映画「アイアンマン」には、主人公が視線でコンピュータを操作しているシーンがあります。礒本さんは、こうしたSFの世界観を現実のものにしようとしています。視線を使ったコンピュータの操作方法を普及させていくために大きなハードルとなるのが、操作したくないのに操作が行われてしまう「ミダスタッチ問題」です。この問題の解決に向けて、礒本さんはユーザーの「視線」をより深く理解するための研究を進めていきます。
みなさまはパソコンやスマートフォンをどのように操作しますか? マウスやタッチパネルを使われる方が多いのではないでしょうか。最近だと「OK, Google. 〇〇をして」のように言葉で操作を行うこともありますね。
私は、これらのようなコンピュータの操作方法に関する研究を行っています。この研究分野をヒューマンコンピュータインタラクション(HCI: Human Computer Interaction)やユーザインタフェース(UI: User Interface)分野と呼びます。
なかでも、視線(ユーザがどこを見ているか)を使ったコンピュータの操作方法に着目しています。私たちは、日常的に「見る」ことによってさまざまな情報を得ています。また「目は口ほどに物を言う」といわれるように「見る」ことで感情を表現しています。つまり、ユーザの視線を認識することは、ユーザの興味や注意、感情などの理解につながるということです。私の研究では、ユーザが行おうとしていることを「見る」という行為から推測し、コンピュータの操作につなげることの実現を目指しています。
視線を使った操作が普及することで、より多くの方・多くの場面でコンピュータの操作が可能となります。たとえば、両手が塞がっている場面や、コンピュータの操作に手を使うことができない方も、コンピュータの操作が可能になります。もちろん、手や言葉での操作と組み合わせることもでき、より便利・快適にコンピュータの操作が可能となります。
また、直接機器に触れる必要がなくなるため、衛生面においても有効的です。たとえば、エレベータの階を選択するボタンや、自動販売機の購入するボタンをじーっと見つめるだけで選択することが可能になると、接触感染の恐れがある病気の感染を防ぐことにも繋がります。
余談ですが、私の好きな映画のひとつでもある「アイアンマン」では、主人公が視線でコンピュータを操作しているシーンがあります。このようにSF世界では当たり前のように行われ、小さいころ(今もですが……)に憧れたことを実現できる点も、この分野の面白いところです。
では、実際にはどのように視線を使ってコンピュータの操作が行われるのでしょうか。
たとえばマウスでの左クリック、タッチパネルでのタップに相当する操作は、じーっと見つめること(凝視と呼ばれています)で実現できます。つまり、ユーザがある対象をじーっと見つめているとき、ユーザはその対象を操作したいと考えているとコンピュータが理解し、操作が実行されます。
しかし、視線のみからユーザの感情を正確に読み取ることは難しいです。そのため、考えごとをしているときや、ただ見ているだけなのに操作が行われてしまうこともあります。この問題は、触れたものをすべて金にしてしまうギリシャ神話のミダス王になぞらえて、「ミダスタッチ問題」と呼ばれています。
現在最も普及しているマウスやタッチパネルを使った操作では、このような誤った操作は起きにくいです。一方、視線を使った操作では、見たものすべてを操作できるといえば聞こえはよいですが、誤った操作が行われてしまうという課題があります。
視線を使った操作の普及に向けて、このミダスタッチ問題の解決は欠かせないです。そして、このミダスタッチ問題を解決することが私の研究テーマです。
ミダスタッチ問題の解決に向けては、まず、ユーザがどのように視線を移動するかを調査します。たとえば、操作を行おうとしているときとそうでないときの視線の動きの比較や、人間の感情の理解につながる瞳孔の情報を調査します。そして、ユーザが操作を行おうとしているときの視線の動き方とはどういったものなのかを明らかにし、よりミダスタッチ問題が生じにくいような凝視を使った操作手法を示します。
実は、視線認識が可能な機器はすでに2万円程度で手に入れることが可能で、実際にコンピュータの操作を行うこともできます。また、iPhoneには視線を認識することができる機能もあり、実際に視線認識を使用したアプリケーションも公開されています。しかしこれらは、基本的に制限を書けることにより、ミダスタッチ問題が起きにくいように設計されています。
私は、ミダスタッチ問題を解決することで、マウスやタッチパネルと同じレベルの操作性や使いやすさを実現し、視線を使った操作をより広く普及させていくことを目指して研究に取り組んでいきます。
本プロジェクトを通じていただいた支援金は、生活費や研究に必要な機材の購入に充てさせていただきます。特に在学期間中に継続的な支援をいただくことができれば、経済・精神的にも安定した研究生活につながると考えています。
博士後期課程へ進学する際に、ひとつの目標としてアウトリーチを行っていくことを挙げていました。そのため、このようなクラウドファンディングをさせていただく機会を得ることができたのは、とても嬉しく思います。普段の研究発表だけではなく、どのようなことを考えながら研究・生活をしているのかを発信していきたいです。また、本プロジェクトを通じて得られた経験をプロジェクト終了後も積極的に発信していきたいとも考えております。
私が行っている研究や取り組み、ひいては私自身に興味を持っていただいた場合は、ご支援いただけると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
はじめまして。筑波大学 博士後期課程1年の礒本俊弥(いそもととしや)です。出身は山口県で、徳山工業高等専門学校(高専)から大学に進学してきました。自分の発想・経験・行動から世界を変えることができる点に惹かれ研究の道に進みました。実は、学部時代は修士課程にすら進学するつもりはなかったのですが、そこから一転、もっと研究をしたいと思い続け、気づけば博士後期課程まで進学していました。うまくいかず辛いこともありますが、それ以上に充実した学生生活をさまざまな角度から発信したいです。
Date | Plans |
---|---|
2020年9月 | 国内学会へ論文投稿 |
2020年12月 | 国内学会での発表(論文の査読結果次第) |
2021年4月 | 国際学会へ論文投稿 |
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毎月academist上にて研究・活動報告を更新します。これまでに私が行ってきた・今後行う研究や、HCI・ユーザインタフェース分野の最新の研究・機器のお話をします。
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