私はこれまで、ブラックホールの姿を撮像観測する研究を進めてきました。ブラックホールは、極めて高密度かつ大質量で、強い重力のため光さえ脱出することができない天体です。
私たちの銀河系中心にあるSgrA*(さじたりうすえーすたー)はブラックホールのなかで、地球から一番大きく見えるブラックホールです。その撮像は「VLBI観測」をすれば実現するはずと考え、ブラックホールのホライズン検出を目指す「きゃらばん・サブミリ計画」の検討を始めました。VLBI観測は、ペルー・ボリビアのアンデス高地に新しいサブミリ波電波望遠鏡を設置することから始まります。その後、1000kmから2000kmの長さの「基線」を創設し、世界に既にあるALMAなどのサブミリ波電波望遠鏡と一緒に撮影をします。
これまでにアンデス高地のサイトサーベイ、ブラックホールの理論的な研究、準備としての観測などを法政大学、慶應大学、愛知教育大、大同大学、宇宙科学研究所などの仲間と進めてきました。しかし、ブラックホールの周りには電磁波を乱すプラズマがあって、その姿を隠します。その影響から逃れるにはサブミリ波電波で観測する必要があります。また、ブラックホール周囲の降着円盤では爆発的現象が短時間に起きることが、最近の観測データから明らかになってきました。これらの結果から、正確な姿を撮像するのは相当に難しいことがわかってきました。ブラックホールの姿の撮像の実現にはまだまだ時間がかかることになりそうです。
「きゃらばん・サブミリ計画」の望遠鏡開発の検討過程で、「へら絞り法」の加工精度の高さに気がつきました。へら絞り法は下町職人や匠の技として知られている金属加工の技術です。へら絞りアンテナと電波天文学は昔から縁があります。30年前に早稲田大学で大師堂先生が、へら絞り法によってアンテナを64枚作り、低コストで電波干渉計を作っています。我々はそのコストの点に着目して調査を始めました。
電波望遠鏡のアンテナには、高い周波数の電波を拾えるように、高い「面精度」が求められます。面精度は表面の粗さを示すもので、その精度が高いということは表面の凸凹が小さいことを意味します。へら絞り法で口径1mのアンテナを試作したところ、安いだけではなく、実は精度も非常に良くて、サブミリ波という高周波の電波天文観測に使えることがわかってきました。
また、へら絞り法によるアンテナはコスト・性能の点でメリットがあるばかりではなく、軽量である点も魅力です。「きゃらばん・サブミリ計画」では移動式の電波望遠鏡を作りたいと考えています。アンデス高地を移動して観測地点を変えてVLBI観測を繰り返し、ブラックホールの良い撮像を可能にしようと考えました。移動式電波望遠鏡は、観測地点へ持って行って組み上げ、観測が終わったら、ばらしてまた、別の観測地点へ運びます。アンテナが軽量であることは、組立・解体・運搬を容易にするのです。
ブラックホールを見るための電波望遠鏡としては、2m口径のアンテナを複数枚つかって、複合させ、実効口径数メートル相当になる電波望遠鏡を作る必要があると考えています。2017年度に、大澤科学技術財団からの研究費サポートをもとに、2枚の2m口径アンテナをへら絞り法で作りました。レーザ測定による計測では、面精度について60ミクロンrmsという結果がでています。この数字は相当に良い精度であることを示しています。
一方、レーザー測定によるこの値には測定誤差がかなり含まれていると考えられ、実際には30ミクロンrms程度の面精度が達成されていると期待しています。今回のプロジェクトでは、より精度よく測定できる三次元測定を実施してへら絞り法の加工精度を明らかにし、望遠鏡開発におけるへら絞りアンテナの活用を進めたいと考えています。
実は、現在のへら絞り法の技術水準については、研究が進んでいません。へら絞り法の加工精度について、過去の研究を検索してみると、数十年前の研究例しか見つかりません。その加工精度について科学的調査を行うことで、望遠鏡開発の技術検討を深めるとともに、論文として公表することでへら絞り法の科学的な評価を世の中に知らしめたいと考えています。
ブラックホールの姿を撮像するための方法として技術検討してきたへら絞り法を使うことで、高精度でアンテナ面の加工ができることがわかってきました。今回のプロジェクトでは、口径2mのへら絞りアンテナの面精度を、より良い精度で明らかにするため、三次元測定を行いたいと考えています。
私は観測天文学が専門です。へら絞り法の研究は天文学の研究そのものではないので、所属機関・国立天文台からの研究費サポートは非常に困難です。また、技術研究としてもどうやら異端のようで、政府関連の工学研究助成に提案しても、助成の採択を得られずにいます。幸い、金属加工研究を推進する大澤科学技術財団から研究助成を頂いて、やっと2m口径のアンテナ試作ができたところです。さらにクラウドファンディングによるサポートをいただくことで、もう一息、研究を進めて、社会のお役に立てることになると考えています。
へら絞り法はテレビ番組などマスコミではしばしば下町工場の「匠の技」として紹介されています。一方で、金属加工の専門家はへら絞り法の加工精度は「そんなによくないよ」と思っているようなのです。調べてみると、数十年前の古い論文ばかりで、現在のへら絞り法の加工精度について、学術的な研究報告・論文はほとんどありません。へら絞り法の加工精度を研究しているのは、どうも、今や、私たちのグループのみらしいのです。へら絞り法の加工精度の研究結果を学術論文にすることで、その道の専門家に伝え、近未来のテラヘルツ通信技術への応用など、へら絞り技術をもっと社会に活かすべきだと考えています。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
Date | Plans |
---|---|
2018年6月 | クラウドファンディング開始 |
〜2019年3月末 | 三次元測定の実施 |
〜2019年12月 | 論文執筆・投稿(予定) |
ご支援いただいた皆様に、お礼のメッセージをメールにてお送りいたします。ご支援のほどよろしくお願いいたします!
お礼メッセージ(電子版)
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研究報告レポート(電子版)をお送りいたします。ブラックホールの撮像研究やへら絞り法によるアンテナ製作について詳細にお伝えいたします!
研究報告レポート(電子版) / お礼メッセージ(電子版)
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へら絞り法とブラックホールが題材となっている上野歩さんの著書「墨田区吾嬬町発ブラックホール行き」をお送りいたします。著書には上野さんのサインと私からのお礼メッセージを入れさせていただきます!
「墨田区吾嬬町発ブラックホール行き」(サイン、メッセージ入り) / 研究報告レポート(電子版) / お礼メッセージ(電子版)
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北嶋絞製作所の職人さんをお招きした対談イベントにご招待いたします。2018年内に、東京都内での開催を予定しています。当日はへら絞り製作の苦労や、天文学への応用についてお話しする予定です。ご参加をお待ちしております!
サイエンスカフェ(熟練工さんとの対談)参加権 / 「墨田区吾嬬町発ブラックホール行き」(サイン、メッセージ入り) / 研究報告レポート(電子版) / お礼メッセージ(電子版)
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本研究の成果を発表する際の学会発表資料や論文の謝辞に、お名前を掲載させていただきます。 ※この研究成果については論文の掲載にまでは時間を頂くこともございますこと、ご承知おきいただけますと幸いです。
学会発表資料と論文の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ(熟練工さんとの対談)参加権 / 「墨田区吾嬬町発ブラックホール行き」(サイン、メッセージ入り) / 研究報告レポート(電子版) / お礼メッセージ(電子版)
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国立天文台(東京・三鷹)見学ツアーを、2018年内の土日に実施いたします。望遠鏡の見学や、4D2U(プラネタリウムみたいなもの)によるブラックホールの説明など、説明しながら案内させていただきますので、なんでも質問してください!
国立天文台見学ツアー / 学会発表資料と論文の謝辞にお名前掲載 / サイエンスカフェ(熟練工さんとの対談)参加権 / 「墨田区吾嬬町発ブラックホール行き」(サイン、メッセージ入り) / 研究報告レポート(電子版) / お礼メッセージ(電子版)
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北嶋絞製作所の見学にご案内いたします。日時は2018年内を予定しています。当日はへら絞りの実際の製作現場をご覧いただけます。奮ってご応募ください!
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