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Closed Trancking chemical reactions of single-molecules!

Monthly

Yuzu Kobayashi

東京大学、博士後期課程

Challenge period

2020-11-18 - 2023-09-30

Final progress report

Mon, 08 Apr 2024 18:53:15 +0900

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45 times

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Wed, 18 Nov 2020 10:00:00 +0900

Comment from academist staff
「個々の分子はどのように反応に至っているのか?」という究極的な問い

物質は、原子や分子から構成されている——そう知ったときから、「化学反応のメカニズムを解明したい」という夢を追いつづけてきた小林さん。会社員としての研究所勤務を経て、博士後期課程へ進学することを決意しました。現在は、探針増強ラマン分光法を用い、反応中の単一分子の分子振動を捉えられる装置を構築することで、個々の分子でどのように化学反応が起こるのかという究極的な問いに挑もうとしています。

化学反応はどこで、どのように起こっている?

「化学反応」と聞いて、何を思い浮かべますか? 実は私たちの身近なところでも活用されています。たとえば、次世代エネルギーとして知られる水素は、水が電気分解する反応によって得られます。

$\ce{2H2O -> 2H2 + O2}$

この反応は、次のような水素が電子を出す反応と、酸素が電子を受け取る反応の組み合わせでできています。$\ce{e-}$と書いたのは電子のことです。

$\ce{2H+ + 2e- -> H2}$
$\ce{2H2O -> O2 + 4H+ + 4e-}$

このように電子の受け渡しがある反応のことを酸化還元反応といいます。もっと単純なものには、2価の鉄イオン($\ce{Fe^2+}$)の電子が放出されて3価($\ce{Fe^3+}$)になる反応などもあります。

$\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$

このように反応式で簡単に書くことができる化学反応ですが、では、この反応がどこで、どのように起こるのか、この反応式から想像できるでしょうか。2つの水分子はどのように出会うのでしょうか。突然2つの水素分子と1つの酸素分子に分裂するのでしょうか。2価の鉄イオン($\ce{Fe^2+}$)が100個あったら、すべてが一瞬で3価($\ce{Fe^3+}$)に変わるのでしょうか。

実は化学反応には、まだまだわからないことがたくさんあります。 特に、分子は非常に小さい(1/1000万〜1/10万cm)ので1つひとつがどのように反応に至っているのかを明らかにするのは至難の業です。

反応中の分子の状態を調べる方法

1980年代以降、STM(走査型トンネル顕微鏡)という手法を使って真空中で原子1つひとつを「見る」ことが可能になりました。STMは、先端が原子1個分サイズの金属探針を使って原子を可視化する手法です。この手法はどんどん進化し、空気中でもグラファイトなどの原子像が得られるようになりました。

また、光を入れることで探針直下の分子の振動エネルギーを調べるTERS(探針増強ラマン分光法)という手法も開発されました。分子の振動は、分子がどのように結合しているのか、どのような環境にいるのかなど豊富な情報を内包しているので、私たちは1つひとつの分子の状態について、より深く理解できるようになりました。

「このような測定を化学反応中の分子に行えば、反応中の単一分子の状態についてもわかる」というのはシンプルなアイディアです。しかし、反応中の分子に探針を近づけて微弱な信号を得ることは簡単ではなく、世界でも単分子の酸化還元反応を観測した例はありません。私が所属している理化学研究所のKim研究室では、溶液中の分子に対してTERS信号の測定に成功しましたが、信号が弱く、反応による状態変化までは捉えられていないという課題があります。

そこで私は、TERSに対する感度が大きい、かつ、鉄イオンを含む分子を使って単一分子の$\ce{Fe^2+}$と$\ce{Fe^3+}$の変化を捉えることに挑戦します。$\ce{Fe^2+}$と$\ce{Fe^3+}$では、この分子の振動周波数が変化します。したがって、単一分子のそれを捉えることができれば「個々の分子でどのように反応が起こるのか」という究極的な問いのひとつに答える、世界で初めての研究になります。

さらに、「$\ce{Fe^2+}$が100個あったら、すべてが一瞬で$\ce{Fe^3+}$に変わるのか」という、根源的な問いにも答えたいと思っています。また、将来的にさまざまな反応に応用することができれば、たとえば、水素を効率的に発生させてエネルギー問題を解決するという未来もあるかもしれません。難しい実験ですが、修士のときに振動分光と電気化学を組み合わせた装置開発をした経験や化学反応に対する強い興味を注ぎ込み、世界で初めての研究を成功させたいです。

モチベーションは、物質が原子や分子からなることを知ったときの衝撃

思えば、原子と分子の存在を知ったときの小さな衝撃が、私をずっと動かしているのだと感じます。

「物質は、原子や分子で構成されている」と知ったときから、私は「新しい世界の見方」を手に入れたと思います。それから化学にハマり、今度は化学反応がどうやって起こるのかを知りたいと考えるようになりました。しかし、よく知られている単純な反応さえも、1つひとつの分子の動きを描くことはできていないことを知りました。そのときに、「化学反応のメカニズムを解明したい」という夢が生まれたのだと思います。

その夢を抱えたまま、私は企業の研究所に就職しました。理由はありきたりともいえる現実で、金銭的な問題と(とくに女性としての)アカデミックキャリアへの不安でした。夢と現実のあいだで葛藤し続けた会社員生活で、良くも悪くも初めて見えたことがたくさんあります。

はっきりしたことは、私はやはり科学が好きだというシンプルな事実です。それが、科学の面白さを専門外の人に伝えるアウトリーチ活動に目を向けるきっかけにもなりました。もちろん科学者には憧れますが、何らかの形で科学に携わる仕事ができれば嬉しいと考えるようになり、そのためにはもう少し学生として修行するべきだという結論に至りました。

Why we need your support

とはいえ、修士のころの不安が解消したわけではありません。会社員のときに心を鬼にして節約し、授業料を払える程度には貯蓄しましたが、生活費は綱渡りの状態です。そうしたなか、研究について発信して、クラウドファンディングで応援してもらうという月額支援型のプログラムは、私にとって絶好の機会だと捉え、挑戦することに決めました。

博士後期課程の在学期間中、継続的にご支援をいただくことができれば、より安定した環境で研究に集中することができます。ご支援してくださった方に向けては、月に1度、研究の進捗状況はもちろん、詳しい背景や研究生活を楽しみながら発信していきたいと思います。私の研究を応援してくださる方、すこしでも共感していただけた方には、ご支援いただけるとたいへん嬉しいです。よろしくお願いいたします。

Profile

Yuzu Kobayashi

東京大学大学院新領域創成科学研究科の博士後期課程に在学中。東大に在学しながら、理化学研究所で研究しています。京大の理学研究科化学専攻修了後、企業でエコな電池の開発に携わりました(NTT研究所)。もともとは算数で挫折するほどの文系でしたが、今は理系としてなんとか頑張っています。
趣味は美味しいご飯とお酒。実家でかぼすという柴犬を飼っています。
科学を誰もが楽しめるコンテンツにしたい!という想いから最先端の研究記事を紹介し、Tシャツにデザインするというユニークな活動も行っています!→ a cup of science

Project timeline

Date Plans
2020年9月 博士課程入学
2020年10月 理化学研究所で研究開始
2021年(未定) 専攻内発表
2022年(未定) 専攻内発表
2023年4月 博士予備審査
2023年7月 博士本審査(予定)
2023年9月 博士課程修了(予定)

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