日本では昔から、「犬」がペットの代表的な存在でした。しかし近年、その飼育頭数は減少しており、入れ替わるように「猫」がペットの代表格として台頭するようになりました。猫の飼育頭数が犬を上回る傾向は他の先進諸国でも見られており、グローバルな視点から見ても「猫」がペットの代表的な存在になりつつあることが伺えます。集合住宅や一人暮らしといった現代社会のライフスタイルでは、猫の方が一緒に暮らしやすいパートナーなのかもしれません。
日本で978万頭も飼育されている猫は、9500年前から人との共生を始めたとされています。共生のきっかけは「ネズミ捕り」だったといわれていますが、現在では「ツンデレな性格」「愛らしい姿や行動」など、彼らの魅力に惹かれた人々が「ペット」として広く飼育するようになりました。いまや、人と猫が特別な関係性、すなわち「絆」を結ぶことができるということに疑いの余地はないように思います。猫の飼い主のみなさんは強く実感していることではないでしょうか。
しかし、これほど猫と人は密接な関係性を築いているにもかかわらず、「猫と人の関係」に関わる研究分野は発展途上にあります。
「人と動物の関係学(Anthrozoology)」という学問があります。これは、人と動物の関係をより良く理解しようという理念に基づき、ペットを含めたさまざまな「動物」と「人」の関係性を研究する学問です。
この研究分野では「犬」が研究対象となることが多く、したがって「犬と人の関係性」は研究が進んでいます。たとえば、人の「母と子ども」が結ぶのと同じ愛着関係を、犬と飼い主も構築していることが研究で明らかになっています。さらに、この愛着形成に関与する「オキシトシン」というホルモンが、犬と人の「ふれあい」を通してお互いに分泌されることも知られています。これらの研究により、「犬と飼い主の『絆』の形成と、そのメカニズム」が明らかになりつつあり、「犬とその飼い主の双方がより幸せになるための研究」が進んでいるといえます。
一方、猫も飼い主と愛着関係を築きうると考えられていますが、犬と比較してその研究の数は少ないのが現状です。その理由のひとつに「独立性」が高く「自由きまま」な猫の気質により「実験の実施が難しい」という点が挙げられます。「ツンデレな気質」は猫の魅力のひとつともいえる部分ですが、研究においてはデメリットであるといえます。また、「縄張り性」の動物である猫に対して、実験者が猫の普段の生活圏に足を踏み入れて研究することが難しい場合もあります。
猫と人の関係学のもうひとつの問題点として、研究の大半が「行動観察」に基づいていることが挙げられます。行動観察による評価は「主観的」な側面もあり、評価者の思い込みが影響を与える危険性があります。そのため、研究領域の発展には、客観的に定量化できるホルモンなどの「生理的側面の評価」が必要です。
本プロジェクトの目的は、愛着形成に関与するオキシトシンに着目し、飼い猫と飼い主の関係性を客観的に定量化することで、一般家庭における猫と人のよりよい関係を明らかにしていくことです。オキシトシンやストレスホルモンなどの生理的なデータは、猫の尿から測定することができます。そこで、猫を飼われている飼い主さんにご協力いただき、3日間の尿の採取と、飼い猫に関するアンケートをご依頼します。アンケートの内容は、猫ちゃんの性格傾向を5つの軸から評価するものや、猫ちゃんと飼い主さんの愛着度合いを数値化するものなどです。こうして得られた猫の生理的なデータと、飼い猫の性格傾向、飼育環境、そして飼い主との関わり合いといったアンケート結果の関係性を分析することで、「飼い猫の視点」から「猫と人の関係性」を明らかにしていきます。
上述のとおり、「猫」を対象にした実験は難しく、特に一般家庭の飼い猫の調査には高いハードルがあります。これまでにも、猫の糞尿や毛のホルモンを計測する研究は行われてきましたが、その多くは「保護施設に収容された猫」が対象で、目的も「猫の福祉の向上」でした。今回の研究は、一般家庭における飼い猫と飼い主を対象に「猫と人の関係性を知ること」を目指した点で画期的だと考えています。
私の研究の究極目的は「すべての人と猫のより良い共生社会を実現すること」です。 その目標の達成には、「猫の飼い主」「飼い猫」だけではなく「人の家庭外で暮らしている猫」「猫を飼育していない人」も研究対象となります。すなわち私は「全世界の人類とイエネコ」すべてを幸せにすることが目標です。
本プロジェクトはその目標達成のための研究のごく一部分であり、私の博士論文では「猫の飼い主」を対象とした別の研究も進行しています。それほどこの研究領域は広く、私が成し遂げたい目標も非常に高いものであるといえます。長期に渡って研究を重ねることで、少しでも「人と猫の関係」に関する研究領域を前進させられるよう精進していく所存です。
研究費の獲得は、そのために乗り越えるべき大きな課題のひとつです。オキシトシンなどのホルモン濃度を定量化するには専用の測定キットが必要です。本プロジェクトで皆様からいただいた支援金はキットの購入代金として使用いたします。
また、実験協力者の募集がもうひとつの大きな課題となっています。猫の飼い主さんがいらっしゃいましたら、ぜひ実験協力でのご支援もお願いできればと思います!なお、実験に参加できる猫ちゃんには条件がありますので、詳しくはこちらをご覧ください。全国から広く実験協力者を募集しますので、出張費および郵送費としてもいただいた支援金を使用する予定です。
本研究を通じて、いま現代に形成されている「猫と人の関係」を明らかにすることで、これからの未来で形成すべき「猫と人の関係」を論じていきたいと考えております。ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
時期 | 計画 |
---|---|
2020年8月 | クラウドファンディング挑戦 |
2020年9月〜2021年1月 | 実験実施・解析 |
2021年3月 | 学会発表・リターン実施 |
本チャレンジにおける研究の進捗状況をまとめたレポートをご送付いたします。ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます!
研究報告レポート
13人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本プロジェクトの実験にご参加になれます! 実験に参加いただけた方には「研究の進捗レポート」とともに、参加してくれた猫ちゃんの尿ホルモン・性格傾向データなどを記載した「個別レポート」を差し上げます。たくさんの猫ちゃんにご協力いただきたいです。どうか、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
※実験に参加できる猫ちゃんには条件があります。詳しくはこちらをご確認ください。
研究報告レポート / 実験参加権(個別の実験レポート) / 研究報告レポートにお名前掲載
4人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本プロジェクトの進捗状況報告をはじめ、「人と猫の関係学にかかわる研究」について解説する研究結果を解説するサイエンスカフェにご招待します。また、事前に支援者様からご質問等も受け付けます。普段疑問に思っている「猫ちゃんに関する疑問・質問」など、何でもご質問ください。開催は2021年の春を想定しています。※当日ご参加いただけない場合には、後日資料を共有させていただきます。
研究報告レポート / 実験参加権(個別の実験レポート) / 研究報告レポートにお名前掲載 / サイエンスカフェ@オンライン参加権
9人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
私が所属する研究室をご案内する、ラボツアーを開催いたします。研究室を回りながら、これまでの研究や「動物と人間の関係学」についての質問にお答えするフラットな会を計画しています!研究パートナーである猫や他の動物たちもいますので、研究の様子もご紹介したいと思います。※研究室までの交通費はご負担をお願いいたします。また、当日ご参加いただけない場合には、後日資料を共有させていただきます。
研究報告レポート / 実験参加権(個別の実験レポート) / 研究報告レポートにお名前掲載 / サイエンスカフェ@オンライン参加権 / ラボツアー参加権
4人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究成果を発表する際の謝辞にお名前を掲載させていただきます。※研究成果をまとめられるよう努力いたしますが、学会発表に至らない可能性もございますこと、ご承知おきいただけますと幸いです。
研究報告レポート / 実験参加権(個別の実験レポート) / 研究報告レポートにお名前掲載 / サイエンスカフェ@オンライン参加権 / ラボツアー参加権 / 学会発表謝辞にお名前掲載
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
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研究報告レポート
13
人
が支援しています。
(数量制限なし)
実験参加権(個別の実験レポート)+研究報告レポートにお名前掲載 他
4
人
が支援しています。
(数量制限なし)
サイエンスカフェ@オンライン参加権 他
9
人
が支援しています。
(数量制限なし)
ラボツアー参加権 他
4
人
が支援しています。
(数量制限なし)
学会発表謝辞にお名前掲載 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)