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Hiroki Wadati
兵庫県立大学、Professor
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Profile

Hiroki Wadati

私の専門は光物性物理学、すなわち光を使って物質の性質を調べる研究です。

日頃は研究室のレーザー装置などを用い、物質の中の電子がどのように振る舞うかを観測しています。

物質をただ眺めるだけでは何が起きているかわかりませんが、光を当てた測定でその性質が明らかになる瞬間に大きなおもしろさを感じ、研究を続けてきました。

そんな中、スマートフォンや電子レンジにも使われているマイクロ波を測る手のひらサイズの装置NanoVNAに出会いました。驚いたのは、大型装置と同じ「マイクロ波で物質の応答を見る」ことが、こんな小さな装置でも実現できることです。

これをきっかけに、誰もが体験できる新しい実験の形を作りたいと考えています。

あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?

私が実現したいのは、目に見えない物理現象を、誰もが“触って”理解できる世界です。

私たちの生活は、スマートフォンやWi-Fiルーター、電子レンジといった電子機器に囲まれています。これらはすべて「マイクロ波(電磁波)」の振る舞いを利用していますが、その仕組みを知るには、通常は高価な専門装置が必要です。そのため、中高生や専門外の方々が、身近なテクノロジーの裏側にある物理学の世界を体験する機会は、これまでほとんどありませんでした。
しかし、手のひらサイズの測定器「NanoVNA」を使えば、「身近な物質の裏側にある物理学の世界」を見ることができます。

たとえば、毎日手にしているスマートフォン。その内部では常にマイクロ波が通信のために制御されています。NanoVNAを使えば、こうした精密機器がマイクロ波に対してどのように反応しているのか、その「応答」をグラフとして捉えることができます。
また、スマートフォンのような電子機器とは一見まったく異なる物質に思える果物のバナナでも、マイクロ波に対して固有の応答を示します。果物の場合、水分量の違いによってマイクロ波を当てた時の応答が異なり、NanoVNAではその違いが画面にグラフとして現れます。そのため、同じように見えるバナナでも、「物理の視点で見る」ことで、個体によってあるいは買ってからの日数によってマイクロ波に対する応答に違いが出ると考えられます。こうしたことから、果物の熟度を知るといった新しい発見があるかもしれません。

「マイクロ波への応答」という物性物理の視点に立てば、電子機器も果物も、それぞれに「目に見えない現象が測定によって現れ、中身や性質を理解できる対象」なのです。
かつて顕微鏡が登場してミクロの世界が身近になったように、私はNanoVNAを「物性物理の新しい入り口」にしたいと考えています。
研究室では、目に見えない現象が測定によって現れる面白さを日々実感しています。こうした体験を、研究室の中だけでなく、もっと多くの人が自分の手で確かめられる形に広げていきたいと考えています。

どのようなアプローチで実現しようとしていますか?

本プロジェクトでは、研究室ですでに学生たちと活用し始めている「NanoVNA」を、専門外の人でも使える「身近な物体の可視化ツール」へと昇華させます。

NanoVNAはもともとアマチュア無線のアンテナ調整に用いられる装置ですが、近年では低価格で入手できるようになりました。
私が驚いたのは、この小さな機器でも研究室の大型装置と同様に「マイクロ波に対する物質の応答」を観測できることです。物質に微弱なマイクロ波を当て、その反射の変化から水分量や導電性などの違いを捉えることができます。

たとえば果物にプローブを触れると、水分量の違いによって反射が変化し、見た目ではわからない違いがグラフとして現れます。さらに磁石では、特定の周波数で吸収が強まり、見えない磁気の動きが共鳴として現れます。
実際に研究室では、学生とともにこうした測定を行っています。

しかし現状ではまだ測定方法は確立されておらず、測定して得られた複雑なグラフを「どう読み解けばいいのか」も整理されていません。専門外の方々が活用するためには、単に「測れる」状態から、専門知識がない人でも「意味を理解できる」状態へと橋渡しをする必要があります。

そこで本研究では、
1. 多様な物質の体系的測定
2. 手順や解析の整理による実験レシピ化
3. 教育現場やワークショップで使える形での公開
という段階で取り組み、研究室の測定を身近な実験として共有していきます。

今回のプロジェクトで行う研究テーマはなんですか?

本プロジェクトでは、NanoVNAを用いた「身近な物質のマイクロ波反射特性のデータベース化と教材化」を目指します。

具体的には、半導体や磁石といった工学材料から、果物、野菜、木材などの身近な物質までを幅広く測定し、どの周波数で特徴が現れるかを体系的に整理します。

本プロジェクトで測定・整理したデータを物質ごとのマイクロ波応答カタログとして公開することで、今後、NanoVNAで測った自分の測定結果が何を意味するのかを比較参照できる共通の「ものさし」を作ります。
また、測定して得られた複雑なグラフを「どう読み解けばいいのか」についても、結果を直感的に理解できる可視化手法を開発し、一目で違いがわかる表現を検討します。

NanoVNAを、身近な物質の中にある目に見えない物理現象を自分の手で捉える新しいツールとして、将来的に、中学校・高校の理科の実験やサイエンスワークショップの教材などで活用できるよう、実験の基盤を構築することを目指します。

Why we need your support

本プロジェクトでは、NanoVNA本体や測定用プローブ、接続部品、校正器具などの測定環境の整備に加え、半導体材料、食材、木材などさまざまな試料の準備や測定条件の検証に研究費を使用します。
また、実験手順をわかりやすく伝える解説資料や教育用動画の制作も行います。これらは研究室の中だけでなく、誰もが同じ測定を体験できる環境を作るために不可欠です。

光物性物理学の中でもマイクロ波による測定は、通信や半導体など現代社会を支える重要な技術ですが、実際に装置に触れて理解する機会はほとんどありません。だからこそ、多くの人と研究の過程を共有しながら「知ることのおもしろさ」を広げたいと考え、クラウドファンディングに挑戦します。

この研究を通じて、研究室の中で行っている測定を、誰もが自分の手で確かめられる実験として広げていきたいと考えています。どうか本挑戦を一緒に進めていただければ幸いです。

Recommender's comment

上野哲朗
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構・主幹研究員

大学や研究所では精密な計測装置を使って物質の性質を調べています。しかし、こうした計測装置は非常に複雑かつ高価で、専門の研究者や技術者でないと扱うことが困難です。和達さんが取り組む本プロジェクトは、非常にシンプルかつ安価、さらに持ち運び可能な装置で物質の電磁応答を調べることができる興味深い試みです。「小学生が夏休みにNanoVNAを使った自由研究をする」ような近い未来を期待しつつ、本プロジェクトを推薦します。

戸川欣彦
大阪公立大学・教授

携帯電話などに用いられている高い周波数で生じる電磁気の現象を調べることは難しく、高額な計測機器など多くの初期投資が必要なこともあって、これまでは専門家に委ねられていました。NanoVNAのような装置が安価に入手でき、気軽に使えるようになったことは驚きです。開発される実験技術が普及すれば、電磁気がより身近なものになると期待しています。本プロジェクトを応援しています!

長谷川修司
日本物理学会・前会長

私は和達さんを学部時代に授業で教え、大学院時代は隣の研究室の学生として見てきました。彼は光物性物理学の研究を深める力と同時に、それを他者にわかりやすく伝える力を併せ持つ研究者です。
今回のNanoVNAを用いた試みは、専門的なマイクロ波測定を身近な体験へと開く点でとても興味深いものです。例えば、果物などの中身がグラフとして現れることで、目に見えない物理現象を直感的に理解できる世界が広がります。
和達さんであれば、この新しく見える世界を多くの人に伝えてくれると期待し、本プロジェクトを推薦します。

Project timeline

Date Plans

2026年5月

測定プロトコルの確立

2026年6月

半導体・果物野菜の購入と基礎測定

2026年7月

条件違い(半導体の厚み、果物野菜の熟度)の系統測定

2026年8月

磁石・磁性材料の購入と測定

2026年9月

測定結果の整理・比較・可視化

2026年10月

追加測定・再現性確認(予備期間)

2026年11月

結果の解釈整理・図表作成

2027年1月

成果公開(レポート/論文化)

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本プロジェクトに関するオンラインサイエンスカフェにご招待。NanoVNAでの計測方法や測定結果の読み解き方などについてお話しします!
このリターン実施は2026年10月を予定しています。

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NanoVNAでの計測方法や活用方法など、本研究について個別にディスカッションする機会を設けます。
具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。

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本研究に関する出張実験を行います。実際にNanoVNAで見える世界をお示しします。具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。
※宿泊費・交通費は別途いただきます。

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