多くの方々からご支援をいただき、誠にありがとうございました。今回チャレンジして改めてわかったことは、皆様の暖かい気持ちに支えながら生きながらえているということです。カンパしてくださった方も、時間を作って読んでくださった方も、本当にどうもありがとうございました。遺伝子重複、進化系統、生殖調節、形態、と、複合する学際的なテーマで、多くの前提知識を要するものでありました。ですので、一般の方に短い文章ですべてをお伝えすることは、難しかったと思いますので、今後サイエンスカフェ等でもじっくり解説できる機会に是非説明させてください。今回のテーマは、僕がやらなければきっと10年間誰もやらないだろう、と思っているテーマですが、そういったユニークな研究を支えてくれた暖かさにとても感謝しています。ここから芽を出せるように、結果を出し、ない頭をひねって解釈していこうと思います。研究費以上に、勇気をいただき、ありがとうございました。遠くない将来に必ず論文にします。こういった研究に本気で興味ある方がもしいらっしゃったら、いろいろな形で一緒に研究しましょう。
私たちヒトを含んだ脊椎動物は、全遺伝情報が2倍になる「全ゲノム重複」を3回経験したと言われています。それぞれの全ゲノム重複は、1R、2R、3Rと呼ばれ、1R、2Rは無顎類の出現以前に、3Rは食卓にのぼる「サカナ」の大半を占める真骨魚類に起きたと考えられています。つまり、アジやイワシのような真骨魚類は、私たちよりも遺伝子が2倍多く存在する状態から進化をスタートさせているということになります。
重複した遺伝子では、片方の遺伝子がその機能を失う確率が高く、遺伝子数そのものは時間とともに重複前と同程度に落ち着きます。しかし、一度は遺伝子が二倍に増えることになるため、進化の自由度と許容度は上がり、結果的にゲノム配列に大きな変化が生じたのではないかと考えられています。それでは、遺伝子の進化速度が増加することで、サカナのシステムやカタチはどのような影響を受けるのでしょうか。私は、この疑問を明らかにするため、さまざまなアプローチから研究を進めています。
今回の研究では、サカナの生殖内分泌のシステムを利用して、全ゲノム重複が全身の制御系をガラッと変え得る可能性について検証していきます。研究対象は、3Rが起きる前に分岐した古代魚「ポリプテルス」と、起きた後に出現した「バタフライフィッシュ」です。
具体的には、両者の持つ2つのホルモン「濾胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」に着目します。FSHとLHは脳下垂体で作られ、全身を循環し、卵巣や精巣に作用します。これらのホルモンは、祖先型の脊椎動物では同じ細胞から作られているのですが、真骨魚類では別々の細胞から作られていることが知られています。今回の研究目的は、FSHとLHを別の細胞が発現するようになるタイミングが(1)条鰭類と肉鰭類の分岐の影響なのか(2)3Rの影響なのかを調べることです。
実験は、以下の流れで進めていきます。
1. まず、ポリプテルスとバタフライフィッシュのLHとFSHの遺伝子配列を同定します。その後、遺伝子を発現している細胞を標識する方法(=二重in situ hybridization法)を用いて、LHとFSH遺伝子がそれぞれの種において、同じ細胞で発現しているのか、別の細胞で発現しているのかを検証します。
2. ポリプテルスあるいはバタフライフィッシュのLHとFSHを発現させる遺伝子の上流配列を単離し、LHには緑色を示す蛍光タンパク質GFPを、FSHには赤色を示す蛍光タンパク質RFPをつなぎます。
3. 本来LHとFSHが別々の細胞で発現するゼブラフィッシュの受精卵に、2.で作成したものを導入し、LHとFSHが同じ細胞内で発現するのか、または別々の細胞で発現するのかということを、検証します。
4. 緑色と赤色の蛍光が別々の細胞で見られれば、転写因子のサブセットの発現により、LHを発現させるセットを持つ細胞、FSHを発現させるセットを持つ細胞を、それぞれLH細胞とFSH細胞として持つようになったと考えられます。一方、どちらか片方だけの細胞でLHとFSHが発現すれば、真骨魚類のLH,FSH細胞の配列に、四足動物とは違う別の細胞で発現するための制御配列が含まれると考えられます。
上記の実験を行うことで、(1)全ゲノム重複が細胞の発現の仕方に与える影響(1の実験)や、(2)形態の進化を引っ張るのが転写因子なのか制御配列なのかを理解する(2-4の実験)のに、大きなヒントを与えてくれると考えています。もちろんこれは、LH、FSHという1セットの事例に過ぎませんが、このようなことを単一細胞レベルで解析した研究は過去にないため、研究の新しい流れを作れる可能性があると思っています。
科学を進める資金のほとんどは、国民の税金を原資にしています。したがって、どこかで国の役に立つという理由が求められます。しかし、現在の私たちには、100年後に役に立つことが何なのかはわからないため、現段階では全く役に立たなくても、知的好奇心を探求する基礎科学があっても良いはずです。私の研究はマニアックではありますが、基礎科学の魅力を発信することで研究費を募り、人類の知見の拡大に貢献していきたいと考え、チャレンジを決めました。
皆さまからいただいた研究費は、遺伝子配列を決定するための試薬代、発現する細胞を可視化するための試薬代、組み替え動物を作るための試薬代に使わせていただく予定です。今回の分岐が3Rの影響であるということがわかれば、「遺伝子重複は遺伝子配列の進化速度を速める」と言われている仮説の先ー遺伝子重複が生理的なシステムの大きな変化をともなうカタチの変化に貢献するということーが見えてくるのではないかと考えています。ご支援のほど、どうぞ宜しくお願いいたします。
Date | Plans |
---|---|
2016年9月 | クラウドファンディングに挑戦 |
2016年12月 | 実験開始 |
2017年03月 | 結果① LH, FSHの発現解析(ポリプテルス、バタフライフィッシュ) |
2017年12月 | 結果② ゼブラフィッシュの組み替え実験 |
2018年06月 | 論文発表(目標) |
今回の研究プロセスをまとめたレポートをメールでお届けいたします。その際、研究対象であるポリプテルス、バタフライフィッシュなどのオリジナル画像も添付します。お届け時期は、11月初旬を予定しています。(画像はサンプルです。)
研究経過報告レポート / オリジナル画像
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今回の研究のキーワードである「3R」をイメージさせる画像を掲載したクリアファイルをお届けします。お届け時期は、11月下旬〜12月初旬頃を予定しています。
クリアファイル / 研究経過報告レポート / オリジナル画像
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クリアファイルだけでは物足りない!そう思うあなたに、「3R」Tシャツをご用意いたします。白地のTシャツの中央部分に、画像を貼り付ける予定です。サイズは、S, M, L, LLよりお選びください。お届け時期は、11月下旬〜12月初旬頃を予定しています。
オリジナルTシャツ / クリアファイル / 研究経過報告レポート / オリジナル画像
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サイエンスカフェに招待いたします。プロジェクトページだけでは伝えきれないところまで、直接お話できればと思います。場所は未定ですが、2017年3月4日(土)14時からの開催を予定しています。
サイエンスカフェ参加チケット / オリジナルTシャツ / クリアファイル / 研究経過報告レポート / オリジナル画像
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論文の謝辞部分にお名前を掲載いたします。掲載記事はすこし先になりますが、2018年夏を目指します。ぜひ長期的な応援をよろしくお願いいたします。
論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加チケット / オリジナルTシャツ / クリアファイル / 研究経過報告レポート / オリジナル画像
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クラウドファンディングのために作成したグッズを各10個ずつお渡しします!みなさんの周りの方々に、ポリプテルスや私の研究テーマについて広めていただけると嬉しいです。
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