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矢歌礼次郎/高江可奈子/竹下昌志/人間六度
矢歌礼次郎(代表/東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程) 私は倫理学と道徳心理学という分野で、「倫理そのものがもつ危うさ」を研究しています。倫理は一方が他方を説き伏せる構造をとりがちであり、人類史上の悲惨な事件もまた倫理の対立に起因すると指摘されています。すべての人が納得できる倫理とはいかなるものか。この問いから本プロジェクトを立案しました。
高江可奈子(副代表/北海道大学 人間知・脳・AI研究教育センター 特任助教) 科学技術の進展は、私たちの倫理観を揺さぶります。たとえば、遺伝子操作によって苦痛を感じない家畜を作出できたとして、工場畜産の問題は解決するのでしょうか。私は動物倫理学・生命倫理学・AI倫理学を中心に、こうした問いに従来の倫理学がどこまで通用するかを検討しています。
竹下昌志(名古屋大学大学院 情報学研究科 研究員) 倫理的検討は技術の発展に追いついていません。私はAI倫理を中心に、哲学と工学の両面から研究を進めています。自然言語処理でAIのジェンダーバイアスを取り除く研究に取り組む一方、動物やAIといった人間ではない存在をどう扱うべきかも検討しています。
人間六度(SF作家/日本大学芸術学部文芸学科講師) SFというジャンルには、時に倫理を超越し現代社会の妥当性を問い直す任務があると思います。自分は本チームの一人から「SFの力を信じる」と言ってもらえたことで「倫理プロトタイピング」に参入しました。今年いただいた星雲賞に恥じない働きができたらと思います。
ホームページはこちら:https://ethics-prototyping.com/
日進月歩で進化する科学技術は、ときに私たちの価値観を大きく揺さぶり、これまで考えもしなかったような倫理的問題を突きつけます。たとえば、臓器移植技術の確立は、人の死をどの時点で認めるのかという問いを社会に突きつけました。胎児の染色体異常を調べる出生前検査は、「命の選別」をめぐる対立を生みました。生成AIによる著作物の無断利用や、SNSがもたらした依存と政治的分断も同様です。
しかし、これらの倫理的問題はいずれも、技術が生活に深く入り込んだ後になって本格的に議論されるようになりました。倫理的な検討は、常に技術の後を追いかけているのが現状です。
では、技術が社会を大きく変える前に、そこで生じる問題をあらかじめ見通し、備えることはできないだろうか。
私たちが取り組む「倫理プロトタイピング」は、科学技術・制度・文化が変化した社会をフィクションによって具体的に描き出し、そこで必要となる価値・規範・制度を、多様な人々とともに構想する方法です。製品開発において試作品(プロトタイプ)を作成し、実際に使用して課題を洗い出すように、未来社会の倫理をあらかじめ試作し、検討の対象とします。
ここで描くのは、現在の社会をそのまま延長した単一の未来ではありません。技術と社会の関係が別の形をとりうる可能性を探り、複数の未来像を検討します。目指すのは唯一の正解を与えることではなく、複数の可能性と課題を社会で共有し、倫理的問題が現実になる前に、社会全体で先回りして向き合える状況を作ることです。
これにより、科学技術の発展に呼応する形で、倫理にも「イノベージョン」を起こすことを企図しています。
本プロジェクトは最先端の倫理学とフィクションを組み合わせ、未来社会とそこで必要となる規範を同時に構想します。
倫理学とは「何が善であり、人はいかに行為すべきか」を体系的に問い、善悪や道徳判断の根拠を探究する学問です。ある技術が誰に利益をもたらし、誰に負担を押しつけるのか。「自由」や「責任」という概念は社会が変化しても同じ意味でいられるのか。倫理学は、こうした問いを検討するための概念と議論の方法を積み重ねてきました。
他方で、これまでの倫理学は、既存の道徳的枠組みに基づいて、理想的な社会を考えるフォアキャスト型の議論に収斂していました。しかし、抽象的な議論だけでは、構想した規範が実際の生活のなかでどのような意味を持つのかイメージすることができません。また、科学技術に警鐘を鳴らし、倫理学者が一方的に説き伏せる構造は、反発を招いてしまいます。
そこで私たちは、倫理学の知見を具体的な社会像へと展開し、広く社会に開くためにフィクションの力に着目し、未来社会から逆算して倫理を考えるバックキャスト型のアプローチを取ることとしました。
フィクションによって未来の技術や製品を構想する方法としては、既にSFプロトタイピングやスペキュレイティブ・デザインがあります。私たちはこれを「倫理規範」や「倫理的概念」そのものを構想する手法として応用します。
この試みは、大きく2つのアプローチで進めます。
一つ目は、倫理学で提案されたルールを物語のなかで実際に試してみる「規範的プロトタイピング」です。単に頭の中で正しいかを議論するだけでなく、登場人物の生活や社会の出来事として描くことで、そのルールが人々にどんな影響を与え、どんな新たな葛藤を生むのかをシミュレーションします。
二つ目は、今の常識や倫理がまったく通用しない未来社会を先に描き出し、そこで必要になる新しいルール(規範や制度)をゼロから考える「構想的プロトタイピング」です。これにより、特定の技術や制度、プロダクトが社会に広く普及したとき、人々の倫理観がどう変容していくかをシミュレーションすることができます。
つまり、ルールを物語のなかでテストする視点と、未知の社会から新しいルールをひねり出す視点の両面から、未来の倫理を形にしていきます。
フィクションは、専門家と市民が同じ未来社会を想像し議論する共通の足場ともなります。倫理学者が完成した答えを一方的に伝えるのではなく、描かれた社会について異なる立場から意見を交わす。 市民が未来の倫理の構想に参加する回路を開くことも、ねらいの一つです!
本プロジェクトの研究テーマは、倫理プロトタイピングの方法論を理論的に確立し、SF作家をはじめとするクリエイターとともに倫理プロトタイプ(試作品)を制作し、その成果を「SF小説(倫理ZINE)」として形にすることです。
今回とくに取り組むのは、既存の倫理がそのままでは通用しない未来社会を描き、新たな規範や制度を構想する「構想的プロトタイピング」です。これには、出発点の異なる2つのアプローチがあります。
1つ目は、「未来の技術や社会変化を先に設定し、そこに必要な倫理を考える」アプローチです。たとえば、人間の意識をコンピュータへ移して複製できる社会を想定します。死の定義や意識を維持するコストなど、今の言葉では捉えきれない新たな課題に対し、新しい概念を立てて応えていきます。
2つ目は、「絶対に守るべき倫理のルールを先に置き、それを支える社会制度を逆算する」アプローチです。たとえば「すべての人格は等しく尊重されるべき」という原則を、複製された人格にも適用するとどうなるでしょうか。一人一票の原則や相続など、生身の身体を前提とした今の制度の側を、根本から作り替える必要が出てきます。
この2つの経路をたどりながら、電撃小説大賞及びハヤカワSFコンテストでデビューし、近年星雲賞を受賞した新進気鋭の小説家・人間六度とともに、試作品を小説の形で制作します。未来の倫理を試作すると同時に、現在の価値を検証する研究方法として、倫理プロトタイピングを確立します。
今回のacademistへの挑戦を通じて、この研究をより多くの方に知っていただき、関心の輪を広げたいと考えています。倫理に関心をお持ちの方はもちろん、科学技術、政策、教育、ビジネスなど、さまざまな領域の方々とつながることで、倫理プロトタイピングという新しい取り組みを社会に開き、ともに育てていきたいです。
倫理プロトタイピングは、倫理学の研究者だけのための方法ではありません。先端技術の導入、政策や制度の設計、企業の重要な意思決定など、倫理的な検討が必要となる現場で活用できます。将来的にはワークショップや展示会を通じて、企業・行政・研究機関・教育現場の倫理的検討を支援していきます。一方的に正しさを示すのではなく、参加者自身が課題を発見し、異なる立場の人々と対話しながら考えられる場をつくることを目指します。
本研究は、代表・矢歌礼次郎と副代表・高江可奈子のもと、以下の5名を含めた計7名の研究チームで取り組みます。
竹下昌志(名古屋大学 情報学研究科 研究員)
人間六度(小説家・SF作家)
河野理玖(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 修士課程)
長門裕介(大阪大学 社会技術共創研究センター 講師)
佐藤龍飛(株式会社grubio代表取締役/東京科学大学大学院 生命理工学院 博士課程)
いただいた支援金は、手法開発、データ取得、ワークショップの実施、成果発表、そして創作活動に大切に使用させていただきます。研究成果はレポートや論文、そして何よりも魅力的な「小説(倫理ZINE)」としてまとめ、支援者の皆さまに共有いたします。
問題が生じた後に倫理を付け加えるのではなく、起こりうる価値の衝突をあらかじめ具体的に描き、必要な規範や制度を試作して共有する。そのため第一歩に、温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
ホームページはこちら:https://ethics-prototyping.com/
エンジニアが倫理と聞くと、自分の手足が縛られるような感覚があるかもしれない。しかし私は倫理を、科学技術を社会に放り出す時に生まれる、膨大な可能性の空間における「灯台」のようなものだと思っている。そして、新しい灯台は新しい場所への道筋を作る。まだ萌芽状態だと思うが、そういう点で倫理をプロトタイピングする行為に期待している。
意識をコンピュータに移す──私自身が研究者として挑むこのテーマは技術の実現だけでなく、死とは何か、人格とは何かという倫理的な問いを社会に突きつけます。技術が現実になってから慌てるのではなく、フィクションの力で未来を先取りし、必要な倫理を「試作」するという本プロジェクトの構想に強く共感します。科学と倫理学と物語が交わるこの挑戦を心から応援します。
フィクションを作っていると、あらゆることが気になります。「それ」は赤いのか、光っているのか。乾いているか、匂うのか、持っていて恥ずかしくないか――環境や社会のあり方で決まってしまうようなことを自ら決めていかなければなりません。先入観は邪魔をするし、技術に対する理解が及ばないこともあるでしょう。題材が倫理ともなれば怯むこともあるでしょう。
しかし意思で未来は描けるのです。
プロジェクトの皆さんがどんな未来の姿を見せてくれるのか、楽しみで仕方がありません。
倫理プロトタイピングを応援いたします。
作家、アイザック・アシモフは「1880年に自動車を予測することは簡単だ。しかし交通問題を予測することは極めて難しい」と述べ、優れたSFは、新しい技術と社会の相互作用と、そこから生じる問題を描くものであると論じました。実際、過去において優れたSFは、技術がどのように人々の生きる条件を変化させ、それが社会の規範や価値観をどう変えていくのかを描いてきました。これから先、どんな技術が生まれて、そしてそれがどのように社会を、そして規範や倫理を変えていくのかを予測するのは非常に難しく、同時に大きな価値のあることでもあります。作家、技術の専門家、人文学・社会科学の専門家が協働してそれに取り組むことに大いに期待したいと思います。
鉄腕アトムにドラえもん、海外でもスタートレックにニューロマンサー、SFは常に世を先導してきました。ロボットや宇宙船へのロマンはさておき、そんな技術がある世界はどんな社会なのか、どんな日常が広がり、そこに生きる人は日々何を感じて、どんな人生を生きるのか、SFはそれを描き切るからこそ、世を先導してきたのだと思います。シンギュラリティが現実化し、歴史的な大変革に身構える今、ヒトの在り方を探るこの試みは特別な意味を持つと思います。
| Date | Plans |
|---|---|
2027年1月 |
倫理プロトタイピング研究開始 |
2027年3月〜 |
企業や学術機関でのワークショップの開催(継続) |
2027年5月 |
国内学会にて発表 |
2027年8月 |
倫理ZINE+グッズ送付 |
温かいご支援に心より感謝申し上げます。フィクションを通じて未来の倫理的問題に備える「倫理プロトタイピング」への挑戦を後押ししてくださった皆様へ、研究チームから心を込めたお礼のメッセージをメールにてお届けします。
※本リターンの実施は2026年11月を予定しております。
お礼のメッセージ
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プロジェクトメンバーである倫理学の研究者が、支援者の皆さまから寄せられた日常のお悩みや疑問にお答えする、120分のオンライン限定配信イベントにご招待します。個人的なモヤモヤから社会的なジレンマまで、専門家と一緒に考え、解決の糸口を探る特別な企画です。加えて、配信中には倫理学者同士の白熱した討論もみることができます!
※リターン実施は2027年3月予定
【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談! / お礼のメッセージ
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倫理プロトタイピングの成果をまとめた特別な冊子(ZINE)とオリジナルグッズのセットです。
SF作家・人間六度氏らの書き下ろし小説と、研究チームの倫理学論考を収録し、メンバーイチオシの「倫理用語」をグッズ化!フィクションで「既存の倫理が通用しない未来社会」を体感し、論考でその背景の哲学的課題を深く思索できる特別な一冊です。
倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / お礼のメッセージ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談!
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プロジェクトメンバーの倫理学者とSF作家人間六度と、90分間個別に直接対話ができます。日々の個人的な疑問からビジネスにおける倫理的な課題まで、専門家になんでも相談や議論ができる貴重な機会を提供する内容です。
【90分: 個別トーク】倫理学者になんでも相談! / お礼のメッセージ / 倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談!
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プロジェクトHPにお名前を掲載します。
このリターン実施は2026年11月を予定しています。
【企業・団体向け】プロジェクトHPに社名掲載 / お礼のメッセージ / 倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談! / 【90分: 個別トーク】倫理学者になんでも相談! / 【対面カフェ】倫理学者にお悩み相談!
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リラックスできるカフェの空間で、気鋭の倫理学者と直接お話ししませんか?日々の個人的なモヤモヤから正解のない社会的なジレンマまで、あなたの抱える疑問にプロジェクトメンバーが対面でお答えします。専門家とじっくり語り合い、解決の糸口を探る特別な個別相談リターンです。
※実施:東京にて2027年3月予定
【対面カフェ】倫理学者にお悩み相談! / お礼のメッセージ / 倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談! / 【90分: 個別トーク】倫理学者になんでも相談! / 【企業・団体向け】プロジェクトHPに社名掲載
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最先端の議論が交わされる外部主催の学会「動物倫理かいぎ」(2027年1〜3月に名古屋開催予定)への先着2名様限定ツアーです。倫理学者が同行し発表を分かりやすく解説するため、専門知識がなくても最前線を深く楽しめる贅沢な体験です。学会参加費は不要(旅費は自己負担)。希望者は学会後の懇親会にも参加可能です。
【学会参加ツアー】動物倫理かいぎ / お礼のメッセージ / 倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談! / 【企業・団体向け】プロジェクトHPに社名掲載 / 【90分: 個別トーク】倫理学者になんでも相談! / 【対面カフェ】倫理学者にお悩み相談!
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貴社・貴団体の関心テーマや具体的な課題に合わせて、研究チームがカスタマイズした個別ディスカッション(2時間目安)を実施します。「新技術の社会実装にあたって消費者の抵抗が予想される」「ESG対応で倫理的な論点の整理が必要」など、具体的なご相談にお応えします。ご関心をお持ちの方は、まずはプロジェクト公式サイトのお問い合わせよりお気軽にご相談ください。
【企業・団体様向け】個別ディスカッション / お礼のメッセージ / 倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談! / 【企業・団体向け】プロジェクトHPに社名掲載 / 【90分: 個別トーク】倫理学者になんでも相談! / 【学会参加ツアー】動物倫理かいぎ / 【対面カフェ】倫理学者にお悩み相談!
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貴社・貴団体の関心テーマや具体的な課題に合わせて、カスタマイズしたワークショップ(3時間程度)を出張形式で実施します。事前ヒアリングをもとに、御社の事業・技術が社会に実装された未来シナリオを研究チームが設計し、参加者がそのシナリオを体感するプログラムです。ご関心をお持ちの方は、まずはプロジェクトページのお問い合わせよりお気軽にご相談ください。
【企業・団体様向け】ワークショップ / お礼のメッセージ / 倫理ZINE(小説+論考)+グッズ / 【120分: 配信イベント】倫理学者になんでも相談! / 【企業・団体向け】プロジェクトHPに社名掲載 / 【企業・団体様向け】個別ディスカッション / 【90分: 個別トーク】倫理学者になんでも相談! / 【学会参加ツアー】動物倫理かいぎ / 【対面カフェ】倫理学者にお悩み相談!
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【学会参加ツアー】動物倫理かいぎ and others
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【企業・団体様向け】個別ディスカッション and others
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【企業・団体様向け】ワークショップ and others
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