僕は、「クイズの研究者」ではありません。
いきなり書いてしまいましたが、もちろん、このプロジェクトを放棄したわけではないです。
改めての立場表明です。
僕はあくまで、「心理学・認知科学の研究者」です
(少なくとも、自分ではそう思っています)。
特に、人が行う判断の特徴やメカニズムに興味を持っています。
この一環として、「クイズ(特に早押しクイズ)」に着目しています。
ずっと早押しクイズを扱ってきたわけではありません。
むしろ、早押しクイズという題材は、本プロジェクトを機に初めて着手しました。
昨今は優れたAI (Artificial intelligence)が登場し、我々にとって身近な存在になりました。
このような時代だからこそ、「人の知性(Human intelligence)とは?」という問いを考えることは一層重要になります。
昨今のAIは、計算能力や記憶容量が向上し、膨大なデータを扱えるようになりました。そしてそれにより、正確な判断を導いています。
一方、人は、AIと比べると計算能力などには制約があり、あらゆる情報を処理できるわけではありません。多くの場合に、情報が不十分な(不確実性を伴う)中で判断を行います。しかしそうであっても、正確な判断を多く行うことができています。
人とAIは、いわば真逆のアプローチで「正確な判断」を導いているといえます。
人が持つ「認知的側面(記憶や計算能力)で制約があるにも関わらず正確な判断を行う」という点こそが、「人の知性」の本質なのではないかと我々は考えています。
この性質は、早押しクイズと共通します。早押しクイズでは、他の人よりも早く回答権を得るべく、時には得点状況などを勘案して、問題文の途中(不確実性を伴う)でもボタンを押す必要があります。この一瞬の駆け引きが、答える人や観戦する人々を楽しませます。
そしてここには、不確実性下で瞬時にかつ正確に判断を行う「人の知性」が現れているといえます。
「認知科学」という学問では主に、計算機による統計分析やシミュレーションを通して、実際の人のふるまいを説明するモデル(認知モデル)を構築・提案し、人の情報処理のメカニズムを解明することを目指します。
早押しクイズには、他者との競争、不確実性、状況判断、確信度…など、多くの心理的・認知的な要素が絡みます。その知的な娯楽・競技に潜む「人の知性」を、認知科学のアプローチを駆使して探求したい。僕はそう考えています。
「(早押し)クイズ」は誰もが知っています。
しかし、「クイズ」と「認知科学」を融合した研究は、いまだ誰も行っていません。
僕は、わずかながら、この両方の経験を有しています
(クイズは主に高校~大学、認知科学研究は主に大学院以降)。
「クイズ×認知科学」という新たな研究を切り拓く。
この研究はきっと、この両方の経験を有した僕にしかできない。
そして、「人の知性」の新たな理解につながる可能性を秘めている。
そう考えて、僕はこのプロジェクトに挑戦しています。
※ 研究協力者: 小坂健太(こさかけんた)君 @関西外国語大学
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
—-- 参考 —---
・白砂大(しらすなまさる)業績
https://sites.google.com/view/masaru-shirasuna/home/publications-works
・クイズ王はAIよりスゴい?「クイズの研究者」が考える未来予想図【QuizKnock様取材記事】
https://web.quizknock.com/quiz_researcher_interview
・白砂・小坂 (2023). 早押しクイズに見る不確実性下の判断:クイズ大会の行動データに基づく事例研究. 【プレプリント】
https://doi.org/10.31234/osf.io/tghax
—--------—------
【再掲】
改めてのアナウンスです。
2023年12月27日、academist Prize のイベントが開催されます!
https://cic-academist1227.peatix.com/
参加無料、どなたでもご参加いただけます(現地・オンラインいずれでも可。現地は定員あり)。
参加は申し込みは明日12/26までです!
我々academist Prize 第3期生による、2分間ショートピッチもあります。
オーディエンスの皆様による投票で、「オーディエンス賞」も決まります。
僕は、上記のようなことをお話しする予定です ※オンライン発表
「人ならではの知性とは?」――その答え、一緒に探してみませんか。
※※ 同じくacademist Prize挑戦者の櫃割君が俳句を題材に研究をしており、「やっぱ五七五のリズムってええなぁ」と思ったので、タイトルも末尾も五七五にしてみました。お気づきでしたか? ※※
## きょうのもんだい ######
Q. 1956年のダートマス会議で初めて提唱されたとされる、こんにちでは「AI」という略称で広く呼ばれる言葉といえば何でしょう
A. 人工知能 (artificial intelligence)
【ひとこと】現代では当たり前に使われている「AI(人工知能)」という用語ですが、その初出は1950年代、アメリカで開かれた「ダートマス会議」という会議だとされています。この会議は、当時の著名な計算機科学者・心理学者が一堂に会したことでも有名です。
なお、僕の研究分野である「認知科学」という学問は、実は人工知能といわば「双子の学問」として、同時期に誕生しました。認知科学は非常に学際的であり、定義が非常に難しいですが、そのうえで僕なりの定義を端的に述べれば、「人の『知覚・行動・判断』について調べる学問」だと思っています。当時、「目に見える行動のみならず、目に見えない情報処理の過程も注目すべきだろう」といった考えのもと、情報処理の主体として「人」に主軸を置く認知科学と、「(脳を模した)計算機」に主軸を置く人工知能が生まれてきた、と僕は理解しています。
(参考) https://www.jcss.gr.jp/about/whats_cogsci.html
余談ですが、僕自身も双子です。
Q. 「標準正規分布に従う確率変数の2乗」として定義される、統計で、主に独立性や適合度を検定する際に用いられる確率分布を、あるギリシア文字の2乗を用いて「何分布」と呼ぶでしょう
A. χ(カイ)2乗分布
【ひとこと】例えば「さいころの目が、どの目も等しく『6分の1』の確率で出るか (適合度検定)」や「男女間で、各血液型の分布が異なるか(独立性検定)」などの分析に、χ2乗検定と呼ばれる手法が使われます。検定の過程で、「χ2乗分布」という確率分布に従う統計量(χ2乗値)が算出されるため、「χ2乗検定」という名前がついています。
そんなことより、本日はクリスマスですね。クリスマスを「χmas」と表記することがありますが、これは、ギリシア語で「キリスト」を意味する「Χριστός」の頭文字「χ(カイ)」に由来するとされます。
改めて、Merry Christmas!
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