私は、日本にいるすべての子供たちが、栄養的に優れていておいしい食事を、あたたかな雰囲気のなかで食べることができる社会の実現を目指します。
現在の日本には、日本生まれのほか、外国から移住してきた子ども、両親や片親が日本人、まったく日本人の血をひかない子どももいます。また、両親に育てられている子ども、父子家庭、母子家庭、親族以外の人に育てられている子どもなど、生育環境もさまざまです。ひとりひとりの経済的背景やアレルギーの有無などの身体的条件は異なりますが、共通しているのは、子供たちは環境を自分で選べないことです。そして、戦争、天変地異、疫病の流行などが発生すると、社会的弱者である子どもがまず犠牲になります。コロナ禍もまさにそうでした。現代の日本では、さまざまな環境の子どもが栄養豊富でおいしい食事をとれる場として、子ども食堂や学校給食などをあげることができますが、コロナによる休校や食堂閉鎖、授業のオンライン化や外出自粛などにより、居場所や豊かな食の場を失った子どもたちが増えました。そこで、いま改めて、コロナ禍の学校給食の実態を把握し、危機のなかの子どもの食を分析し、将来また災害が起こったときの行動指針を組み立てたいと思います。
私は、第一に東京の都心と郊外、大阪、仙台などをフィールドにした事例を検討し、学校給食の形態にはどのようなものがあるか、成功している事例と問題がある事例について調査していきたいと思います。子ども食堂ではなく給食にしぼるのは、現在子ども食堂は必要とする子ども全員が利用できる状態にないのに対し、学校給食は、多くの子どもにとってより自然に食事がとれる場だからです。
コロナ禍の学校給食の実態については、2021年の国立成育医療研究センター研究所社会医学研究部などの調査によれば、2020年度前半に3/4の学校は給食を行わなかったために、コロナで失職した低収入世帯では、子どもたちの健康‣栄養状態の質の低下につながり、「食の格差」が拡大したといわれています。全国的な統計調査は行われているものの、児童、栄養士、教員、父母などに直接話を聞くと、子どもの意欲低下や学級運営の難しさなどへの影響があったことが予想されます。
関係者への聞き取り調査を行う際、給食の配食形態の違い、ランチルームの有無による差異などに注目して、子どもたちが「食の格差」がなく栄養も心も豊かな食事をとれる学校給食の形態はなにかということにフォーカスして、考察したいと思います。
この研究は、日本各地(東京都心と郊外、大阪、仙台など)でのコロナ禍の学校給食の事例研究を通して、(1)給食が実施されなかったとき、(2)簡易給食が行われたとき、(3)コロナが沈静化したとき、の課題を比較して、コロナによって給食を食べることができなかった子どもたちの欠食の問題について、子どもの経済的、栄養的、情緒的貧困という観点から検討していきます。本研究では、学校給食がいかにコロナに影響を受けたか、コロナが子どもを含む社会的弱者の食にどのような打撃を与えたかという点に注目したいと思っています。
具体的には、学校給食の歴史と現状、学校給食に対する意識の変化、そして日本の各地域における給食提供の実態の3点を中心に、既存の研究を踏まえて本調査の結果を分析し、考察します。このことが現代の給食事情を広く理解し、個々の事例を調査するために前提条件となると思います。
事例研究では、東京都心、東京郊外、大阪、仙台における給食の背景、現在直面している課題など、共通点とそれぞれの特徴を解明し、子どもが人とひととのつながりの中でおいしい給食を安心してたべられるようにします。
今回みなさまからいただいた支援金で、学童とその父母、教員、栄養士、調理員などの方々に広く調査を行う予定でおります。東京のなかでも、都心と郊外では児童とその家庭のおかれた状況が異なります。大阪は、古くから食の都として有名であります。仙台もまた、3.11の被害をうけた大都市であるだけではなく、東京では一般的ではないセンター方式の給食がさかんな都市です。ひろくさまざまな都市で調査を行い、それを比較検討することで、コロナ禍が給食にもたらした影響をより重層的に把握することができると思います。
皆さまからいただいたご支援で、全国調査をさせていただき、ひろくコロナ禍の給食の実態を研究したいと思っております。応援よろしくお願いいたします。
2005年に食育基本法、2008年に学校給食法が制定されて以来、学校給食に対する一般の関心と理解は、子どもたちの「貧食」問題にかんする意識とともに高まってきました。ただ、今般のコロナ・パンデミックがそうした学校給食にどのような影響を及ぼしているかは、大いに気になるところであります。中国留学時に茶芸師と評茶師の資格を取得するなど、長年食文化と社会の関りを研究してきた宍戸氏が、フィールドワークを通じてこの主題に取り組む。はたして「現場の声」が何を語るか、給食システム自体がどのように変化しているのか。氏の研究は、食育とリスク管理という大きな課題を引き受ける画期的なものになるでしょう。
宍戸佳織さんとは大学ゼミ時代からの友人です。どこかのお嬢様ですか?と尋ねたくなるくらい当時からおっとりとして、丁寧で上品な人という印象がありました。でも、研究に対する情熱と行動力は抜群です。食文化研究のため海外留学し、帰国後は栄養士の資格も取り、現在は大学の非常勤講師をかけ持ちしながら、息子さんもシングルで立派に育ててらしている。子どもの食と貧困の問題は、まだまだ見えにくい点もあります。研究者として、また友人として宍戸さんを応援します。
Date | Plans |
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2023年11月 | 調査票による調査開始 |
2024年2月 | 現地調査(東京)開始 |
2024年6月 | 日本生活学会 発表予定(希望) |
2024年8月 | 現地調査(大阪、仙台)開始 |
2025年6月 | 日本生活学会 発表予定(希望) |
2025年9月 | 生活学論叢 投稿予定 |
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本プロジェクトの理解につながる論文のリストをお届けします。
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給食調査プロジェクトを理解するための激選論文10選のリスト | February, 2024 |
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