クラファンを再始動してから2日、すでに10名以上の方からサポートをいただいております!すごい!うれしい!!
お忙しいなかでカード設定などめんどくさい作業をして、前回のクラファンから引き続きサポートくださる方、新規でサポートくださる方がいるというのは本当にすごいことだと感じております。皆さま、本当にありがとうございます。
さて、私は去年の秋に博士号を取得したばかりの駆け出しの研究者です。初回として、どんな経緯で研究者になったのか、チャレンジページには書ききれなかった部分を紹介したいと思います。
実は私、高校1年生まではいわゆる「文系」でした。
成績表では数学の評価が一番低く、一番高いのは国語。両親も文系で、研究者になるなど1ミリも想像していませんでした。「あと2年我慢して大学生になったら理系科目と縁が切れる」と思っていたほどです!そんな私が、研究者という職業に憧れを抱いたのは「すべてのモノは原子と分子でできている」という事実に衝撃を受けたのがきっかけ、というのはチャレンジページ冒頭に書いた通りです。私はたぶん、一度心が決まったら突き進むタイプで、研究者といえば京大理学部だろうという安直な考えで猛勉強を開始しました。E判定からの逆転合格を叶え、社会の喧噪から離れた京都という学問の地で存分に大学生活・研究生活を楽しみました。楽しかった~。
でも修士を修了後、私は博士課程進学ではなく、民間企業への就職を決めました。理由は色々ありますが、詰まるところ、博士課程をやっていく自信がなかったのだと思います。博士号を取得して研究者になるためには私にはないもっと特別な才能が必要なのだという考えで、自ら障壁を作ってしまっていた気がします。
とはいえ、研究に未練があったので、企業の研究所を就職先に選びました。研究対象は電池。穏やかでいい環境だったのですが、理学部で見聞きしていた研究よりずっと応用に近い研究に触れるたびに、自分がいかに基礎研究にわくわくしていたかを思い知るようになりました。社会実装のことを考えていても、結局原理が気になってしまう。原理がわかっていないから、開発の方針が見えないケースをいくつも目にしました。そこで、「社会」と「基礎研究」は隔離されているのではなく、地続きのものであると理解できました。
そんな夢と現実の間でゆらゆらしている感覚の社会人生活でしたが、一年も経たないうちに、一回目の転機が訪れました。友人の紹介で理研の研究室に見学に行き、単分子レベルで化学反応を見るための研究の話を聞いたとき、「これだ!」と直感したのです。モノは原子と分子でできているのだから、化学反応もそのレベルで理解したい、という気持ちや、電池の話を聞くたび原理が気になってしまうもやもやした気持ちが明確になり、私が知りたいのはこれなんだ、と腑に落ちた感覚でした。そうと決まればやっぱり夢中で突き進みます。研究室への参加をお願いし、会社を辞め、入試を受け、博士課程の学生として研究を始めました。
このとき、安定した会社を辞めるという大きな決断をしたものの、アカデミックに進むかどうかはあえて決めませんでした。何らかの形で、アカデミックに関わって基礎研究に貢献したい。そのために博士号は必須だという考え方で、とりあえずやってみようという心持ちでした。
博士課程では、周囲の環境にも恵まれました。指導してくださった先生はその道のプロフェッショナルで、先生と議論している時間が一番楽しいと思ったほどです。最初の論文になった実験結果も得られ順調だったのですが、お世話になったポスドクの先輩が、母国に帰る前に残した言葉が印象的でした。
「ここでやりたかったことは達成できた?」と私が聞いたら、答えはNoでした。
「この測定手法は、試料を選ぶ」
心のどこかにあった不安が、はっきりしてしまった気がしました。測定手法の難しさを根本的に解決しなければ、「化学反応を原子・分子のレベルで理解したい」という目標にたどり着けないのではないか……。
そんなときに二回目の転機が訪れました。理研の私の先生と、ある別の大学の先生と、3人でディスカッションしているとき、新しい「針」の発想が生まれたのです。正直最初は、そんなにうまくはいかないだろうと思っていました。しかし、ダメ元で試してみると「あれ?いい感じ…。」これは面白いと思い、そうなったら突き進みます。ひたすら試行錯誤を繰り返し、新しい発想の「針」が使えるようになったのが博士課程が終わる去年の初めのことでした。
そこで「よし!研究者になろう!」と決めた……というのは言いすぎで、どちらかというと、「この研究をもっと進めたい」という気持ちがあって、そのためにはアカデミックでの職を得なければという考えが実際のところです。
「研究者」と言うと、一部の天才だけがなれる遠い存在のように思っていました。でも私は元を辿ればただの数学が苦手な高校生で、夢と現実の間をゆらゆらしながら進んできたように思います。ただ、大事なときに「うわ!面白い!」と思うことが目の前に現れてくれ、それを追いかけていたら駆け出しの研究者になっていました。
「面白い」と思えることと出会えるのは、とても幸運だと思います。その出会いがたくさんあることが、研究の魅力とも言えます。だから、私だけでこっそりにやにやしているのはもったいないと感じています。研究者以外の人とも、せっかくなので共有したい。このクラファンをそんな、「面白い」の共有の場にしていきたいと考えています。
サポートをくださった皆さま、本当にありがとうございます。これから、私の研究を一緒に楽しんでくださると幸いです。
(写真は実験の最中...風の写真です)
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