11月の活動として、夏から取り組んできた研究プロジェクト「Compactification of quasi-local algebras on the lattice」が一区切りし、Caltech 内で成果発表を行いました。(セミナートークの動画はこちら)プレプリント(未査読論文)もほぼ完成しているので、来月プレプリント用データベースarXivにアップロードします。同時に、論文誌「Communications in Mathematical Physics」に提出し、現在査読審査を待っています。
テーマは、量子コンピューターなどの基盤となる「多くの粒子が相互作用し合う量子の世界」を、数学を使ってどのように記述するか、というものです。
どんな状況を考えているのか
電子や量子ビットが、マス目状(格子状)にたくさん並んでいる様子をイメージしてください。
1つの電子だけを見るときには、その「向き(スピン)」や「運動の状態」などを測ることができます。2つの電子をまとめて見ると、それぞれのスピンの和や差といった、新しい量も考えられます。
このように、どの範囲(領域)に注目するかによって、その領域ごとに「観測できる量」の集まりができます。
数学的にはどういう研究か
領域ごとの「観測できる量の集まり」は、ただのリストではなく、
・足し合わせる
・続けて測る操作として掛け合わせる
といった計算ができる、ひとつの代数的な構造になっています。
こうした構造は数学ではquasi-local C*-algebraと呼ばれ、量子力学や量子情報の理論的な土台として重要です。
今回の研究では、この quasi-local C*-algebra について、「ローカル(限られた領域)」の情報と「グローバル(系全体)」の情報の対応関係を整理しました。小さな領域ごとの情報をどのように積み重ねると、無限に広がる格子全体のふるまいを、矛盾なく・きれいに記述できるのかを調べています。
背景にある数学と意義
この分野の背後には、圏論や作用素環論、さらにその背景にあるホモトピー論など、現代数学のさまざまな理論が関わっています。
局所的には「近くの粒子どうしの弱い相互作用」しか考えていないのに、全体としては「物質の性質」や「相転移」のような大きな現象が現れることがあります。
今回の研究は、こうした「局所から全体がどのように立ち上がるか」を理解するための、理論的な基礎づくりの一部となることを目指したものです。
謝辞
本研究を進めるにあたり、以下の皆様から多大なるご支援・ご助言を賜りました。ここに厚く御礼申し上げます。
Nori Ohata 様
イヨダアキヒコ 様
高橋 佳大 様
塩田顕二郎 様
M.I 様
海野真司 様
一般財団法人 阿部 亮 財団(ABE RYO FOUNDATION)様
シミズイネコ 様
ヤナギレオ 様
ナカタタイセイ 様
松岡寛 様
Takashi Nakayama 様
他サポーターの皆様
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お礼のメッセージ
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