か所ほどだった化石カメの産地は、現在120~130か所までに増えました。毎年のように新しい化石産地が増えてきているのです。しかしながら、こうした化石カメの実態が知られていないからなのか、国内外の化石カメの研究者は少ないのが現状です。
では、化石カメを調べて何がわかるのでしょうか。まず化石となった甲羅を調べて種を確定します。すると、現生種との比較で、化石が見つかった地層を作った時代の環境がわかります。気候は温暖だったのか、寒冷だったのかなどです。また、カメは非鳥型の恐竜が絶滅した6600万年前のK-Pg境界の影響をほとんど受けなかったことが知られています。なぜ恐竜は鳥類として生き残ったもの以外は絶滅して、カメは影響を受けることなくなく生き残ったのでしょうか。大きな謎です。
カメの進化については、化石カメの研究と併行して、分子系統学の分野でも調べられてきました。分子系統学の大きな成果の一つにカメがかかわっています。カメはかつて、その頭の骨の特徴から、爬虫類の中では古いタイプの姿形をしていると考えられていました。しかし、分子系統学の研究が進み、1999年の論文で、鳥類とワニのグループ「主竜類」に一番近いことが初めて発表されたのです。現在は、トカゲの仲間よりも新しいタイプの姿形をした仲間というアイデアが広く認められ、鳥類とワニとカメをまとめて「主竜形類」と呼ぶことになりました(トカゲとムカシトカゲの仲間をまとめて「鱗竜形類」と呼び、主竜形類と鱗竜形類を合わせたものが爬虫類です)。
カメの進化にまつわる研究は、少しずつですが確実に歩みを進めて、まだ一般には広く知られていない新たな事実が明らかになってきています。その成果をこの時点で一度、しっかりまとめて広く知ってもらうことは意義のあることです。なぜならば、これからカメ研究を発展させていくためには、自分はどこに居るのか、どこを目指すのかを知るための“地図”が必要だからです。その“地図”こそ、カメの進化ポスター「系統樹マンダラ【カメ編】」です。
意外に思われるかもしれませんが、カメの起源については議論されている真っ最中です。お腹側の甲羅がしっかりあるものがカメらしさだろうと私は考えているのですが、そうではないという立場をとる研究者もいて、カメの起源は古生代(2.5億年より前)にさかのぼるという意見もあります。私は2.4億年前(中生代三畳紀)だろうと考えているのですが、分子系統学ではどのような見解になるのでしょうか。古生代まで遡るでしょうか。
また、曲頸類と潜頸類の分岐年代なども含めて、化石から得られる情報と分子系統学から考察される分岐年代が、それぞれどういうもので、どのあたりが妥当なのか、カメの進化ポスター「系統樹マンダラ【カメ編】」という化石と現生のカメの両方を含む系統樹図の制作を通して議論を深めたいと考えています。化石カメの研究者は現在国内で5名、世界でも国際会議を開いて集まるのが30名ほどの小規模な世界です。そこで今回、皆様からのご支援をいただき、生き物の進化の歴史を表現する「系統樹マンダラ」シリーズ・ポスターの1編として、【カメ編】を作成することで、カメの進化を新たな視点で捉え、カメ研究を盛り上げたいと考えています。
具体的には、分子系統学の世界的な権威でもある長谷川政美先生と私のあいだで議論を深め、2.4億年におよぶカメの仲間たちの分岐年代を科のレベルで決定します。整合性のある分岐年代を示すことは、現時点での知見を形にして後世に残すことになります。次に、決定した分岐年代に基づいて、系統樹図の肝である「枝」を作成します。枝の長さが時間を表すように、インフォグラフィックスの専門家である坂野徹さん(金沢美術工芸大学准教授)が高い精度で作成します。
掲載する種の選定は、カメの進化を俯瞰するにあたり最もよいと思われるバランスで、化石30科ほど、現生14科で、全45種程度とします。これらのイラストレーションは、特に化石種については、少ない化石から得られた情報に基づく復元画もしくは復元骨格を、古生物復元画家として活躍する画家の小田隆さん(成安造形大学准教授)に精緻で美しいペン画で描いてもらいます。全体のアートディレクションは、日本を代表するエディトリアルデザイナーの木村裕治さんに依頼して、研究室から家のリビングルームまで、さまざまな空間に飾っておきたくなるようなものを目指します。全体の編集から発行までは、これまで「系統樹マンダラ」シリーズを制作した実績のある、畠山泰英さん(科学バー/キウイラボ代表)に依頼します。
上記のとおり、これまで実績のあるメンバーに依頼することで、「系統樹マンダラ」シリーズと同様の品質の【カメ編】ポスターの完成が見込まれます。「系統樹マンダラ」シリーズは、これまでに【真獣類編】【鳥類=恐竜編】【四足動物編】【霊長類編】が刊行されています。研究者をはじめ、学部生・院生、中・高の理科教員、生き物マニアなどコアな層からの評価が高く、国立科学博物館や大阪自然史博物館など国内外で評価の高いミュージアムショップでも取り扱われているものです。
制作費(2000部)は、イラストレーション、編集、印刷、デザイン・監修などで200万円弱かかるため、皆さんにご支援をいただきたいと考え、今回のプロジェクトを立ち上げました。
実績のある制作スタッフと一緒に「系統樹マンダラ【カメ編】」を制作することで、10年間は貼っておきたいカメの進化のポスターを目指します。そうすることで、現時点でのカメ研究の実績を美しい形で残すことができ、それがまた今後のカメ研究の発展につながると信じています。前述の通り、現在、国内の化石カメの研究者は5人です。化石カメの産出は増え、状態のいい化石が出ているにもかかわらずです。「系統樹マンダラ【カメ編】」を見て育った人から、プロ、アマチュア問わず研究者や好事家が育ってくれることを願っています。
Date | Plans |
---|---|
2019年01月 | クラウドファンディング挑戦 |
2019年03月 | 制作開始 |
2019年05月 |
国際カメ進化シンポジウムで完成発表
|
小田隆氏が描いた生き物の細密画を印刷したポストカードをお送りします。今回のリターンでは、系統樹マンダラ【カメ編】から1種、過去に製作した【真獣類編】【鳥類=恐竜編】【四足動物編】から2種、合計3種セットです。額装すれば素敵なインテリアにもなりますので、この機会にぜひご購入ください!
ポストカード3枚セット / お礼のメッセージ
45 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)
皆さんにご支援いただいた資金で作成した「系統樹マンダラ【カメ編】」の折畳タイプをお送りします。小田隆さんと私のサイン付きのクラウドファンディング・オリジナルバージョンです。表側には系統樹を、裏側には解説を記載する予定です。最先端の研究成果を含めたカメの系統樹を存分にお楽しみください!
系統樹マンダラ【カメ編】 / ポストカード3枚セット / お礼のメッセージ
243 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)
小田隆さんをゲストにお招きした支援者限定対談イベントにご招待いたします。2018年4月14日(土)の午後に早稲田大学早稲田キャンパス(11号館7階706号室)にて開催予定です。私の研究内容や、系統樹マンダラ【カメ編】制作の裏話を聞ける機会となりますので、ぜひご応募ください!(なお当日お越しいただけない支援者の方々には、対談の様子を録画した動画をYoutubeの限定公開で配信いたします。)
対談イベント(4/14)参加チケット / 系統樹マンダラ【カメ編】 / ポストカード3枚セット / お礼のメッセージ
44 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)
2019年5月に開催予定の「国際カメ進化シンポジウム」の私の発表資料の末尾に皆さまのお名前を記載いたします。資料は別途メールにて送付いたしますので、楽しみにお待ちください!(申し込み時のお名前を漢字にて掲載させていただきます。)
謝辞にお名前掲載 / 対談イベント(4/14)参加チケット / 系統樹マンダラ【カメ編】 / ポストカード3枚セット / お礼のメッセージ
8 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)
2018年5月19日(土)10時より「都内博物館2時間ツアー」にご案内いたします。実際に採れた化石をみながら、古生物学研究の方法論や魅力について詳しくお伝えいたします。また、岩手県久慈市で採れた琥珀、または私が千葉県で採集した約600万年前サメの歯を簡単な解説付きでお送りします。
博物館ツアー(5/19)参加チケット / 化石標本 / 謝辞にお名前掲載 / 対談イベント(4/14)参加チケット / 系統樹マンダラ【カメ編】 / ポストカード3枚セット / お礼のメッセージ
2 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)
(宿泊編)岩手県久慈に1泊2日(5月12日〜13日)で出かけるツアーにご招待します。岩手県久慈の白亜紀(9千万年前)のカメや恐竜がたくさん見つかっている場所にご案内します。琥珀もばんばん採れますよ!1口のご支援で、高校生以下の同伴可能です。ぜひ親子でご参加ください。
(日帰り編)宿泊が難しいかたは、2018年4月28日(土)に千葉県のサメ化石採掘ツアー(日帰り)にご参加ください。私が何度も通った地で、何も採れないということはまずありません。化石の採掘方法から見分けかたまで、私が皆さまに直接伝授します。こちらも1口のご支援で、高校生以下の同伴可能です。(詳細は追って連絡いたしますが、朝7時頃に東京都内出発予定です。)
(注)現地までの交通費や宿泊費は支援金額には含まれません。ご了承いただけましたら幸いです。
化石採掘ツアー(5/12,13)参加チケット / 化石標本 / 謝辞にお名前掲載 / 対談イベント(4/14)参加チケット / 系統樹マンダラ【カメ編】 / ポストカード3枚セット / お礼のメッセージ
2 supporters are supporting with this reward. (No quantity limit)
SSL encryption communication is used in this Web site, and the informations filled out are safely transmitted.
ポストカード3枚セット
45
supporters
back
(No quantity limit)
系統樹マンダラ(カメ編) and others
243
supporters
back
(No quantity limit)
対談イベント招待券 and others
44
supporters
back
(No quantity limit)
国際カメ進化シンポジウムの発表資料の謝辞にお名前掲載 and others
8
supporters
back
(No quantity limit)
平山先生と巡る、都内博物館2時間ツアー and others
2
supporters
back
(No quantity limit)
岩手県あるいは千葉県の化石採掘ツアーにご招待! and others
2
supporters
back
(No quantity limit)