Jun Ikeda
2025年現在、カリフォルニア工科大学(Caltech)で、柳井正財団のご支援の下、学部生として数学を学んでいます。大学一年で量子力学と一般相対性理論を学んだ際に、抽象的で強力な数学の理論が、物理に上手く当てはまって、物理理論がより俯瞰的に見られるようになる瞬間に魅せられました。過去2年間程、純粋数学と理論物理学の間のスペクトラムで活動し、私が最も貢献できる領域を探ってきました。様々な教授やポスドクの方々との交流を通じて、差し当たりの答えとして、純粋数学に限りなく近い立場で理論物理をサポートすることができるように、夏の研究やThesisに取り組んでいます。
私は、数学と物理学の間に横たわる認識や手法の隔たりを埋め、両分野の対話から新たな理論的洞察と応用を生み出す研究者を志しています。
カリフォルニア工科大学のPreskillグループで理論物理学者の方々と議論を重ねるなかで、数学がもたらす抽象的なツールが十分に活用されていない場面に幾度か出会いました。たとえば、量子コンピュータに関連するある研究分野では、「可換代数」という数学が有用であると以前から指摘されていたものの、「実際に計算するには複雑すぎる。既存の方法のほうが簡単だよね」とポスドクの方が語っていたのが印象に残っています。
しかし、現段階では実用的に見えなくとも、物理世界に現れる新しい数学的現象を深く理解することは重要だと私は考えています。歴史的にも、行列という概念は量子力学の登場以前には物理のなかで広く用いられていたわけではありませんが、その理論が受容されて以降、20世紀の目覚ましい進展を支える基盤となりました。
私は、数学が提供する普遍的な視点こそが、世界の見方を刷新し、新たな応用を切り拓く鍵になると信じています。数学と物理の新しい相互作用の開拓を信念に、研究者として歩んでいきたいと考えています。
現在所属しているカリフォルニア工科大学の学士課程では、卒業までの残り一年間、研究・学士論文・授業を通じて、特に代数学や圏論に関する理解を深めたいと考えています。学士論文は、Marcolli教授の指導のもと、「普遍コホモロジー理論としてのmotif」をテーマに執筆する予定です。
2026年夏からは、アメリカまたはカナダの数学系PhDプログラムへの進学を志望しています。現在は出願準備の段階ですが、カナダのペリメーター理論物理学研究所や、ニューヨークのSimons 幾何学物理学センターに所属する教授方のもとで学ぶことに関心があります。物理に対する幾何学的・代数的・圏論的なアプローチに特に興味があり、数年間かけてより専門的な研究領域を定めていくつもりです。また、在学中は数学と物理の合同学会にも積極的に参加し、両分野のバックグラウンドを持つ研究者との対話を重ねることで、分野横断的な視点を育てていきたいと考えています。
その後の進路は未定ですが、現時点では6年間のポスドク期間を経て、最終的には教授職に就き、数学と物理の交差点における研究に継続的に貢献することを目指しています。
現在携わっているプロジェクトのひとつに、Fusion spin chain があります。これは、電子をドーナッツ状に並べることで量子コンピュータの可能性を切り拓いた物理モデルである Toric code(TC)を大幅に一般化したものです。
量子コンピュータの実現には、誤り訂正符号という技術が不可欠ですが、TC以前に知られていた方法は効率が極めて悪く、実現可能性が疑問視されていました。TCは、物性物理の知見を取り入れることでこの課題を大きく改善し、量子コンピュータ開発に向けた重要な一歩となりました。
この物理モデルを数学的に捉え直し、その構造を深く理解しようとすると、系の中で行われるさまざまな操作や変換が、どのようなルールで組み合わさっているのかを明らかにする必要があります。そうした関係性を記述する枠組みとして現れるのが、「fusion圏」と呼ばれる数学的構造です。これは、複雑な組み合わせのルールを整理するために、圏論という数学の枠組みを活用する典型的な例です。
本プロジェクトでは、TCを一般化した系における局所的な振る舞いを記述するTube代数を、圏論の視点から体系的に整理することを目的としています。この過程で、代数幾何学や数理論理学の分野で現れる「トポス」と呼ばれる構造に似た概念が自然に立ち上がってきており、異分野との接点が見えてきました。
またこの研究は、物理的に意味のある対称性が成立するかどうかを判断するための、新たな視点も提供します。物理においては、対称性が局所性といった条件を満たさなければ、観測可能な現象としては成立しません。Tube代数の圏論的理解は、こうした条件の妥当性を簡潔に検証・証明する手法を与えると期待されます。
圏論という抽象的な理論を使って物理系の対称性や構造を捉え直すという点でも、このプロジェクトは、数学と物理をつなぐという私自身の長期的な研究目標と深く結びついています。
数学はしばしば抽象的で難解な印象を持たれがちですが、物理理論の整理や発展において、不可欠な役割を果たすことがあります。私は、数学と物理という一見離れた二つの分野をつなぐ立場に立つことで、現代数学に物理的な意義を与えながら、現実世界の理論的な記述をより自然に捉え、一般化し、拡張していきたいと考えています。
物理寄りの数学者として、現代数学の魅力や意義を広く伝える責任があるとも感じており、その思いから今回クラウドファンディングに挑戦することにしました。物理を入口に、数理物理や純粋数学がもつ美しさや奥深さに触れていただく機会になればと願っています。
いただいたご支援は、米国内での学会参加にかかる渡航費や滞在費、そして2026年秋から予定している大学院留学のための出願費用などに充てさせていただきます。学問を架け橋とし、専門性と社会との接点を丁寧に紡ぎながら、より深い研究に取り組んでいければと考えています。
I have had the great pleasure of working with Jun on provided mathematical foundations for ideas arising in quantum physics. Jun has deeply impressed me with his creativity and dedication, and I am excited to see Jun’s future unfold!
Jun has been exploring several directions at the intersection of math and physics, including symplectic geometry, Morse theory and Floer homology. In the future, he plans to pursue a PhD degree to deepen his understanding of this exciting field and make his own contribution, with the help of the crowdfunding campaign. I fully support his journey, and wish him every success!
Date | Plans |
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2025年10月 | Ocneanu代数に関する論文を完成 |
2025年11月~ | 米国内数理物理学の学会で発表 |
2026年1月 | Thesis執筆開始 |
2026年6月 | Thesis提出 |
2026年8月 | 大学院進学 |
メールでお礼のメッセージをお送りします。
このリターン実施は2025年12月を予定しています。
お礼のメッセージ
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academist Journalに寄稿する研究報告レポートにお名前を掲載します。
このリターン実施は2025年12月を予定しています。
研究報告レポートにお名前掲載 / お礼のメッセージ / オンラインサイエンスカフェ
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本プロジェクトに関するオンラインサイエンスカフェにご招待します。
基本的には、ご支援いただいた直近の研究テーマについてご説明しますが、その他のご質問にも対応できます。
このリターン実施は2025年12月を予定しています。
オンラインサイエンスカフェ / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載
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今回の研究をarxivなどの論文サイトに上げる際に、謝辞にお名前を掲載いたします。
このリターン実施は2025年10月を予定しています。
論文謝辞にお名前掲載 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 学士論文謝辞にお名前掲載
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学士論文謝辞にお名前掲載 | June, 2026 |
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卒業の際に提出する学士論文に、謝辞を掲載いたします。
完成した論文は、Caltechのデータベース、およびarxivに残る予定です。
このリターン実施は2026年6月を予定しています。
学士論文謝辞にお名前掲載 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載
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学士論文謝辞にお名前掲載 | June, 2026 |
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ご支援者様と個別にお話しする機会を設けます。
直近の研究テーマについてについて、前提知識に合わせてご紹介したり、カリフォルニア工科大学での大学生生活について、中高や大学での勉強のご相談や、受験に関するご相談など、どんな内容でも知識の限りお応えします。具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。
このリターン実施は2025年10月以降を予定しています。
個別ディスカッション / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載 / 学士論文謝辞にお名前掲載 / カリフォルニア工科大学バーチャルキャンパスツアー
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学士論文謝辞にお名前掲載 | June, 2026 |
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所属するカリフォルニア工科大学のキャンパスを、普段勉強、生活するエリアを中心にご紹介します。(対面でお越しいただける場合もご対応します。)
2025年12月の実施を予定しております。
カリフォルニア工科大学バーチャルキャンパスツアー / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載 / 学士論文謝辞にお名前掲載 / 個別ディスカッション
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学士論文謝辞にお名前掲載 | June, 2026 |
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出張講義を行います。
直近の研究テーマについてについて、カリフォルニア工科大学での大学生生活について、中高や大学での勉強のご相談や、受験に関するご相談など、どんな内容でも知識の限りお応えします。具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。
このリターン実施は、日本国内の場合2026年3月を予定しています。
※宿泊費・東京からの交通費は別途いただきます。
出張講義 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載 / 個別ディスカッション / 学士論文謝辞にお名前掲載 / カリフォルニア工科大学バーチャルキャンパスツアー
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学士論文謝辞にお名前掲載 | June, 2026 |
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