皆さま、私の研究へのご支援、ご理解とご協力、どうもありがとうございます。
おかげさまで目標金額に到達し、シャリーアティー研究の資金を手にすることができました。
重ねて感謝申し上げます。ご支援いただいた研究資金は大切に使わせていただきます。
また、今回の挑戦を通じて、いろいろな方とこれまでの研究内容や成果を共有する機会を得たこともとても貴重な体験となりました。
さまざまなご教示とアドバイス、ありがとうございました。
引き続き研究に励みたいと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
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あと19日残されているチャレンジの期間でセカンド・ゴールを40万円(150%)に設定し、引き続きご支援を賜りたく存じます。
セカンド・ゴールでは、学会発表での経費、サイエンス・カフェの企画費用(資料代)、博士論文のために必要な文献の取り寄せ費として使わせていただきたいと考えています。
引き続きご支援のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
(東京外国語大学博士課程・村山木乃実)
イランという国は、複雑で多様な背景をもっています。現代イランの思想は、シーア派(十二イマーム派)と結び付けて語られることが多いです。シーア派とは、預言者ムハンマドの後継者をめぐって、多数派であるスンナ派と異なる主張を展開した宗派です。彼らは、預言者ムハンマドの権威は、彼の徒兄弟であり娘婿のアリーとその子孫に引き継がれるという見解を示しました。このようなムハンマドの後継者たちをイマームといいます。
しかし、イランの思想がシーア派だけなのかというと、そうではありません。イランは非常に複雑で屈折した歴史を辿ってきています。たとえば、イスラーム化する以前の今のイランの地域一体は、雄大な古代ペルシア文明が栄えていました。そこでの国教はイスラームではなく、ゾロアスター教でした。7世紀にサーサーン朝がアラブ・イスラーム軍に破れて以降、この地は緩やかにイスラームの衣を纏っていくことになります。16世紀にはシーア派を国教とするサファヴィー朝が興りました。
18世紀末にはガージャール朝が成立しますが、近代化の波が流入し、英露の侵攻に苦しむことになります。宗教はシーア派ですが、西洋型の憲法を導入しようとする護憲運動(立憲革命)の過程では、シーア派は政治の前面に出ることはありませんでした。ガージャール朝のあとに興り、1979年のイラン革命まで続いたパフラヴィー朝は西欧化を推し進める一方で、イスラーム色を弱めようとしました。この政権は、古代ペルシア文化とのつながりを強調しつつ、中東で独自のナショナリスティックなイラン主義国家構築を目指したのでした。しかし、1979年のイラン革命によって王政が転覆し、シーア派を国是とするイラン・イスラーム共和国が誕生しました。
現代イランは日本のメディアで語られるような「対アメリカ」や「シーア派」だけではありません。たとえば、イランに行ってみると、イランに住む人たちは、シーア派的な感覚を当たり前にもっていたとしても、イスラーム化する以前にイランの地にあった、古代ペルシア文化や精神をとても誇りに思い大切にしています。また、みんなで集まり愉快にお喋りを楽しみながらピクニックや山登りをしたかと思えば(イラン人はピクニックや山登りが好き)、静かな部屋で詩(特に古典詩)を読みそこに広がる美的で神秘的な世界に沈潜することもあります。
私は初めてイランに行ったときに、このようなイランの「掴みどころのなさ」に衝撃を受け、そこから「彼らの根幹にある考えは何だろう?」と疑問に思いました。帰国してから、この問いに答えを出すためにさまざまな本を読むなかで、出会ったのがイラン現代知識人アリー・シャリーアティーでした。
シャリーアティーは、1979年のイラン・イスラーム革命の際に「革命のイデオローグ」として一躍有名になった人物です。シャリーアティーは1933年にイラン北東部の宗教都市マシュハド近郊の村に生まれました。彼の家系は宗教的で、父からイスラームを学び育ちます。師範学校を卒業後マシュハド大学文学部に入学しペルシア文学を学びました。卒業後は渡仏しソルボンヌ大学に入学、1964年に博士号を取得しました。フランスではサルトルやフランツ・ファノン等といった、当時のフランスを代表するような人物と関わりがありました。彼はそういったフランスでの交流をとおして社会学、東洋学、そして当時の第三世界の人々によって展開された第三世界論に影響を受け、イランに帰国しました。
フランスで学んだ西洋の思想に影響を受けたシャリーアティーですが、彼のアイデンティティはシーア派にありました。彼のいうシーア派は、既存の政治権力や、制度化した宗教界とは無縁の、一種のより純粋な信仰主義的な(敬虔主義的な)方向性をもった運動でした。これにより、西洋化したイランにおいて真の信仰を立て直そうとしました。シャリーアティーは自らの思想をフランスで学んだ西洋の思想を取り入れながら発展させ、大学や宗教施設での講演をとおして人々に伝えていきました。
彼の思想は、1960年代後半から70年代のイランの若者たちを魅了しましたが、その思想は西欧化を推し進めるパフラヴィー政権からも、マルクス主義/社会主義者者からも、そして実のところイランのシーア派の宗教者ウラマーたちからも批判されました。最後は1977年にイランから出国し、イギリスで客死しました。
シャリーアティー研究は、主として、イラン革命の考察と連動する形で進められ、革命のイデオローグというシャリーアティー像を作り上げる過程で、さまざまなトピックから彼の思想が分析されています。これに対し私は、イラン革命の文脈に限らず、彼を現代イランの知識人の一人としてみなし、彼の著作のなかでも従来考察の対象とされてこなかった文学作品をあえて分析の対象とし、そこにみられる彼独自の宗教思想を分析してきました。そこに彼の生きた宗教の姿があると考えたからです。
これまでの研究の過程で、彼の文学作品に現れた思想は、年代ごとに変遷する側面があるだけでなく、誰に語りかけるかによって文体や表現方法を自在に変化させていることなどが明らかになってきました。最終的には、シャリーアティー全集(全36巻)におさめられている彼のすべての著作をテクストとして設定し、イラン革命におけるイデオローグ、すなわち政治思想研究の文脈のなかではなく、文学作品を含む著作全体をとおして彼の宗教思想を分析し、宗教学の観点から総合的に評価することを目指しています。
これまでに得られたシャリーアティーの思想に関する研究成果のうち、神秘主義的な側面について、英語で論文を執筆します。その際の英語論文の校閲費に、ご支援していただいたお金を使わせていただきたいと考えています。
近年日本における中東研究の水準は高まってきています。しかしながら、その多くは日本語で執筆されているために、世界に発信できていませんでした。私の研究は、日本での中東研究の蓄積があってのものです。研究論文を英語で執筆することで、このような日本における中東研究のレベルを世界に示したいと考えます。また、私と研究テーマが近い研究者は日本にはいません。英語で論文を執筆することで、関心が近い世界の研究者からコメントをもらうことができます。このような機会は、研究を磨いていくために必要です。
今回のクラウドファンディングがみなさんにとって、私の研究だけでなく、イランのことや中東研究のことを知っていただく機会になれたらとても嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
時期 | 計画 |
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2018年8月 | クラウドファンディング挑戦 |
2018年10-12月 | 英文校閲、国際シンポジウムに応募 |
2019年5月 | 国際シンポジウム(Symposia Iranica)にて発表 |
2019年9月 | 宗教学会にて発表 |
2019年10-12月 | イランで研究、博士論文の完成 |
2020年4月以降 | 博士論文提出、出版 |
今回のクラウドファウンディングで執筆することができた英語論文の内容を日本語にしてお送りいたします。宗教学やイランについてよく分からない方にも理解していただけるように執筆致します。
研究報告レポート(電子版)
14人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
『沙漠』は3つの序文と13の散文作品から構成されている作品です。この『沙漠』の一部を翻訳し、メールでお送りします。翻訳はIndesignを使い体裁を整えた上でお届けいたします!
アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) / 研究報告レポート(電子版)
3人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
シャリーアティーの人物と思想を執筆してお届けします。これを読むことで60年〜70年代のイラン社会や思想状況が分かります。
アリー・シャリーアティーのオリジナル概説書(電子版) / アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) / 研究報告レポート(電子版)
27人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
これまでの研究成果を発表するサイエンスカフェにご招待します。日時は2018年12月1日(土)または8日(土)、場所は東京都内を予定しています。また、2020年に完成予定の博士論文(電子版)をお送りいたします。
サイエンスカフェ参加権 / 博士論文(電子版) / アリー・シャリーアティーのオリジナル概説書(電子版) / アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) / 研究報告レポート(電子版)
7人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
論文の謝辞にお名前を掲載させていただきます。もしも実名を控えたい場合はイニシャル等での掲載も可能です。また、英語論文(電子版)をお送りいたします。
論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 博士論文(電子版) / アリー・シャリーアティーのオリジナル概説書(電子版) / アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) / 研究報告レポート(電子版)
2人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
自身の研究について、あるいはリクエストがあればそのお題についてSkypeでお話しいたします。 ※Skypeの内容は録画させていただきます。予めご了承をお願いいたします。
skypeで議論 / 論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 博士論文(電子版) / アリー・シャリーアティーのオリジナル概説書(電子版) / アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) / 研究報告レポート(電子版)
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
自身の研究について、あるいはリクエストがあればそのお題について講演に参ります!小・中学、高校等にも伺います。 ※旅費は別途頂戴いたします。
出張講演 / 論文謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ参加権 / 博士論文(電子版) / アリー・シャリーアティーのオリジナル概説書(電子版) / アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) / 研究報告レポート(電子版)
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研究報告レポート(電子版)
14
人
が支援しています。
(数量制限なし)
アリー・シャリーアティーの短編集『沙漠』の翻訳(電子版) 他
3
人
が支援しています。
(数量制限なし)
アリー・シャリーアティーのオリジナル概説書(電子版) 他
27
人
が支援しています。
(数量制限なし)
サイエンスカフェ参加権 他
7
人
が支援しています。
(数量制限なし)
論文謝辞にお名前掲載 他
2
人
が支援しています。
(数量制限なし)
skypeで議論(個人様向け) 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
出張講演(団体様向け) 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)