さて、藤本さんと見山くんの実験の詳細です。
・ダンゴムシは、図の左の迷路の①に置かれると、真っすぐ40cm進んで②のT字路に達します。
・図は、ダンゴムシが右に曲がった場合を示しています。
・実験者は、ダンゴムシが③に達する前にストッパー(黒)を設置します。
・するとダンゴムシは右折してもう一つの40cm通路に入ります。
・実験者はすぐに中央のストッパーを入れ替え、ダンゴムシを④のT字路へ導きます。
・図は、ダンゴムシが④で右に曲がった場合を示しています。
以上の操作を繰り返して「40cm直進しT字路にぶつかる」という試行をダンゴムシに50回与えます。
そして各T字路で左右どちらに曲がったかを調べます。
この50回の試行に概ね2時間もかかるのです!まさにダンゴムシとの根競べです。辛いのは、途中でダンゴムシが止まってしまう場合です。30回を超えればまあデータとして使えますが、それより少ないとボツ・・・。それでもめげずに二人は実験を続け、数十匹分のデータを得ました!
ところで、ダンゴムシはT字路に連続して遭遇すると、左右交互に曲がる習性をもっています。ただし、この実験装置のように、一度曲がった後に40cmも直進させられると、次のT字路では逆、同方向、ほぼ同じ確率で曲がるようになります。このことは、藤本さんと見山くんが事前に実験で確認しています。
一方、ねずみの仲間のラットは、一度曲がった後に多少時間を空けても、もう一度T字路を与えると、逆方向に曲がります。
ラットとダンゴムシの違いは何か?
ラットは、事前の転向方向を大脳で「記憶」して、次のT字路では「さっきとは逆に曲がろう」という「意志」が働くと考えられています。
一方、大脳のないダンゴムシには、「記憶」や「意志」はないと考えられています。代わりに、T字路を曲がって左右二列の脚の運動量に差が生じる(インコーナーは多く、アウトコーナーは少ない)と、それを逆にするようなスイッチが働くと考えられています。
ところが、一度曲がって40cmも真っすぐ歩くと、脚の運動量の差はなくなり、次のT字路では左右同じ確率で曲がると考えられています。
一方、ラットは「記憶」と「意志」が保たれているので、一度曲がったあとに少々時間が経っても、次のT字路では逆方向に曲がれると考えられています。
藤本さん、見山くんの実験では、50回ほど「40cm直進+T字路選択」をさせられたダンゴムシは、左右同じ確率で曲がるのではなく、「左、あるいは右方向ばかりに曲がる」ようになりました。
40cmの直進で脚の運動量の差がキャンセルされるならば、左右に曲がる確率は同じなはずです。では、同じ方向に曲がる確率が高くなるのはなぜでしょうか?
ダンゴムシは、事前の転向方向を「記憶」して、次のT字路では「さっきと同じ方向に曲がろう」という「意志」を働かせるのでしょうか。であれば、ダンゴムシはラットと同じような「記憶」と「意志」の仕組みをもつことになります。
加えて興味深いことは、同方向に曲がるようになるダンゴムシですが、時折、左右交互に曲がる頻度を非常に高くすることがあります。
図の右側のグラフは、左右に曲がる確率の時間変化を表しています。矢印の区間では、左右に曲がる確率が急上昇して90%にまで達しています。これも「記憶」と「意志」の働きなのでしょうか?であれば、ラットと同じ仕組みで交互に曲がっていることになります。
ダンゴムシに「記憶」と「意志」はあるのでしょうか?これを明らかにするには、更なる実験が必要です。今のところ、「ダンゴムシはラットの夢を見ているかも」と言えるかもしれません。
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