光と物質の違いは何なのか? 光と物質の間ではどんな相互作用が起きているのか? 高校生の頃に抱いたこうした疑問から光への関心を強めていった谷さんは、特に疑うことなく大学院に進学し、光と物質の間で起きる現象を物理の視点で解き明かす光物性の研究を進めています。パルスレーザー技術の進歩により強く・短く光るパルス光発生が可能になり、「アト秒の世界」で起きる現象が観られるようになってきた一方で、そのような超高速現象に潜む物理メカニズムはよくわかっていません。今回のプロジェクトではコンピュータシミュレーションによる理論研究で、物質側の窓口となる電子の超高速ダイナミクスの理解を目指します!
私は高校生の頃からずっと光の研究をしたかったので、特に何も疑うことなく大学院まできました。
いま、なぜ目の前のモノが見えているのでしょうか。それはモノからやってくる光が目に入ってきて、それを感知できるからです。普通の物体(水や埃)が目に入ってくると少量でも痛かったり違和感を感じたりしますが、身の回りの光が目に入って来ても痛くありません。この違いは何なのでしょう? 光の正体は一体何なのでしょう? 私は高校生の頃にそういったことが気になり始めて、いろいろ調べたり考えたりしていました。
そうこうしているうちに、とある高校生向けの企画で「レーザー冷却」という技術を使った実験を行なっている大学の研究室を訪れる機会がやってきます。レーザーというと何かを焼いたり切ったりするイメージがあったので、レーザーで冷やすことができるというのを目の当たりにして非常に驚きました。
このように身の回りの光から最先端の光にいたるまで、さまざまな顔をもつ光に惹かれたのがきっかけで、それが現在の研究のモチベーションにもつながっています。私が研究を進めている「光物性」という分野では、光と物質の間で起きる現象を、物理の視点から解き明かしてよく理解しようとしています。
レーザーは、足並みの揃った光のことです(街灯や蛍光灯の光は足並みがあまり揃っていません)。身近な用途としてはレーザーポインタなどがあります。レーザーには大きく分けて、連続光(ずっと光っているもの)とパルス光(一瞬だけ光るもの)がありますが、レーザーポインタは連続光に該当します。一方でパルス光はあまり馴染みがないかもしれませんが、その応用可能性は広く拓かれています。
パルス光はこれまでに、(1)持続時間を極限まで短くする、(2)瞬間的に極限まで強くする、の2つの方向性で研究が進められてきました。
(1)の極短パルスは、物質の状態を操作したり、シャッタースピードが超高速なフラッシュカメラとして使ったりするといった用途があります。たとえば、シャッターを切る間にUFOがカメラの前を横切ってしまったらUFOの写真はぼやけてしまいますよね? この世界には今よりも超高速なシャッタースピードのカメラが実現した暁に初めて観れるような超高速な現象が潜んでいると期待されています。
また、一瞬だけ何かを操作するには電気回路を使った装置を組むという方法もありますが、電気信号による駆動はTHz(毎秒10億回の振動)程度になると限界を迎えます。THz以上の速さの物質制御は光ならではであり、まさにまったく新しいエレクトロニクスの端緒と言えるでしょう。
(2)の高強度パルスに関しては、1960年頃に導入された「チャープパルス増幅」という手法(発明者は2018年にノーベル物理学賞を受賞しました)のおかげで、極めて短い時間(〜フェムト(1000兆分の1)秒)の間だけ持続し、かつ高強度なパルスレーザーが簡単に入手可能になりました。通常、高強度のレーザーが物質に当たると物質は壊れてしまいます(これを逆手に取ったのがレーザー加工です)。しかし、一瞬の間(フェムト秒)だけ持続する高強度超短パルスレーザーを使えば、「物質を壊さないようにしつつ、ほんの一瞬だけ光による電場をかける」ことが可能になり、そのおかげでほんの一瞬だけ物質の性質を変化させることも可能だということが分かってきています。
また、パルスを短くする技術はどんどん進歩してきていて、高強度レーザーを波長変換することで、さらに短い持続時間(アト(100京分の1)秒)のパルス光発生が可能になりつつあります。
パルスレーザー技術の進歩によりさまざまな超高速現象が断片的に知られつつあるのですが、その基礎物理(メカニズムなど)は未だによく分かっているとは言えません。
光と物質の相互作用において、物質側の窓口は「電子」なので、私の研究では電子の超高速現象に潜むさまざまな未解明の物理を、コンピュータシミュレーションを駆使して理論的に研究しています。物質中に光が入ってきた時にどんなダイナミクスがもたらされるのかはもはや手計算では手に負えないため、コンピュータシミュレーションを使うのです。
具体的には、電子の運動は量子力学でよく記述される(と信じられている)ので、量子力学の支配方程式である「シュレーディンガー方程式」を数値的に解いて、その結果どんな電流が流れたのかを計算することにより、電子の超高速現象のシミュレーションを行い、その結果を解析して物理の言葉に焼き直すというようなことをしています。もちろん、電流以外の他の物理量の変化を追うことも可能です。
シミュレーションは自作のものや先生から受け継いだもの、他の研究者が公開しているものまでさまざまなプログラムを使って行います。こうしたプログラムはその辺のお店やWebサイトで売っているわけではありません。したがって、プログラムの開発やカスタマイズも研究の一部です。
実験では都合のいい部分だけ抽象化して調べるというのは難しい反面、現実を観察できるという利点があります。シミュレーションだと、現実を完全に模倣することは難しい反面、都合のいい特徴のみを取り出して調べることができるなどの利点があります。つまり、シミュレーションによる研究は実験研究とは相補的な立場からの研究です。
大学院とは無縁の親戚や大学を出て就職してしまった同級生、あるいはかつての恩師に「いま何やってんの?」と聞かれるたび、SNSやニュースで科学技術政策に関する議論などを見聞きするたびに、多くの人々は大学院がどんなところで、実際に大学院の構成員がどんな生活を送りどんなことをやっているのか、ほとんど知らないのだということにハッとさせられ、自分たちのことを人に説明することなしに理解してもらうことはできないのだということを痛感します。
また、大学院生にはアルバイトをするか、奨学金という名の借金をするか、TA・RAといった大学の業務の一端を担うアルバイトをするか、などの手段で収入を得ている人が多いように思います。現に私は研究時間の合間を縫って、多少のアルバイトをしていますが、それも研究が盛り上がってくるにつれて両立の難しさを感じています(※)。良い研究環境に身を置きたければ環境の整ったラボに入ればいいのですが、研究費は研究費ですので我々の懐には一文たりとも入ってこず、私たち大学院生の生活の質に関してはまったく直接寄与しません。
(※2020年2月よりRAを始めました。)
そこで、SNSなどを使って1人で情報発信を始める勇気が湧かなかった私はこのファンクラブというシステムがその2つの文脈から新しく画期的なものだということに気づき、チャレンジしてみることにしました。このサービスがリリースされた当初は正直、「オンラインサロンみたいなの流行ってるな」くらいにしか思っていなかったのですが、いざ自分が大学院生になって研究活動を進めていくうちに、ファンクラブの画期性に気がついたのです。
私の研究動機、研究内容、あるいはその他の部分で興味をもっていただいた場合は、もちろん無理のない範囲でご支援いただけると嬉しく思います。感謝の意を込めて月刊レポートをお贈りするとともに、当該期間の私の出版論文、あるいは学位論文の謝辞にお名前を掲載させていただきたく思います。
東京大学大学院工学系研究科修士課程1年。奈良県&京都府出身。専門は光物性理論・計算科学。大学生の時に実験研究を体験するも、雑な性格から向いていないことを悟る。2019年3月に東京大学工学部を卒業後、現所属に進学。趣味は刑事ドラマを見ることと、中華鍋を使って料理すること。
Date | Plans |
---|---|
2019年10月 | academist Fanclub 開始 |
2020年3月 | ドイツ・Max-Born研究所(ベルリン)でセミナートーク |
2020年3月 | チェコの国際学会で発表 (目標) |
2020年5月 | 日本学術振興会特別研究員(DC1)に応募(予定) |
2020年9月 | 国内学会で講演(予定) |
2021年2月 | 修士論文提出(予定) |
2021年3月 | 国内学会で講演(予定) |
2021年4月 | 博士課程進学(目標) |
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