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子宮頸がん患者さんひとりひとりにあったオーダーメイドの医療を提供したい

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町田 弘子
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町田 弘子

私は聖路加国際病院で臨床研修をスタートし、ウィリアム・オスラー先生の「医学は科学に基づくアートである」という言葉に心打たれました。以来、正しい知識(科学)とその知識を実践する能力(技術)を持って、患者さんへ還元する医療を目指しています。

がん研有明病院で婦人科腫瘍医として経験を積み、その後、南カリフォルニア大学に留学してAIやビッグデータを使用した婦人科がん研究をしました。日本のビッグデータを使用した研究は、米国や日本の婦人科腫瘍ガイドラインに引用され、日々の診療に貢献しています。また、ロボット手術という新しい治療にも積極的に取り組み、診療と研究の両面から患者さんを支える医療を日々行っています!

あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?

子宮頸がんは、その多くがヒトパピローマウイルスの感染で起こります。日本ではワクチン接種率や検診率の低さから、世界の先進国と異なり患者数や死亡数も増加しています。患者さんの多くは、結婚・出産などの重要なライフイベントが重なる時期の女性です。治療のために子宮を摘出したり、妊娠を諦めなければならなかったり、女性の人生に大きな影響を与える疾患です。

近年、がんの包括的な遺伝子変異データがまとめられ、その分子生物学的特徴が明らかになってきました。結果、様々ながんで遺伝子による分類が進んでいます。遺伝子の違いは、治療効果や予後を予測したり、治療を選択する際にバイオマーカーとして役立ちますが、がんの種類によってバイオマーカーは異なります。

私たちの先行研究では、子宮頸がんはその種類(病理組織)によって予後が異なることがわかりました。現在、子宮頸がんの治療は、バイオマーカーの研究や個別化医療は進んでおらず、がんの顔つき(病理組織や分子生物学)に関わらず病期ごとに一律です。そこで子宮頸がんの患者さんひとりひとりにあったオーダーメイドの医療を提供したいという思いで研究を企画しました。

どのようなアプローチで実現しようとしていますか?

バイオマーカーは、血液や組織に含まれる蛋白や遺伝子を調べることで、病状や治療に対する反応をみる客観的な指標です。がん治療では、治療薬の選択や治療効果の予測、副作用や予後を予測するために活用されます。バイオマーカーを調べるメリットは、治療効果が得られる可能性が高い患者の選定や、効果の高い最適な治療の選択につながることです。治療効果は低いけれど副作用が起こる可能性の高い治療を回避することは、メリットの少ない治療や高い医療費・出費を避け、治療を行う患者さんのQuality Of Life(生活の質)改善につながります。

この研究では、日本のトップレベルの大学やがん治療施設で構成された多施設(婦人科悪性腫瘍研究機構 JGOG)による共同観察研究を行います。子宮頸がん患者さんより提供を受けた腫瘍細胞や血液から、子宮頸がんに関係した標的遺伝子の変異の有無やその頻度について、がんの再発や治療効果との関係を調べます。その結果が子宮頸がんのバイオマーカーとして有効かどうか評価します。この研究結果は、患者さんの治療選択や、医療従事者が患者さんに情報を提供する際の手助けとなります。

今回のプロジェクトで行う研究テーマはなんですか?

私たちの先行研究では、次世代シーケンサーを使用して腫瘍のプロファイリングを行いました。その結果、子宮頸がんでは、特に腺癌でROS1遺伝子やEGFR遺伝子などの変異が増加しており、特にROS1遺伝子異常の増加は、子宮頸がんの予後を予測するのに役立つ可能性があります。

ROS1遺伝子は、他の遺伝子と融合し、がん細胞の増殖に関わるROS1融合タンパク質を作ります。チロシンキナーゼ阻害剤はこのROS1融合タンパク質を標的とし、肺がんの治療薬として既に使われています。最新の研究ではin vivo(生体内)およびin vitro(試験管内)で、癒合遺伝子でなくとも遺伝子のミスセンス変異が腫瘍形成に影響し、治療に有効である可能性が示されました。しかし、本当に子宮頸がん患者さんで、ROS1遺伝子のミスセンス変異が予後予測のバイオマーカーとなるか、これらの薬剤が有効かはまだわかりません。

この研究では、ROS1遺伝子変異や関連する遺伝子異常の頻度を調査し、バイオマーカーとして有効か調べます。将来的にはチロシンキナーゼ阻害剤などの分子標的薬が、子宮頸がんでも有効か調べる臨床試験に発展させたいと考えています。

Why we need your support

子宮頸がんは、ごく早期のがん(上皮内癌)も含むと、毎年全国で3万人以上が罹患します。子宮頸がんは「マザーキラーキャンサー」(母親殺しのがん)とも呼ばれ、子育て世代のお母さんや妊娠を考えている世代の女性で発症が多く、珍しい病気ではありません。皆さまの周りにもいらっしゃるかもしれません。私たちはこの研究を通じて、患者さん一人一人に最適な治療選択が行われ、患者さんが希望を持って人生設計を描き、その家族も安心できる社会へつなげていきたいと思っています。

この研究は、血液や組織に含まれる蛋白や遺伝子を調べるために次世代シークエンサーを使用して解析を行います。そのため研究費が高額となり、クラウドファンディングでご支援いただいた資金を、解析のための試薬や検体の保管、管理などの費用に充てる予定です。

ほんの少しの気持ちでも構いません、この研究に賛同いただいて、研究のサポートを頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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Recommender's comment

三上 幹男
東海大学産婦人科教授, 日本婦人科腫瘍学会 理事長

子宮頸癌治療は複雑であり、個別化治療、副作用管理、早期診断、アクセス格差などの課題が存在します。未来に向けての研究と努力が、子宮頸癌治療の改善に不可欠です。町田先生は情熱を持って子宮頸癌の治療の改善に取り組んでいます。この研究は子宮頸癌治療に革命をもたらす可能性があります。私は子宮頸癌の治療をより良いものへ改変していくという使命を共有し、この研究に賛同します。どうぞ、この研究に対するサポートをお願いします。

岡本 愛光
東京慈恵会医科大学産婦人科教室 主任教授, 婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)理事長

子宮頸がんは女性の子宮頸部から発生するがんで、治療はステージや患者の状態に依存します。子宮頸がん治療は進歩していますが、未だに多くの課題が存在し、患者さんごとに治療計画を個別化するためのバイオマーカー(がんの特徴や治療の効果の指標)の開発が必要です。これにより最適な治療法を選択し、副作用を最小限に抑えることができます。この研究は、子宮頸がんの新たな治療法や診断法を開発する可能性を秘めています。私たちが協力してこの研究を支え、子宮頸がんの個別化医療の未来を築きましょう

武隈 宗孝 
静岡県立静岡がんセンター 婦人科, JGOG子宮頸癌委員長

子宮頸癌に対するALK-ROS1融合遺伝子の研究、素晴らしい取り組みです。新しいバイオマーカーの確立とそれに基ずく治療法の開発は、多くの子宮頸癌患者さんへの光を灯すことができるのではないでしょうか。本研究は希望を育む一翼となり、子宮頸癌患者さんとその家族にとって革新的な進展をもたらすことを期待しています。応援しています!

Project timeline

Date Plans
2025年3月まで 研究協力施設から検体やデータ収集を行い、データを蓄積
2025年7月ごろ 国内・国外の学会で遺伝子解析結果を発表
2027年9月まで データ追跡期間終了
2027年10月ごろ 国内・国外の学会で予後バイオマーカーとしての意義を発表
2027年12月まで 論文作成・投稿

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