Challenge period
2024-09-03 - 2025-08-31
Final progress report
Mon, 11 Nov 2024 17:17:53 +0900
Progresses
9 times
Supporters
86 people
Elapsed time
Tue, 03 Sep 2024 08:00:00 +0900
突然死による死別を経験された方より応援コメントをいただきましたので、ご紹介させていただきます。
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私の旦那は心臓の疾患で突然死にました。
原因は解剖に回しましたが「〇〇であろう」というものでした。
『本当のところ』はわかりません。彼の叔父も早くに亡くなっています。因果関係もわかりません。
彼が死んでから、毎晩、子供の心音を確認する日々が続きました。
不安で仕方がなかった。
福嶋さんの研究で遺伝学的に予知ができるのであれば、それが調べられると提示されていたのなら飛びついていたと思いますし、今調べられるのなら子供のために調べたい。
原因不明の心臓突然死遺族の多くの方が望むものだと思います。
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上記のコメントを寄せてくださったせせらぎさんは、当時3歳と1歳だったお子さんがおられる中、最愛のご主人との死別を経験されました。その後、ブログでご自身の経験を発信されてきたほか、死別された方に必要な情報のまとめ、死別者のコミュニティ運営など、多岐にわたってご尽力されてきました。
せせらぎさんと私との関係は、数年前、私から研究協力をお願いさせていただいたことがきっかけでした。
なぜ直接の研究協力をさせていただいたのかについて、少しお話させてください。
一言で言ってしまうならば、研究にご協力いただける方が集まらなかったということになりますが、私の想定をはるかに超えてそれが難しかったのです。ご遺族と医療者・病院との関係が途絶していたこと、同じ経験をされたご遺族どうしのつながりの希薄さ・情報を得る場がないことによるご遺族の孤立の現状は、私の想像をはるかに上回っていました。そうであろうと心得ていた以上に私は無知でした、想定が甘かったに他なりません。
もう少し詳しくお話すると、元来健康な方が突然亡くなると、病院に救急搬送されること・搬送されないことがあります。病院へ搬送されなかった場合には基本的に医療者とかかわることはありません。救急搬送された場合にも、その後快復されれば話は別ですが、亡くなってしまった場合多くの方は医療者と信頼関係を築くような時間的余裕もなく病院を後にされるのが、一般的です。
そのような背景もあり、法医や救急医の先生方にご紹介いただいたり、一次救命処置の活動からのつながりのある方々にご協力を得たりすることはできたものの、早々に行き詰ってしまいました。
いまのままでは、必要な研究が遂行できない。
しかし、この計画を遂行できた先に明らかにできることがあると考え研究を始めていたため、研究の本質を曲げない方法で代替策はないかと、たくさん悩みました。
悩みながら考えた結果、当事者の方を自分でオンライン上で見つけ、目的にあった内容についてお話してくださる可能性のある方へ直接メッセージを送るという方法をとることにしました。合目的的サンプリングといって、質的研究ではこういった研究参加者の募り方も目的によって妥当とみなされます(もちろん倫理申請等の必要な手続きも行ったうえで実施しました)。
そこでご連絡をとらせていただいたおひとりが、せせらぎさんでした。
せせらぎさんは、ブログのなかで経緯などもお話してくださっておりますが、そのときどのように感じたのか、書かれていなかったこの時間についてはどうだったのかなど、インタビューガイドにのっとってお話をお聞かせただきました。
そのとき、なぜ、このように直接メッセージをさせていただくに至ったのかなどについても正直にお話をしました。それを受け、せせらぎさんより当事者のお声かけいただくことをご提案いただきました。
結果、せせらぎさんから直接声をかけてくださった方や、ブログを見てご連絡をくださった方が約30人いらっしゃり、インタビュー研究を無事遂行することができました。一部、年齢など制限があり、ご連絡をいただいたにもかかわらずこちらからお断りすることになってしまった方もおり、ごめんなさい。
私としては、協力したいとご連絡くださったおひとりおひとりのご厚意すべてのおかげで、現在出版に向けて準備を進めることができており、私とやりとりしてくださった皆様に心からの感謝でいっぱいです。
ちなみに上記の方法も、スノーボールサンプリングといって、参加者の方から次の参加者の方へつなげていただくという質的研究の世界では一般的な方法のひとつです。
そのときのせせらぎさん視点でのやりとり、当事者目線での研究協力への思いなど、ぜひ下記のブログ記事をご覧いただければと思います。
http://www.kimitoissyoni.com/archives/34093226.html
私はこの研究を行ったことを通して、当事者の方に語っていただくことの意義と、その難しさを再認識しました。巷ではビックデータの解析などさかんに行われているものの、このような当事者の方を対象とした疑問やわからないことの多くは、どこにも書かれていない、誰も聞いたことのない、対象者の方の中だけにあるものであると考えます。
そして、話しをしていただく(テキストデータを得る)ことは簡単なことではなく、つらい経験を思い出すことでもあり、そしてそれを言語化することがいかに尊いことなのか。こうしてお話することを検討してくださった方々へはとても頭が上がりません。
もし、当事者の方もせせらぎさんが思ってくださったように、研究という方法や科学の力に期待したいと思っていただけた方がおられましたら、私まで何らかの方法でご連絡をいただければ幸いです。
今後、支援者の方限定のコミュニティを開設予定です。その中で、当事者の方限定のお部屋も用意したいと考えており、当事者の方についてはこちらの支援を必須とせず、入っていただければそれだけで、と思います。
ゆくゆくは、そのコミュニティのなかで研究参加に関する情報をお伝えしたり、意見交換をしたりできるようにできればと考えております。
そして、最後になりますが、改めて私にできることはなにか、ということについてです。
まずひとつめは、これまで伺ってきた当事者の方からの声をきちんと科学論文として世に出すことです。
頑張って書きますので、あと少し、お待ちいただければ幸いです。
ふたつめに、いますぐできることとして、寄附という方法がありました。
以下、勝手な私からのお願いを含みます。せせらぎさんからの依頼ではなく、上記の課題意識と関連して、こちらに書かせていただこうと思った次第です。
せせらぎさんは、これまでも無料でたくさんの場や情報を提供されてきましたが、また一段パワーアップしたピアサポートクラブの開設準備をされています。
医療や行政が担うべきケアもある一方で、突然死者ご遺族にとって安心して話をすることのできるピアサポートの場は非常に重要な意味があり(Steffen EMら, 2020)、ガイドラインでもその必要性について論じられています(アジア太平洋不整脈学会議/米国不整脈学会からの声明, 2021)。
自身もケアの対象者でありながら、だれかのことを思い、コミュニティを運営していくことがどれほどに大変で有難いことか、研究を行う中で改めて感じました。
私へご支援いただいていること自体も、巡り巡って未来の当事者の方にとっての意義につながるようにしていく所存ですが、彼女のプロジェクトはいままさに、支援を必要とされています。
私もささやかながら、支援しております。
ぜひ、共に応援していただければ幸いです。
https://www.seseragi-peersup-club-project.com/
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆様のあたたかいご支援が、未来のかなしみを減らす力につながると思っております。
今後ともあたたかく見守っていただければ幸いです。
引用:
Steffen EM, Timotijevic L, Coyle A. A qualitative analysis of psychosocial needs and support impacts in families affected by young sudden cardiac death: The role of community and peer support. Eur J Cardiovasc Nurs. 2020 Dec;19(8):681-690.
Stiles MK, Wilde AAM, Abrams DJ., et al. 2020 APHRS/HRS expert consensus statement on the investigation of decedents with sudden unexplained death and patients with sudden cardiac arrest, and of their families. J Arrhythm. 2021 Apr 8;37(3):481-534.