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齋藤 貴之
北海道武蔵女子短期大学、准教授
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進捗報告 vol.03

ご無沙汰いたしております。齋藤です。

2022年度冬に実施いたしました調査等について報告いたします。
以前実施した福井県および京都府北部での調査にもとづき、巻いた昆布を用いる正月飾りの広がりを検証するため、京都府北部、兵庫県および鳥取県東部を対象に、各市町村の教育委員会や郷土資料館等の協力を得ながら実施いたしました。
まだまだ途中ではありますが、今回は、兵庫県のおける調査結果を中心に報告いたします。

【鏡餅・正月のお供えにおける昆布の利用】
利用する・した    :24市町(明石市、西宮市、豊岡市、加古川市、赤穂市、宝塚市、高砂市、
                小野市、見たし、加西市、養父市、丹波市、南あわじ市、朝来市、
                淡路市、宍粟市、加東市、たつの市、猪名川町、多可町、市川町、
                福崎町、神河町、上郡町)
利用しない・事例がない:11市町
調査中        :6市町(相生市、三木市、丹波篠山市、太子町、佐用町、新温泉町)

鏡餅(カガミモチ、オカガミ)に昆布を利用するところは17市町で、2つ重ねの餅の上から白い昆布(白板昆布、祝い昆布、養老昆布)を前に垂らすという飾り方が多数を占めていました(11市町)が、黒い昆布を前に垂らすところ(多可町)や餅の下に敷くところ(朝来市、たつの市)、餅の間から黒い昆布を前に垂らすところ(福崎町)もありました。
このほか、神河町は扇状の昆布を鏡餅の上に載せ、高砂市は「お包みもの」(半紙を2つ折りにして、その上に1cm幅に切った祝い昆布、榧の実、勝栗、干し柿を置き、縦に3つ折にして、上下を折り、紅白の水引を掛け、最期に煮干しを半紙と水引の間に通したもの)を鏡餅の上に載せるとのこと。また、赤穂市には伊勢エビを飾り付ける、南あわじ市には餅の上に載せた白い昆布の上にエビを載せるといった事例があり、飾るものにも多様性が見られる結果となりました。

ただ、三田市で情報提供してくださった方から、「鏡餅に、白い昆布を前に垂らすように飾るのは、ここ20数年の話であり、門松やしめ飾り、正月棚へ昆布を付けることはまれであった。最近の販売品の影響かもしれない」とのお話も伺ったことから、近年のメディアやインターネットによる画一化の影響も十分に考慮しなければならないということを痛感したほか、他市町の担当の方からは「令和の世の中にこのような調査をしても・・・」といったご指摘も受け、この時代に「伝統的なもの」を調査することの難しさを改めて感じました。

【正月飾り等における昆布の利用】
サンポウカザリ(三方飾り、三宝飾り)やホウライサン(蓬莱山、宝来さん)、ほうらい盆などと呼ばれる正月飾りがあり、14市町で事例が見つかりました。
これらは、三方に生米を盛り、その上に昆布、榧の実、勝栗、干し柿などを載せ、床の間に供えるというもので、その中央に昆布を巻いたみかんや橙を飾るところ(豊岡市、加西市、養父市、丹波市、神河町)、昆布を巻いた竹筒を飾るところ(高砂市)、昆布を巻いた木炭を飾るところ(丹波市)、巻いた昆布の上に橙を載せるところ(福崎町の大庄屋)、白い紙を筒状にしたものの上に橙を載せるところ(明石市)などがあり、兵庫県北東部を中心に巻いた昆布を正月飾りの広がりを確認することができました。
このほか、生米の下に昆布を敷くところ(明石市、西宮市)や生米の上に短く切った昆布を飾るところ(加古川市、三田市、市川町)もありました。

また、年桶(または斗桶)を床の間や神棚に供える風習が7市町(明石市、加古川市、養父市、丹波市、淡路市、宍粟市、市川町)にありました。
これは、地域によって多少異なりますが、一斗を量る桶(高さ三十センチくらい)の縁を縄でくくり、中に、若松、榊、ユズリ葉、ウラジロ、御幣、鏡餅、御神酒、蜜柑、栗、吊るし柿、昆布、キワイ豆(黒豆を砂糖で固めたもの)、升に入れた米、餅などを入れて(「祝い込む」とも言う)、大晦日に床の間や神棚の前、歳徳棚などに供えます。鏡餅・オカガミやしめ縄飾りとは異なるものの、「昆布を用いた正月飾り」であるため、同様の風習が見られる鳥取県を含め、その広がりなどについて引き続き調査を続けていく必要があると感じているほか、床の間に飾る場合、鏡餅・オカガミや三方・蓬莱飾りと共存するか否かについても検討する必要がありそうです、

このほか、
▶兵庫県尼崎市の大覚寺では、節分当日のみ、境内にて「昆布だるま」をいただけるとのこと。
大阪張り子の「金天姫だるま」に白板昆布の着物を着せ、紅白の水引の帯を締めた「起き上がりこぼし」。かつては北前船で運ばれた昆布を利用していたそうです。
▶兵庫県宍粟市の御形神社では、3月上旬に行われる開当祭にて、三殿(正殿、左殿、右殿)内部の長押に鯛とともに昆布を掛けるとのこと。
開当祭での儀式では、宮司が五穀豊穣や氏子繁栄を祈る文言を唱えながら、その長押に掛けた昆布を三玉串でたたくそうです。
▶兵庫県三田市の下相野護国院では、1月6日に、国宝堂にまつられている持国天像と多聞天像の前で、国宝祭り、通称ドブラ講が行われるとのこと。
このドブラ講では、その仏前の供え物として、3本一組で、一番上にハゼの木で作った松明、次に板昆布、干し柿、餅の順に竹串に刺したものを作り、専用の供物台に差し込み、左右2組が供えるそうです。
▶神戸市灘区摩耶山では古くから旧暦二月の初午の日に近郷の村人が飼い馬を連れて天上寺に参詣し、馬の息災と一家の無事繁栄を祈る風習があったとのこと。
このとき、厄払いをした後に、馬屋に祀る厄除息災の護符と摩耶昆布を授かるのですが、かつては北前船で運ばれた昆布が利用されていたそうです。今年は、3/25(土)に、「摩耶詣祭 摩耶山春山開き」として開催されました。

このように、兵庫県は、北回り航路の経由地としての北部・日本海沿岸地域と終点近くの南部・瀬戸内地域によって構成されているため、北部には三方・蓬莱飾りや年桶など昆布を用いた特徴的な正月飾りがあり、他方南部には北前船によって運ばれた北海道の昆布を用いた祭祀や風習がある、といった大まかな傾向が見られました。兵庫県におけるこれらの分布をより詳細に調査し、分析することによって、日本列島における昆布を用いた正月飾りの分布等を理解する何らかの手がかりが得られるのかもしれません。そのような可能性を感じた今回の調査でした。

他方、鳥取県に関しては、昆布を用いることは少ないものの、東部には三方・蓬莱飾りがある一方で、西部では歳徳棚というものがあり、その棚の上に渡した棒に昆布を吊す事例があるということなので、巻いた昆布を用いる正月飾りの広がりとは異なる観点から鳥取県西部や島根県について調べる必要があるかもしれません。

【盆飾りにおける昆布の利用】
利用する :0市町
利用しない:35市町村
調査中  :6市町(相生市、三木市、丹波篠山市、太子町、佐用町、新温泉町)

兵庫県内では、お盆の飾りに昆布を利用する事例は1件も見つかりませんでした。盆飾りにおける昆布の利用についての調査に関しては、東北や東日本を中心にどこまで広がるかを見ていく必要があるようです。今年度夏には、岩手県や青森県の太平洋岸地域において調査を行う予定です。

以上、今回も前回に引き続き、まだまだ中途半端な状態で、画像もなく、わかりづらい報告となってしまいましたが、現時点での進捗状況を報告させていただきました。

どうぞよろしくお願いいたします。

齋藤 貴之 May, 2023
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