前回の投稿から半年近く近況報告が滞っておりましたことをお詫び申し上げます。
これまでは8月末~9月中旬にかけてオガヒメ調査を行っておりましたが、台風による影響が大きいことから、今シーズンは見送ることとしました。一方で、2024年10月中旬に短期間ではありますが、オガヒメ調査の実施を予定しております。
また、今年(2024年)3月の結果を踏まえて、来年(2025年)は3月末~4月上旬にオガヒメ調査の実施を予定しております。
皆様にご支援をいただきました資金によりまして、2023年~2024年に3回の調査の実施することができました。
3回の調査の収支を以下に報告させていただきます。
最も大きい支出となったのは、船舶チャーター費でした。チャーター費の総額は¥3,263,350円にものぼります(チャーター費は船に同乗頂いた協力者の方々と折半しており、下記表では私1名分の金額を表示しています)。私が実施する海鳥の調査において、チャーター船の利用は不可欠であるものの、チャーター費が高額となるため非常に頭の痛い問題でした。皆様のご支援とご協力なしに3回の連続した調査(繁殖期+非繁殖期+繁殖期)を行うことはできませんでした。改めまして、心より御礼申し上げます。
下記の表のとおり、収入の部は合計¥1,673,368円(支援総額より手数料を引いた金額となっています)、支出の部は合計¥1,473,651円になり、収支差額は¥199,717円となりました。
これらの繰り越しました資金につきましては、2024年10月の調査に使用させていただきたいと考えております。
懲りずに今後も継続して調査を行っていきますので、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
3月9日から19日まで小笠原に滞在し、3回目の調査を実施しました。
今回の冬調査は、オガサワラヒメミズナギドリ(以下、オガヒメ)の唯一の繁殖地である東島において、オガヒメの鳴き声が最も頻繁に録音された時期に該当します。今回は昨冬(1回目調査)と同様に、東島の周辺に的を絞り、海底地形や島からの距離、時間帯などを考慮した上で、計6日間の調査を実施しました。
調査の結果、ついにオガヒメを確認することができました!
調査1日目の3月11日、16時47分に東島の東沖10マイルの海上で2羽の飛翔を確認し、うち1羽を撮影しました。夕方に沖合方向から東島方向へ一直線に飛翔していたことから、おそらく東島で繁殖に関わっている個体であると推測しています。2015年に東島で初めてオガヒメの繁殖が確認されて以降、鳴き声は録音されているものの、それ以外には繁殖に関する情報はありませんでした。今回の調査結果は、オガヒメが現在も東島で繁殖を継続している可能性を示す重要な確認となりました。
なお、今回観察したオガヒメは、船から約500mという遠方を飛翔したため、詳細な形態を確認できるような写真を撮影することはできませんでした。オガヒメを観察した時間帯には、調査に使用している漁船に興味を示したクロアシアホウドリやオナガミズナギドリ、オガサワラミズナギドリが時折船の近くを通過していきましたが、オガヒメは漁船には全く興味を示さず、船から遠い位置を飛び去りました。他の海鳥の種類と比較して、警戒心が強いのかもしれません。また、その後の5日間にわたって同海域で調査を実施しましたが、オガヒメの確認には至りませんでした。その理由の一つ目として考えられるのは、今回の調査がオガヒメの抱卵期に該当していたかもしれないということです。2015年に行われた調査では、2月25日に東島で抱卵している個体が確認されており、今回調査を実施した3月上旬~中旬も抱卵期に含まれる可能性があります。抱卵期は、育雛期と比較して海上で活動する個体数や日数が少ないと考えられ、オガヒメの確認を難しくした要因かもしれません。二つ目は、月齢が次第に新月から半月へと進み、月明かりが目立ち始めたことが考えられます。一般的に、海鳥は新月で明かりが少ない夜間に繁殖地を訪れることが多いと言われています。今回の調査も新月周辺の日程に設定をしましたが、小笠原への定期船スケジュールの関係で、調査後半になるほど月が満ちてきて夜間も明るくなってしまう時期でした。
いずれにしても、オガヒメの繁殖時期に繁殖場所である東島の沖で6日間にもわたる調査を実施できたにも関わらず、オガヒメの観察がこれほど難しいとは、想像以上でした。オガヒメの生息個体数についてはほとんど何もわかっていませんが、今回の調査結果から、かなり少なく予断を許さないような状況ではないかと考えられます。洋上での調査を実施するとともに、繁殖地でのオガヒメの生息状況に関する調査や外来ネズミ類などの捕食者が繁殖地に再度侵入していないかといった点についても、今後調査が進むことが望まれます。
リターンの一つとして設定しました仙台湾での海鳥調査を、2月18日に実施しました。
昨冬と同様に今冬の海水温度も平年よりも高い状況(+4-5℃)が続いています。
このような状況で目的のマダラウミスズメの渡来状況がどのくらい変化しているのか気がかりでしたが、この日は過去最高数の27羽を確認することができました!
推測ではありますが、マダラウミスズメの好適採餌環境(海底地形が遠浅の砂・泥地となっている場所)はウミスズメと比較して限られていることから、海水温度よりも採餌環境を優先的に選択しているのかもしれません。仙台湾がマダラウミスズメにとっての重要な越冬地であることを改めて認識することができました。
その他、アビ類は平年並みに渡来していましたが、ウミスズメや海ガモ類(ビロードキンクロ、クロガモなど)はかなり少ない状況でした。
マダラウミスズメなどの海鳥の生息状況がどのように変化していくのか、今後も注視していきたいと思います。
すっかり更新が滞ってしまい、申し訳ございませんでした。
8月27日から9月5日まで小笠原に滞在し、2回目の調査を実施しました。
今回の夏調査では、いつもご協力いただいている漁船で計6泊8日(3泊4日を2回)の船上生活をしながら調査を実施する計画でした。しかし、2つの台風と2つの熱帯低気圧に拒まれ、実際には計6日間の日帰り調査となりました。
今回は晩夏から秋にかけてオガサワラヒメミズナギドリ(以下、オガヒメ)が目撃されている聟島列島沖に的を絞り、調査を計画しました。聟島列島は父島から約70km離れているため、漁船の甲板で寝食をしながら調査を行います。しかし、上述のように天候・海況が悪く聟島列島周辺には滞在することができなかったため、海底地形などを考慮した上で、計6日間の日帰り調査に変更となりました。1日だけ聟島列島最南の嫁島沖に行き、残る5日間は父島周辺で調査を実施しましたが、残念ながら今回もオガヒメは確認できませんでした。2020年と2022年の同時期に実施した事前調査では、いずれも聟島列島沖でオガヒメを確認していること、父島周辺では確認されていないことから、聟島列島沖での調査が重要であることを改めて認識しました。また、オガヒメがこの時期の父島周辺を利用している可能性がかなり低いことも分かりました。
懲りずに今後も継続して調査を行っていきますので、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
オガヒメ以外の面では、ハワイセグロミズナギドリやカワリシロハラミズナギドリ、ハグロシロハラミズナギドリといった日本での記録が少ない種を確認しました。台風や熱帯低気圧による強風の影響により出現したと考えられます。また、日本初記録(北太平洋初記録の可能性もあります)となる南方系のウミツバメ類も確認しました!
これらの調査結果の詳細は、11月頃に発表予定の「研究報告レポート」で報告いたします。
現地調査の進捗報告ではありませんが、5月30日にacademistさんが開催しました「市民科学と学術系クラファンで研究の未来を拓く」(オンライン)で私のクラウドファンディング体験についてお話させていただきました。多くの方にご参加をいただき、ありがとうございました。
その際、ご質問をいただきましたので、この場をお借りして回答したいと思います。
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<質問1>
鳥類の移動や生息地を調べる方法としては、GPSロガーなどを用いて直接個体を追跡する方法もあります。個体への負担やデータが得られないリスクなどはありますが、手っ取り早く生息する海域を明らかにするにはとても有効な手法だと思います。このような他のアプローチもある中で、田野井さんのプロジェクトで野外観察という手法を選ばれた理由は何でしょうか。個体数が非常に少ないオガヒメにおいては、個体への負荷の大きい追跡機器の装着が高リスクと判断されたのでしょうか?
【回答】
GPSロガー等の装着による分布の解明はとても有用で、私もこの手法に非常に興味があります。その中でもオガサワラヒメミズナギドリについて<観察>を分布解明に選んだ理由は以下のような点からです。
本種の繁殖は2015年に小笠原諸島東島で初めて確認されました。しかし、その後の詳しい繫殖状況は調べられておらず、現在の繫殖状況は不明です。また、他の無人島においても録音装置により本種の鳴き声が確認されていますが、同様に繫殖状況は不明です。このような状況から、繁殖地における個体へのGPSロガー装着については、現在の繫殖状況を明らかにした上で実施することが大事だと考えます。
なお、繁殖地が未解明の海鳥については、ロケットネット等を用いて海上で捕獲しGPSロガーを装着する方法が用いられることもあります(例えばソロモンミズナギドリやニュージーランドウミツバメがその方法で捕獲され、後者については繁殖地の発見に至りました)。本種についても繁殖地における調査や捕獲が今後も困難な場合、観察を通じて海上での高利用域を見つけた上で捕獲しGPSロガーを装着することもとても有用だと考えます。
観察という手法を選んだ理由の一つは、分布を明らかにするだけでなく、生態(採餌方法などの行動)や形態(海上における類似種との違い)、他種との関係性(群れになる等)を把握することができるためです。本種は分布だけでなく、生態や形態といった基礎情報のほとんどが未解明であるため、これらを明らかにすることは、今後に本種の保全を行う上でとても重要であると考えます。
<質問2>
SNSでの情報発信やご友人を通じた周知活動にあたって、苦労したこと・工夫してよかった点
【回答】
苦労した点では、高校時代の友人など自然科学に関わりのない知人に研究の意義や魅力を伝えることに苦労しました。
工夫した点では、クラウドファンディング開始の数週間前から海鳥に関する発信を多めに行い、多くの方の目につくようにしました。また、海鳥への関心は海外でも高いことから、日本語だけでなく英語での発信も行い、海外の知人へも周知を行いました。
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2月19日から28日まで小笠原に滞在し、1回目の調査を実施しました。
例年、冬の小笠原は強風・高波の日が続きます。今回も例外ではなく、10日間の滞在のうち、船を出航することができたのはわずか3日間でした。
オガサワラヒメミズナギドリ(以下、オガヒメ)の繁殖が唯一確認されている東島の周辺に的を絞り、海底地形や島からの距離、時間帯などを考慮した上で、3日間の調査を実施しましたが、調査対象であるオガヒメは残念ながら確認できませんでした。オガヒメの確認に至らなかった一方で、本種と同様に東島で繁殖するオガサワラミズナギドリ(以下、オガナギ)は、本格的な繁殖開始よりも1ヶ月以上早かったにもかかわらず、50羽以上を確認しました。オガナギのほとんどの個体は、早朝は東島から沖方向へ、夕方は沖から東島方向へ飛翔しており、この時期にはすでに繁殖地である東島を訪れているようです。本格的な繁殖シーズンに入っていると推測されるオガヒメが確認されなかったことは、東島で繁殖する数が非常に少ない、またはオガナギとは異なった生態(かなり遅い時間に帰島する等)を持っているのかもしれません。いずれにしても、3日間という限られた調査回数では判断できないことから、今後も継続して調査を行っていきます。次回夏季調査は8月末頃、冬季調査は来年の3月頃の予定です。
次回はより良いご報告ができるよう頑張りたいと思いますので、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
なお、調査結果の詳細は、秋に発表予定の「研究報告レポート」で報告いたします。
リターンの一つであるオガサワラヒメミズナギドリTシャツが完成しました!
Tシャツのデザインは、箕輪義隆さんに書き下ろしていただきました。東島をバックに飛翔するオガサワラヒメミズナギドリを描いた迫力あるイラストです。
これから当該リターンへご支援をいただきました皆様へ順次発送を進めます。楽しみにしていてください!
リターンの一つとして設定しました仙台湾での海鳥調査を、1月22日に実施しました!
当日はとても寒い中の出港となりましたが、ご参加頂きました皆様に改めて御礼申し上げます。
今冬は最近になって気温は低くなってきているものの、海水温度は平年よりも高い状況が続いています。そのため、船長からは例年よりも小型の海鳥であるウミスズメ類は少なめ、と事前に聞いていたこともあり、やや不安な中での出港となりました。
湾内を例年と同じコースで回り始めると、個体数は少ないもののウミスズメとウトウの小群、海ガモ類(ビロードキンクロ、クロガモなど)を見ることができました。
対照的に、アビ類は過去にないほど個体数が多く、特にシロエリオオハムとオオハム2種の5,000羽を超す群れは圧巻でした!
そして、この調査の目的の一つであるマダラウミスズメは3羽を見ることができました!本種は極東地域にのみ分布するウミスズメ類で、詳しい生態や個体数などに不明な点が多く残っています。1930年代頃までは東京湾でも普通種だったとされていますが、個体数は大きく減少しているようで、そのような本種が毎年越冬している仙台湾は本種の重要な生息地であると言えるでしょう。
近年、仙台湾を含む宮城県沖は、海水温度の上昇により魚種も変化していると聞きます。海鳥は海水温度や餌と関わりが深いため、マダラウミスズメなどの海鳥の生息状況がどのように変化していくのか、今後も注視していきたいと思います。
無事にクラウドファンディングが終了しました!多くの方よりご支援を賜り、改めて心より感謝申し上げます。
私にとって初めてのクラウドファンディングだったこともあり、開始当初は不安しかなかったと言っても過言ではありません。しかし、ゴールの達成に向けて多くの方にご協力と共感をいただいていることを強く感じることができました。また、いただいたご支援や応援に応えられるよう、改めて責任の重みを強く感じております。
今後は来年2月に1回目の調査を行う予定です。進捗状況で随時報告していきますので、今後ともご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。
皆様からの多大なご支援を賜り、NEXT GOALを達成することができました!心より感謝申し上げます。
正直なところNEXT GOALの達成は難しいと感じていたこともあり、多くの皆様からご関心を寄せていただいていることを改めて実感するとともに、ご期待に応えられるよう、今後の調査をより一層頑張って努めていきたいと考えております。
残り3日ありますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。
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